2018年04月19日

2017年度中国印税収入ランキング外国人部門

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2017年度中国印税収入ランキング。
外国人作家部門では東野圭吾氏と村上春樹氏が、『ハリーポッター』のJ.K.ローリング氏をおさえ、1位と2位に。両氏の印税額はそれぞれ日本円にして約7億円と3億円になる。スケールメリット大きすぎだろう。まさに「バスに乗り遅れるな」「Лучше поздно, чем никогда.」である。
黒柳徹子氏が入っているのは、『窓際のトットちゃん』が爆発的に売れたからだという。

日本の小説化を見た場合、東野圭吾、湊かなえ氏のようなトップ級でも印税収入は数億円程度と言われ、継続的に作品を輩出している中堅作家でも300〜700万円程度らしい(中央値的にはより低くなる)。つまり、よほど売れない限り、家族を持つことも難しい程度の収入なのだ。

特に小説のように言語依存度の高い媒体は、漫画やアニメなどよりも海外進出が難しく、市場が国内に限定されやすい。だが、日本市場は少子化に伴う人口減少と貧困化によって、今後さらに急激に縮小してゆくものと考えられる。

それだけに作家は今後の生き残りを考えた場合、常に中国市場を視野に入れ、中華系出版社と接点を持つことが重要となるであろう。
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2018年03月29日

『PSYCHO-PASS サイコパス』化する中国

【China to bar people with bad 'social credit' from planes, trains】
China said it will begin applying its so-called social credit system to flights and trains and stop people who have committed misdeeds from taking such transport for up to a year.
People who would be put on the restricted lists included those found to have committed acts like spreading false information about terrorism and causing trouble on flights, as well as those who used expired tickets or smoked on trains, according to two statements issued on the National Development and Reform Commission’s website on Friday.
Those found to have committed financial wrongdoings, such as employers who failed to pay social insurance or people who have failed to pay fines, would also face these restrictions, said the statements which were dated March 2.
It added that the rules would come into effect on May 1.
The move is in line with President’s Xi Jinping’s plan to construct a social credit system based on the principle of “once untrustworthy, always restricted”, said one of the notices which was signed by eight ministries, including the country’s aviation regulator and the Supreme People’s Court.
China has flagged plans to roll out a system that will allow government bodies to share information on its citizens’ trustworthiness and issue penalties based on a so-called social credit score.
However, there are signs that the use of social credit scoring on domestic transport could have started years ago. In early 2017, the country’s Supreme People’s Court said during a press conference that 6.15 million Chinese citizens had been banned from taking flights for social misdeeds.
(3月16日、ロイター通信)

日本語のニュースが無いため、英語の記事から。こうした事態は今後も増えそうだ。
要は、中国は今年5月より、「社会的信用」の低い人物を特定、高速鉄道や航空便の利用を最大で一年間禁止する措置を科せるシステムを導入するというもの。中国では、飛行機や新幹線に乗る際にも身分証を提示する必要があり、このIDには「フライトにおいて迷惑行為を起こした」「誤ったテロ等の情報を拡散した」「電車や飛行機の中で喫煙した」「過去に科された罰金を納めていない」「社会保険料を納めていない(事業者)」などの情報が記録され、その程度によって処分が科される仕組みになっている。フライトの利用禁止処分については、すでに実施されており、その制度が拡充された格好だ。

【参考】PSYCHO-PASS サイコパス

中国政府は「社会的信用システム」の導入を決定、2020年までに実施するとして、現在30都市で実験運用されているという。「社会的信用」は、「慈善事業に参加した」「公共料金を延滞せずに納めている」「違反行為が無い」などのプラス評価と、「違反・犯罪履歴」「公共の場で迷惑行為を行った」「SNSで政府を批判した」などのマイナス評価が、全国民のIDに記録され、AIが総合的に評価、良い評価の場合は公共サービスに関する優遇措置が得られるようになり、逆に悪い評価の場合は、公務員になれない、公共事業を受注できない、公共交通の利用に制限が課される、銀行ローンが借りられなくなるなどの措置が課される。

これは確かに従来の西側自由主義の基準からすると、「あり得ない」くらいに野蛮な、自由を阻害するシステムである。
しかし、全体主義の側に立った場合、このシステムの導入により、「法規に反した行政権の行使」「不公正な司法判断」「商業上の詐欺行為(偽造品や有害物の販売を含む)」などを極小化する効果が見込まれ、腐敗と非効率の根源である人治主義から法治主義への脱却を図ることができる(かもしれない)。ある意味で、法家思想の究極型と言えよう。

中国にはもともと天賦人権論の考え方が薄弱で、あるのはいかにして「自由の蛮性」と利己主義を統御しつつ、一定程度の「文明の自由」を確保するか、という考え方で、「社会信用システム」もこの発想に基づいていると考えられる(中国でその理論的背景を教わる機会があると良いのだが)。商鞅、韓非、李斯が生きていたら、どう評価しただろうか。

実際のところ、日本のように権力に近いものの犯罪行為が放置され、司法や行政の不公正が蔓延する日本社会から見ると、国家レベルでAIが公正に判断し、一定の基準を問答無用に全適用するという、中国の手法は「自由よりも公正を選んでいるだけ」なのかもしれない。

そして、日米欧が中国を非難できるほど、プライバシーや人権を守り続けられるかはかなり微妙な情勢にある。アメリカで施行された「愛国法」に基づく全世界での盗聴活動や、最近暴露されたフェイスブックによる治安当局への情報提供・協力など市民から見えないところで監視活動を強めている日米欧に比べた場合、一定の基準を明確にした上で、個々の官僚の裁量を極小化してAIに丸投げしようという中国の手法の方が公平で分かりやすいだろう。
同時に、天賦人権論を否定する勢力が、日本の自民党内や保守派で広がりつつあるのも非常に興味深い現象と言える。

それにしても、実際に体験・観察したくなってしまうのは、全体主義学徒の性としか言い様が無いけどw
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2018年02月09日

ポーランドで進行する歴史修正主義

【ポーランド、ホロコースト表現に罰則科す新法可決 最大禁錮3年】
 ポーランド議会は1日、ナチス・ドイツによるホロコーストが行われた強制収容所を「ポーランドの死の収容所」と表現したり、いわゆる「第三帝国」の犯罪にポーランドが加担したと非難したりした人物に、罰金または最大3年の禁錮刑を科す法律を可決した。イスラエルは強く反発している。
 ポーランドの対外イメージを守ることが新法の狙い。愛国主義的な政治理念を掲げる右派の与党「法と正義」が過半数を占める上院は1日、賛成57、反対23、棄権2の賛成多数で法案を可決した。同じく与党が多数派の下院では先月26日に可決済みで、アンジェイ・ドゥダ大統領が署名をすれば成立する。
下院での可決後、国外からは法案に抗議する声が上がっていた。イスラエル政府は新法の条文の一つについて、ホロコーストへのポーランドの関与を否定しようとする試みだと指摘し、法案の取り下げを要求。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は先月28日、「事実を歪曲し、歴史を書き換え、ホロコーストを否定するまねは決して許さない」と言明した。
 また、米国務省のヘザー・ナウアート報道官は31日、「ホロコーストの歴史はつらく、複雑だ。『ポーランドの死の収容所』などの表現は不正確で、誤解を招き、有害だという点は理解する」と前置きしながらも、新法は「言論の自由を侵害し、学術分野での使用をも制限しかねない」と声明で指摘。施行されればイスラエルや米国をはじめとする諸外国とポーランドの外交関係にも影響が及ぶと懸念を表明していた。
 第2次世界大戦中にナチス・ドイツの侵攻を受け占領されたポーランドでは、600万人の市民が命を落とした。うち300万人がユダヤ人だ。ユダヤ人を助けた人は、たった1杯の水を提供しただけでも占領下のポーランド国内に作られた強制収容所に送り込まれた。
 中東エルサレムのホロコースト追悼記念館「ヤド・バシェム」には、6700人余りの非ユダヤ系ポーランド人がナチスに立ち向かった「諸国民の中の正義の人」として顕彰されている。
(2月1日、AFP)

公式的に認められている数字では、第二次世界大戦前、ポーランド国内には約300万人からのユダヤ人が居住していたが、戦後生存が確認されたのは5万人に過ぎなかった。2%にも満たない生存率であり、征服者とはいえ、ソ連と大戦争を繰り広げていたドイツ単独では、ここまで完成された虐殺を行うことは不可能だった。つまり、ナチス・ドイツによる強制や誘導があったとはいえ、ポーランド住民の積極的な協力なくしてホロコーストは成立しなかった。実際、多くの証言がポーランド人の積極的な協力と参加を示している。これは、占領以前にドイツで吹き荒れていた反ユダヤ運動がポーランドにも伝染、同国内でも反ユダヤの気運が高まっていたことが影響している。

確かにナチスに対する協力の度合いでいえば、ポーランドはフランスやバルト三国よりも劣っており、ユダヤ人を匿った者も多かったことはあるようだ。それは、ポーランド人自身が、ナチスから見れば「絶滅すべき対象」であり、ナチスの構想としては、ソ連を打ち倒した後、ポーランド人をウクライナに強制移住させて絶滅するまで農奴として酷使する考えだったことに起因している。つまり、「ユダヤの次は自分」という気持ちがあったため、相対的にはナチスへの協力度は低かった。フランスの場合、ヴィシー(ペタン)政権という対独従属政府が成立したため、むしろ「独立を維持するために」政府を挙げて協力(密告)する傾向があった。
とはいえ、ポーランド・ユダヤ人の生存率が約1.7%だったのに対し、フランス・ユダヤ人は約32万人のうち殺害されたのは8〜10万人とされており、数字を見る限り、やはりポーランド(人)が免罪される理由は見当たらない。

新法の目的は「ポーランドの対外イメージを守る」というものらしいが、これは「被害者としてのポーランド」を前面に出し、「加害者・協力者としてのポーランド」を隠蔽する狙いがあると見て良い。
この辺は非常に日本と似ている。日本政府の場合、「被爆国としての日本」を前面に出す一方、「侵略者・加害者としての日本」を隠蔽すべく、膨大な公共リソースが割かれている。
ハンガリーでもこうした傾向が顕著になっていると聞くが、ナショナリズムと歴史修正主義の隆盛が国際社会にどのような影響を与えるのか、今後も興味深く見守りたい。
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2017年11月28日

オランダのポピュリズム政治

勉強会にてオランダのポピュリズムについて報告を聞く。

オランダは、今年3月に行われた総選挙で小党分立が進んでしまい、連立交渉が難航、オランダ史上初の4党連立(自由民主、キリスト教民主勢力、民主66、キリスト教連合)で新政権が発足したのは先月のことだった。下院定数150に対し、第一党の自由民主人民党が33議席、第二党の自由党(日本では極右扱い)が20議席、第三党の民主66とキリスト教民主勢力が19議席ずつあり、第二党を除外しての連立交渉が難航するのは当然の帰結だった。しかも、4党連立でも議席数は76と、半数を一議席上回るだけで、造反者が2人も出れば何も成立しない綱渡り状態にある。

さらに言えば、第一党の自由民主は総選挙において、自由党票を取り込むため、主張を中道右派からさらに右転回させたが、そこに連立のためとはいえ、中道左派でリベラル色の濃い民主66を加えた結果、移民政策、海外派兵問題、安楽死、同性婚、麻薬使用の拡大など様々な価値観で大きな開きが生じている。

日本の報道では、欧州の右派新興政党を指して「極右政党」と呼ぶケースが多いが、「フランスにおける既存政党の難しさについて」でフランスの国民戦線の政策を見てみたことがあり、日本の自民党や維新と比較して「より右」とは言えないことが判明している。

・移民の制限(排斥では無く、フランスの価値を尊重する移住者は認める)
・フランス国内におけるモスク建設の規制
・死刑復活
・公務員の削減
・減税
・同性パートナーシップ制度の廃止
・国籍の血統主義化
・補助金制度の見直し
・農村社会の重視


主張を見ている限り、日本の自民党と維新を足して二で割ったようなイメージであり、これを極右としてしまうと、日本では極右政党が議会の3分の2以上を占めていることになる。ただし、重農主義を唱えている点で、国民戦線は自民党よりも「伝統重視」と言える。
フランスにおける既存政党の難しさについて

オランダの自由党も概ねこれに近い主張で、基本にあるのは「EU懐疑主義」と「反イスラム」の二つ。EU懐疑論は、EU官僚による経済・財政支配からオランダの自律性と独立性を取り戻すことを目的としており、中央統制に対する反発をもって極右とは言えない。また、「反イスラム」は、イスラム原理主義がオランダ伝統の自由と寛容を阻害し、既存のコミュニティと融和を破壊するものとして反対しているのであり、彼らの主観では「自由と寛容を守る」という意味での保守なのだ。これも単純に極右とは言えないだろう。

