2019年11月16日

欧州分裂は既定路線か?

【独、全国境で検問実施 「移動の自由」形骸化も】
 ドイツ紙ビルトによると、独当局は6日から、全国境で検問を始めた。難民に偽装した不法入国の取り締まりを強化するためだが、欧州連合(EU)の理念の一つである域内の「移動の自由」が形骸化する恐れもある。EU域内で国境審査をなくす「シェンゲン協定」により、欧州の他国からドイツに入国する場合、通常は検問がない。しかし、ドイツは2015年、難民殺到を受けて流入の主要ルートであるオーストリアとの国境で検問を導入。報道によると、今後は幹線道路に検問所を設けるなどして、全国境上に検問を広げる構え。いつまで続けるかは明らかになっていない。
 強硬措置に踏み切るきっかけは、アラブ系の大規模犯罪組織トップの男が、7月にレバノンに強制送還されたにもかかわらず、先月末にドイツに再入国し、難民申請をしていたのが発覚したためだ。ゼーホーファー内相はビルト紙に、この状況を放置すれば「難民制度全体への信頼が失われる」と語り、国民に理解を求めた。
(11月7日、時事通信)

「域内における移動の自由」は欧州統合の象徴であると同時に、実質的な利益でもあったわけだが、欧州の中核を為すドイツが自らそれを放棄するという。
ドイツからすれば、「国境を止めなければ、国内が持たない」という政治判断なのだろうが、国内の治安を維持するために、崇高な理念を捨てることを意味する。

その意味するところは、国境を封鎖すれば、国境の手前に難民が滞留することになり、今度はオーストリアの右傾化、この場合は排外主義と反EUが強まるところとなる。そして、オーストリアが国境を閉じれば、イタリアやスロベニアに波及するだろう。ハンガリーは既に権威主義化している。
恐らくその流れは止まらないだろう。

中東とアフリカから難民流出が止まらない限り、EUの崩壊は避けられないが、中東とアフリカが不安定なのは欧米の政策の結果であり、そこは自業自得でしかない。
日本はとにかく他人の戦争に口を出さないことが肝要だ。
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2019年11月07日

ケン先生は大丈夫?

【北大教授が中国で拘束 研究者が声明 情報開示求める】
 北海道大学の教授が、先月、訪問先の中国で当局に拘束された問題で日本の中国研究者でつくるグループが強い懸念を表明するとともに拘束理由など情報開示を求める声明を出しました。声明を出したのは日本の中国研究者でつくる「新しい日中関係を考える研究者の会」で、中国政治や社会が専門の早稲田大学の天児慧名誉教授や法政大学の菱田雅晴教授など8人が呼びかけ人となっています。
 声明では、先月上旬から中国政府系シンクタンクの中国社会科学院の招きで北京を訪れていた中国近現代史が専門の北海道大学の40代の日本人教授が中国当局に拘束された問題について、「言葉にしがたい衝撃を受けている。関係当局は拘束の理由など背景を一切明らかにしておらず理由が不明なままの拘束は国際社会では到底受け入れられない」として強い懸念を表明するとともに、拘束理由など関連情報の開示を求めています。
 また、今回の事件を受けて日本の中国研究者の間で、中国への渡航を取りやめたり、交流事業を見直す動きが広がっていると指摘したうえで、「日中間の学術交流に好ましからざる影響が立ち現れ、日中関係の健全な発展に大きな影を落としている」としています。
(10月29日、NHK)

ご心配いただきまして、ありがとうございます。
おかげさまで、ケン先生は何の問題も無く、自由にやっておりますので、ご安心ください。

この手の話は共産圏では昔からある話で、西側では「なぜあの人が、無罪に決まってる!」と大騒ぎするのが通例ですが、たとえ共産圏でも理由もなく外国人を拘禁することはまずもって稀なことです(無いとまでは言わないが)。
ましてや、現代中国のように貿易を重視する国の場合、リスクを取るコストは高まっているはずで、よほどのことが無い限り、拘束はしないでしょう。
問題はその「よほどのこと」が何を意味するのか、にあります。
現代中国の場合、以下のケースが考えられます。

@ 日本の治安・諜報当局と頻繁に接触し、あるいは金銭の授受がある。
A 中国の反体制派と頻繁に接触、情報や金銭の授受がある。
B 反中的言動が確認される。

このうち一つだけなら目こぼしされる可能性があります。二つあるとブラックリストに載り、拘束される蓋然性が高まります。三つある場合は、そもそもビザが下りない、あるいは問答無用で拘束される可能性がある。
という感じです。
わが同志には@がありながら、頻繁に行き来している者がおりますし、知人にはABを満たしながら、見逃されている者もおり、実は私も明確な線引きはわからないのが実態です。
しかし、先日6年の量刑判決を受けた「日中交流団体役員」の場合、@Aが濃厚に確認され、しかもそれなりの金額を受領していたことも判明しているため、一定の確信を持っています。
にもかかわらず、国会や日中関係者周辺では大騒ぎになり、救命運動が行われましたが、ケン先生的には「ヤツはどう見てもダウトだろう」と冷めた目で見ていました。つまり、少なくない日中関係者がいずれかのケースに該当していることを示しているのです。

この点、ケン先生は完璧に真っ白であり、むしろ白すぎて?マークが置かれそうなくらいなのです!

【追記】
あと絶対にダメなのは薬物関係。そして、ちょっとだけなら目こぼしがあるかもしれないが、目についたり、当局が「利用してやれ」と思ったら挙げられるのが買春。昨今の中国は確かに緩くなっているし、2000年代の感覚で買春する日本人も少なくないらしいが、安全を考えたら検討すらすべきではないし、酔うまで酒を飲むのも避けた方が良い。
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2019年10月11日

建国70周年パレード

【中国建国70年、大規模軍事パレードで最新兵器を誇示】
 中国は1日、建国70周年を迎えた。習近平国家主席は記念式典で演説し、平和的発展の道を堅持すると誓う一方、人民解放軍は中国の主権と安全保障を断固として守るとも述べた。また大規模な軍事パレードが行われ、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など、最新兵器が公開された。
 1日に建国70周年を迎えた中国で、大規模な軍事パレードが行われた。中国は、多くの課題に直面している。米国との貿易戦争や、香港の反政府デモなど。だが、華麗な儀式や、最新兵器へと目を背けた。習近平国家主席は記念式典で、自信に満ちた様子で演説。
「いかなる勢力も、中国の地位を揺るがしたり、中国の人民と国家が前進するのを止めることはできない」
 香港を何カ月も揺るがしている社会不安については言及しなかったものの、自らの立場は明確にした。
「中国は香港の永続的な繁栄と安定を維持しなければならない。祖国の完全な統一に向けた努力を続ける」
習主席は軍の近代化に力を入れており、この日、その成果が披露された。習主席は居並ぶ兵士らを称賛し、その努力を称えた。
 人民解放軍は一連の国産兵器を公開。複数の核弾頭を搭載し米国に到達可能なICBM「東風41」など。70台の山車や1万5000人の兵士が参加した軍事パレードは2時間以上も続き、数百万人が生中継を見た。ただ、当局がCO2排出量の厳しい取り締まりに向け懸命な準備をしていたにもかかわらず、空は濃いスモッグに覆われていた。
(10月2日、ロイター)

私も滞在中に一度は見に行きたいと思っているのだが、簡単ではなさそう(たぶん無理)。
私が住んでいるところは、今のところあまりスモッグに遭遇していないが、北京は相変わらず酷いらしい。
北京の学術エリートが、「子どもの成長に悪いから」とわざわざ出世街道を棒に振ってまで、こちらに来るくらいなのだから。

それはさておき、自分もテレビで見るだけになってしまった軍事パレード。
確かに統率も行進も整っており、装備も近代化していて、もはやかつての「旧式人民軍」の姿は見受けられない。
だが、どこか、何か、説明できないのだが、あまり強く見えないところがある。

人づてに聞いた話だが、駐留武官の経験もある自衛官の方に「アジアの軍隊で、どこの兵が一番強そうですか」と聞いてみたところ、

「色々な要素があるから一概には言えないけど、装備面を除けば、一番ヤバそうなのはフィリピン軍」

と答えられたとのこと。
これは意外と腑に落ちる話で、実はアジアの軍隊の中で、最も実戦を経験しているのがフィリピン軍だからだ。
むしろフィリピン軍以外は、近年はほとんど実戦を経験していない。

歴史的にも、大坂の陣で徳川軍は面白いくらいに大坂側の浪人部隊にボコボコにされてしまったが、これは徳川軍が最後に実戦を経験したのが四半世紀前の小牧・長久手戦で、以降、朝鮮戦役も関ヶ原も戦わなかったことに起因していると考えられている。

現代のロシア軍がGDP=国力においてはNATOに圧倒的に劣るにもかかわらず、「めちゃヤバイ」感を発しているのは、ユーゴ内戦、チェチェン内戦、対ジョージア戦、ウクライナ内戦など、常に実戦を経験し、その経験値を継承しているところが大きいのだろう。

その意味で、中国軍にとって最後の実戦は1979年の中越戦争であり、それも一ヶ月で終わっているだけに、軍隊の経験値としてはかなり不安があると言えそうだ。
まぁロシアやアメリカでも無い限り、普通は経験値を積むために戦争しようなんて考えないわけだが・・・・・・
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2019年09月23日

20年後には軍事力でも米中拮抗へ

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我军大校:003航母正在建造 排水量8万吨配电磁弹射

【兵器も安くて高性能…中国製の軍事用ドローンが欧州進出】
 中国の軍事用ドローンが、ヨーロッパに到着予定だ。セルビア軍は準備ができ次第、成都飛機工業公司のドローン兵器、翼竜1を9機受け取る。9月10日(現地時間)、アメリカ国防省が運営する星条旗新聞(Stars and Stripes)が報じた。同公司は、この引き渡しについて「伝統的にアメリカとヨーロッパの兵器メーカーに依存してきた大陸への進出で、中国にとって最も重要なことである」と記した。
 中国は、安くて性能のよい無人戦闘システムを構築していて、中東、中央および南アジアの一部、そして今やヨーロッパにおいても注目を集めている。中国製の軍事用ドローンが初めてヨーロッパに向かったと報じられており、世界各国が戦闘用ドローンに注目する中、中国がこの国際兵器市場の重要な部分で存在感を増していることを示している。
(9月15日、ビジネスインサイダーより抜粋)


上の中国紙の記事は、中国軍大佐の講演録で、三隻目の建造中の空母の概要を明らかにしている。
「8万トン近い規模」「電磁カタパルト」「第四世代艦載機」「将来的には10万トン級の原子力空母」などなど。

中国軍は2030年までに空母四隻態勢を組む計画。現状、アメリカの空母は全11隻で、横須賀の第七艦隊に配備されているのは一隻。アメリカ的には、沖縄基地のリスクが高まると同時に、第七艦隊を増強するか、グアムないしハワイまで戦線を下げる選択が迫られている。日本は大軍拡するか、新たな日中関係を構築するかの選択を迫られるだろう。

ドローンの分野でも、「安価で十分すぎる性能」という中国製スマホなどと同様の評価が確立しつつある。
科学技術全体の投資額も中国はアメリカに接近しつつあり、量子コンピューターも実現も視野に入っている。
私が主張している「2030年代に米中は拮抗する」は、当の中国人すら信じたがらないのだが、スケールメリットが活かされる時、圧倒的な力を見せるのだ。

一方、衰退する帝国というのは、大英帝国でも大清帝国でもソ連邦でも、衰退を食い止めるのは容易ではなく、「どこまで持ちこたえられるか」という話でしか無い。

そうした中にあって、日本の外務省は自国の国会議員に対するレクの中で、「ロシアの報道なんて全部ウソですから、真に受けないで下さい」と平気で言うような連中。中国についても同じだろう。あの連中にまともに中国の分析などできそうにない。
自民党の議員は「戦争はうあってみないと分からない」と言って戦争を始めた連中を擁護している連中なだけに、これまた「在日米軍が撤退する前に一発かましたれ!」くらいに思っている人が多そうで、とても安心できる状況にはない。
明治帝政と米帝の衰退と共に一掃されると良いのだが。。。
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2019年09月21日

ロシアとタリバンがモスクワ会談

【ロシアがタリバン代表とモスクワで会談、米との交渉再開促す】
 国営ロシア通信(RIA)は14日、ロシア外務省の話として、モスクワでロシアとアフガニスタンの旧支配勢力タリバン代表による会談が行われたと報じた。RIAによると、外務省報道官は「ロシアのザミル・カブロフ・アフガニスタン担当特別代表がモスクワでタリバンの代表団を迎えた」と語ったが、会談の日時には言及しなかった。
 これに先立ち、ドナルド・トランプ米大統領はタリバンとの和平交渉打ち切りを発表している。
 ロシア側がタリバンに対し、米国との交渉再開の必要性を強調したところ、タリバン側も米政府と対話を積極的に進める意思があると認めたという。
 米国とタリバン間の和平交渉をめぐっては、米側が駐留軍の規模を縮小し、タリバンが過激派グループを排除し安全を保証するとの内容で合意に達するとの期待が着実に高まっていた。
 しかし、トランプ大統領は7日、アフガニスタンの首都カブールで米兵を含む12人が死亡した自爆攻撃を理由に、米国で予定されていたタリバン幹部らとの極秘会談を急きょ取り止め、タリバンとの和平協議は「終わった」と宣言した。
 一方、米国とタリバンとの和平交渉に影響力を行使したいロシアは、今年に入ってからモスクワでアフガン政治指導者らとの会談を2回開催している。
(9月15日、AFP)

ロシア外交の強かなところだろう。
アメリカが鷹罠にはまっているなら、それはそれで良いが、タリバンがロシアを頼って和平交渉の調停を頼むなら、「それも良し」ということ。
ロシアとしては、アフガニスタンに対して影響力を行使できるようになって、ロシア南部の安全が担保されるのであれば、選択肢の一つになるだろう。イスラム原理主義の脅威は残るものの、中央アジアに反米国家ができるのは悪くないからだ。この点、「ISよりはタリバンの方がマシ」という判断もあるかもしれない。

シリア問題でも、アメリカが匙を投げたものを、色々問題はあるにしてもロシアが助けて一応は安定化に導いたことで、中東における一定のプレゼンスを確立しつつある。また、ロシアはトルコとも関係を改善させつつあり、「非欧米」諸国の有力な後ろ盾をなしつつある。
確かにロシアがシリアに投入したコストは非常に大きなもので、欧米のシンクタンクや識者には「割に合わない愚行」とする考察が多い。しかし、短期的なコストは過大でも、長期的には「非欧米」「反欧米」諸国が増えることこそ、ロシアの安全保障に貢献するものであって、カラー革命によって中東が全て「親欧米」になってしまうことこそ、悪夢だったに違いない。

タリバンとロシアの組み合わせなど、三十年戦争でフランスがプロテスタント側で参戦するような話だが、時代が再び混沌へと移りつつあることの象徴と考えるべきだろう。
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2019年09月16日

アフガンで鷹罠に嵌まってるアメリカ

【和平交渉、振り出しに=米、タリバンとの協議中止−アフガン戦争の出口見えず】
 合意間近とされていた米国とアフガニスタンの反政府勢力タリバンの和平交渉が振り出しに戻った。
 トランプ米大統領は8日に予定されていたタリバン指導者との会談を取りやめ、和平交渉も中止すると表明。タリバンも「米国民にさらなる被害が出るだろう」と態度を硬化させた。2001年の同時テロ以降続く「米史上最長の戦争」の出口は再び閉ざされた。
 「もうだめだ。できない」。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、トランプ氏は5日、アフガンの首都カブールで起きた自爆テロで米兵を含む12人が死亡したことを聞き、タリバンとの会談中止を決めた。
 同紙によれば、和平交渉が大詰めを迎えた8月下旬、トランプ氏はホワイトハウスでの側近との会合で、最後の交渉を首都ワシントンで行うことを思い付いた。数日後にはアフガンのガニ大統領だけでなく、タリバン指導者もワシントン近郊のキャンプデービッド山荘に招くことを発案。9月8日の「劇的な和平合意」演出に向けた計画が動き始めた。
 米政府は昨年7月以降、タリバンと和平交渉を繰り返した。9月1日に終了した9回目の協議では、米政府を代表するハリルザド・アフガン和平担当特別代表が135日以内に米軍約5000人を撤収させ、今後1年余でさらに段階的撤収を進めることを約束した。
 一方、タリバン側は国際テロ組織アルカイダと決別し、アフガンを対米テロ活動の拠点にしないことなどで「大筋で合意」した。だが、カブールでの自爆テロ後、タリバンが「外国軍の車列を狙った」と犯行声明を出したことで、トランプ氏の構想は崩れた。
 トランプ氏がタリバン指導者とガニ大統領との「秘密会談」を予定していたのは、くしくも米同時テロから18年の数日前。トランプ氏がツイッターで会談計画があったことを暴露すると、与党共和党内からも「キャンプデービッドは、米指導者が同時テロ直後にアルカイダと後ろ盾であるタリバンへの対応を協議した場所だ。タリバンを招くようなことがあっては断じてならない」などと批判が噴出した。
 米政府は、タリバンが力を誇示し、アフガン政府との今後の交渉で優位な立場に立つためにテロを続けていると分析。ポンペオ国務長官は、タリバンがテロ攻撃をやめれば交渉再開の余地はあると示唆した。
 交渉中止は「タリバンの暴力を止めるための戦略だ」(アフガンの政治評論家アフマド・サイーディ氏)と評価する声もある。だが、トランプ氏が来年の大統領選に向け、アフガンからの米軍撤収を目指しているのは周知の事実。米シンクタンク大西洋評議会のジャビド・アフマド上級研究員は「タリバンは戦場でも交渉の場でも勝っている」と述べ、成果を焦るトランプ氏に対し、タリバンが依然として優位な立場にいると指摘している。
(9月10日、時事通信) 

GMT「A Distant Plain」をプレイしたことのある人なら、超納得できる話。

現時点でアフガニスタンに駐留している米軍は約1万4千人。アメリカはまず5千人を撤兵しようとタリバン側と交渉したが、断念した格好になっている。
現状、アメリカ軍は米以外の全世界に約45万人を駐留させているが、一時的にでもタリバンを制圧させるためには30万人以上を投入する必要があると言われている。

興味深いことに、この数字はソ連がアフガニスタンに軍事介入した1970年代末から80年代にかけてと同じである。
ソ連軍が介入する前に、参謀本部は「アフガニスタン全土を制圧するには最低30万人、できれば50万人は欲しい」との数字を出し、「中ソ国境の防衛を考えれば、非現実的」との見解を出していた。
当時のソ連軍よりもよほど装備が近代化されている米軍をしても、一国を制圧するには物量に頼るほか無いことを表している。これはイラクでの経験が反映しているのだろう。

さらに面白いのは、現地のアフガニスタン政府軍が公式上は19万人も存在しているわけだが、多く見積もって国土の6割を抑えているに過ぎず、タリバンの影響圏は実質的には国土の半分以上を占めている。
「A Distant Plain」でも、1クールが終わると、政府軍と警察は3分の1が消失(自動除去)される仕組みになっており、戦力的にも米軍の半分以下で、「いないと困るけど、使い物にならん」状態が良く再現されている。

アメリカ側としては20年近くも戦果を挙げられないままウダウダやっている上、建前上は「民主政府」を守らねばならないため、とにかく駐留させざるを得ない。アメリカ人的には「アルカイダを叩いただけで、アフガニスタンのことなどはどうでもいい」のが本音だが、それを言ってしまったら、アメリカの価値観が根底から崩れることになる。ただし、トランプ氏はそのつもりのようだが。

他方、タリバンは勝利こそ収めていないものの、「侵略軍と戦う民族聖戦」を正義の旗として掲げている以上、下手な妥協はできないし、戦いを有利に進めている以上、不利な妥協をする必要も無い。
ベトナムと同様、もはやアメリカ、NATOが撤兵するほかに手立ては無い状態にあり、「誰がどのタイミングで決断するか」という問題でしかない。
しかし、ロシアからすれば、アメリカには少しでも長くトラップに嵌まっていて欲しいわけで、あれこれ手を打っているだろう。
さらに言えば、アメリカはタリバン勢力を抑えるために、アフガニスタンのISを陰で支援しているという噂もあり、三十年戦争くらいに訳が分からない状態になっている。

まさに泥沼である。
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2019年09月13日

これじゃあ中国は戦争なんてできないッス!

出勤すると、学生の何割かが迷彩服を着て歩いている。
去年もたまに見かけたが、こんなまとまった人数では無かった。
同僚の先生に聞いてみると、大学生二年生は軍事教練を受ける決まりになっているが、去年までは夏休み中に二週間にやっていたものが、今年からは新学期が始まってから最初の一週間で行うことになった、とのこと。
つまり、大学二年生の軍事教練らしい。

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だが、学生はそこかしこに座り込んでスマホをいじっているし、整列しているのを見ても、ロクに真っ直ぐ立っていられず、そもそも「整列」とすら言えない状況にある。
そもそもメガネ女子率が高めなので、ますますコスプレにしか見えない。
実際の教練の場面を見たわけではないが、およそ「軍事」にも「教練」にも似つかわしくない。
外国人ながら、

「米帝が攻めてきたら、どうするんじゃあ〜〜!!」

と叫びたくなってしまう。
いや、日本のように誰にも国防の義務がなく、自衛隊が国家傭兵として「米軍が来るまで戦うことになっている」と割り切ってしまうなら、それはそれで良いのだ。だが、その場合は一般国民は教練など不要だろう。
しかし、中国の場合、憲法が全公民に国防の義務を課しており、軍役の有無は別にして、国民は国防の義務を有している。それだけに、一応とは言え、社会的エリートを養成する建前にある高等教育機関における軍事教練は、本来であれば、重要な責務と課題を担うはずなのだ。

ケン先生がこう考える(嘆く)のは、ソ連帰りだからでもある。
ソ連のコムソモール(共産主義青年同盟)では、夏休みには一ヶ月程度の合宿があり、そこでは軍事教練も行われ、パルチザン訓練がなされていた。
それは、NATO軍が攻めてきた場合、同盟員がリーダーとなって、戦線後方でパルチザンを組織し、遊撃戦を展開するという想定の下にプログラムが組まれていた。
NATO軍に対抗するワルシャワ条約機構、あるいはアメリカ軍に対抗するソ連軍という世界トップレベルの軍事力を保有していたにもかかわらず、当のソ連共産党は米軍がソ連領内に深く攻め込んでくることを想定していたのである。
コムソモール員は必ずしも社会的エリートのみで構成されていたわけではなく、普通に高卒者も多かった。私が仲良くしていた女性は、日本で言えば美大出身で、「いかにも」なロシア美人だったが、私服で軍事教練を受けている時の写真を見せて、色々話してくれた。私服で軍事教練するところが一層パルチザンを思わせ、どこまでも徹底していた。

これは、長年「ソ連の脅威」「ロシアの伝統的拡張主義」などと西側史観を叩き込まれてきた西側人には全く想像もつかないだろうが、ロシア人というのは本質的には悲観的で防御的なのである。
革命内戦、革命干渉戦争(シベリア出兵)を経て、スターリンの独裁体制が完成してなお、スターリンは「必ずやポーランドと日本が東西から挟撃してくる」と恐れて軍備拡張を進め、現実にはドイツに宣戦布告無しで侵攻され、日本の関東軍も侵攻を準備していた(関特演)。

その意味で、日中戦争はあったと言えど、革命干渉もなく、冷戦においても主要は米ソ対立であったがために、中国の安全保障環境は、ソ連に比べると格段に緩かったのかもしれない。
ソ連学徒的には、軍の近代化は近代化として進めるも、それとは別に米軍や日本軍(自衛隊)の侵攻に備えて、国内で遊撃戦を行う体制を組んでおくのが統治者の責務であるように思われるのだが、現代中国(中共)はそうは考えていないようだ。

普通に考えて、アフガニスタンやイラクの事例を考えれば、突然アメリカが宣戦布告なしで侵攻してきて、中国の一部を占領し、自衛隊が「復興支援」と称して後方支援や治安任務を行うことなど、ソ連学徒的には「いつ起こってもおかしくない」くらいに現実的な想定だと思うのだが、全く謎である。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする