2019年04月22日

ノートルダム聖堂火災で黄巾の乱が拡大?!

【ノートルダム高額寄付に怒り=反政府デモ激化も−フランス】
 大火災に見舞われたフランスのパリ中心部にある観光名所、ノートルダム大聖堂の再建のため、大富豪らから多額の寄付金の申し出が相次いでいることに対し、マクロン大統領の政策に反対し昨年11月からデモを続けている抗議運動参加者らは「不公平だ」と不満を募らせている。抗議運動の中心となっている女性は17日、「社会的な惨状には何もしないのに、わずか一晩で膨大な金を拠出できることを見せつけた」と高額な寄付を批判。インターネット交流サイト(SNS)上では「人間より石が優先されるのか」などと反発する投稿が相次いだ。
 有力紙フィガロは、20日に予定されているデモについて「怒りを募らせたデモ隊が結集する可能性がある」と指摘。再び破壊行動が起きる恐れがあると報じた。
(4月19日、時事通信)

第一報だから仕方ないかもしれないが、雑な記事である。
ノートルダム大聖堂の火災を受けて、「寄付」を表明したのは、フランスを代表する大富豪たちで、このうちわずか三家だけで600億円近くに達したという。
すなわちアパレル大手のケリング社を経営するピノー家が1億ユーロ、同じくLVMHのアルノー家が2億ユーロ、続いて化粧品ロレアル社のメイエー家が2億ユーロである。

フランスの法律では、個人は慈善寄付の66%を税金から控除することができ、企業は同60%が還元されるという。
つまり、単純計算で1億ユーロの企業贈与に対して、6千万ユーロの税金が控除されることになる。広告費と税金対策としては、「今やらないでいつやるか!」という話だろう。
話はまだ終わらない。米ブルームバーグ社の富裕指標では、このフランス大富豪三家の総資産は推定で1600億ユーロに達するという。

富裕税を叩き潰し、庶民に増税を課し、自分たちの資産は海外に退避(租税回避)させるという、フランスの富裕層と、その代弁者であるエリートたちに対する強固な不信と不満を理解しないで、現代フランスを語るのはやめて欲しい。
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2019年04月15日

ヴォルゴグラード改めスターリングラード?

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4月12日の「ノーヴォスチ」記事。
2023年に迎えるスターリングラード戦80周年に向けて、現在のヴォルゴグラードの市名を「スターリングラード」に戻そうという運動があるという。まずは住民投票を行うために運動を展開しているようだが、現実にはネット調査だと、793人の回答に対し、72%が反対、12%が「ツァーリツィン」(革命前の市名)、16%が「スターリングラード」支持だったという。回答者数が少ないので容易には判断できないが、厳しい道のりではありそうだ。
少なくともロシア人は意外と冷静と言えそうだ。
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2019年04月10日

英軍、野党党首写真を標的に射撃

【英軍、野党党首写真を標的に射撃 ネットに動画流出】
 英軍の兵士が最大野党、労働党のコービン党首の写真を標的にして射撃を練習している動画がインターネット上に流出し、国防省が調査を始めたと英メディアが3日報じた。メイ首相が2日、コービン氏に対し、英国の欧州連合(EU)離脱を巡り互いに納得できる合意案を模索するための協議を呼び掛けたばかりで、波紋が広がっている。
 動画には空挺部隊所属の軍人とみられる4人が射撃をする様子が映っている。アフガニスタンの首都カブールで撮影されたとされる。国防省の広報担当者は「全く容認できない。軍が求める(行動の)水準を大きく下回っている」と批判した。
(4月3日、共同通信)

いろいろな面で英国は末期症状の模様。
暴走する民意、その民意を制御できない、あるいは民意を反映できない議会。
そして、政党を敵視する軍部。
戦前の日本とは異なるが、大まかな症状ー議会政治あるいは議会制民主主義の機能不全が顕在化しつつあることを示している。
だからどうというわけではなく、我々はそういう時代に生きていることを自覚しなければならない。
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2019年03月31日

EU離脱協定案で瓦解する英国の議会制民主主義

【「裏切るな」怒る英市民 EU離脱協定案、3回目の否決】
 英国が欧州連合(EU)から抜ける条件を定める協定案が29日、英議会下院で三たび、否決された。当初、同日午後11時(日本時間30日午前8時)に離脱するはずだった。離脱支持の市民は「約束が違う」と怒る。英政府・議会は、あと10日余りで英国が向かう道の最終決断を迫られる。
 下院は29日の採決で、メイ氏がEUと合意した離脱協定案を賛成286、反対344で否決した。58票差となり、1回目(1月15日)の230票差、2回目(3月12日)の149票差より負け幅は縮まった。
 今回、将来の通商関係の大枠を示す「政治宣言」を対象から外し、離脱後の移行期間などを定めた協定案に絞って採決。メイ氏は「可決されれば辞任する」と退路を断ち、反発する勢力の支持を得ようとした。それでも可決できなかった。協定案にある北アイルランドの国境管理の規定への反発のほか、EUとの合意なしの離脱でもいいという勢力が動かなかった。
 英国会議事堂周辺は29日、離脱を実現できない政治に、怒りと不満をぶつける人であふれかえった。「民意を尊重しろ」「裏切るな」などと書かれたプラカードを掲げた参加者が英国各地から集まった。
(3月31日、朝日新聞)

もう一つの問題は、国民投票自体の難しさである。「EUを離脱するか、残留するか」という重大な社会的選択を、「イエス、オア、ノー」二択で決めてしまい、しかも超僅差で決定しまったことは、今後の意思決定に重大な禍根を残す恐れがある。具体的には、スコットランドの独立が再燃したり、他のEU諸国でも離脱が加速したりする懸念がある。
国民投票は、デモクラシーを構成する重要な要素かもしれないが、その運用はごく慎重であるべきだと考える。
英国でもエリート不信、2016/06/25)

概ね私が指摘した通りになっている。
イギリスの場合、そもそもEUに加盟するメリットが小さかったにもかかわらず、「バスに乗り遅れるな」的なノリで加盟した結果、過大な供出が求められる一方で、移民やら難民やらを押しつけられ、安価な労働力を使用する資本家はボロ儲けしたが、それ以外の層は圧倒的に赤字超過に陥ってしまった。

本来、EUは「欧州大陸で戦争を起こさない」ためのシステムで、本質的には「独仏同盟」だったはずだが、フランスが衰退する中で、実質的に「ドイツ帝国」と化してしまっている。
また、安全保障面ではアメリカの影響力が大きすぎるNATOへの対抗手段としてEUに価値が求められた。だが、アメリカの権威を利用するイギリスにとってはNATOにさえ入っていれば、EUに入るメリットは無かったはずだが、そこを見誤ってしまった。

こうした問題は本来英国議会で調整されるべき課題だが、議会での調整が不可能になり、議会で主導権を得ようとした保守党のキャメロン氏が国民投票に踏み込んだ結果、完全に収拾が付かなくなってしまった。
今回の離脱案にしても、国民投票に従うなら、否決するのは「主権者に対する離反」になってしまうし、離脱案の内容に不備があるのであれば、議会内で調整すべきものであるはずだが、どちらも不可能になっている実情は、議会制民主主義の破綻を意味している。

もっとも、EUはEUで民主的正統性を持たないEU官僚が財政に絶対的権威を持っており、こちらはこちらでデモクラシーの根源が侵されつつある。東欧に権威主義政権が続々と誕生し、南欧が統治不全に陥りつつある現状は、日本では十分に報道されていないものの、非常に深刻な事態にある。

日本の場合は東欧型の権威主義政治をもって、危機の打開を図ろうとしているわけだが、排外主義の高まり、財政危機、政治的無関心と腐敗の蔓延など、それはそれで困難を抱えている。
英国の問題については、下記の記事で言い尽くしているので、参照して欲しい。

【参考】 英国でもエリート不信
posted by ケン at 10:33| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月12日

ラオスがT34をロシアに返還

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かつてラオス軍がソ連軍より貸与され、現役使用中の戦闘可能状態にあるT34-85を30台、ロシアに返還したという。
映像を見る限り、生産工場から出てきたかのように錯覚してしまうほどだ。
同戦車は1944年から46年までに約3万両が生産され、その後東欧諸国がライセンス生産で約5千両を生産している。

その兵器としての優秀性は、何と言ってもラオス軍に象徴される耐久力で、古くはベトナム戦争、中東戦争、アフリカ諸国の内戦を始め、最近では先のグルジア紛争やウクライナ内戦あるいはアフリカ各地の内戦でいまだ現役稼働していることが証明している。

なお、ロシア側は映画撮影やパレードなどでありがたく使わせていただく、とのこと。
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2019年01月11日

強権弾圧に向かう仏マクロン政権

【仏首相「過激暴力に厳罰」無届けデモ罰則強化へ】
 フランスで続く反政権デモを受け、フィリップ仏首相は7日、民放テレビ番組で、無届けのデモに対する罰則を強化する考えを明らかにした。破壊行為に加わった者に対し、デモ参加を禁止する措置もとるという。昨年11月から毎週土曜日に行われているデモは、主にインターネットの交流サイトで呼びかけられている。大半が警察への届け出なしで行われており、警察当局は十分に取り締まれていない。デモに乗じた暴力や破壊行為も横行しており、フィリップ氏は「過激な暴力には厳罰を与えなければならない」と述べた。無届けのデモは現在の法律でも代表者に禁錮6か月と7500ユーロ(約90万円)の罰金が科されるが、黙認されるケースもあった。今月5日のデモでは、暴徒化した一部の参加者がパリの政府庁舎の扉を壊して侵入する事態となった。
(1月8日、読売新聞)

フランスでは年が明けて再びデモが盛り返しているという。当局発表で5万人というから相当な規模である。
しかも、12月には様々な罪状がつけられて2千人以上が当局によって勾引されているのだから、実情は報道以上に深刻なはずだ。だからこそ、マクロン政権は「無届デモ全面弾圧」へと舵を切ったものと見られる。

そもそもデモはデモンストレーション、つまり政府などに対して民意を表明する一手段である。これはデモクラシー下においては、選挙の投票以外に民意を表明する手段として、本来は選挙と同レベルの価値が置かれるべきものなのだ。そのため、「当局に届け出なければ許されないデモ」というのは、本質的にはデモクラシーの原理に反する措置であって、だからこそフランスの歴代政権は大目に見てきた。
これは一種のパンドラの箱であり、「当局に届け出がないデモ」に対して当局が公然と弾圧を始めた場合、政府と市民の対立は決定的なものになるだろう。

こうした事態に陥ったのは、明らかにマクロン大統領の判断ミスに原因が求められる。
報道では「燃料税の増税に反旗を翻した」となっているが、デモに参加している者の少なくない人数は「本来は増税もやむを得ない」と考えているものと思われる。彼らが本当に怒っているのは、「富裕層に対して減税しているのに、庶民にだけ大増税かよ!」ということだろう。
これに対して、マクロン大統領は「燃料増税の延期」を表明しただけで、富裕層への課税には一切触れなかった。ここが運命の分かれ目だっったのだろう。仮にマクロン氏が「富裕層にきっちり課税するから、燃料税を認めて欲しい」と下手に出ていれば、少なくとも一時的にはデモは鎮静化あるいは小規模化したはずだ。

だが、マクロン氏はエリート根性丸出しで、「お前らに屈服して燃料税は一時的に延期してやるから、もう暴れるな!」と居丈高にやってしまったがために、事態が収まらなくなってしまった。さらに逆ギレして、「無届デモ弾圧」に舵を切ってしまった以上、フランスはもう一度何かコトが起こったら、いよいよ深刻な事態に陥る可能性が出てきている。
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2018年12月08日

現代フランスで黄巾党が蜂起? 下

前回の続き)
リベラリズムが本質的にエリート支配を志向するのに対し、デモクラシーは大衆による大衆の支配を至上のものとする。20世紀後半の欧米日の議会史は、リベラリズムとデモクラシーの融合が奇跡的に上手くいったために成立しているだけの話で、それは第三世界などから資源を収奪して加工品を高く売りつけることで利潤を獲得し、その利潤を国内に分配することで成立していた。さらに言えば、ソ連・中国などの対立する東側諸国の存在が、国内の階級対立を抑止していたこともある。

ところが、冷戦が終結し、工業国としての利潤も上がらなくなった結果、欧米日諸国は例外なく財政難にあえぐことになる。国内の階級対立を抑止するため、社会福祉とインフラに過剰な投資をしてしまったためだ。
そして、慢性的な財政赤字を解決するために米欧日で導入されたのが新自由主義だった。社会福祉を削減し、インフラ投資を始めとする政府支出を極限まで削減する手法である。それは国内対立の激化を招く恐れが強かったため、アメリカは冷戦の終結を急ぐことになるが、ソ連が急激な改革に失敗して自壊したため、命脈を保つことになる。実は、仮に冷戦が続いていた場合、米欧日もまた財政赤字で自壊した可能性があるのだが、それについては機会を改めて書きたい。

冷戦が終結した結果、アメリカは欧州以外の旧ソ連圏を含む社会主義国を植民地化し、市場と資源と安価な労働力を確保、西欧は東欧を支配することで市場と安価な労働力を確保、日本は市場経済化した中国に進出することと自国民を非正規労働者化(社会保険の適用を外す)することで、実は経済と財政の崩壊を免れるところとなった。
だが、それは一国の経済主体あるいは労働を外部委託しただけの話であり、資本は命脈を保ったものの、米欧は安価な移民労働に依拠したことで失業が蔓延、日本では労働者の4割が超低賃金かつ社会保険の適用外に置かれる事態に陥った。

国家を運営し、国民を支配するエリートにとっては常に現状維持が最大の課題であるため、経済規模(具体的にはGDP)を維持し、財政難を克服することが最優先となる。また、技術進化と自由化に伴って、資本の移動が容易となったため、国内資本が海外に流出しないよう、これを優遇することが、エリートの統治原理において「最も合理的」選択となった。
結果、エリートは、米欧日のどの国でも例外なく、国家間で富裕層の優遇を競い合いつつ、その「穴埋め」として中低所得層からの収奪を強化する他なくなっている。同時に、産業の外部委託と技術革新によって、中間層自体が急激に没落しつつあり、国民の大多数が収奪される側になっているのが現状だ。
米欧日、どの国のエリートに聞いても、高確率で「富裕層に増税したら海外に出て行っちゃてもっと貧しくなっちゃうヨ。でも財政難だから、ゴミどもから吸い上げるしか無いんだよネ、他に選択肢なんてないサ」と答えるだろう。

本来、こうした「エリートの論理」に対して「大衆の論理」が一定の抑止をかけることで、国内の階級対立の激化が防がれる構造になっていた。ところが、フランスの大統領選と国民議会選挙に象徴されるように、「選挙するとエリートが当選しちゃう」構造ができあがっている。これは、フランスの場合、収奪される側の大衆が大分裂状態にある一方、エリート層は一致団結しているため、絶対得票率にしてわずか十数パーセントで大統領と議会の多数を占める構造から説明できよう。
しかし、一方で階級対立と国民の不満は増すばかりで、エリートによる社会支配は脆弱化する一途を辿っている。そのため、欧米日ではどの国でも「テロ対策」と称して独裁国家水準の治安立法を次々と通している。それはフランスでも例外では無い

議会や大統領が全く(多数の)民意を反映しない以上、大衆としては直接行動に訴えるほか無く、それが今回の「黄巾の乱」の原動力になっている。言い換えれば、今回の蜂起は、エリート支配と議会制度に対する、民主主義の現出であり、これを「ただの暴徒」と言ってしまうマクロン大統領の感覚は、バスチーユ事件が起きた日の日記に「何もなし」と書いてしまうルイ16世の感覚と酷似している。

そもそもフランス革命は、アメリカ独立戦争などに肩入れして財政難に陥ったフランス王家が非課税の貴族と聖職者に課税しようと自分で三部会を招集したにもかかわらず、統制が効かなくなると弾圧に転じてしまったことから始まった。
その意味で、富裕層に減税をする一方で、大衆増税を進める米欧日の情勢は、革命前のフランスに近くなってきていると言えるだろう。ただ、日本には民主主義の伝統も考え方も無いため、ひたすら収奪されるだけにあるとは言えよう。だからこそ、「フランス人は非理性的だ」などと言えるに違いない。「人間らしい暮らし」を求めて街頭に出るフランス人と、「生きていられればいいや」と沈黙する日本人、どちらが人間的かという話なのである。
【追記】
第15条(行政の報告を求める権利) 社会は、すべての官吏に対して、その行政について報告を求める権利をもつ。

第16条(権利の保障と権力分立) 権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。
「人間と市民の権利の宣言」(1789.8.26)
posted by ケン at 00:00| Comment(6) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする