2019年07月30日

アメリカで死刑再開

【米連邦政府、死刑執行を16年ぶり再開へ】
 ウィリアム・バー(William Barr)米司法長官は25日、連邦政府が16年間にわたり停止していた死刑執行の再開を決め、殺人罪で有罪となった死刑囚5人の刑執行日を設定したと発表した。
 死刑執行の再開は、暴力犯罪に対する処罰の厳格化を求めたドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の要請に応じた形。バー氏は米連邦刑務所局(Federal Bureau of Prisons)に対し、死刑執行の再開に向け、薬物注射による刑執行の新手順制定を指示した。バー氏は声明で「司法省は法の支配を守る。われわれには、犠牲者とその家族のために、司法制度が言い渡した刑を執行する義務がある」と説明した。
 米国では昨年25件の死刑が執行されたが、これらはすべて州レベルで有罪となった死刑囚に対し州当局が執行したものだった。一方、連邦レベルの死刑囚については、執行方法や使用薬物をめぐる議論や、バラク・オバマ(Barack Obama)前大統領の消極的姿勢により、2003年を最後に刑が執行されていなかった。
 米NPO「死刑情報センター(Death Penalty Information Center)」によると、米国には連邦レベルの死刑囚が62人おり、この中には2013年に3人が死亡したボストン・マラソン(Boston Marathon)爆破事件で有罪判決を受けたジョハル・ツァルナエフ(Dzhokhar Tsarnaev)死刑囚や、2015年にサウスカロライナ州チャールストン(Charleston)の教会で黒人9人を殺害した白人至上主義者のディラン・ルーフ(Dylann Roof)死刑囚が含まれている。
 連邦刑務所局はバー氏の指示を受け、5死刑囚の刑執行日を設定。5人はいずれも、被害者に子どもが含まれる残忍な殺人事件で15年以上前に死刑判決を言い渡されていた。
(7月26日、AFP)

自由貿易と自由・人権は冷戦期から現在に至るまで西側自由陣営の正当性を示すイデオロギー的根幹だった。
死刑廃止についても、不完全ながら人権擁護の象徴の一つで、EUにおいては加盟の条件にすらしたほどだった。
この点、死刑を人道的制度(少なくとも人道には反しないという理解)とする日本政府は例外的存在であり、その根拠の一つは「(宗主国である)アメリカで廃止されていないから」だった。
あのロシアですら、欧州評議会への参加を理由に、1996年以降、死刑の執行を停止している(日本では意図的に報道されないが)。

アメリカにおいて、まして連邦レベルで死刑を復活させるということは、保護貿易の推進とともに自由民主主義の自己否定でしかない。
アメリカは、自らの意思で自らが掲げてきたイデオロギーを否定しつつあるが、これはソ連が社会主義を否定するのと同じことであり、社会と政治制度の根幹理念を否定するものとなろう。
その影響は当然日本にも及ぶと考えられ、司法行政の非人道化・権威主義化が加速するものと推測される。
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2019年07月15日

ジョージア問題でも反露報道?

【露 ジョージア直行便運航停止 抗議運動に対抗】
 ロシアは8日、自国に対する抗議運動が続くジョージア(旧グルジア)との間で直行便の運航を停止した。更にロシア議会がジョージアへの制裁を検討するなど、両国間で緊張が高まる恐れも出ている。
 ジョージアでは6月中旬、ロシアの下院議員が国会議長席で演説したことがきっかけとなり、現政権がロシアへ融和的だとの批判が広がり、抗議運動も始まった。直後からロシアは自国民の安全確保を理由にして、直行便を停止する方針を警告していた。
 両国は2008年に武力衝突し国交を断絶した。ただし国民の往来は活発で、年間100万人を超すロシア人が主に観光目的でジョージアを訪れている。ロシアはジョージアの観光業を揺さぶり、抗議運動を断ち切りたい狙いとみられる。
 一方でジョージアのテレビ局では7日、司会者がプーチン露大統領を侮蔑する発言をした。ロシア下院は自国がジョージア産ワインの主要輸出先である点を踏まえ、禁輸措置を検討。多くのジョージア人がロシアに出稼ぎに来ていることから、ジョージアへの送金停止も提言した。ただしプーチン氏は9日、侮蔑への報復制裁には反対する考えを示した。
 ロシアは08年にジョージアと武力衝突した後、同国内の南オセチアとアブハジアに軍を駐留させている。一方、ジョージアでは現与党「ジョージアの夢」が12年に実権を握って以来、ロシアへの敵対的な政策は影を潜めた。そのためジョージア国内では現政権とロシアへの不満と反発が募っている。
(7月9日、毎日新聞)

記事の通り、ロシアーグルジア(ジョージア)間の緊張が高まっている。
問題はいつものことながら、マスゴミがポジション・トークを行い、公平性を自ら損ねている点にある。

ジョージアの大衆に反露意識が高まり、政府に対してより強硬な姿勢をとるよう街頭活動が繰り返され、現地のマスコミも煽り気味に報じている。
それだけにロシア人が観光気分でジョージアを訪れるのは危険であることは明白すぎるわけで、政府が直行便の運行停止措置をとるのは、国民の安全を図る上で当然すぎる話だ。にもかかわらず、「ロシアは自国民の安全確保を理由にして」という表現を使うことは、あたかもロシア政府が他に意図を秘めて、敢えて「自国民の安全確保」を表面的理由に据えているかの印象を植え付ける意図があるとみるべきだろう。ここは、平板に「ロシアは自国民の安全を確保するため」と書けば十分なはずだ。仮に他の意図があるにせよ、それは読者が判断すべきものであって、勝手に報道側が十分な根拠も無く書くべきことでは無い。

また、ネット報道では「プーチン氏は9日、侮蔑への報復制裁には反対する考えを示した」とサラッとではあるが、大統領が経済制裁に反対の意思を示したことが書かれているが、7月10日の本紙朝刊にはこの部分が削除されているという。
現実には、ロシア下院でジョージア批判が高まり、全会派が対ジョージア経済制裁の導入を支持。これに対して、プーチン大統領は、「ジョージア国民に対する敬意」を理由に挙げつつ、ジョージアに対する経済制裁に反対を表明している。
Я бы не стал этого делать именно из уважения к грузинскому народу", − сказал глава государства журналистам.
(7月9日、ノーヴォスチ通信)

プーチン氏が反対したことを書かなければ、ロシアージョージア関係が「行き着くところまで行く」と読者に判断させることになるだろう。

日本のロシア報道は意図的に虚偽報道あるいは事実の隠蔽が行われているが、外務省の指示なのか、あるいはマスゴミ側の忖度なのか。いずれにしても、日本の報道は全く信用ならない。
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2019年06月24日

今度は機械翻訳?外信は仕事しろ!

【北方領土引き渡す計画なし=首脳会談前にけん制−ロシア大統領】
 ロシアのプーチン大統領はロシアが実効支配する北方領土について、日本側に引き渡す計画はないとの認識を示した。国営テレビが22日放映のインタビューの内容をサイトで公開した。
 最近、取材で現地を訪れたという質問者が「子供たちはロシア国旗を掲げていた。(今後ロシア国旗を)降ろさざるを得ないということはないか」と聞くと、プーチン氏は「そのような計画はない」と応じた。
 大阪市で開かれる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせ、29日に予定される日ロ首脳会談を前に日本側をけん制したと言えそうだ。
(6月22日、時事通信) 

