2017年06月10日

張作霖 爆殺への軌跡 1875-1928

51whLGx7LnL__SX341_BO1,204,203,200_.jpg
『張作霖 爆殺への軌跡 1875-1928』 杉山祐之 白水社(2017)

名著『覇王と革命−中国軍閥史 1915-28』を著した杉山祐之氏の新作。
前著『覇王と革命』は、辛亥革命から蒋介石による北伐開始までの軍閥闘争を描いている。ケン先生も書評を書こうと思っていたのだが、つい書きそびれてしまったので、ここで軽く触れておく。現代中国史は、共産党や国民党あるいは帝国日本などの立場が強く作用するため、なかなか客観的な解説書が無い。だが、本作は可能な限り偏りを排しており、かと言って平板な解説になることもなく、非常にダイナミックな歴史を再現している。しかも、フィクションでは無く、相当に資料が読み込まれており、曖昧な点については複数の視点や理解が提示され、学術性と読み物のバランスが絶妙な作品に仕上がっている。軍閥による群雄割拠期は、共産党政府にとっても国民党政府にとっても鬼門であり、どちらの国でも客観的研究が難しい状況にあるだけに、非常に貴重な一冊だと言える。また、日本人的には、つい日本の視点から満州や上海を見てしまうだけに、中国側の視点から見た日本の侵略意図を再確認する意味でも大事だ。

今回の『張作霖』は、前作では「軍閥の一つ」だった張作霖を主人公とし、その誕生から死までを丹念に追いつつ、彼の視点から見た軍閥闘争と日帝の脅威を描いている。前作の特長である、学術性とエンターテイメント性のバランスや客観性は本作でも守られており、むしろ個人に焦点が当てられているだけ分かりやすくなっているし、相変わらず「読ませる」記述になっている。
著者が「上手い」のかもしれないが、張作霖のどこまでも「中華英雄」を追求する姿勢が心地よく、本人もそれを意識して史記や三国志などの故事を真似ようと努力しているところや、彼をめぐる周囲の人々との関係がどこまでも中国的(情義が優先される)であるところなど、非常に面白いと同時に、「あぁ、中国ってそうだよな」と思わせてくれる(家に飛び込んできた雛は決して殺さないとか)。

小さな雑貨屋に生まれ、各地を転々としながら少しずつ己の才覚でのし上がり、自警団長からいつしか軍閥の長になって、最後は東三省を支配してソ連と日本と関内軍閥群と渡り合うまでに至った。まさに「乱世の梟雄」であり、それだけの実力と魅力がある。そして、普通に日本史を習うだけではまず分からない、「なぜ関東軍に謀殺されたのか」を学ぶことができる。そこに、本土では「売国奴」と言われ、日本では「馬賊の一頭目」と見なされる張作霖の実像を見ることになるだろう。

馴染みの無いテーマではあるが、地図や写真もそれなりに配されて読みやすくなっている。アジアの近現代史に興味のある者なら、二冊とも抑えておくべきだろう。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月07日

英労働党が保守党を猛追

<英総選挙>あと1週間、労働党支持が急伸>
 8日に投開票される英総選挙まであと1週間となった。当初は与党・保守党の圧勝と予想されたが、選挙終盤に最大野党・労働党が急伸。保守党にどこまで迫ることができるかが焦点となっている。
 世論調査会社「YouGov」が5月31日に公表した調査結果によると、労働党は4月21日時点の23ポイント差から3ポイント差まで保守党に肉薄。保守党のマニフェストが、中流以上の高齢者の介護費用負担を重くしたことが響いたとみられている。ただ、「YouGov」以外の調査では、依然として保守党の議席が増えるとの予測もあり、情勢は流動的だ。
 労働党が1974年以降、議席を維持する英中部ウルバーハンプトンの南東選挙区で、地元誌のサイモン編集長は「貧しい労働者には保守党のマニフェストに盛り込まれた高齢者の負担増は影響しない。むしろ、政治への不信感から棄権が多くなる」と話す。
 実際にこの選挙区を歩くと、労働党の苦戦ぶりが感じられる。労働党支持者だったパン工場で働くスーさん(52)は「党は福祉に頼る人や移民を保護することしか考えていない」と語った。今回は保守党に投票する。昨年の国民投票では欧州連合(EU)離脱に投票。離脱交渉では保守党を率いるメイ首相のような強い指導者が必要だと考えている。
 この地域は鉄鋼業で栄えたが、保守党のサッチャー政権が誕生した79年以降、多くの企業が倒産。当時の恨みから、労働党支持者が多いとされる。
 外国生まれの住民の割合は16%と、イングランドとウェールズ地方の平均13%を上回る。大学卒業者の割合は23%と全国平均の38%を下回り、失業率は英国平均の倍近い8.4%。貧困層が多く、国民投票では移民の制限を求めて62%が離脱を支持した。
 労働党は、国民投票では保守党と共に残留を支持。投票後は「民意を尊重する」として保守党と同様に離脱を進める。しかし、交渉を巡り、両党の姿勢は異なる。メイ氏は移民の制限を打ち出し、交渉に強い姿勢で臨むことを強調。労働党のコービン党首は移民の制限を明確に示さず、残留派に配慮してEUの単一市場と無関税貿易を続けるとしている。
 インドからの移民で、自動車部品工場で働くダーナムさん(56)の目にも、EUとの交渉はコービン氏では頼りなく見える。保守党支持に回った同僚もいる。大学生の長女は緑の党に変えた。それでも「移民に寛容な労働党の方が、まだまし」と言う。労働党の牙城で、両党のつばぜり合いが続いている。
(6月1日、毎日新聞)

当初英保守党の圧勝が伝えられたものの、ここに来て労働党が猛追しているという。保守党を「油断させない」ためのプロパガンダかと思わなくも無いが、世論調査結果に満足した保守党がいささか不用意な政策を打ち出してしまった面は否めない。
とはいえ、労働党は現在もなお古典的社会主義派とブレアに象徴される市場重視の「第三の道」派が激しく相克しており、コービン党首もかろうじて党首の座を維持しているに過ぎず、広い支持を集められるだけの状況には無い。つまり、保守党の敵失や二大政党制に助けられているだけで、展望が見えているわけではない。だが、その主張は確認しておこう。

【税制】8万ポンド(約1200万円)を超える高所得者に対する増税。法人税の引き上げ。民間の健康保険に課税してNHS(国営健保)の財源にする。

【積極財政】大学無償化。公営住宅の整備促進。民間住宅の賃料抑制策。郵便、鉄道などの再国営化。

【安全保障】対テロ戦争に消極的、外交対話重視。地域の治安、社会プログラムの強化。

【労働経済】最低賃金の引き上げ。最高賃金の設定。民間住宅の家賃規制。

【移民】移民規制に反対。公正なルールに基づく管理。不当な待遇をなす企業に対する監視強化。
posted by ケン at 09:14| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月18日

ドイツ連邦軍でも極右汚染

【ドイツ軍兵舎2カ所でナチス関連物 全施設を検査へ】
 ドイツの国防省は7日、同国軍の兵舎2カ所でナチスに関連した物品が見つかったことから、連邦軍の監察官が全兵舎の検査を命令したと発表した。フランス北東部のイルキルシュにある仏独合同旅団の駐屯地で、ナチス・ドイツ時代のドイツ国防軍に関連した物品が共有スペースに置かれていたのが見つかったほか、ドイツ南西部ドナウエッシンゲンのフュルステンベルクでは、ナチス時代のヘルメットが陳列キャビネットに置かれていたことが6日に判明した。独誌シュピーゲルによると、壁にはドイツ国防軍の兵士の写真が壁に掲げられており、ナチス時代の銃やヘルメット、軍の装飾品が置かれていたという。国防省広報官がロイター通信に語ったところによると、国内法が禁じるカギ十字などのナチスのシンボルがあしらわれた物品は見つかっていない。
 これに先立ち、28歳の陸軍将校がシリア難民を装った攻撃を計画していたとされており、ドイツ軍内の極右思想が問題になっている。フランクフルトの検察は、同将校には「外国人排斥思想の背景」があると指摘した。ドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン国防相は計画されていた訪米を取りやめ、急遽(きゅうきょ)、将校が生活していたイルキルシュの兵舎を訪問。その際にドイツ国防軍に関連した物品が見つかったという。フォン・デア・ライエン国防相は今月3日に、現代の連邦軍の中で、ドイツ国防軍を崇拝するような行為は許されないと語っていた。国防相は今回の問題は単独の事例ではないと指摘。「団結心が何であるかを誤解した」軍幹部らが、「見て見ぬふり」をしていたと批判した。しかし反対勢力から、軍全体の名誉を傷つける発言だと批判された国防相は、調子が強すぎた謝罪している。
(5月8日、BBC)

西側自由主義国の中でも最もリベラルで、「軍隊の民主化」の手本とされたドイツ連邦軍で、難民政策を推進する政府枢要に対するテロ計画が発覚、さらに軍内でナチス時代への郷愁を思わせる傾向が発見されている。特に先のテロ計画では、軍の内外に武器、弾薬、情報を提供した協力者の存在が確認されており、事態の深刻さをうかがわせる。
特に今回の場合は、退役軍人ではなく、現職の士官が主導していたことで、連邦軍の存在意義や士官教育に対する疑義が生じている。また、「上層部が知っていて見て見ぬふりをしていた」辺りは、日本の5・15事件や2・26事件を彷彿させる。

日本でも航空幕僚長が、航空自衛隊がイラクで行っていた空輸活動の一部を違憲とした名古屋高裁判決について「そんなの関係ねぇ」と言ったり、同じく航空自衛隊内で皇国史観の学習会が開かれていたりしたことなどが発覚しているものの、自由民主主義体制に対して暴力行使する計画までは、少なくとも表向きは出ていない。

どのような体制であれ、暴力装置である以上は常に暴発するリスクがある、というだけの話であり、ドイツですら例外たり得ないということなのだが、やはりかつて最も民主的だったはずのワイマール体制がナチズムに支配された経験があるだけに、もともと帝政で軍部の発言が強かった日本とはショックの大きさが違うのだろう。

欧州の場合、国家主権の相当部分、特に経済と金融政策の自律性がEUに奪われているため、国内の貧困やEU内経済格差に対して民族国家としてできることが非常に限られており、国内の貧困解消を掲げて決起した2・26事件と似たような背景事情を抱えている。EUの中で最も裕福なはずのドイツで、これが起きたということは、政府や議会がリベラル過ぎると、逆に反乱の芽を育ててしまう可能性を示している。
今後の政権選択によるが、反露、反テロを掲げ続ける場合、軍拡は避けられないが、同時に軍の発言力と暴発リスクを増大させるという課題が生じる。

日本の場合、(欧米基準で言えば)最初から極右政権が成立して、対中・対北強硬策を打ち出しているだけに、自衛隊内部の不満は大きくないかもしれないが、強硬策に比して軍拡の度合いが小さいため、「言ってることとやってることが違うじゃねぇか」という不満は高まってゆくかもしれない。つまり、強硬策を採り続ける場合は、軍拡する必要があるわけだが、今度は暴力装置の肥大化を生み、それはそれで暴発リスクを大きくするという課題を抱えている。
posted by ケン at 12:19| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月11日

フランスは今日もグダグダ

【ルペン氏「国民は変わらない政治に投票した」】
 7日に行われたフランス大統領選の決選投票で、極右・国民戦線のルペン氏は約34%を得票した。ルペン氏への支持は自国を優先する内向き志向がフランスに広がっている状況を示している。「国民はこれまでと変わらない政治に投票した」ルペン氏は7日夜、パリでの集会でこう語り、悔しさをにじませた。選挙期間中、ルペン氏は反グローバル化や欧州連合(EU)離脱を掲げ、EU統合を推進するマクロン氏と真っ向から対立した。マクロン氏の地元にある、国外への移転が決まっていた工場に乗り込んで存続を訴えるなど、地域や住民を二分しかねないテーマを争点化した。国民戦線はもともと移民が多い南部が地盤だが、産業が衰退した北東部で保護主義的な政策を訴え、支持を伸ばしてきた。市場の国際化が進み、激しい価格競争を強いられている農民らへの浸透も進む。
(5月8日、読売新聞)

【「マクロン氏辞めろ」仏で大規模デモ 大統領選一夜明け】
 フランス大統領選の決選投票から一夜明けた8日、次期大統領に決まったエマニュエル・マクロン氏に反対する大規模なデモがパリ市内であった。就任は14日だが、デモでは辞退を求める声もあり、今後の政権運営の厳しさをうかがわせた。デモは左派系の市民団体などが呼びかけた。パリ中心部のレピュブリック広場からバスチーユ広場まで、約1・5キロメートルの大通りいっぱいに並んで行進した参加者は「1日で十分。マクロン氏は辞めろ」「7日は(敗れた右翼・国民戦線の)ルペン氏と戦った。今日はマクロン氏に抵抗する」などと訴えた。デモ隊と警官隊が衝突する場面もあった。今回の決選投票の投票率は歴史的な低さで、マクロン氏は国民から広範に支持を得ているわけではない。パリに住むIT技術者のアメリエ・ゴーティエさん(43)は「マクロン氏が掲げる労働規制の緩和で、労働者は守られなくなる。市民の本当の生活を分かっているとは思えない」と話した。
(5月9日、朝日新聞)

当選したマクロン氏は決選投票で65%を獲得したものの、これは有効投票中の得票率であり、実は投票率そのものは74%で、投票数の11%(約400万票!)が白票・無効票だったことを考えると、全有権者の43%からしか支持されておらず、ルペン氏は同22%であったことが分かる。
そもそもマ氏が勝利したのは、本来の保守派候補がスキャンダルで脱落し、相対的に支持が上回ったためであり、議会に支持基盤を持たないことを加えても、相当に厳しい政権運営を余儀なくされるだろう。

一方、ル氏は決選投票を意識しすぎて、「脱EU」を撤回してしまうなど自らの主張を徹底できなかったことが徒になってしまった感じがある。ル氏としては、「フランス・フランの復活で金融政策の自律性を取り戻し、保護貿易で国内産業を独自に再建、国内雇用を確保して景気を回復する」「露仏同盟でドイツ・中欧同盟を包囲する」と堂々と主張した方が、勝てないまでも票を伸ばしたはずであり、「次」へのチャンスも残したはずだった。一回目の投票で反EU票はメランションや他の左翼票を含めて43%以上に上ったのだから、「脱EU」は十分な対抗軸になり得た。
ゲーム的に表現するなら、目の前のわずかな得点に固執して大局を見失った形で惜しいところだ。

マ氏の政策は、オランド氏の新自由主義路線を加速させるだけの話で、基本路線は従来のものを踏襲している。その意味でル氏の敗戦の弁は正しい。新自由主義路線は、さらなる移民や外国人労働者を呼び込んで、国内の労働条件を悪化させ、経済格差や地方の疲弊を加速させる可能性が高く、同時にフランスのドイツ従属(欧州銀行への従属)を強める結果にしかならず、「反EU」「排外主義」「保護貿易」支持層を増やすのは間違いない。EUというのは、域内での経済的自由を保障する一方で、地域の経済的自立を保障せず、かといって日本の地方交付金のような域内の格差を是正するシステムも無いだけに、圧倒的に「強い者が勝つ」システムで、敗者を救済する術を持たない。
つまり、「親EU」のマクロン氏の政策は、「敗者」を増やすと同時にフランスが弱者を救済する術を持たない(経済自律性の放棄)ことを宣言するものであり、構造的に「反EU」の支持層が増える形になっているだけに、ルペン氏は勝負を急ぐべきでは無かった。

それにしても、毎度のことだが、世界あるいは欧州情勢が混沌としている時は、フランス政治が真っ先にグダグダになってしまうのは、もはや「お家芸」と言えるレベルだろう。

【追記】
先日、フランスの専門家の先生がマクロン大統領に期待する旨の話をされていたが、「お前のエリート主義とリベラリズムがポピュリズムの源泉になっているんじゃねぇか!」と叫んでやりたかった。
posted by ケン at 13:42| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月05日

メランション候補が訴えたもの

4月23日に行われたフランス大統領選挙は、四候補が得票率19〜24%の中にひしめくという大混戦に終わり、マクロン候補とルペン候補の2者が決選投票に進出した。だが、決選に進んだ二候補が獲得したのは全票のうち45%に過ぎず、しかも両者とも議会に支持基盤を持たないという点で、何重にも危うい状態が続いている。
中でも興味深いのは、当初「泡沫」扱いだった「極左」とされるメランション候補が得票率19%、700万票を獲得した点にある。一位のマクロン候補の得票は865万票に過ぎないことを考えても、フランス人らしい「分かりにくさ」が垣間見える。

社会党のアモン候補は229万票、6.3%の得票に終わっている。これは、フランス社会党のエリート化と、政権慣れして行政官僚との一体化が進み、保守党派との違いが殆ど見いだせなくなったことに起因していると考えられる。
もっとも、その意味では社会党員ながら無所属で出馬したマクロン氏が、より親EUと新自由主義色を前面に打ち出しており、エリート層を中心にかつてのサルコジ支持層を取り込んで勝利を収めている。

フランス社会党の凋落は、新自由主義的要素を取り込んだ「第三の道」路線の限界を示すものと考えられるが、マクロン氏の勝利は、同時に新自由主義がいまだ色あせていないことを意味している。
これを日本に当てはめて考えた場合、民進党の「嘘くさい左派色」と「必死に隠す新自由主義色」はいかにも中途半端な主張で、エリート層からも労働者層からも嫌悪される原因になっているとの仮説が立てられる。そして、むしろ「新TPP」「徹底した規制緩和」「市場開放」などの新自由主義を打ち出すか、そうで無いなら徹底した左翼色を打ち出すのが、合理的な選択となるだろう。

日本の不幸は、小沢自由党や「みんなの党」のような新自由主義政党が必ず政権に擦り寄って自滅していること、そしてNK党や社民党が中途半端に「良い子」になってしまって、社会主義やマルクス色を隠してしまっている点にある。
そこで、一部から「極左ブログ」認定いただいているケン先生としては、メランション候補の政策・主張を参考にして、旧式左翼に替わる新型左翼のモデルを考えてみようと思う。まず、メ候補の主な主張から。

「所得再分配機能の強化=大きな政府」
「フランスの国家主権強化、必要ならEU離脱を厭わず」
「週4日労働=週32時間労働制」
「移民賛成」
「脱原発」
「超規模財政出動、公的部門強化と公共投資拡大」
「年金支給開始年齢の引き下げ」
「NATO離脱、対外戦争反対」
「大統領権限の縮小=第六共和政」


つまり、マルキシズムに親和的な一国社会主義だが、コスモポリタニズムと国際主義は護持するという路線と言える。日本では、旧式左翼が週40時間労働制すらまともに主張できず、連合は訳知り顔で「労働時間インターバル制度」などを唱えている始末で、全て「死なない程度に働けるようにしよう」くらいの主張しかしていない。旧式左翼や既存のナショナルセンターが支持されないのは、政府や資本に遜りすぎて、労働者の権利を十分に主張できていないことに起因していると見るべきだ。
その他、細かいところも抜き出してみてみよう。

「金融取引への課税強化」
「大手銀行の経営責任追及」
「経営陣や株主の法外な報酬の規制」
「時短の実現による350万人の新規雇用」
「GDPの1%を文化と創造(芸術)に」
「音楽、映画、文化コンテンツを合法的に提供するプラットフォームを有するオンライン公共図書館の設立」
「給食、通学費、教材、文具などの無償化」
「男女平等を尊重しない企業に対する罰金と刑事罰、公共調達のアクセス禁止」
「代表機関(政治、行政)における女男間パリティ制度」


確かにやり過ぎ感満載で左翼ポピュリズム的主張が羅列されているわけだが、変に「現実=資本」に妥協して労働者の権利を主張しなくなったことが、日本を含む欧米の旧式左翼が沈む原因になっていることは確かだろう。程度の問題はあれど、我々はメランション候補に象徴される欧米の非従来型左翼に学ばなければならない。

なお、メ候補は決選投票に際してマクロン氏もルペン氏もどちらも推薦しないことを明言している。これもまた従来型左翼には見られなかった現象であり、興味深い。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月26日

2017フランス大統領選1次投票

【仏大統領選、決選投票はマクロン氏圧勝の見通し 最新調査】
 23日に公表されたフランス大統領に関する最新の世論調査によると、決選投票では中道系独立候補のエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)前経済相(39)が極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首(48)に圧勝する見通しだ。調査会社のイプソス・ソプラ・ステリア(Ipsos Sopra Steria)とハリス・インタラクティブ(Harris Interactive)がそれぞれ実施した世論調査によると、決選投票が23日に行われたとすれば、親欧州連合(EU)のマクロン氏の得票率は62〜64%と、ルペン氏の36〜38%を大幅に上回るという結果が出た。決選投票は5月7日に実施される。
(4月24日、AFP)

左右二大政党の候補がともに一次予選すら通過できない事態に。既存政党に対する有権者の不信が良く表れている。世論調査では「マクロン氏圧勝」となっているが、マスコミの「反ルペン」補正を考えると、そのまま信じるのは危険だろう。例えば、単純に「EUに対するスタンス」で考えれば、ルペン氏とメランション氏が「反EU」、その他が「親EU」ということで、後者がやや勝っている程度になる。

C-IoMWGV0AA1R0M.jpg

年齢別の出口調査の結果もあるので見てみよう。これを見る限り、高齢層のフィヨン、中高年のルペン、若年層のメランション、満遍なく得票しているマクロンという感じに分類できる。この点、ネトウヨの中心層が40〜50歳代にある日本と似ているところがあるし、若年層の左翼好きという点ではアメリカに共通する。米国大統領選において、サンダース支持層がクリントン氏では無くトランプ氏に流れたことを考えれば、今後のルペン氏の主張次第では、マクロン氏に肉薄する可能性は十分にある。
地域で大別すると、都市部のマクロン、地方のルペンと振り分けられ、「EUの恩恵を受けず、発展から取り残された地方」とその逆の都市部との断絶ぶりが見て取れる。

決選投票に進む二候補の政策で考えてみよう。マクロン氏は社会党出身ながら今回は単独で立候補しているが、その掲げる政策は専ら新自由主義で、EUの中で民営化と規制緩和を進めることで経済成長を実現するとしている。優遇されている公務員を始め、既得権益層が大きいフランスで、民営化と規制緩和を行えば、激しい抵抗が起こると見られ、国内の不穏がますます高まるだろう。仮に若干の経済成長が実現できたとしても、ドイツとの競争に勝てない限り、国民の不満は高まる一方かもしれない。
そして、親EUと新自由主義路線は経済格差をさらに拡大するため、国内における排外主義を助長し、脱EU論者をさらに増やすものと見られる。今回はマクロン氏が勝つとしても、その施策は近い将来、国民戦線を大きく飛躍させることになるだろう。基本的には、サルコジとオランド路線の焼き直しに過ぎず、反ロシア・反アサド・対外積極策という点でも、従来の政策に懐疑的な層を説得できる可能性は低い。

ルペン氏の場合、脱EUによって自由貿易から保護貿易に転じ、国内の産業育成に努めると同時に雇用を確保する方向になるだろう。だが、これと言って優位な産業があるわけでもなく、独占的な市場を持つわけでもなく、国内には雑多な規制と劣位産業を抱えている中で、経済成長に必要な改革を実行できるのか不安は大きい。この場合、自前で超規模財政出動を行い、需要を創設する必要があるが、それができるかどうか。それができたとしても、EUの代わりとなる供給先が必要となるが、どこに求めるのか(仏露同盟の可能性)、課題は多い。また、自国人優先のため移民排斥が始まった場合、国内不穏が高まるだろう。ただ、欧州における「ドイツの一人勝ち」の中で、外交方針を転換し、仏露同盟によってドイツを抑え込むというのは、ロシア市場を開拓するという点でも歴史的裏付けを持つ合理的判断と言える。不要な対外政策から手を引くという点でも、国内の支持が得られるだろう。

EUが半ば「ドイツ帝国」となっている中で、「比較二位」のフランスは難しい立場に立たされており、「引くも地獄、進むも地獄」という面があり、デモクラシーそのものの危機にも繋がっている。
また、マクロン氏にしてもルペン氏にしても、議会に全く支持基盤を持っておらず、どうしても「弱い大統領」にならざるを得ず、自分が望む改革を実行できるだけの政治的基盤が無い。結果、政治不信と社会不安が助長される恐れがある。この点でもフランスは厳しい時代を迎えるだろう。
posted by ケン at 12:18| Comment(2) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月19日

「トランプの戦争」に不安

【NYダウ平均 130ドル余下落 米軍の大規模爆弾初使用で】
 13日のニューヨーク株式市場は、アメリカ軍がアフガニスタンで大規模な爆弾を初めて使用したことなどから、地政学的なリスクが意識されて売り注文が広がる展開になり、ダウ平均株価は、130ドル余り下落しました。13日のニューヨーク株式市場は、取引開始直後は、小幅な値動きが続きました。しかし、アメリカ軍がアフガニスタンで大規模な爆弾を初めて使用したことなどから、地政学的なリスクが意識されて売り注文が広がる展開になりました。このため、ダウ平均株価は前日より138ドル61セント安い2万453ドル25セントで取り引きを終えました。市場関係者は「アメリカ軍による大規模な爆弾の使用によって、今後の北朝鮮の情勢に対する警戒感が高まり、リスクを避けようという動きが広がった」と話しています。
(4月14日、NHK)

トランプ氏的には、ビジネス感覚で「アフガンで兵器見本市を」くらいのつもりだったのかもしれないし、あるいは国防省トップの政治任用が進まない中、軍部の暴走が始まっているんかもしれないが、平素「アメリカの戦争」は株価が上がる傾向があり、それ故に従来の大統領も武力行使への誘惑に耐えるのが大変だった。ところが、シリア攻撃では防衛産業を除く株価は変動せず、アフガニスタンでは新型爆弾を披露したものの、株価を下げてしまっている。

アフガニスタンにおける新型爆弾の使用は、北朝鮮攻撃を視野に置いてのものと見られるが、同時に2001年のアフガニスタン侵攻から15年以上を経てもなお「核兵器一歩手前」の爆弾を使わなければならない戦況にあることも露呈させている。
北朝鮮については、一撃で核とミサイルを無力化するか、あるいは首領の身柄を確保ないし殺害できれば良いかもしれないが、不確定要素が非常に多い。しかも、どちらの場合も、現体制は高確率で瓦解すると思われるが、「その後」の計画があるようにも見えない。北朝鮮は、自分の好きなタイミングで花火を上げられるだけに、今やる必要はなく、ほとぼりが冷めた頃にやれば良いだけに、長期戦に持ち込まれて困るのはアメリカの方だろう。

こうした不透明な大戦略、出口戦略が見えない、行き当たりばったり感が、市場にも反映されているのだろう。
トランプ氏にしても、親米派の皆さんにしても、「アサド、金体制が瓦解して、民主政府が成立して万事解決」みたいなバラ色の未来が見えているのだろうか。だとすれば、是非ともどんな道順なのか示して欲しい。
posted by ケン at 12:26| Comment(2) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする