2021年04月15日

福島第一汚染水海洋放出をめぐる動向

日本政府が4月13日に放射能汚染水(政府発表は処理水)の海洋放出方針を決定したことを受け、韓国と中国は「一方的な決定」と非難し、反対を表明した。中国国内の世論も否定的な見解が強く、私が親しくしている普段は温厚な日本研究者ですら「自由で開かれたインド太平洋とはそういう意味か」とSNSで叫んでいる。

まず、日本側の事情を言えば、原発冷却などに使用された処理水は原発敷地内に保管され、すでに1000基、125万トンを超え、22年にも満杯になる。その一方で、廃炉作業に伴う汚染廃棄物や、今度取り出されるであろう使用済み核燃料や燃料デブリの保管場所として、すでに8万平方メートルの敷地が用意されている。この上、貯水タンクを増設するとなると、福島原発周辺自治体や新旧住民の反発が強くなり、合意が得られなくなって、廃炉作業にも影響が出る。
同様に、東京電力も貯水タンクの老朽化などを理由に早くから海洋放出を求めている。こちらは貯水タンクの増設による設営、管理費の肥大化を懸念していると見られる。むしろ日本政府は、今まで東電の要求を拒絶し、問題を先送りしてきた側面もある。しかし、住民の合意、東電の要求、財政・管理負担を考えた場合、タンク増設の選択には至らなかった。

外交面を見ると、日本は2018年からアメリカやIAEAに対し、汚染水の海洋放出を容認するように工作を続けてきた。今回、中韓両政府は「日本の一方的な決定」と非難しているが、日本政府は「駐日大使を通じて事前に説明している」と主張している。恐らく事実は、日本政府は説明したが、両政府は同意しなかった、ということだろう。
日本政府としては、「国際ルールに則っている以上、IAEAと同盟国(宗主国)であるアメリカの合意が得られれば、最低限度はOK」という認識だったと考えられる。

本件の最大の問題は、汚染水の海洋放出に関する国際ルールに不備がある点だ。三重水素は人体内に入ると被ばくを起こす可能性があるが、浄化設備では除去できない。しかし、世界共通の排出基準がなく、国ごとに基準が異なる。例えば、米国は1リットル当たり放射線量3万7000ベクレルを基準にしている一方、日本は6万ベクレルと高い基準が設定されている。
日本政府は、海水を混ぜてトリチウムの放射線量を基準より40分の1(1500ベクレル)未満に薄めて放出すると発表している。しかし、薄めたところでトリチウムの総量は変わらないが、総量に対する国際基準も存在しないのが現状だ。現在、日本がタンクの中に保管している汚染水125万トンのトリチウムの放射能総量は約860兆ベクレルと推定されるだけに、近隣諸国の懸念は当然のものであろう。

今後、中韓政府は日本産水産物の禁輸に踏み切る恐れがあるし、両国内で東京五輪のボイコット運動が生起する恐れもある。
ルールの不備を突いて、「ルールに則っていれば何をやっても良い」と主張する日本は、東アジアにおいてさらに孤立を深めていくであろう。
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2021年04月12日

感染増を想定してなかった菅官邸

【焦る官邸「こうも一気に増えるとは」 コロナ対策強化】
 政府は、2月施行の改正特別措置法で新設された「まん延防止等重点措置」(まん防)を大阪府に初適用する方向だ。新型コロナウイルスの感染状況の悪化に歯止めがかからず、関西での緊急事態宣言解除から1カ月での対策強化を余儀なくされた。政府や自治体では感染「第4波」到来への危機感が高まっている。
 31日午後4時ごろ、急きょ開かれた大阪府の対策本部会議が始まった。吉村洋文知事は、感染が「第4波」に入ったとの認識のもと、こう切り出した。「この1週間の感染拡大は非常に高い伸びを示している。3月中旬くらいから、感染が急拡大している」
 会議では「まん防」適用の場合、大阪市内の飲食店などに要請している午後9時までの営業時間短縮を午後8時まで早めるよう政府に求める方針を決定した。
 吉村氏は西村康稔経済再生相に28日夜に連絡し、「まん防で重点的な措置をとるのが適切だ」と事前に伝えていた。
(4月1日、朝日新聞より抜粋)

「まさか帝都が爆撃されるとは」とか「こうも米軍の上陸が早いとは」みたいな話になっているぞ。

でも、感染症専門家は緊急事態宣言解除後の急増を予見してましたよね!!

「まん防」なるものも、五輪を開催するのに「緊急事態」は不都合だという判断から作られた欺瞞造語であるし、どこまでも自分の都合の良い情勢を前提として政策を立てていることがわかる。

ゲーマー的に言えば、「秀頼様が出陣すれば、西軍の勝ち」と言っているようなもので、その前提で戦略を立てている時点で負けているのだ。

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2021年04月10日

4月解散は無理じゃね?

【二階氏「不信任案出してきたら即解散」 野党を再び牽制】
 自民党の二階俊博幹事長は4日、野党が今国会で内閣不信任案を提出した場合の衆院解散について「出してきたらすぐやる。会期末だろうがどこだろうが。出してきたら解散だ」と語り、野党を再び牽制(けんせい)した。
 同日放送されたBSテレ東の番組で語った。内閣不信任案をめぐっては、立憲民主党の安住淳国会対策委員長が「4月中でも5月中でも出すことはありうる」などと言及したのに対し、二階氏は「直ちに解散で立ち向かうべきだという風に(菅義偉首相に)進言をしたい」と述べるなど応酬が続いている。
 二階氏は番組で「不信任っていうことは『あんた方と一緒に政治をやってられない』という意思表示だ」と指摘したうえで、「国民のみなさんに問おうじゃないか」と語った。さらに解散判断は「(提出されてから)直ちにだ。出してくるときに(野党側に)その覚悟はあるのか」と強調した。
 また、「足らざるところがあれば補正予算もやって、常に積極的な対応をしていきたい」とも述べ、必要に応じて補正予算の編成を検討する考えも示した。
(4月4日、朝日新聞)

二階幹事長は妙に強気だが、ワクチン接種の遅れを始めとするコロナ対応、傲岸不遜な態度でゴリ押しを進める五輪(組織委員会)など、国民の不満が高まっている。

内閣支持率は調査機関によって異なるものの、四割前後で推移しており、自民党の支持率は相対的に高水準を保っている。NHKの3月調査では35%だ。
逆に立憲を始めとする野党の支持率がお粗末なほどに低く、維新を除く主要野党の支持率は合計しても10%に及ばない。
確かに数字だけ見れば、「早く選挙したほうが良い」との判断に傾くのも頷ける。

しかし、国民の政府不信、政権不信は根強く、このコロナ禍で「野党がお決まりの不信任を出したから解散」という大義名分が支持されるとも思えない。数字上の支持者の一部は「お灸をすえる」側に回るのではないか。
私ですら積極的に支持できる野党はないので、自民党の勝利は疑いないだろう。
とはいえ、普通に選挙すれば、自民党は10〜20議席の微減で済むところが、やぶ蛇になれば20〜30減にまで落ち込む恐れがある。
10議席台までの減少は許容範囲だろうが、20議席以上の減少は責任問題となり、政権が維持できても求心力が低下する恐れがある。

やはり順当に行けば、「五輪直後」となるのだろうが、逆に「いま解散」を主張する背景には「7月の五輪開催は難しい」という内部の認識があるのかもしれない。
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2021年04月09日

残念すぎる立憲の基本政策

【原発ゼロ社会や選択的夫婦別姓を実現 立民が基本政策決定】
 立憲民主党は30日の常任幹事会で、中長期的な政策集「基本政策」を決定した。エネルギー政策については党綱領と同様に「原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現する」と明記。その手段として、原発の新増設を行わずに速やかな停止と廃炉決定を目指す▽地元合意がないままの再稼働は認めない−など5項目を並べた。
 また、医療や介護など「ベーシックサービス」の拡充、介護職員らの待遇改善を進め、「持続可能で安心できる社会保障制度を確立する」とうたった。選択的夫婦別姓の導入や、同性婚を可能とする法制度の実現なども盛り込んだ。
 外交・安全保障では日米関係を軸に近隣諸国との連携強化も重視する姿勢を強調。在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の改定も進める。安倍晋三政権下の平成28年に施行された安全保障関連法は「違憲部分を廃止するなど必要な措置を講じる」とした。
 基本政策は次期衆院選の公約策定の際のベースとなる。ただし「足元の課題とは距離を置き、中長期的に目指す政策」(福山哲郎幹事長)のため、新型コロナウイルス対策は盛り込んでいない。
(3月31日、産経新聞)

「右と左を足して真ん中を取る」という民主党以来の「お作法」は健在な模様。
労働者代表を僭称する自称「連合」は、民間労組の大半が国民民主党に入っているにも関わらず、立憲に対して「原発ゼロを入れるな」と要求してきたという。それを言うなら、最初から「国民」を支援すれば良いだけで、立憲の足を引っ張り、最終的には自民党に貢献する勢力となっている。自称「連合」はまず自らを解散して、労働者の信を問うべきであろう。

「連合」の介入と右派議員の活躍によって、立憲の基本政策はエネルギー、外交・安保面で自民党と大差の無いものとなった。
聞いたところでは、「核廃絶」すら削除されたという。
原発についても、「原発の新増設を行わずに速やかな停止と廃炉決定を目指す▽地元合意がないままの再稼働は認めない」では、現在の政府の実情を追認しただけになってしまう。現実に原発の新増設はほぼ不可能になっているからだ。

最終的に自民党との違いとなるのは、選択的夫婦別姓と同性婚というリベラリズム独自の課題であり、その選択的夫婦別姓ですら自民党内で導入を検討する動きがあるのだから、立憲を積極的に支持するのは同性婚を投票動機の上位に挙げるものという話になりかねない。
つまり、今回も立憲は「自民党の失敗」頼みでしか戦えない構図になっている。

実際、菅政権は腐敗を始め、五輪でもコロナ対策でも失政が続いており、半年以内に行われる選挙では「自民党に対するお灸」が据えられる可能性は十分にある。
それでも立憲の現有議席109に対し、120〜130に行けば「大勝利」というレベルであり、ケン先生的には現在の立憲が130議席を取るという図はイメージできない。
いずれ行われる政党支持率調査でも、立憲は7%にも至らないものと見られる。
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2021年04月07日

ワクチン無いのに証明書を出す日本

【ワクチン接種に電子証明書】
 政府は新型コロナウイルスのワクチン接種を済ませたことを示す電子証明書を発行する。海外への渡航者向けを念頭に、スマートフォンのアプリで管理できる仕組みを想定する。欧州連合(EU)などで域内の自由な移動を認めるための証明書を発行する構想があり、日本も対応を急ぐ。飛行機への搭乗時や海外で宿泊する際に提示を求められても対処できるよう国際標準に沿った規格とする。
(3月28日、日本経済新聞より抜粋)

打つべきワクチンはないのに証明書だけ発行しようとする日本政府。もはや完全にアネクドート。 

確かに中国でワクチンは「5000万回しか」打てていないのだが、人口が10分の1の日本では「50万回」だからねぇ。。。

有効率95%のアメリカ製を「年内に打てればヨシ」の日本と、有効率67%だが「6月までに全国民が打つ」ことを目標としている中国。
公衆衛生の行政ではなく、政治の論理で動いていることがよく分かる。
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2021年04月06日

聖火リレー「始まったら、もうやめられない」らしいですよ?!

【聖火リレー「始まったら、もうやめられない」 政府高官】
 菅義偉首相は25日午前、今夏の東京五輪・パラリンピックの開催について、「東京都、組織委員会、IOC(国際オリンピック委員会)と連携をしながら進める」と述べ、改めて開催に意欲を示した。首相官邸で記者団の取材に応じた。
 この日は福島県から五輪の聖火リレーが始まった。首相は「大会が近づいてきていることを国民に実感してもらえる貴重な機会だ。それぞれの地域において機運を高めてもらいたい」と語った。
 24日は東京都で新型コロナウイルスの感染者が1週間ぶりに400人を超えるなど、緊急事態宣言の全面解除後、全国的なリバウンド(感染再拡大)の懸念が高まっている。首相は五輪開催への影響について問われ、「対策には万全を期し、それぞれの地域と連携しながら感染拡大防止を徹底し、安全安心の大会にしていきたい」と述べた。政府高官は「開催が前提だ。聖火リレーが始まったら、もうやめることはできない」と話した。
 首相は「国会の日程などを総合的に勘案」などの理由で、聖火リレーの出発式への参加を見送った。
(3月25日、朝日新聞)

「艦隊が単冠湾を出てしまった以上、今さら止められない」みたいな話になっているぞ。

橋本会長は橋本会長で、「人生のすべてをかけて、今までオリンピックと共に生きてきた」人間として東京五輪をやり遂げる、と宣言している(3.25、テレ朝)。

やることが自己目的化して、やった後のことややってどうなるかについては全く考慮しない統治者。
またぞろ「一億総懺悔」で終わるのだろうか。
まぁ終わらせない工作のために私も中国に来ているのだが、準備が終わる前に帝政の瓦解が始まりそうな。。。
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2021年04月04日

累計100万回か総人口の0.8%か

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「チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は」(日本経済新聞社)より

「ワクチン接種が累計100万回を超えた」とは叫ぶが、「総人口の0.8%」とは言わない政府とマスゴミ。

霞が関や永田町の連中によれば、「東京五輪はコロナ克服の象徴」らしいから、ワクチン無しでも勝利を確信しているのであろう。
代議制民主主義とキャリア官僚制の成れの果てというところか。

試験成績でエリート行政官僚を選び、大衆の選挙によって政治エリートを選出して統治を代行させるという統治モデルが、陳腐化しつつあるという証左であろう。
能力的に優秀な学生は官界を避け、「試験は得意」なものばかりがキャリアとなる一方、「大衆による選挙」とは名ばかりで、現実には投票率50%の半分弱の得票で当選できる仕組みであるため、政治家の選抜基準は「どれだけ選挙が上手いか」となっている。実際には、選挙区で酒を飲んだ量で決まる。そのため、女性議員が圧倒的に少なくなっている。

問題はそれに変わる統治形態が見えてこない点にある。
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