【Путин заявил об отсутствии планов передачи Южных Курил】
Москва. 22 июня. INTERFAX.RU - Россия не намерена передавать Южные Курилы, заявил президент РФ Владимир Путин.
"Таких планов у нас нет", - сказал он в интервью программе телеканала "Россия 1" (ВГТРК) "Вести в субботу с Сергеем Брилевым", вышедшей в эфир на Дальнем Востоке.
Так Путин ответил на вопрос, не придется ли спускать российский флаг, поднятый на Южных Курилах.
Глава государства подчеркнул, что правительство намерено развивать эти территории.
"У нас существуют целые большие программы развития Дальнего Востока, включая Южные Курилы, - отметил президент. - Эти программы будут реализовываться - и по развитию экономики, рыбной отрасли, других составляющих. Мы будем развивать там инфраструктуру".
Япония претендует на четыре южных острова Курильской гряды - Итуруп, Кунашир, Шикотан и Хабомаи, ссылаясь на Трактат о торговле и границах 1855 года. Позиция Москвы состоит в том, что Южные Курилы вошли в состав СССР по итогам Второй мировой войны и российский суверенитет над ними, имеющий международно-правовое оформление, сомнению не подлежит.
В феврале этого года ВЦИОМ проводил опрос жителей на островах Кунашир, Шикотан и Итуруп, задавая им вопрос - должна или не должна Россия, по их мнению, передать Южные Курилы Японии. По данным организации, подавляющее большинство людей заявили, что острова, на которых они живут, должны оставаться территорией России.
(6月22日、インテルファクス通信)

プーチン大統領が「そんな計画は無い」と言っているのは、「(南千島の子どもたちが)ロシア国旗を掲げるのをやめざるを得なくなるのか?」という記者に対する質問に対する答えである。
「平和条約締結を締結して、条文通りに北方領土を引き渡す」云々については、全く触れていない。
これは明らかにマスゴミがプーチン氏の発言の述語を恣意的に解釈して報道している。

まして「29日に予定される日ロ首脳会談を前に日本側をけん制したと言えそうだ」など何の関係も無い。
報道ベースは、日本で言えばタレントがやってるユルユルの「なんちゃってニュース」番組であり、普通にロシアに住んだことのある人間なら「国内向けのサービスね」と思う話で、真面目に受け取る方がおかしい。
言うなれば、安倍首相がY本芸人の出演する番組で発言したことを、恣意的に解釈して大々的に報道するようなもので、正規の訓練を受けた報道人が行う報道とはとても思えない。

時事も共同も幹部と記者を総入れ替えした方が良いのでは無いか?

【6月26日、追記】
肝心なことを書き忘れてたが、「旗を降ろす」云々の話は択捉島の小学校を例にした話。徹頭徹尾「平和条約締結後に二島引き渡し」を主張するソ連・ロシアが、「択捉島でロシア国旗を降ろし、日本国旗を掲げる」計画などそもそも立てるわけも無く、プーチン氏も「何を馬鹿げた質問を」くらいにしか思っていないだろう。
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2019年06月21日

フランスで引き込もり対策に志願奉仕制度?

【仏、16歳の制服集団生活「国民奉仕」を試行 応募は定員の倍以上】
 フランス政府は16日、15〜16歳の約2千人を対象に「国民奉仕制度」を試験的に開始した。集団生活を通じて、国民意識を高めるのが狙い。テロや災害に備えた危機対応教育も行う。
 参加者は2週間、制服で合宿生活し、武器を使わない軍の野外訓練、福祉施設での奉仕活動や救助訓練に従事する。朝は国旗に敬礼し、国歌を斉唱。夜は討論会に参加し、社会の課題を話し合う。携帯電話の利用は夜の自由時間に制限される。
 制度導入は昨年、マクロン大統領が提唱した。今回は任意だが、2千人の定員に約5千人が応募したという。国民教育省のアタル副大臣は16日付仏紙で「若者は自宅にこもりがち。未知の世界で人格形成する機会を持つのは重要だ」と意義を訴えた。
 政府は、来年は参加者を4万人に増やし、2026年までに16歳以上の国民を対象に、参加を義務付ける方針。実現すれば参加者は毎年約80万人で、約15億ユーロ(約1800億円)の経費がかかるという。
(6月17日、産経新聞)

仏大統領選の結果を見て、「リベラル派の勝利」「若者に期待」などと言っていたフランス・クラスタは前に出ろ!

ケン先生の評価とどちらが正しかったかは、読者の皆さんの判断を仰ぎたい。
マ氏の政策は、オランド氏の新自由主義路線を加速させるだけの話で、基本路線は従来のものを踏襲している。その意味でル氏の敗戦の弁は正しい。新自由主義路線は、さらなる移民や外国人労働者を呼び込んで、国内の労働条件を悪化させ、経済格差や地方の疲弊を加速させる可能性が高く、同時にフランスのドイツ従属(欧州銀行への従属)を強める結果にしかならず、「反EU」「排外主義」「保護貿易」支持層を増やすのは間違いない。EUというのは、域内での経済的自由を保障する一方で、地域の経済的自立を保障せず、かといって日本の地方交付金のような域内の格差を是正するシステムも無いだけに、圧倒的に「強い者が勝つ」システムで、敗者を救済する術を持たない。
つまり、「親EU」のマクロン氏の政策は、「敗者」を増やすと同時にフランスが弱者を救済する術を持たない(経済自律性の放棄)ことを宣言するものであり、構造的に「反EU」の支持層が増える形になっているだけに、ルペン氏は勝負を急ぐべきでは無かった。
(フランスは今日もグダグダ、2017.5.11)

仮に為政者が歴史に学んでいても、国民の熱狂に抗して冷静を保つよう訴えるのは難しい。国家権力は、暴力の独占によって成り立っているが、その暴力は国民の生命と財産を守ることを前提としている。言い換えれば、国家は暴力装置を独占する権利を有する代わりに、国民を保護する義務を負っている。故に、テロルによって国民が害されると、国家は義務を怠ったことになり、権力の正統性が揺らぐことになる。結果、国家は暴力を行使してテロルを弾圧するほかなくなるわけだが、弾圧対象をテロリストだけに絞るのは難しく、社会全体に対して統制が強化されることになる。監視カメラ設置を支持する国民が圧倒的に多いことに象徴されるように、国民も統制強化と暴力行使を望む傾向が強まる。
(フランスも社会統制強化へ、2017.7.9)
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2019年06月18日

ランド・パワーvs.シー・パワーの時代へ

【中ロ、上海機構で米けん制 インドと連携、多国間主義強調】
 中国、ロシア、インド、パキスタンと、中央アジア4カ国で構成する上海協力機構(SCO)は14日、キルギスの首都ビシケクで首脳会議を開いた。米国との対立を深める中ロ両国は、主導するSCOの枠組みでインドなど加盟国との連携を国際社会に誇示。多国間主義を強調し、保護主義的な政策を取る米国をけん制した。
 中国の習近平国家主席は演説で、米国の通商政策を念頭に「多国間主義と自由貿易を促進し、国際秩序を公正で合理的な方向に発展させなければならない」と指摘。SCO諸国に「共同で世界の平和や繁栄の促進に努力すべきだ」と協調を求めた。
(6月14日、共同通信)

冷戦期の対立は、シーパワーをもって世界支配を目指す自由主義陣営と、ランドパワーをもって対抗しようとした共産主義陣営の戦いだった。しかし、共産主義側はその閉鎖性からランドパワーの優位性を生かすことができず、それどころか内部分裂し中ソ対立に発展、互いの資源と市場の優位性を生かすことなく、ソ連崩壊を迎えた。
ソ連崩壊を経て、自由主義が世界を支配するという見方が一時期広まったものの、一度たりとて実現すること無く、むしろ中国が権威主義体制のまま米国に次ぐ経済規模を実現、十年後には米国を追い越す勢いにある。これに対して、自由主義陣営ではまず盟主たるアメリカが自由貿易の理念を放棄、欧米日などの各国ではデモクラシーが機能不全に陥りつつあり、階級対立を先鋭化させている。ソ連崩壊によって自由主義陣営に取り込まれた旧東欧諸国では、権威主義体制が復活しつつあり、日本でも権威主義への移行が進行しつつある。つまり、自由主義陣営とは言いつつも、内実は非常に厳しいものになっている。

インドは冷戦期にあっても、ソ連寄りの中立を保ち、ソ連崩壊後は米国寄りの中立となったが、印パ対立もあって自由主義陣営に参画するには至っていない。基本的には非同盟主義を伝統としているわけだが、そのインドも中露寄りの中立に移行しつつあるように見える。
インド経済の先行きを考えれば、ロシアの資源と中国の市場は不可欠であり、中印対立は互いにとって得るところが薄すぎるし、いまさら米英から利益が得られるようにも思えない。やはり中露寄りの中立に傾いていくのだろう。

日本の自民党はこの流れを肌では理解しているが、これまでの主張や利害関係があって、そう簡単に転換できるわけでは無い。霞が関は「日米同盟」の買弁状態にあるため、「日米同盟は日本の生命線」と考えている。この点もあって、安倍首相は内閣人事局をつくって官僚統制の強化に乗り出していると考えられるわけだが、見た感じでは必ずしも上手くいっていない。
何か結論があるわけではないが、今後も(中国から)観察していきたい。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月17日

ソ連学徒から見たXG問題

私の立場ではセンシティブな問題になかなか触れられないのだが、表現を抽象的にしつつ、見解を述べてみたい。
アップできれば「OK」ということである。
日本では在野は「がんばれ」と盛り上がっているようだが、政府や政党は静観の構えを見せている。この時点で、非常に微妙な問題であることがわかる。本質的には内政問題だからだ。
ケン先生としては、ソ連学徒らしく、ソヴィエト学を踏まえて論評したい。以下参照。

「プラハの春」−ソ連の対応と誤算
「プラハの春」とカーダールの苦悩

「プラハの春」は、チェコスロヴァキア内部で発生した経済改革の流れが制御不能に陥り、内部分裂を引き起こした結果、ワルシャワ条約機構の介入を招いたものだった。これが自由主義史観では、「民主化を求める市民をソ連が暴力を以て弾圧した」という理解になり、今日に至っている。しかし、自由主義史観から得られるものは殆ど無い。

今回の件も同様で、「権威主義を否定する市民が抵抗」というのは問題の一側面でしかない。
また、抵抗運動が統制不能に陥り、あるいは自治政府を倒壊させるなどした場合、武力介入を招く恐れがあるということだ。ソ連学を学ばなかった者、あるいは自由主義史観に染まっている者の見方は非常に一面的で危険である。

そもそも今回の騒乱の原因は、本土で犯罪や汚職を犯して逃亡する者が後を絶たず、それが悪い例となってさらに増え続けているため、問題となった条例案の提出に至っていることにある。
言うなれば、植民地時代の租界と同じ構図だ。

本土人からすれば、「高度な自治」を認めていること自体、植民地時代の汚辱なのである。
そもそも欧米列強が武力と恫喝によって強奪した領土を返還するのに、「高度な自治」の条件が付けられ、それを飲まざるを得なかったほど「弱かった自分」に対するコンプレックスもある。

さらに言えば、返還当初は本土に無い機能を有していたが、いまや港湾システムにしても金融システムにしても本土内で代替可能であり、経済的価値は非常に低下している。逆に犯罪者の逃亡先や不法取引の温床としての「租界」としての機能が相対的に強まっており、治安関係者やイデオロギー担当者からすれば、「諸悪の根源」に見えつつあるという現実がある。
つまり、「経済的価値が高いから」という実利から「目こぼし」されていたものが、今や実利が失われてタダの「腐臭の元」になってしまっているのである。

「プラハの春」や「ポーランド危機」の時もそうだったが、自由主義陣営の介入は無いという判断もある。
米中は貿易戦争の真っ只中にあり、改善の気配も無く、ロシアと中東問題で手一杯のアメリカに配慮する必要はどこにもない。
日本経済は中国市場なくしては成立しえない状況にあり、内政問題に介入して対立を起こす勇気は無い。
つまり、武力行使に対する意思決定のハードルは、むしろ「プラハの春」時よりも低いと考えられる。

当局は静観の構えを見せているが、それも「プラハの春」と同じで、自治政府が自分で対処できるなら「その方が望ましい」というだけで、日本国内で言われているような「民衆の勝利」ではない。この点は、まだ確認取っていないが、自治が制御不能な事態に陥ったり、あるいは「分離独立」などという主張が強まったとき、武力行使を躊躇することは無いであろう。ただ、当局も「最後の最後の手段」と見なしているためで、「プラハの春」時にもブレジネフに対して早期介入への圧力がかかったことを考えれば、今も当局内で激しい議論が交わされているやもしれない。

いわゆる中国クラスタの人たちが現象の分析に終始して、全体主義の構造や歴史を学ぼうとしないことは、愚かだとしか思えない。

【追記】
この問題についてはまだ殆ど他の人と話せていないのだが、わずかに聞いてみた感じでは、「このまま盛り上がりすぎるとヤバいのでは」という具合に概ね私と同意見だった。ソ連時代は、センシティブな話をするときは必ず「森に散歩」に行ったものだが、それに比べれば今の中国はユルユルである。
1956年のブダ=ペストも1968年のプラハもそうだったが、「まさか〜するはずがない」「西側が助けてくれるはず」という楽観主義と「弾圧者が攻めてくるから戦おう!」「自由か死か!」などといった市民煽動が統治不能状態を招くことは、歴史上ままあることで、それは結果的に悲劇しか生まない。そのスタンスは、フランス革命やロシア革命を無批判に称賛するのと同じくらい愚かなことである。
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2019年06月06日

有事作戦統制権が韓国軍へ移管

【有事作戦統制権 韓国軍大将が行使へ=韓米国防相会談で合意】
 韓国と米国の国防部は3日、米軍主導の韓米連合軍が持つ有事作戦統制権の韓国軍への移管に伴い、作戦統制権を行使する「未来連合軍司令官」に韓国軍大将を任命することを決めた。
 また、ソウル・竜山の米軍基地の移転により、韓米連合軍司令部本部をソウル南方、京畿道平沢の米軍基地キャンプ・ハンフリーに移転することで合意した。
 韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官と米国のシャナハン国防長官代行はこの日、ソウルの国防部庁舎で韓米国防相会談を開いた後、このような会談結果を盛り込んだ共同報道文を発表した。
 両氏は下半期に合同演習を行うことで一致し、今後実施計画を立てるために協力を強化することにした。
 この合同演習は、韓国軍大将の主導で8月に「19―2同盟」として行われる合同危機管理演習(CPX)とみられる。韓米両軍の定例合同指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン」(UFG)に代わるこの演習では、韓国軍の作戦統制権行使能力を評価する初の作戦運用能力(IOC)検証が行われる。 
 国防部は「鄭長官とシャナハン代行は最近の朝鮮半島の安保状況の評価を共有し、朝鮮半島の完全な非核化と平和定着のための両国の外交的努力を支えていくという公約を再確認した」とし、「北の短距離ミサイル発射について憂慮を表明し、北の核・ミサイル活動に対する情報共有を含め、さまざまな分野で緊密な協力を強化していくことにした」と説明した。
 今回の会談は4月に米ワシントンで行ったのに続き2回目となる。シャナハン氏の韓国訪問は1月の就任後初めて。
 シャナハン氏は会談前の冒頭発言で「われわれは相互間の安定に挑戦する北朝鮮の全ての活動を監視していく。われわれの戦略は完全な準備を備えていると考える」とし、「北朝鮮が国際社会が求める規範と規則を責任を持って順守するまで、制裁を徹底的に履行していく」と述べた。
 鄭氏は「昨年9月に結んだ南北軍事合意の履行は、朝鮮半島に軍事的緊張の実質的緩和と南北間の信頼構築のための基盤を提供してくれた」としながら「国防部はこのような基盤をさらに強固にするため、南北軍事合意を引き続き履行し、今年計画された合意事項が支障なく進められるように諸般の準備を続けていく」と説明した。 
(6月3日、聯合ニュース)

どうせ日本じゃロクに報道されそうにないから、載せておこう。
いわゆる「不都合な真実」であろう。
ま、日本のブンヤには意味するところも分からないんだろうけどね。
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