オランダの国の成り立ちを考えた場合、その原点は三十年戦争(1618〜1648)あるいはそれ以前において、カトリックによる信教の強要とカルヴァン派の弾圧から、信教の自由と多様性を認めるために、スペインと長い戦争を経て独立を勝ち取ったところに起因している。故に、長いことオランダは政治亡命者を率先して受け入れてきた。出版・印刷業が発展したのは、他国で出版できない内容の本でもオランダでは可能だったからだ。
それだけに、伝統的な「自由と寛容」を守るために、それに否定的なイスラム原理主義を排除するのは、「積極的自由主義」「闘う自由主義」とも言える。

翻って、日本における日本会議や安倍政権が主張する「保守」は、明治帝政に成り立ちの起源を求め、戦後民主主義を否定し、帝権による権威主義を追及するものであって、オランダの自由党やフランスの国民戦線が求める価値とは大きく異なる。

もっとも、オランダ自由党の場合、党首ウィルデルス一人に全権限が集中しており、そもそも党員が党首一人で、候補者は党首の面接で選別され、議員ですら「スタッフ」という括りで党員ですらないという。だが、興味深いことに、候補選定の際には極右思想や他党での活動歴のある者は排除されるともいう。確かに独裁政党ではあるのだが、どこか小池百合子氏に似たところがある。

選挙制度においてもオランダのデモクラシーは際立っている。政党名簿式比例代表制だが、立候補者を出す政党に求められるのは、150万円ほどの保証金と20ある選挙区毎に30人の同意人、計600人の署名だけだという。日本では候補者一人分の供託金にすら足りない。政党は予め順位を振った候補名簿を発表し、投票の二週間前には全有権者に候補者一覧の入った投票用紙が送られ、投票者は好きな候補者にチェックを入れて投票する。名簿順が下位でも得票が一定数以上あると優先的に当選枠に入れられるシステムで、拘束式と非拘束式の中間的なシステムになっている。

日本では、氏名を投票用紙に正確に記すことが求められるが、世界的には候補一覧を見て、投票したい候補の頭にチェックを入れるだけのシステムが圧倒的だ。これは各国の識字率の問題もあるが、高齢者や障がい者などの事情を考慮したものでもある。日本でも、90年代の政治制度改革に際して細川政権がマークシートの導入を決めたものの、自社さ政権下で自民党の主導で記名式に戻された経緯がある。
この点からも、街頭で10日間ほどワアワア騒いだだけで投票所で候補者の氏名を書かせるだけの現行制度が、いかに既存の知名度に依存した体制側に有利な制度であるか分かるだろう。
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2017年11月07日

降下兵だった文大統領

韓国の民主化運動出身で弁護士、盧武鉉元大統領の側近にして共同事務所のパートナーだった文在寅大統領は、右派からは「極左」「従北」などと非難されている。だが、文氏が兵役で入隊したのは、特殊戦司令部所属第一空挺旅団という韓国軍でも最強部隊の一つだった。

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韓国の兵役は一定期間内であれば、入隊時期を自分で選べる制度になっているが、軍事政権期には民主化運動家や人権運動家などに対して強制入隊させることが横行していた。一種の懲罰召集である。しかも、文氏は「最も訓練が厳しい」とされた第一空挺旅団に一兵卒として配属される。だが、軍隊内はある種の実力主義で、文氏も肉体的にも精神的にも適合していたらしく、主に爆破任務に従事して高く評価され、司令表彰も受けた上、除隊までに兵長にまで昇進している。兵役期間が3年(当時)であることや出身を考えれば、かなりのものだろう。
しかも入隊期間中の1976年に板門店で南北が一触即発の事態となった「ポプラ事件」にも動員され、まさに休戦中の朝鮮戦争の第一線に居たことが分かる。日本の自衛官上がりの国会議員とはかなり毛色が違うようだ。



その文氏、除隊して40年になる上、もう60代半ばだが、軍の視察に際しては軍服を着てライフルを携行して訓練さながらに行動し、自ら新型ライフルの試射を行い、その腕前は軍幹部をうならせるものだったという。
ちなみに文氏が大統領選で掲げた主な政策は下記の通り。

・財政出動による80万人の雇用創出
・最低賃金を1万ウォン(日本円で1千円)に
・非正規雇用を半分に
・福祉国家5カ年計画
・共に働いて配慮し合う男女平等社会
・幼稚園から高校まで無償教育
・脱原発のロードマップ推進
・平和と共存で繁栄する韓半島


韓国では新自由主義政策が進みすぎて、先進国中最低レベルの法人税率、労働報酬、社会保障となっており、財閥支配もあって経済格差や貧困が日本とは比較にならないほど深刻な状況にある。しかも北朝鮮からの挑発・圧力もあって、軍備を縮小することもかなわず、非常に厳しい環境に置かれている。それだけに、こうした社会民主主義的政策は、日本よりもはるかに支持されているのだろう。
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2017年09月26日

マクロン節はどこまで通じるか

【フランスの小学校で少人数学級制スタート、マクロン大統領が公約】
 フランス各地で4日、貧困地域の小学校における教育水準を高める目的で1学級の人数を12人に縮小する制度が始まった。少人数学級制度は、エマニュエル・マクロン大統領が大統領選で公約の目玉の一つとして掲げていた。
 少人数学級制度が「優先的」に導入されたのは、古くから学業成績が低く貧困率の高い地域の小学校で、5〜6歳児の学級が対象。フランス全土の計2500の学級で、児童数が現行の25人から最小で12人まで縮小された。
 マクロン氏は大統領選で教育制度の不平等に取り組むと約束していた。小学校で夏休みが終わり新年度初日を迎えたこの日、同氏は東部フォルバックの小学校を視察に訪れた。
 パリに本部を置く経済協力開発機構(OECD)の学力調査では、フランスの順位は加盟国中27位。調査は15歳を対象に読解力や数学などをテストするもので、フランスの教育制度についてOECDは、優秀な生徒には有効である一方で基礎学力の低い生徒に対応できておらず、学力格差が生じていると分析している。
(9月5日、AFP)

フランスのマクロン大統領の支持率は就任から4カ月で半分以下の24%にまで低下している。提唱した労働改革に対しては、パリなどで大規模デモが発生、国内不穏が高まっている。

貧困地域を中心に超少人数学級への移行を進めるというのは英断ではあるが、「いま優先的にやるべきことか」と考えると、疑問を禁じ得ない。少人数学級の教育的効果は認めるが、そもそも貧困を放置し、むしろ新自由主義政策で貧困を加速させる方向に進めながら、「教育の均等」だけを優先するというのはちぐはぐに思えるからだ。こうしたエリート主義的発想は、今後ますます国民大衆の意思と乖離してゆきそうだ。

もっとも、いまだ一学級40人制(小学1年生だけ35人)を堅持している日本からすると羨ましい限りなのだが、日本ではいまだ大学級制に対する信仰が根強く、少人数学級に対する忌避感(社会性が育たないとか行事に支障がでるなど)も強く、何よりも財政上の都合(OECD諸国で最低の公費負担)から、その実現性は限りなくゼロに近い。
【フランスで改正労働法に反対する初の大規模抗議行動、労組発表で40万人】
フランス各地で12日、エマニュエル・マクロン大統領(39)の経済改革の目玉である改正労働法に反対する抗議行動が行われた。マクロン大統領による企業寄りの経済政策に対する初の大規模な抗議行動となった。
 仏内務省は約22万3000人がデモ行進に参加し、13人が逮捕されたと発表。一方、鉄道労働者、学生、公務員らに約4000のストライキと180の抗議行動への参加を呼びかけていたフランス最大の労組連合組織、フランス労働総同盟(CGT)は計約40万人が参加したとしている。
 抗議行動は、パリで無政府主義者と警察が単発的に衝突し催涙ガスが使用されたほかは極めて平穏に行われた。CGTのフィリップ・マルティネス委員長はパリで記者団に対し「これは最初の抗議行動で、成功だったようだ」と語ったが、鉄道網や航空管制、公共サービスへの影響は限定的だった。
 高止まりする失業率の引き下げを目指している今回の改正労働法が施行されれば、企業は雇用条件について従業員とより柔軟に交渉できるようになるほか、従業員を解雇する際に必要となる費用も減少する。
 企業や投資家らはフランスの制約の多い労働法や強い力を持つ労働組合について以前から不満を訴えていた。マクロン大統領は、フランスを地元企業や外国人投資家にとってより魅力的な場所にしたいと考えている。
 ストライキやデモが行われたこの日は、停滞する経済の立て直しに賭ける若き大統領、マクロン氏にとって試練となった。マクロン大統領は先週、批判勢力を「怠け者や皮肉屋、過激派」と呼び反感を買っていた。
 抗議行動の参加者数はマクロン大統領の経済政策に対する抵抗の尺度となるため精査されている。速報によると参加者はフランスで最近行われたほかの抗議行動よりも少なかった。
 調査・コンサルティング企業ポリングボックスの政治アナリスト、ジェローム・サントマリー氏はAFPに「今日の参加者はあまり多くはなかった」と述べ、労働法改正はマクロン氏が選挙公約で訴えていたことであり、この問題ではマクロン氏が優位に立っていると指摘した。映像は、首都パリで行われた改正労働法に反対する抗議行動。
(9月13日、AFP)

この規模のデモやストライキはフランスでは珍しいことでは無いので、今すぐどうかなるわけではないが、今後の不穏を予測させるには十分であろう。

マクロン氏の新自由主義路線は、さらなる移民や外国人労働者を呼び込んで、国内の労働条件を悪化させ、経済格差や地方の疲弊を加速させる可能性が高く、同時にフランスのドイツ従属(欧州銀行への従属)を強める結果にしかならず、「反EU」「排外主義」「保護貿易」支持層を増やすのは間違いない。EUというのは、域内での経済的自由を保障する一方で、地域の経済的自立を保障せず、かといって日本の地方交付金のような域内の格差を是正するシステムも無いだけに、圧倒的に「強い者が勝つ」システムで、敗者を救済する術を持たない。
オランド政権下で実施された富裕税も、同じ社会党政権下でマクロン氏らの主導によって廃止してしまっており、所得再分配機能も大きく低下している。また、マクロン氏はシリアに対する武力介入を支持、ロシアに対する制裁強化を主張するなど、対外タカ派(介入主義)でもあり、この点でも国内対立を促進させる恐れがある。
マクロン氏の「自由」に特化したリベラリズムは、地域コミュニティや国民統合を破壊する方向に働く可能性が高く、今後フランス国内は混沌化が進むものと見られる。
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2017年09月22日

ロシアで寿命増と乳幼児死亡率低下

久しぶりにロシアネタ。
9月11日のロシア保健省の発表によると、ロシア人の平均寿命が72.5歳と新記録を達成。男性67.5歳、女性77.4歳で、心血管疾患、腫瘍、結核、呼吸器・消化器疾患による死亡率減少に加え、暴力による死亡も減少しているという。
乳幼児死亡率も減少傾向にあり、モスクワとボロネジ州で3.6、チュバシ共和国で3.7(1000人中)と西欧先進国の水準に至っている。同省は、全国43の地域で世界最高の水準に達しているとした。
なお、2000年代前半におけるロシアの乳幼児死亡率は12〜17だった。また、平均寿命は1994年に64歳にまで低下していた。

E・トッド先生がソ連の乳幼児死亡率の増加をもって「10年から30年のうちにソ連は崩壊する」と予言されたのは1976年だった。
1976年に、私はソ連で乳児死亡率が再上昇しつつあることを発見しました。その現象はソ連の当局者たちを相当面食らわせたらしく、当時彼らは最新の統計を発表するのをやめました。というのも、乳児死亡率(1歳未満での死亡率)の再上昇は社会システムの一般的劣化の証拠なのです。私はそこから、ソビエト体制の崩壊が間近だという結論を引き出したのです。
エマニュエル・トッド『最後の転落』

ロシアの乳幼児死亡率低下は、欧米の論者による「ロシア崩壊論」の逆を行く数字を示している。寿命の増加や乳幼児死亡率の低下は、公衆衛生と社会保険制度の整備を意味すると同時に、社会の安定そのものの指標でもある。
特に近年では、あのロシアでも若年層を中心にウォッカ離れが進んでおり、「そもそも酒を飲まない」「飲むのはワインだけ」という者も増えているという。つまり、現在の50代以上の層が寿命を迎えると、さらに寿命が延びる可能性が高いと言えよう。
posted by ケン at 12:11| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする