2018年12月08日

現代フランスで黄巾党が蜂起? 下

前回の続き)
リベラリズムが本質的にエリート支配を志向するのに対し、デモクラシーは大衆による大衆の支配を至上のものとする。20世紀後半の欧米日の議会史は、リベラリズムとデモクラシーの融合が奇跡的に上手くいったために成立しているだけの話で、それは第三世界などから資源を収奪して加工品を高く売りつけることで利潤を獲得し、その利潤を国内に分配することで成立していた。さらに言えば、ソ連・中国などの対立する東側諸国の存在が、国内の階級対立を抑止していたこともある。

ところが、冷戦が終結し、工業国としての利潤も上がらなくなった結果、欧米日諸国は例外なく財政難にあえぐことになる。国内の階級対立を抑止するため、社会福祉とインフラに過剰な投資をしてしまったためだ。
そして、慢性的な財政赤字を解決するために米欧日で導入されたのが新自由主義だった。社会福祉を削減し、インフラ投資を始めとする政府支出を極限まで削減する手法である。それは国内対立の激化を招く恐れが強かったため、アメリカは冷戦の終結を急ぐことになるが、ソ連が急激な改革に失敗して自壊したため、命脈を保つことになる。実は、仮に冷戦が続いていた場合、米欧日もまた財政赤字で自壊した可能性があるのだが、それについては機会を改めて書きたい。

冷戦が終結した結果、アメリカは欧州以外の旧ソ連圏を含む社会主義国を植民地化し、市場と資源と安価な労働力を確保、西欧は東欧を支配することで市場と安価な労働力を確保、日本は市場経済化した中国に進出することと自国民を非正規労働者化(社会保険の適用を外す)することで、実は経済と財政の崩壊を免れるところとなった。
だが、それは一国の経済主体あるいは労働を外部委託しただけの話であり、資本は命脈を保ったものの、米欧は安価な移民労働に依拠したことで失業が蔓延、日本では労働者の4割が超低賃金かつ社会保険の適用外に置かれる事態に陥った。

国家を運営し、国民を支配するエリートにとっては常に現状維持が最大の課題であるため、経済規模(具体的にはGDP)を維持し、財政難を克服することが最優先となる。また、技術進化と自由化に伴って、資本の移動が容易となったため、国内資本が海外に流出しないよう、これを優遇することが、エリートの統治原理において「最も合理的」選択となった。
結果、エリートは、米欧日のどの国でも例外なく、国家間で富裕層の優遇を競い合いつつ、その「穴埋め」として中低所得層からの収奪を強化する他なくなっている。同時に、産業の外部委託と技術革新によって、中間層自体が急激に没落しつつあり、国民の大多数が収奪される側になっているのが現状だ。
米欧日、どの国のエリートに聞いても、高確率で「富裕層に増税したら海外に出て行っちゃてもっと貧しくなっちゃうヨ。でも財政難だから、ゴミどもから吸い上げるしか無いんだよネ、他に選択肢なんてないサ」と答えるだろう。

本来、こうした「エリートの論理」に対して「大衆の論理」が一定の抑止をかけることで、国内の階級対立の激化が防がれる構造になっていた。ところが、フランスの大統領選と国民議会選挙に象徴されるように、「選挙するとエリートが当選しちゃう」構造ができあがっている。これは、フランスの場合、収奪される側の大衆が大分裂状態にある一方、エリート層は一致団結しているため、絶対得票率にしてわずか十数パーセントで大統領と議会の多数を占める構造から説明できよう。
しかし、一方で階級対立と国民の不満は増すばかりで、エリートによる社会支配は脆弱化する一途を辿っている。そのため、欧米日ではどの国でも「テロ対策」と称して独裁国家水準の治安立法を次々と通している。それはフランスでも例外では無い

議会や大統領が全く(多数の)民意を反映しない以上、大衆としては直接行動に訴えるほか無く、それが今回の「黄巾の乱」の原動力になっている。言い換えれば、今回の蜂起は、エリート支配と議会制度に対する、民主主義の現出であり、これを「ただの暴徒」と言ってしまうマクロン大統領の感覚は、バスチーユ事件が起きた日の日記に「何もなし」と書いてしまうルイ16世の感覚と酷似している。

そもそもフランス革命は、アメリカ独立戦争などに肩入れして財政難に陥ったフランス王家が非課税の貴族と聖職者に課税しようと自分で三部会を招集したにもかかわらず、統制が効かなくなると弾圧に転じてしまったことから始まった。
その意味で、富裕層に減税をする一方で、大衆増税を進める米欧日の情勢は、革命前のフランスに近くなってきていると言えるだろう。ただ、日本には民主主義の伝統も考え方も無いため、ひたすら収奪されるだけにあるとは言えよう。だからこそ、「フランス人は非理性的だ」などと言えるに違いない。「人間らしい暮らし」を求めて街頭に出るフランス人と、「生きていられればいいや」と沈黙する日本人、どちらが人間的かという話なのである。
【追記】
第15条(行政の報告を求める権利) 社会は、すべての官吏に対して、その行政について報告を求める権利をもつ。

第16条(権利の保障と権力分立) 権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。
「人間と市民の権利の宣言」(1789.8.26)
posted by ケン at 00:00| Comment(4) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月07日

現代フランスで黄巾党が蜂起? 上

【仏抗議デモ全土拡大、マクロン政権最大の危機に】
 フランス全土に燃料税引き上げへの抗議デモが広がり、エマニュエル・マクロン大統領は就任以来、最大の危機に直面している。警察当局によると、ここ数十年で最悪規模の被害をもたらした1日の首都パリのデモでは412人が拘束され、現在も363人が勾留されている。
マクロン氏は地球温暖化対策であるとして燃料税引き上げを撤回する考えがないことを強調している一方、抗議デモが地方都市や郊外を中心に広がったことから、3日になって政府は妥協策提案の可能性を示唆。エドゥアール・フィリップ首相は閣僚や主要野党の党首らと会談し、対策を協議した。マクロン氏は2017年5月、雇用創出目的の企業投資の促進を柱とした財界寄りの政策を訴え大統領に就任。その後すぐに起業家や高所得者向けの減税を推し進めた。燃料価格の上昇に対する抗議デモ「黄色いベスト」運動の参加者は来年1月に予定されている燃料税引き上げの延期だけでなく、多くが最低賃金や年金の引き上げも求めている。
また、3日には抗議はフランス全土の学校100校あまりに波及。生徒たちが学校を封鎖するなどして大学の入試制度改革に抗議した。抗議運動をめぐっては年末の書き入れ時に買い物客の足が遠のく可能性もあると実業界から懸念の声が上がっているほか、ブリュノ・ルメール(Bruno Le Maire)経済・財務相によると抗議デモが始まって以降、ホテルの予約率は15〜20%ほど落ち込んでいる。
一方、抗議デモを支持してきた極右政党「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首はツイッター(Twitter)で、フィリップ首相との会談で「マクロン氏が選択した戦略としての対立に終止符を打つ」よう求めたと投稿した。一連のデモでは一部の参加者が暴徒化し、警察隊を襲撃したり車に火を付けたりするなどしたため非常事態が宣言される可能性も出たが、内務省のローラン・ヌニェス(Laurent Nunez)副大臣は3日、現時点でその考えはないと明らかにした。
フランスでは過去、大規模な抗議デモによって政権が政策の転換に追い込まれるという事態が繰り返されてきたが、ルメール経済相は低所得世帯を中心とする消費低迷の解決策について欧州でも高水準にあるフランスの税率を早急に引き下げることだとした一方、「そのためには公共支出の削減が急務だ」と強調した。
(12月4日、AFP)

まさか2千年の時を経て現代フランスで「黄巾の乱」が発生するとは驚きである。本ブログの読者には説明不要とは思うが、簡単に説明すると、中国のいわゆる「三国志」の発端となる事件で、西暦184年春、新興宗教とも言える太平道を奉じた農民が蜂起、華中全域に拡大し、その軍勢は数万人に上り、その鎮圧には半年以上かかってしまう。これにより後漢王朝の衰退が明白となり、群雄割拠時代の幕開けを飾った。曹操や劉備の初陣も黄巾征伐だとされる。黄巾と呼ばれる黄色い頭巾を被っていたことから、この名称がついている。
「蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉」(『後漢書』71巻 皇甫嵩朱儁列傳 第61 皇甫嵩伝)
蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。
歳は甲子に在りて、天下大吉。

フランスの国旗である三色旗は青白赤であるが、それぞれ「自由、平等、博愛」を指すと言われているが、これは伝説の類いで、現実にはパリの紋章だった青と赤にブルボン朝の白百合を組み合わせたものだった。いずれにせよ、青はブルーカラーの勤労を表すこともあり、「蒼天已死」は自由と勤労の死を象徴すると考えても不自然なところは無いだろう。そして、三色旗にはない「黄」が掲げられたことも「黄天當立」を象徴している。意外なほど無理筋では無いのだ。

ケン先生は一年以上前にこの危険性を指摘しているので、まずは確認していただきたい。
マクロン氏の新自由主義路線は、さらなる移民や外国人労働者を呼び込んで、国内の労働条件を悪化させ、経済格差や地方の疲弊を加速させる可能性が高く、同時にフランスのドイツ従属(欧州銀行への従属)を強める結果にしかならず、「反EU」「排外主義」「保護貿易」支持層を増やすのは間違いない。EUというのは、域内での経済的自由を保障する一方で、地域の経済的自立を保障せず、かといって日本の地方交付金のような域内の格差を是正するシステムも無いだけに、圧倒的に「強い者が勝つ」システムで、敗者を救済する術を持たない。
オランド政権下で実施された富裕税も、同じ社会党政権下でマクロン氏らの主導によって廃止してしまっており、所得再分配機能も大きく低下している。また、マクロン氏はシリアに対する武力介入を支持、ロシアに対する制裁強化を主張するなど、対外タカ派(介入主義)でもあり、この点でも国内対立を促進させる恐れがある。
マクロン氏の「自由」に特化したリベラリズムは、地域コミュニティや国民統合を破壊する方向に働く可能性が高く、今後フランス国内は混沌化が進むものと見られる。
マクロン節はどこまで通じるか、2017/09/26)

マクロン氏は社会党出身ながら今回は単独で立候補しているが、その掲げる政策は専ら新自由主義で、EUの中で民営化と規制緩和を進めることで経済成長を実現するとしている。優遇されている公務員を始め、既得権益層が大きいフランスで、民営化と規制緩和を行えば、激しい抵抗が起こると見られ、国内の不穏がますます高まるだろう。仮に若干の経済成長が実現できたとしても、ドイツとの競争に勝てない限り、国民の不満は高まる一方かもしれない。
そして、親EUと新自由主義路線は経済格差をさらに拡大するため、国内における排外主義を助長し、脱EU論者をさらに増やすものと見られる。今回はマクロン氏が勝つとしても、その施策は近い将来、国民戦線を大きく飛躍させることになるだろう。基本的には、サルコジとオランド路線の焼き直しに過ぎず、反ロシア・反アサド・対外積極策という点でも、従来の政策に懐疑的な層を説得できる可能性は低い。
(2017フランス大統領選1次投票、2017/04/26)

マクロン大統領の就任直後には7割前後あった支持率がいまや3割を切るに至り、逆に今回の「黄巾の乱」を支持する市民が7割に上っていることは、2009年の民主党政権成立前後の事情とよく似ており、議会制民主主義の機能不全を象徴する事態となっている。
なぜこうしたことが起こるのか。まず選挙制度の問題から見てみよう。

そもそも2017年春のフランス大統領選、その第一次投票においてマクロン氏の得票は24%に過ぎず、同19〜24%の中に主要四候補が収まるという大分裂に終わった。そして、決選投票で国民戦線のルペン候補と一騎打ちになったため、当選できただけのことだった。
この第一回投票の投票率は78%、つまりマクロン氏に投票した市民は全体の約18%に過ぎないことを意味している。

また、同じく同年6月に行われた国民議会選挙では、マクロン氏を支持する新党「共和国前進」が全議席の6割を超える308議席を獲得したが、第一次投票の得票率は28%に過ぎず、しかも投票率は5割を切る有様だった。つまり、全投票者のうち「前進」に投票したのはわずか13%でしかなかった。が、結果的に、フランス式の決選投票で大勝しただけの話で、第二次投票の投票率は42%にまで低下している。
国民議会選挙の第一次投票で、13%を得票した国民戦線(右派)はわずか8議席、同11%の「不服従のフランス」(左派)は17議席を獲得したに過ぎない。この二党だけで投票者の約2割が「民意を示したのに議会に反映されなかった」わけだ。

今日、議会制民主主義という言葉が一人歩きしてしまって、不可分のもののように考えられてしまっているが、本来的には議会主義と民主主義は別個の存在であることを再認識する必要がある。

まず議会制度は、もともと王権=行政権に対するチェック機能から始まった。国王による際限なき課税や法律の施行を抑止するために、立法権の分離を図ると同時に、議会で作られた法律が適正に運用されているかをチェックすることが、近代議会の存在意義だった。つまり、権力分立を志向するリベラリズムの考え方である。そのため、本来的には「エリート同士による相互監視と競争」が求められる。

これに対して、民主主義は政治に民意を最大限反映させることを至上とする考え方でしかない。そこに求められるのは、「大衆意思の最大的反映」である。

従って、議会制度ができた当初は、貴族やブルジョワジーなど社会的エリート層しか参加できなかった。しかし、産業革命を経て総力戦の時代を迎えるにつれて、労働力や戦力の広範な動員が不可欠となり、国民の不満を抑えるためにその対価として政治参加=選挙権が認められていった。
つまり、歴史的経緯を見た場合、議会制民主主義という名称は必ずしも妥当では無く、「民主主義的要素を加味した議会制度」という方が妥当なのだ。
以下続く
posted by ケン at 16:34| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月02日

ロシア国内も対日融和機運

【北方領土引き渡し、ロシアで賛意増加 経済協力期待か】
 日ロ首脳会談を1日に控えたロシアの世論調査で、北方領土の日本への引き渡しを支持する回答が17%にのぼり、2016年の同様の調査から10ポイント増えた。反対意見が7割超で圧倒的に多いのは変わりないが、経済的な見返りへの期待のほか、ロシアの世論が変わりつつあるとの見方もある。
 調査は11月22〜28日、ロシアの独立系世論調査機関「レバダセンター」が実施した。同30日に公表された結果によると「平和条約の締結と日ロの経済協力の発展のため、(北方領土の)島のいくつかを日本に引き渡すことを支持するか」という質問に、17%が「支持する」と答えた。
 北方領土の引き渡しについて同センターが調査するのは1992年以降、今回で13回目。引き渡しを支持する意見が10%を超えたのは92年10月(12%)以来で、「支持しない」(74%)の割合も、93年以降では最も低かった。
(12月1日、朝日新聞)

ロシア国内では圧倒的に「引き渡し反対」が強いわけだが、これは単なる大国意識=ジャイアニスムの現れであって、それ自体はあまり気にする必要はない。
むしろ記事に書いてあるとおり「少しでも増えている」というわずかな変化が、ソ連・ロシア学では重要となる。
朝日にも一人くらいはまともな記者もいるようだ。

プーチン氏が大統領であること、ロシアが欧米と厳しい関係にあること、ロシア国内でも有識者を中心に対日融和の機運が高まっていること、そして日本では戦後最大の権力を握る安倍氏が総理大臣にあることなどを鑑みれば、どう見ても「千載一遇の好機」でしかないと思うのだが。

確かにロシア側が今頃になって「ただで返すとは誰も言ってない」みたいなことを言い出しているが、これは彼らのタフネゴシエーターぶりとツンデレぶりを示しているだけで、冷静に対処すれば大丈夫だろう。
北方領土交渉など、本来的(交渉だけ見れば)にはノモンハン事件の幕引き交渉よりはるかに楽なネタなのだから。
posted by ケン at 12:00| Comment(6) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月01日

アメリカが中国製スマホの使用禁止を要請

【日本政府などに「リスクある」 米の使用中止要請にファーウェイ幹部は...】
 アメリカ政府による異例の使用中止呼びかけに、狙い撃ちされた中国企業が、企業活動の正当性を強調した。
ぬいぐるみをスマホのカメラで読み込むと、3Dスキャンされ、カメラで自分と一緒に映り込むことができる。
中国の通信機器大手、ファーウェイ。
 カメラ機能を大幅に強化した新型スマートフォンの日本発売を、28日に発表した。
ファーウェイ 日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏は「(この新型スマホはすでに)ドイツ・フランス・スウェーデン・スペイン・ノルウェーなど、各国のメディアで高い評価を得ています」と述べた。
 このファーウェイをめぐっては、2018年8月に、トランプ大統領が国防権限法に署名し、中国の2大通信企業である「ファーウェイ」と「ZTE」の製品を、アメリカの政府機関が使うことを禁止に。
また、11月22日には、アメリカの有力紙、ウォールストリート・ジャーナルが、アメリカ政府が日本を含む同盟国に対し、安全保障上のリスクがあるとして、ファーウェイの製品を使わないよう求めたと報じた。
 さらに、オーストラリアやニュージーランドにも、ファーウェイ排除の動きが拡大している。
 各国の締め付けが強まる中、ファーウェイの日本および韓国市場の責任者が、この問題について初めて「ファーウェイは、世界170数カ国で主な通信事業やトップ500企業、数億人の消費者に製品とソリューションを提供している。弊社は各国において、現地の通信事業に関する法規法令を厳格に守っています。また、国連やアメリカ、EU(ヨーロッパ連合)の国際輸出規制や制裁条例なども固く守っています。ファーウェイはこれまで通り、世界のユーザーにイノベーションとサービスを提供していきます」とコメントした。
(11月29日、FNN)

自分も華為技術のスマホ(正確にはタブレットだけど)を使っているけど、いまのところ領事館から何の通達もありません(爆)
アメリカの圧力に屈して、安倍総理が国民に「ファーウェイの使用自粛」を求める姿が見られるのだろうか。
逆に中国側からも物凄い圧力がかかっていて、AHゲーム「クレムリン」の政治局員よろしく、ストレスポイントが溜まりまくりとか、色々想像してしまう。

アメリカも「軍事的にはロシアとイスラム、経済的には中国」と敵を絞り込んではいるつもりなのだろうけど、どう見ても戦線が整理されているようには見えない。
報道を受けて中国人は「全世界で盗聴しているのはアメリカの方じゃないか!」といきり立っているし、あまり良い効果はないような気がする。いずれにしても最終的には、中国(人)が米国債を買わなくなったり、売りに出した途端に、アメリカの財政は破綻するのだから、「ほどほど」にしかできないと思うのだが、そのギリギリの線を探って、タイトロープの上で踊っているのがトランプ氏なのかもしれない。

ネトウヨと外務省は喜ぶかもしれないが、それ以外の人には迷惑千万な話である。
ホント自分は「卒業」できてよかったデスわ。



posted by ケン at 20:26| Comment(5) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月26日

上海D&G騒動の顛末

【中国でD&Gの不買運動か】
 中国でイタリアの高級ブランド「ドルチェ&ガッバーナ」(D&G)の広告動画に「差別的」との非難が殺到した問題で、中国の大手インターネット通販サイトには22日までに同ブランドの商品が表示されなくなった。中国人有名女優も商品のボイコットを表明。不買運動が広がれば、D&Gの業績にも影響が及びかねない。ネット通販最大手アリババグループや2位の「京東集団」(JDドット・コム)のサイトではD&Gの商品を検索しても、関係ない別の商品が表示されるようになった。同様に非難されるのを恐れたサイト側が、D&G商品の表示を取りやめた可能性がある。
(11月22日、共同)

【D&Gデザイナーが謝罪=「中国侮辱」動画へ批判拡大】
 イタリアの高級ファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナ(D&G)は23日、インターネット交流サイト(SNS)に投稿したショーの宣伝内容が中国を侮辱したとして批判が広がっていることを受け、創業者のデザイナー2人の謝罪動画を公開した。
 SNSに投稿された中国語字幕付きの動画では、ドメニコ・ドルチェ氏とステファノ・ガッバーナ氏が「自分たちの言動が及ぼしたすべてのことを残念に思う。世界中の中国人に謝罪する」と表明。「私たちは中国文化を深く愛している」と強調し、最後に2人で改めて中国語で謝った。
 D&Gは、箸で不器用にピザなどを食べるアジア系女性の短い宣伝動画を投稿。中国ではネット上で商品のボイコットを呼び掛ける書き込みが相次ぐなど、騒ぎが広がっている。店舗は営業を続けているが、大手電子商取引サイトでは商品が検索できない状況だ。
(11月23日、時事通信)

ケン先生の知り得た範囲で騒動を再構成したいと思う。
もともと「ドルチェ&ガッバーナ」が11月21日に上海でファッションショーを開催することになり、予告動画を制作、ネットにアップした。



これが「差別的」「侮蔑的」ということになり、中国国内で炎上、主催者であるD&G中国支社(に相当するもの)が動画を削除したところ、デザイナーのステファノ・ガッバーナ氏が「中国クソ」「バカ」「マフィア」「中国なんてもういらねぇ」などとツイッターで全開したところ、早速中国国内に紹介され、大炎上。

ショーに立つ予定だったモデル、女優を始め、招待客、スポンサーが次々と辞退。「今後D&Gとは仕事はしない」などの声明を発表。
当日のショーは全く準備できず、何の予告も無いまま中止。

時を前後して、デザイナーが「あれはアカウントが乗っ取られて発せられた陰謀」などとツイッターで呟いたため、さらに火に油を注いでしまう。
そして、大手通販サイトからD&Gの商品が全て削除されていった。
デザイナー氏自らが望んだように「そして何も無くなった」のである。

予告動画が掲載されたのは3日前。ステファノ氏の問題ツイートが発せられたのは、中国時間で21日午前6時頃と見られ、ショーは同日夜に開催予定だったことを考えれば、事態は「日本のいちばん長い日」並の速度で展開されたことが分かる。
もちろん当局が指導したものではなく、それだけに全体主義・愛国主義教育の恐ろしさが際立っている。
もっとも、現代日本人がヘイトスピーチなど差別に対する感覚を麻痺させているだけで、むしろ中国人の敏感さのほうが本来は真っ当なものであるという考え方もあるから、一概には言えないのかもしれない。この春には「日本人なんかがうちのデザイナーになったら、ドルガバも終わり」とのツイートもあったというからだ。

結局、騒動が大きくなり、中国市場から全商品が撤去されてから、D&Gはいやいや「謝罪」会見を行い、「私たちは中国文化を深く愛している」などと述べているが、もともと炎上商法で儲けてきた連中が白々しいにも程がある。というのも、D&Gは売上の三分の一を中国市場で賄っているため、中国市場を失うことは「本来ありえない」ものだという。であれば、最初から慎重であるべきで、ここまで自体を悪化させてからの謝罪は、「今さら中国市場が惜しくなったのかよ」「やるなら最後までやり通せ」「恥知らず」などと中国側を激昂させているが、時間が経てば収まるのかもしれない。
いずれにしてもお粗末な結果であり、ファッションブランドなど「無くても困らないもの」であるだけに、むしろ欧米デザイナーからの自立を促す良いきっかけになるのかもしれない。

【追記】
平素キャピキャピしている女子学生までもが、このときばかりは「欧米人の人種差別は許せない!」「不買運動なんて生ぬるい!」「侵略者のくせに!」などと人が変わったように(ネット上で)いきり立っており、さながら『ひぐらしのなく頃に』を眼前で見せられたような衝撃があった。
posted by ケン at 12:00| Comment(8) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月15日

光棍節=独身の日

【独身の日 「アリババ」1日で3兆5,000億円 日本ブランドも爆売れ】
 「1」が並ぶことから、中国で「独身の日」と呼ばれる11月11日、中国ネット通販最大手「アリババ」の恒例のセールは、取引額およそ3兆5,000億円と、過去最高を記録した。
 現地時間の11日午前0時に始まった「独身の日」のセールは、午後4時前には、2017年の総取引額を突破し、結局、11日の1日の取引額は2,135億元、日本円でおよそ3兆5,000億円で、過去最高を記録した。「越境EC」と呼ばれる、海外からの商品取り寄せの規模も毎年拡大していて、「輸入」のカテゴリーの売上ランキングには、日本のブランドが2位と3位に入った。米中貿易摩擦などで、先行きに不透明感が出ている中国経済だが、この日ばかりは、消費の底堅さを示した形。
(11月12日、朝日新聞)

もともとはごく一部で祝われていたに過ぎないマイナーな学生イベントだったが、アリババが2009年に戦略的に利用したことから今日の形態になった。日本のバレンタインデーみたいなものだろう。

実際凄いもので、私も中国に来た当初から「高い買い物は11月11日まで待て」と言われたほどだった。まぁ生活必需品に前も後もないので、私自身は早々と日本への土産物の一部を買ったり、暖房器具を買った程度に過ぎない。それでも、中国に来たばかりの自分が「淘宝網」をインストールして買い物しているのだから、相当なものと考えて良い。

この取引額を見ただけでも、中国の市場規模が分かると思うが、もはや日本は中国市場なしでは生きてはいけない形になっているのである。
後は推して知るべしだろう。
posted by ケン at 12:00| Comment(7) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月13日

強気すぎ、かつ自由主義の権化と化した中国?

【中国、関税再び下げ 11月に機械や紡績品など1585品目 】
 中国の国務院(政府)は26日の常務会議で、11月から関税を引き下げることを決めた。対象は機械類、紡績品、紙製品など1585品目。引き下げにより、平均関税率は2017年の9.8%から7.5%まで下がる。関税下げは18年7月につづく措置。米国が保護主義を強めるなか、中国は逆に関税を下げて自由貿易を守る姿勢を訴える。
 関税下げの方針は李克強(リー・クォーチャン)首相が9月の夏季ダボス会議での講演で表明し、今回正式に決定した。関税下げ対象の1585品目のリストは公表していない。
 主な分類ごとの平均関税率をみると、工作機械など機械類は12.2%から8.8%に、紡績品や建材は11.5%から8.4%に、紙製品などは6.6%から5.4%にそれぞれ下がる。
 中国は7月にも日用品など1449品目を対象に関税を下げており、大規模な引き下げは今年に入って2回目。18年の一連の引き下げにより、企業や消費者の関税負担は600億元(約1兆円)減るとしている。中国は17年12月にも日用品などの関税を下げており、直近1年間で3度目の大規模な引き下げとなる。
 中国が関税を下げるのは、保護主義を強める米国に対抗する狙いだ。米中は7月以降、お互いに追加関税を発動しあっている。現在までに米国は計2500億ドル分、中国は計1100億ドル分の製品に関税を上乗せした。追加関税の応酬で打撃を受けた国内製造業などを支援する狙いもある。米国以外からの設備輸入にかかる関税を下げ、負担を減らす。
 トランプ米大統領は中国の平均関税率が米国よりも高い点を「不公平だ」と批判する。積極的に関税率を下げて批判をかわす狙いもありそう。自由貿易を守る姿勢をみせ、欧州連合(EU)や日本が米国と結束して中国に圧力をかける事態を避けたい考えだ。
一連の関税引き下げでは紙おむつ、炊飯器、しょうゆ、化粧筆など日本企業が強みを持つ商品も対象になった。日本企業にとっても中国市場を開拓する機会が広がりそうだ。
(9月26日、日本経済新聞)

【中国全人代、個人所得税法の改正を承認】
 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は31日、個人所得税法の改正を承認し、基礎控除額を月額3500元から同5000元(732.02ドル)に引き上げた。国営メディアが報道した。人民日報によると、納税者は子どもの教育、住宅ローン金利、家賃、重病の治療費に関連した費用の控除も可能になる。改正は来年1月に施行されるが、基礎控除の引き上げは今年10月1日に発効するという。
 財政次官は記者会見で、所得税法の改正案により、消費が大幅に押し上げられる一方、税収は年間で約3200億元減少すると述べた。財政省関係者によると、法改正後に納税者数が減少する見込み。都市の労働人口における納税者の割合は現在の44%から約15%に減少することが予想されるとした。中国国営の新華社によると、劉昆財政相は6月、個人所得税法の改正により、低・中所得者層を中心に全ての納税者に程度の差はあれ減税をもたらすとの見方を示していた。中国中央テレビ局(CCTV)の報道によると、月額の給与額が約1万元(1463.55ドル)の納税者は、税負担が70%減少する。
(8月31日、ロイター)

いや、中国強気すぎだろ〜〜
関税下げます、所得税下げます、では、一体どこから税を取るんだよって話。すべて経済成長頼みで、どこかギャンブルに勝ちまくってタガが外れかけている賭博師を思い浮かべてしまう。
まぁ脱税とか法人税に対する監視を強化しているようではあるし、将来的には資産課税を視野には置いているようだが、まだまだ先の話のようだし。
中国の税制は少し独特で、西側諸国では税収の4分の1前後を占める所得税の割合が、中国では5%ほどしかない。そして税収の中で最大は流通と消費に掛けられる「流通税類」が4割を占める。その後、法人税と関税がくるわけだが、法人税率は25%で、むしろ低い部類に入る。ただし、消費税は高く標準税率は17%で、そこから税率軽減がなされる仕組み。

中国はバブルが一段落して、消費低迷期に入りつつあると言われているだけに、米中貿易戦争の手前もあって、内需拡大に大きくスタンスを切り替えつつある。これらはそれを象徴する政策であるわけだが、ひとたび不況になった場合、極端に税収が落ち込むこと、また貧富の経済格差が拡大する恐れを抱えている。
本来は非常に自由主義の権化とも言える政策であり、社会主義国のものではない。だが、アメリカが保護主義を採る一方、中国が自由貿易を訴え、所得減税を行うという事態をどう説明するのか。是非とも西側自由主義史観の学者に問いたいところである。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする