2018年10月13日

強気すぎ、かつ自由主義の権化と化した中国?

【中国、関税再び下げ 11月に機械や紡績品など1585品目 】
 中国の国務院(政府)は26日の常務会議で、11月から関税を引き下げることを決めた。対象は機械類、紡績品、紙製品など1585品目。引き下げにより、平均関税率は2017年の9.8%から7.5%まで下がる。関税下げは18年7月につづく措置。米国が保護主義を強めるなか、中国は逆に関税を下げて自由貿易を守る姿勢を訴える。
 関税下げの方針は李克強(リー・クォーチャン)首相が9月の夏季ダボス会議での講演で表明し、今回正式に決定した。関税下げ対象の1585品目のリストは公表していない。
 主な分類ごとの平均関税率をみると、工作機械など機械類は12.2%から8.8%に、紡績品や建材は11.5%から8.4%に、紙製品などは6.6%から5.4%にそれぞれ下がる。
 中国は7月にも日用品など1449品目を対象に関税を下げており、大規模な引き下げは今年に入って2回目。18年の一連の引き下げにより、企業や消費者の関税負担は600億元(約1兆円)減るとしている。中国は17年12月にも日用品などの関税を下げており、直近1年間で3度目の大規模な引き下げとなる。
 中国が関税を下げるのは、保護主義を強める米国に対抗する狙いだ。米中は7月以降、お互いに追加関税を発動しあっている。現在までに米国は計2500億ドル分、中国は計1100億ドル分の製品に関税を上乗せした。追加関税の応酬で打撃を受けた国内製造業などを支援する狙いもある。米国以外からの設備輸入にかかる関税を下げ、負担を減らす。
 トランプ米大統領は中国の平均関税率が米国よりも高い点を「不公平だ」と批判する。積極的に関税率を下げて批判をかわす狙いもありそう。自由貿易を守る姿勢をみせ、欧州連合(EU)や日本が米国と結束して中国に圧力をかける事態を避けたい考えだ。
一連の関税引き下げでは紙おむつ、炊飯器、しょうゆ、化粧筆など日本企業が強みを持つ商品も対象になった。日本企業にとっても中国市場を開拓する機会が広がりそうだ。
(9月26日、日本経済新聞)

【中国全人代、個人所得税法の改正を承認】
 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は31日、個人所得税法の改正を承認し、基礎控除額を月額3500元から同5000元(732.02ドル)に引き上げた。国営メディアが報道した。人民日報によると、納税者は子どもの教育、住宅ローン金利、家賃、重病の治療費に関連した費用の控除も可能になる。改正は来年1月に施行されるが、基礎控除の引き上げは今年10月1日に発効するという。
 財政次官は記者会見で、所得税法の改正案により、消費が大幅に押し上げられる一方、税収は年間で約3200億元減少すると述べた。財政省関係者によると、法改正後に納税者数が減少する見込み。都市の労働人口における納税者の割合は現在の44%から約15%に減少することが予想されるとした。中国国営の新華社によると、劉昆財政相は6月、個人所得税法の改正により、低・中所得者層を中心に全ての納税者に程度の差はあれ減税をもたらすとの見方を示していた。中国中央テレビ局(CCTV)の報道によると、月額の給与額が約1万元(1463.55ドル)の納税者は、税負担が70%減少する。
(8月31日、ロイター)

いや、中国強気すぎだろ〜〜
関税下げます、所得税下げます、では、一体どこから税を取るんだよって話。すべて経済成長頼みで、どこかギャンブルに勝ちまくってタガが外れかけている賭博師を思い浮かべてしまう。
まぁ脱税とか法人税に対する監視を強化しているようではあるし、将来的には資産課税を視野には置いているようだが、まだまだ先の話のようだし。
中国の税制は少し独特で、西側諸国では税収の4分の1前後を占める所得税の割合が、中国では5%ほどしかない。そして税収の中で最大は流通と消費に掛けられる「流通税類」が4割を占める。その後、法人税と関税がくるわけだが、法人税率は25%で、むしろ低い部類に入る。ただし、消費税は高く標準税率は17%で、そこから税率軽減がなされる仕組み。

中国はバブルが一段落して、消費低迷期に入りつつあると言われているだけに、米中貿易戦争の手前もあって、内需拡大に大きくスタンスを切り替えつつある。これらはそれを象徴する政策であるわけだが、ひとたび不況になった場合、極端に税収が落ち込むこと、また貧富の経済格差が拡大する恐れを抱えている。
本来は非常に自由主義の権化とも言える政策であり、社会主義国のものではない。だが、アメリカが保護主義を採る一方、中国が自由貿易を訴え、所得減税を行うという事態をどう説明するのか。是非とも西側自由主義史観の学者に問いたいところである。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月11日

またぞろロシア関連で不正報道

【プーチン大統領、支持率39%に急落 14年以降で最低、年金改革に不満】
 ロシアの独立系調査機関レバダ・センター(Levada Centre)が8日公表した最新の世論調査によると、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に対する一般国民の支持率が39%まで落ち込んだ。国民の間ではプーチン政権が断行した年金改革への不満が広がっており、ウクライナ南部クリミア(Crimea)半島併合で支持率が急伸した2014年以降で最低となった。
 調査は9月20〜26日に実施。プーチン氏の支持率は今年6月以降に9ポイント落ち、2017年11月に比べると20ポイントも下落している。プーチン氏を信頼しないと答えた国民も13%に上った。プーチン氏は先週、年金の支給開始年齢を男性は65歳、女性は60歳に段階的に引き上げる法案に署名した。ロシアで年金支給開始年齢の引き上げは、旧ソ連時代の1930年代にさかのぼる現在の年金制度史上で初めて。大半のロシア国民は年金改革に強く反対しており、路上での抗議行動も起きている。
(10月9日、AFP)

AFPも相当にひどい報道している。
確かにレヴァダセンターは同様の世論調査を行ったが、それは「プーチンを支持するか」ではなく、「政治家として信用できるのは誰か(複数回答可)」だった。ロシア語だけだが、そのまま結果を転載する。

ноя.17 июн.18 сен.18
Путин В. 59 48 39
Жириновский В. 14 14 15
Шойгу С. 23 19 15
Лавров С. 19 14 10
Медведев Д. 11 9 10
Зюганов Г. 10 7 8
Грудинин П. – 7 4
Собянин С. 3 4 4
Навальный А. 2 2 3
Миронов С. 4 2 2
Не интересуюсь политикой 1 1 1
Нет таких 14 21 18
Затрудняюсь ответить / не знаю / нет ответа 11 12 18

確かにプーチン氏は急落していると言えるが、他の主要政治家も支持を下げており、「信用できるものはいない」「無回答」が増えただけのことだ。ジリノフスキーの支持15%は微妙すぎるが。
「プーチン氏を信頼しない」云々についは、以下の通り。

ноя.17 июн.18 сен.18
Медведев Д. 19 30 31
Жириновский В. 18 18 20
Путин В. 7 11 13
Зюганов Г. 11 8 11
Явлинский Г. 11 9 4
Собчак К. 14 15 4
Навальный А. 10 6 3
Миронов С. 4 2 3
Набиуллина Э. 1 1 2
Кудрин А. 3 3 2
Матвиенко В. 2 3 2
Голикова Т. <1 2 2
Чубайс А. 2 3 2
Силуанов А. 1 – 2
Всем не доверяю 7 7 8
Не интересуюсь политикой 1 1 2
Нет таких 3 7 5
Затрудняюсь ответить / не знаю / нет ответа 32 23 28

メドヴェージェフとジリノフスキーが「最も信用できない政治家」であって、二人に比べれば、プーチン氏は現職大統領としては相当に信用されている方だろう。

では肝心の「プーチン大統領を支持するか」といえば、同社の9月の調査で支持67%、不支持33%と出ている。無回答などを含めないので、非常に明確と言える。これも昨年12月の支持82%に比べれば、かなり低下しているといえるものの、年金受給開始年齢を引き上げて支持率を下げない政治家などいるはずがない。逆に、ロシアの政治が正常に機能していることの現れとすら言える。

どうやらマスコミのマスゴミ化は日本だけの話ではないらしい。
posted by ケン at 12:00| Comment(7) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月09日

中国から見た中米貿易戦争

【米中外相が会談、貿易や外交問題で非難の応酬】
 中国を訪問したポンペオ米国務長官と王毅国務委員兼外相は8日、北京で会談した。会談の冒頭で行われた共同会見では、米中の外相が両国の協力の重要性を強調する一方で、貿易戦争や台湾などの問題について公の場で非難し合うという異例の展開となった。
王氏は、「米国は最近、中国との貿易摩擦を激化させており、台湾問題で、中国の権益を損なう行動を取り、中国の内外政策について根拠のない批判を繰り広げている」と強調。「これはわれわれの相互信頼に対する直接的な攻撃で、米中関係に影を落としている」と指摘。その上で「米国にこうした誤った言動を直ちに止めるよう要求する」と抗議した。
中国外務省の声明によると、王氏は、台湾への武器売却をやめ、公式訪問や軍事的連携も断ち切るべきだと主張した。
ポンペオ氏は、王氏が説明した問題について、米中間に「根本的な意見の不一致がある」と述べ、「中国が取った行動を非常に懸念しており、それぞれの問題をきょう協議する機会を持てることを楽しみにしている。米中関係は非常に重要な関係だ」とコメントした。
ペンス米副大統領は4日、11月の米中間選挙を控え、中国があらゆる手段を講じ、米国に内政干渉していると非難した。
ポンペオ氏は中国の外交担当トップ、楊潔チ共産党政治局員とも会談した。一方、習近平国家主席とポンペオ氏の会談は見送られた。
(10月9日、ロイター)

 今回の中国赴任に際しては、有力な在日華人の推薦があったため、現地のインテリ層と予め交流パイプを持っていることが強みになっている。いかんせん初年度は講義ノートの作成に追われてしまって、なかなか時間が取れそうにないのだが、それでも意見交換する機会は大事にしている。
 赴任して一ヶ月なので、「まだまだこれから」としか言いようはないのだが、何度か意見交換した中で、現地の学術エリート層が中米貿易戦争をどのように捉えているかについては、私も主要な関心事であったし、私が聞かずともやはり議論のテーマに上がることが多かった。早く自分も議論の大まかな内容くらい理解できるようになりたいところだ。

 ケン先生が得た感触としては、中国のエリート層は西側で報じられているほど動揺していない。米欧日の報道では、米中貿易戦争に中国側が過剰に反応して、大騒ぎになっているような話になっているが、少なくとも国際関係、安全保障、国際経済などの研究者の間には動揺は見られず、大きく構えていると言って良い(例外もいるが)。

 中国側としては、ある程度のところ「織り込み済み」な話で、それは1980年代の日米貿易戦争を見ているだけに十分予測可能なことだった。それもあって、中国側では内需拡大と一帯一路によるユーラシア・内陸開発を進める政策を採っている。
 中国は、対米輸出を規制されたとして当面は苦しいかもしれないが、他に販路を求めるだけで、国際競争力は維持できると踏んでいる。これに対して、アメリカは中国政府と中国人による米国債の購入が止められると打つ手が無くなってしまう。結果、長期米国債の金利が上がり、現在でも政府の閉鎖と再開を繰り返している連邦政府は遠からず財政破綻するだろう。
 また、中米貿易の減少と代替貿易の加速は、ドル決済の減少に直結、天然資源のドル決済減少も相まって、ドルの価値が低下、金融危機が近づいてくる。これらの被害を最大限受けるのは、日本でしか無い。だからこそ、中国は日本に一帯一路やAIIBへの参加を呼びかけているが、外務省の反対が強すぎて上手く行く気配は無い。

 中国人は概ね楽観的だが、ケン先生的には厳しいと感じるところもある。中国国内は、少しずつ景気が悪化する傾向にあると言われている。私は来中したばかりなのでその実感は無いが、どうやら1990年代の日本と同じで、「欲しいもの」は概ね手に入れてしまったので、消費が一段落している状態なのかもしれない。ただ、とにかく日本の10倍の人口がおり、そのスケールメリットから見えにくいし、問題の進行が遅い。
 言えるのは、明らかに供給が過剰な状態にありながら、日本のようにデフレが進んでいるわけでもなく、物価はまだまだ上昇傾向にあるということだ。中国政府は、ただでさえ低く設定されている個人所得税を、実質的にさらに低下させる措置を講じて、国内消費を喚起する方針だが、他方でインフラ整備を中心にさらなる供給強化を進めており、その強気すぎるスタンスには大いに疑問を覚えている。この点、誰かにじっくり疑問をぶつけてみたいと思っている。
posted by ケン at 12:04| Comment(5) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月05日

社会主義中国の乞食

一ヶ月中国に住んでみて、驚いたことの一つに「乞食がいる、そして認められている」ことがある。
これまで見た限り、フランスなど欧州に比して数として多くはないが、地下鉄の通路や公園でそれなりの頻度で見かける。今のところ高齢者しか見ていない。

ケン先生がこれまで居住したことのある国で言えば、フランスが最も多く、20代の乞食も少なからず見かけた。この点だけでも色々な意味で「いかがわしい」という印象を抱いている。次のロシアで、これもそれなりに多い。現在は社会保障制度が再整備されつつあるので、また少し違うかもしれない。

しかし、中国は現在も社会主義の旗を掲げており、街中いたるところでそのスローガンを見かけるが、同時に乞食が徘徊している図は何ともシュールである。1990年代初頭に中国に留学していた同志によれば、「昔からいた」とのこと。
かつて、社会主義ポーランドで教えたことのある先生が、「地主と小作人が居ることに非常に驚かされた」と話しておられたが、同じ気分である。
この点、ソ連が凄まじかったのは、街中で物乞い行為をしている者が発見された場合、片端からしょっ引いていたことだった。基本的には、収容所に送るとかではなく、事情を聞き、相応の措置をとっていたようだが、その手法がいかにもロシアだった。
ソ連と比べると、中国はどこまでも「緩」く見えるのは、自分がソ連学徒だからかもしれない。

もっとも、中国の場合、ネット情報では「プロ乞食」もいるらしいから、色々カオスなのだ。そして、私がソ連時代のことを話すと、「いま中国でそんなことをすれば、人権問題になります」との答えが返ってくるのだから、ソ連学徒的にはますます面白くなってしまう。
posted by ケン at 11:39| Comment(3) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月25日

止むこと無き自由修正主義史観

【プラハの春「侵攻は正しい」 ロシア世論調査で3分の1】
 50年前の1968年8月に当時のチェコスロバキアにソ連軍などが侵攻し、「プラハの春」と呼ばれた民主改革を圧殺した事件について、ロシアの独立系世論調査機関「レバダ・センター」は21日、ロシアの回答者の3分の1が「侵攻は正しかった」とした調査結果を発表した。当時のチェコスロバキアの民主改革を「反ソ分子による政変」「西側による策動」と否定的にとらえる回答は計44%にも及んだ。
 「プラハの春」ではチェコスロバキアの共産党政権が自ら民主化を進め、「人間の顔をした社会主義」を目指した。しかし、ソ連など社会主義諸国からなるワルシャワ条約機構軍は68年8月20日深夜にプラハに侵攻。抵抗した多数の市民が犠牲になり、後に東欧革命が起きた89年にはソ連も当時の侵攻を誤りと認めた。
(8月21日、朝日新聞より抜粋)


これも意図的に事実を単純化、矮小化して報道する印象操作。ソ連、東欧側の内部文書が公開されて、日本でもそれなりに研究が進んでいるのに、いまだ50年前と変わらない自由主義史観に基づく報道は害悪でしかない。
ロシア駐在員にはソ連学を必修とすべきだ。

史実的には、「脱スターリン化」が進まなかったチェコスロバキア共産党が遅ればせながら改革を始めたところ、保守派、改革派、スロヴァキア独立派の三派に分かれて対立を深め、統制不能の事態に陥り、ソ連側の交渉にも殆ど応じなかったことに起因している。ソ連側はソ連側で同盟国からの介入要請を抑えながら、チェコ側とアメリカの反応を注視しつつ、非常に慎重な判断を下している。
「チェコスロヴァキアの民主化をソ連が軍事力で打倒した」などというのは、「日本の軍部が暴走して勝手に侵略戦争を始めた」というのと同じくらい有害な暴論である。

興味のある方は、私の研究を参照されると良い。

・「プラハの春」とカーダールの苦悩

・「プラハの春」−ソ連の対応と誤算 
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月12日

典型的な印象操作報道

【プーチン支持率、8割から3割に急落 いったい何が?】
 <プーチン独裁を支えてきた高い支持率が急落。W杯に紛れて年金支給開始年齢を引き上げようする指導者はロシア人もさすがに許せなかった>
ロシアでは政府の年金改革案に対する不満の高まりから、ウラジーミル・プーチン大統領の与党・統一ロシアの支持率が、2011年以来の最低水準に落ち込んでいる。
 ロシア連邦議会の最大勢力を誇る与党・統一ロシアの人気は、プーチンあってのものだった。だがサッカー・ワールドカップ(W杯)の開幕直前に年金受給開始年齢を引き上げる改革案を発表し、急いでそれを可決しようとする議会の動きが伝わると、あらゆる世論調査で統一ロシアとプーチンに対する支持率は急降下した。全ロシア世論調査センター(WCIOM)によれば、最新のデータでは、政府の改革案を最も強く推した統一ロシアへの支持率は、37%にまで下落。2011年に記録した史上最低の34.4%に非常に近い。
 プーチン政権に対する支持率低下はさらに激しく、31.1%だった。別の国営調査機関や独立系のレベダ・センターによる調査も、同じような結果になっている。今回の年金制度改革案では、年金受給開始年齢は男性が60歳から65歳、女性は55歳から63歳に、今後10年間で段階的に引き上げる。アメリカ主導の対ロシア制裁や西側との貿易の中断、2014年の原油価格の急落などで膨らんだ財政赤字を削減するためだ。
(8月1日、ニューズウィーク誌より抜粋)


典型的な世論操作報道。
年金支給年齢引上げ案によって低下したのは政権党である統一ロシアの支持率であって、大統領の支持率では無い。独立調査機関レバダセンターの7月の世論調査では、プーチン氏の支持率は67%と出ている。
言うなれば、安倍総理の支持率と自民党の支持率をまぜこぜに使って、都合良く印象操作するような話だ。
年金受給開始年齢は、ドイツでは67歳、フランスでは62歳へと段階的に引き上げられる途上にある。フランスのマクロン政権はこれをさらに引き上げようとして、大反発を受けている。ロシアだけが例外ではあり得ない。

米日において、ソ連、ロシア研究は本当に難しい環境にある。

posted by ケン at 00:00| Comment(2) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月27日

テロに賛同するリベラル

【決勝乱入者に禁錮15日=ロシアの反体制派バンド―サッカーW杯】
 15日に行われたサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会決勝で、ピッチに乱入して試合を中断させた男女4人に対して、モスクワの裁判所は16日、15日間の禁錮刑を言い渡した。向こう3年間のスポーツイベント訪問も禁じた。4人はロシアの反体制派パンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバー。フランスとクロアチアが対戦した決勝の後半、警察官のような服装でピッチに乱入し、取り押さえられた。その後、同バンドは政治犯の解放などを求める声明を出した。
(7月17日、時事通信)

ワールドカップ・ロシア大会の決勝戦で会場に乱入、試合を中断させたロックバンド「プッシー・ライオット」のメンバーが早々に処断されたことに対し、日本を含む西側諸国ではロシア政府に対する非難の声が上がっている。私の周囲にも、彼らを支持する者が意外と多く、そのダブルスタンダードぶりに、「やはりこの連中とは一緒に戦えない」と思っている。

リベラル派は「人権を弾圧する国で人権擁護を主張することは正義である」との主張をなしているが、それはサッカーの国際試合を妨害することを正当化させる理由にはならない。これが、ロシア連邦議会に乱入して審議を止めたというなら、まだしも行為の正当性が認められるかもしれないが、サッカーの試合を止めるのはただの自己宣伝に過ぎない。
これが認められるのであれば、東京五輪で試合会場に乱入して日章旗を燃やしたり、国歌斉唱を妨害することも許されるだろう。少なくともケン先生はその立場を取らない。
そもそもサッカーの試合に乱入して、これを止め、クロアチアの勝利を妨害したかもしれない行為が、どうしてプーチン政権批判や人権擁護の主張に結びつくのだろうか。

仮に「権力に対する打撃」としてのテロリズムと考えても、全く意味をなさない。一般的にテロリズムと言えば、一連の9・11テロや中東における自爆テロ、あるいは日本の地下鉄サリン事件などが思い出され、社会に対して直接的被害を与えることが目的であるかのように考えられており、政府やマスコミもそのように捉えている。だが、本来のテロルの効用は、文字通り社会・大衆に「恐怖」を植え付け、熱狂を促進させ、価値観の変容を強制することにある。

オルテガ・イ・ガセは『大衆の反逆』で大衆社会を、ある価値観が社会を構成して大衆を啓蒙するのではなく、「何となく多数」の価値観が基準として「何となく」共有されている社会であると規定している。そこでは「皆が言っていること」が常識で、「皆が信じていること」が真理で、「皆が望んでいること」が希望、ということになる。
テロリズムは、この「何となく」と「皆」を強制的に変容させる力を持っている。昭和のテロリズムにおいては、何となく共有されていた天皇機関説は暴力的に否定され、リベラル派の知識人が沈黙することで天皇主権説が「皆」となり、軍拡と侵略が「希望」へと変わっていった。
9・11以後のアメリカでは、国際協調主義と寛容の精神が否定され、対テロ戦争の貫徹が「真理」となり、そのために市民的権利が制限されるのは「常識」となった。
1930年代のソ連における大粛清も、その発端は大衆的人気のあったキーロフが暗殺されたことで、スターリンが犯人捜しを始めたことにある。

プッシー・ライオットの行為は、日本では軽犯罪法違反に問われるものだが、その最高罰則は懲役一年であり、これを禁固15日で済ませたロシア司法は、むしろその寛容性を全世界に示してしまったことになる。同時に全世界のサッカーファンやクロアチア全国民を敵に回したという意味で、テロリズムとしても逆効果だったとすら評価できる。

昭和のテロルを生き延びた祖父、1960年代にテロルに従事した父を持ち、ソ連・東欧学徒として官憲テロルを研究、実際にテロルが吹き荒れた90年代ロシアを生きたケン先生としては、「自由とテロルをもてあそぶな!」としか言いようが無い。

【追記】
「ロシアの当局があんな小手先のテロを見逃したとは思えない、知っていて利用したのでは?」という専門家の方がいらしたが、1987年のルスト君事件(赤の広場セスナ機着陸事件)を失念されているようだ。同事件では軍関係者300人以上が解任されただけに、ロシア当局は顔を真っ青にしているだろう。とはいえ、今のところ警備関係者が処分されたという話を聞かないので、陰謀論の可能性も捨てきれないかもしれないが。なお、かのルスト君も犯行動機を「平和を呼びかけるため」と主張していた。彼の場合、禁固三年で後の恩赦で釈放されている。それと比べても、プーチン政権は相当に寛容である。
posted by ケン at 00:00| Comment(8) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする