2019年04月15日

ヴォルゴグラード改めスターリングラード?

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4月12日の「ノーヴォスチ」記事。
2023年に迎えるスターリングラード戦80周年に向けて、現在のヴォルゴグラードの市名を「スターリングラード」に戻そうという運動があるという。まずは住民投票を行うために運動を展開しているようだが、現実にはネット調査だと、793人の回答に対し、72%が反対、12%が「ツァーリツィン」(革命前の市名)、16%が「スターリングラード」支持だったという。回答者数が少ないので容易には判断できないが、厳しい道のりではありそうだ。
少なくともロシア人は意外と冷静と言えそうだ。
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2019年04月10日

英軍、野党党首写真を標的に射撃

【英軍、野党党首写真を標的に射撃 ネットに動画流出】
 英軍の兵士が最大野党、労働党のコービン党首の写真を標的にして射撃を練習している動画がインターネット上に流出し、国防省が調査を始めたと英メディアが3日報じた。メイ首相が2日、コービン氏に対し、英国の欧州連合(EU)離脱を巡り互いに納得できる合意案を模索するための協議を呼び掛けたばかりで、波紋が広がっている。
 動画には空挺部隊所属の軍人とみられる4人が射撃をする様子が映っている。アフガニスタンの首都カブールで撮影されたとされる。国防省の広報担当者は「全く容認できない。軍が求める(行動の)水準を大きく下回っている」と批判した。
(4月3日、共同通信)

いろいろな面で英国は末期症状の模様。
暴走する民意、その民意を制御できない、あるいは民意を反映できない議会。
そして、政党を敵視する軍部。
戦前の日本とは異なるが、大まかな症状ー議会政治あるいは議会制民主主義の機能不全が顕在化しつつあることを示している。
だからどうというわけではなく、我々はそういう時代に生きていることを自覚しなければならない。
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2019年03月31日

EU離脱協定案で瓦解する英国の議会制民主主義

【「裏切るな」怒る英市民 EU離脱協定案、3回目の否決】
 英国が欧州連合(EU)から抜ける条件を定める協定案が29日、英議会下院で三たび、否決された。当初、同日午後11時(日本時間30日午前8時)に離脱するはずだった。離脱支持の市民は「約束が違う」と怒る。英政府・議会は、あと10日余りで英国が向かう道の最終決断を迫られる。
 下院は29日の採決で、メイ氏がEUと合意した離脱協定案を賛成286、反対344で否決した。58票差となり、1回目(1月15日)の230票差、2回目(3月12日)の149票差より負け幅は縮まった。
 今回、将来の通商関係の大枠を示す「政治宣言」を対象から外し、離脱後の移行期間などを定めた協定案に絞って採決。メイ氏は「可決されれば辞任する」と退路を断ち、反発する勢力の支持を得ようとした。それでも可決できなかった。協定案にある北アイルランドの国境管理の規定への反発のほか、EUとの合意なしの離脱でもいいという勢力が動かなかった。
 英国会議事堂周辺は29日、離脱を実現できない政治に、怒りと不満をぶつける人であふれかえった。「民意を尊重しろ」「裏切るな」などと書かれたプラカードを掲げた参加者が英国各地から集まった。
(3月31日、朝日新聞)

もう一つの問題は、国民投票自体の難しさである。「EUを離脱するか、残留するか」という重大な社会的選択を、「イエス、オア、ノー」二択で決めてしまい、しかも超僅差で決定しまったことは、今後の意思決定に重大な禍根を残す恐れがある。具体的には、スコットランドの独立が再燃したり、他のEU諸国でも離脱が加速したりする懸念がある。
国民投票は、デモクラシーを構成する重要な要素かもしれないが、その運用はごく慎重であるべきだと考える。
英国でもエリート不信、2016/06/25)

概ね私が指摘した通りになっている。
イギリスの場合、そもそもEUに加盟するメリットが小さかったにもかかわらず、「バスに乗り遅れるな」的なノリで加盟した結果、過大な供出が求められる一方で、移民やら難民やらを押しつけられ、安価な労働力を使用する資本家はボロ儲けしたが、それ以外の層は圧倒的に赤字超過に陥ってしまった。

本来、EUは「欧州大陸で戦争を起こさない」ためのシステムで、本質的には「独仏同盟」だったはずだが、フランスが衰退する中で、実質的に「ドイツ帝国」と化してしまっている。
また、安全保障面ではアメリカの影響力が大きすぎるNATOへの対抗手段としてEUに価値が求められた。だが、アメリカの権威を利用するイギリスにとってはNATOにさえ入っていれば、EUに入るメリットは無かったはずだが、そこを見誤ってしまった。

こうした問題は本来英国議会で調整されるべき課題だが、議会での調整が不可能になり、議会で主導権を得ようとした保守党のキャメロン氏が国民投票に踏み込んだ結果、完全に収拾が付かなくなってしまった。
今回の離脱案にしても、国民投票に従うなら、否決するのは「主権者に対する離反」になってしまうし、離脱案の内容に不備があるのであれば、議会内で調整すべきものであるはずだが、どちらも不可能になっている実情は、議会制民主主義の破綻を意味している。

もっとも、EUはEUで民主的正統性を持たないEU官僚が財政に絶対的権威を持っており、こちらはこちらでデモクラシーの根源が侵されつつある。東欧に権威主義政権が続々と誕生し、南欧が統治不全に陥りつつある現状は、日本では十分に報道されていないものの、非常に深刻な事態にある。

日本の場合は東欧型の権威主義政治をもって、危機の打開を図ろうとしているわけだが、排外主義の高まり、財政危機、政治的無関心と腐敗の蔓延など、それはそれで困難を抱えている。
英国の問題については、下記の記事で言い尽くしているので、参照して欲しい。

【参考】 英国でもエリート不信
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2019年01月12日

ラオスがT34をロシアに返還

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かつてラオス軍がソ連軍より貸与され、現役使用中の戦闘可能状態にあるT34-85を30台、ロシアに返還したという。
映像を見る限り、生産工場から出てきたかのように錯覚してしまうほどだ。
同戦車は1944年から46年までに約3万両が生産され、その後東欧諸国がライセンス生産で約5千両を生産している。

その兵器としての優秀性は、何と言ってもラオス軍に象徴される耐久力で、古くはベトナム戦争、中東戦争、アフリカ諸国の内戦を始め、最近では先のグルジア紛争やウクライナ内戦あるいはアフリカ各地の内戦でいまだ現役稼働していることが証明している。

なお、ロシア側は映画撮影やパレードなどでありがたく使わせていただく、とのこと。
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2019年01月11日

強権弾圧に向かう仏マクロン政権

【仏首相「過激暴力に厳罰」無届けデモ罰則強化へ】
 フランスで続く反政権デモを受け、フィリップ仏首相は7日、民放テレビ番組で、無届けのデモに対する罰則を強化する考えを明らかにした。破壊行為に加わった者に対し、デモ参加を禁止する措置もとるという。昨年11月から毎週土曜日に行われているデモは、主にインターネットの交流サイトで呼びかけられている。大半が警察への届け出なしで行われており、警察当局は十分に取り締まれていない。デモに乗じた暴力や破壊行為も横行しており、フィリップ氏は「過激な暴力には厳罰を与えなければならない」と述べた。無届けのデモは現在の法律でも代表者に禁錮6か月と7500ユーロ(約90万円)の罰金が科されるが、黙認されるケースもあった。今月5日のデモでは、暴徒化した一部の参加者がパリの政府庁舎の扉を壊して侵入する事態となった。
(1月8日、読売新聞)

フランスでは年が明けて再びデモが盛り返しているという。当局発表で5万人というから相当な規模である。
しかも、12月には様々な罪状がつけられて2千人以上が当局によって勾引されているのだから、実情は報道以上に深刻なはずだ。だからこそ、マクロン政権は「無届デモ全面弾圧」へと舵を切ったものと見られる。

そもそもデモはデモンストレーション、つまり政府などに対して民意を表明する一手段である。これはデモクラシー下においては、選挙の投票以外に民意を表明する手段として、本来は選挙と同レベルの価値が置かれるべきものなのだ。そのため、「当局に届け出なければ許されないデモ」というのは、本質的にはデモクラシーの原理に反する措置であって、だからこそフランスの歴代政権は大目に見てきた。
これは一種のパンドラの箱であり、「当局に届け出がないデモ」に対して当局が公然と弾圧を始めた場合、政府と市民の対立は決定的なものになるだろう。

こうした事態に陥ったのは、明らかにマクロン大統領の判断ミスに原因が求められる。
報道では「燃料税の増税に反旗を翻した」となっているが、デモに参加している者の少なくない人数は「本来は増税もやむを得ない」と考えているものと思われる。彼らが本当に怒っているのは、「富裕層に対して減税しているのに、庶民にだけ大増税かよ!」ということだろう。
これに対して、マクロン大統領は「燃料増税の延期」を表明しただけで、富裕層への課税には一切触れなかった。ここが運命の分かれ目だっったのだろう。仮にマクロン氏が「富裕層にきっちり課税するから、燃料税を認めて欲しい」と下手に出ていれば、少なくとも一時的にはデモは鎮静化あるいは小規模化したはずだ。

だが、マクロン氏はエリート根性丸出しで、「お前らに屈服して燃料税は一時的に延期してやるから、もう暴れるな!」と居丈高にやってしまったがために、事態が収まらなくなってしまった。さらに逆ギレして、「無届デモ弾圧」に舵を切ってしまった以上、フランスはもう一度何かコトが起こったら、いよいよ深刻な事態に陥る可能性が出てきている。
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2018年12月08日

現代フランスで黄巾党が蜂起? 下

前回の続き)
リベラリズムが本質的にエリート支配を志向するのに対し、デモクラシーは大衆による大衆の支配を至上のものとする。20世紀後半の欧米日の議会史は、リベラリズムとデモクラシーの融合が奇跡的に上手くいったために成立しているだけの話で、それは第三世界などから資源を収奪して加工品を高く売りつけることで利潤を獲得し、その利潤を国内に分配することで成立していた。さらに言えば、ソ連・中国などの対立する東側諸国の存在が、国内の階級対立を抑止していたこともある。

ところが、冷戦が終結し、工業国としての利潤も上がらなくなった結果、欧米日諸国は例外なく財政難にあえぐことになる。国内の階級対立を抑止するため、社会福祉とインフラに過剰な投資をしてしまったためだ。
そして、慢性的な財政赤字を解決するために米欧日で導入されたのが新自由主義だった。社会福祉を削減し、インフラ投資を始めとする政府支出を極限まで削減する手法である。それは国内対立の激化を招く恐れが強かったため、アメリカは冷戦の終結を急ぐことになるが、ソ連が急激な改革に失敗して自壊したため、命脈を保つことになる。実は、仮に冷戦が続いていた場合、米欧日もまた財政赤字で自壊した可能性があるのだが、それについては機会を改めて書きたい。

冷戦が終結した結果、アメリカは欧州以外の旧ソ連圏を含む社会主義国を植民地化し、市場と資源と安価な労働力を確保、西欧は東欧を支配することで市場と安価な労働力を確保、日本は市場経済化した中国に進出することと自国民を非正規労働者化(社会保険の適用を外す)することで、実は経済と財政の崩壊を免れるところとなった。
だが、それは一国の経済主体あるいは労働を外部委託しただけの話であり、資本は命脈を保ったものの、米欧は安価な移民労働に依拠したことで失業が蔓延、日本では労働者の4割が超低賃金かつ社会保険の適用外に置かれる事態に陥った。

国家を運営し、国民を支配するエリートにとっては常に現状維持が最大の課題であるため、経済規模(具体的にはGDP)を維持し、財政難を克服することが最優先となる。また、技術進化と自由化に伴って、資本の移動が容易となったため、国内資本が海外に流出しないよう、これを優遇することが、エリートの統治原理において「最も合理的」選択となった。
結果、エリートは、米欧日のどの国でも例外なく、国家間で富裕層の優遇を競い合いつつ、その「穴埋め」として中低所得層からの収奪を強化する他なくなっている。同時に、産業の外部委託と技術革新によって、中間層自体が急激に没落しつつあり、国民の大多数が収奪される側になっているのが現状だ。
米欧日、どの国のエリートに聞いても、高確率で「富裕層に増税したら海外に出て行っちゃてもっと貧しくなっちゃうヨ。でも財政難だから、ゴミどもから吸い上げるしか無いんだよネ、他に選択肢なんてないサ」と答えるだろう。

本来、こうした「エリートの論理」に対して「大衆の論理」が一定の抑止をかけることで、国内の階級対立の激化が防がれる構造になっていた。ところが、フランスの大統領選と国民議会選挙に象徴されるように、「選挙するとエリートが当選しちゃう」構造ができあがっている。これは、フランスの場合、収奪される側の大衆が大分裂状態にある一方、エリート層は一致団結しているため、絶対得票率にしてわずか十数パーセントで大統領と議会の多数を占める構造から説明できよう。
しかし、一方で階級対立と国民の不満は増すばかりで、エリートによる社会支配は脆弱化する一途を辿っている。そのため、欧米日ではどの国でも「テロ対策」と称して独裁国家水準の治安立法を次々と通している。それはフランスでも例外では無い

議会や大統領が全く(多数の)民意を反映しない以上、大衆としては直接行動に訴えるほか無く、それが今回の「黄巾の乱」の原動力になっている。言い換えれば、今回の蜂起は、エリート支配と議会制度に対する、民主主義の現出であり、これを「ただの暴徒」と言ってしまうマクロン大統領の感覚は、バスチーユ事件が起きた日の日記に「何もなし」と書いてしまうルイ16世の感覚と酷似している。

そもそもフランス革命は、アメリカ独立戦争などに肩入れして財政難に陥ったフランス王家が非課税の貴族と聖職者に課税しようと自分で三部会を招集したにもかかわらず、統制が効かなくなると弾圧に転じてしまったことから始まった。
その意味で、富裕層に減税をする一方で、大衆増税を進める米欧日の情勢は、革命前のフランスに近くなってきていると言えるだろう。ただ、日本には民主主義の伝統も考え方も無いため、ひたすら収奪されるだけにあるとは言えよう。だからこそ、「フランス人は非理性的だ」などと言えるに違いない。「人間らしい暮らし」を求めて街頭に出るフランス人と、「生きていられればいいや」と沈黙する日本人、どちらが人間的かという話なのである。
【追記】
第15条(行政の報告を求める権利) 社会は、すべての官吏に対して、その行政について報告を求める権利をもつ。

第16条(権利の保障と権力分立) 権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。
「人間と市民の権利の宣言」(1789.8.26)
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2018年12月07日

現代フランスで黄巾党が蜂起? 上

【仏抗議デモ全土拡大、マクロン政権最大の危機に】
 フランス全土に燃料税引き上げへの抗議デモが広がり、エマニュエル・マクロン大統領は就任以来、最大の危機に直面している。警察当局によると、ここ数十年で最悪規模の被害をもたらした1日の首都パリのデモでは412人が拘束され、現在も363人が勾留されている。
マクロン氏は地球温暖化対策であるとして燃料税引き上げを撤回する考えがないことを強調している一方、抗議デモが地方都市や郊外を中心に広がったことから、3日になって政府は妥協策提案の可能性を示唆。エドゥアール・フィリップ首相は閣僚や主要野党の党首らと会談し、対策を協議した。マクロン氏は2017年5月、雇用創出目的の企業投資の促進を柱とした財界寄りの政策を訴え大統領に就任。その後すぐに起業家や高所得者向けの減税を推し進めた。燃料価格の上昇に対する抗議デモ「黄色いベスト」運動の参加者は来年1月に予定されている燃料税引き上げの延期だけでなく、多くが最低賃金や年金の引き上げも求めている。
また、3日には抗議はフランス全土の学校100校あまりに波及。生徒たちが学校を封鎖するなどして大学の入試制度改革に抗議した。抗議運動をめぐっては年末の書き入れ時に買い物客の足が遠のく可能性もあると実業界から懸念の声が上がっているほか、ブリュノ・ルメール(Bruno Le Maire)経済・財務相によると抗議デモが始まって以降、ホテルの予約率は15〜20%ほど落ち込んでいる。
一方、抗議デモを支持してきた極右政党「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首はツイッター(Twitter)で、フィリップ首相との会談で「マクロン氏が選択した戦略としての対立に終止符を打つ」よう求めたと投稿した。一連のデモでは一部の参加者が暴徒化し、警察隊を襲撃したり車に火を付けたりするなどしたため非常事態が宣言される可能性も出たが、内務省のローラン・ヌニェス(Laurent Nunez)副大臣は3日、現時点でその考えはないと明らかにした。
フランスでは過去、大規模な抗議デモによって政権が政策の転換に追い込まれるという事態が繰り返されてきたが、ルメール経済相は低所得世帯を中心とする消費低迷の解決策について欧州でも高水準にあるフランスの税率を早急に引き下げることだとした一方、「そのためには公共支出の削減が急務だ」と強調した。
(12月4日、AFP)

まさか2千年の時を経て現代フランスで「黄巾の乱」が発生するとは驚きである。本ブログの読者には説明不要とは思うが、簡単に説明すると、中国のいわゆる「三国志」の発端となる事件で、西暦184年春、新興宗教とも言える太平道を奉じた農民が蜂起、華中全域に拡大し、その軍勢は数万人に上り、その鎮圧には半年以上かかってしまう。これにより後漢王朝の衰退が明白となり、群雄割拠時代の幕開けを飾った。曹操や劉備の初陣も黄巾征伐だとされる。黄巾と呼ばれる黄色い頭巾を被っていたことから、この名称がついている。
「蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉」(『後漢書』71巻 皇甫嵩朱儁列傳 第61 皇甫嵩伝)
蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。
歳は甲子に在りて、天下大吉。

フランスの国旗である三色旗は青白赤であるが、それぞれ「自由、平等、博愛」を指すと言われているが、これは伝説の類いで、現実にはパリの紋章だった青と赤にブルボン朝の白百合を組み合わせたものだった。いずれにせよ、青はブルーカラーの勤労を表すこともあり、「蒼天已死」は自由と勤労の死を象徴すると考えても不自然なところは無いだろう。そして、三色旗にはない「黄」が掲げられたことも「黄天當立」を象徴している。意外なほど無理筋では無いのだ。

ケン先生は一年以上前にこの危険性を指摘しているので、まずは確認していただきたい。
マクロン氏の新自由主義路線は、さらなる移民や外国人労働者を呼び込んで、国内の労働条件を悪化させ、経済格差や地方の疲弊を加速させる可能性が高く、同時にフランスのドイツ従属(欧州銀行への従属)を強める結果にしかならず、「反EU」「排外主義」「保護貿易」支持層を増やすのは間違いない。EUというのは、域内での経済的自由を保障する一方で、地域の経済的自立を保障せず、かといって日本の地方交付金のような域内の格差を是正するシステムも無いだけに、圧倒的に「強い者が勝つ」システムで、敗者を救済する術を持たない。
オランド政権下で実施された富裕税も、同じ社会党政権下でマクロン氏らの主導によって廃止してしまっており、所得再分配機能も大きく低下している。また、マクロン氏はシリアに対する武力介入を支持、ロシアに対する制裁強化を主張するなど、対外タカ派(介入主義)でもあり、この点でも国内対立を促進させる恐れがある。
マクロン氏の「自由」に特化したリベラリズムは、地域コミュニティや国民統合を破壊する方向に働く可能性が高く、今後フランス国内は混沌化が進むものと見られる。
マクロン節はどこまで通じるか、2017/09/26)

マクロン氏は社会党出身ながら今回は単独で立候補しているが、その掲げる政策は専ら新自由主義で、EUの中で民営化と規制緩和を進めることで経済成長を実現するとしている。優遇されている公務員を始め、既得権益層が大きいフランスで、民営化と規制緩和を行えば、激しい抵抗が起こると見られ、国内の不穏がますます高まるだろう。仮に若干の経済成長が実現できたとしても、ドイツとの競争に勝てない限り、国民の不満は高まる一方かもしれない。
そして、親EUと新自由主義路線は経済格差をさらに拡大するため、国内における排外主義を助長し、脱EU論者をさらに増やすものと見られる。今回はマクロン氏が勝つとしても、その施策は近い将来、国民戦線を大きく飛躍させることになるだろう。基本的には、サルコジとオランド路線の焼き直しに過ぎず、反ロシア・反アサド・対外積極策という点でも、従来の政策に懐疑的な層を説得できる可能性は低い。
(2017フランス大統領選1次投票、2017/04/26)

マクロン大統領の就任直後には7割前後あった支持率がいまや3割を切るに至り、逆に今回の「黄巾の乱」を支持する市民が7割に上っていることは、2009年の民主党政権成立前後の事情とよく似ており、議会制民主主義の機能不全を象徴する事態となっている。
なぜこうしたことが起こるのか。まず選挙制度の問題から見てみよう。

そもそも2017年春のフランス大統領選、その第一次投票においてマクロン氏の得票は24%に過ぎず、同19〜24%の中に主要四候補が収まるという大分裂に終わった。そして、決選投票で国民戦線のルペン候補と一騎打ちになったため、当選できただけのことだった。
この第一回投票の投票率は78%、つまりマクロン氏に投票した市民は全体の約18%に過ぎないことを意味している。

また、同じく同年6月に行われた国民議会選挙では、マクロン氏を支持する新党「共和国前進」が全議席の6割を超える308議席を獲得したが、第一次投票の得票率は28%に過ぎず、しかも投票率は5割を切る有様だった。つまり、全投票者のうち「前進」に投票したのはわずか13%でしかなかった。が、結果的に、フランス式の決選投票で大勝しただけの話で、第二次投票の投票率は42%にまで低下している。
国民議会選挙の第一次投票で、13%を得票した国民戦線(右派)はわずか8議席、同11%の「不服従のフランス」(左派)は17議席を獲得したに過ぎない。この二党だけで投票者の約2割が「民意を示したのに議会に反映されなかった」わけだ。

今日、議会制民主主義という言葉が一人歩きしてしまって、不可分のもののように考えられてしまっているが、本来的には議会主義と民主主義は別個の存在であることを再認識する必要がある。

まず議会制度は、もともと王権=行政権に対するチェック機能から始まった。国王による際限なき課税や法律の施行を抑止するために、立法権の分離を図ると同時に、議会で作られた法律が適正に運用されているかをチェックすることが、近代議会の存在意義だった。つまり、権力分立を志向するリベラリズムの考え方である。そのため、本来的には「エリート同士による相互監視と競争」が求められる。

これに対して、民主主義は政治に民意を最大限反映させることを至上とする考え方でしかない。そこに求められるのは、「大衆意思の最大的反映」である。

従って、議会制度ができた当初は、貴族やブルジョワジーなど社会的エリート層しか参加できなかった。しかし、産業革命を経て総力戦の時代を迎えるにつれて、労働力や戦力の広範な動員が不可欠となり、国民の不満を抑えるためにその対価として政治参加=選挙権が認められていった。
つまり、歴史的経緯を見た場合、議会制民主主義という名称は必ずしも妥当では無く、「民主主義的要素を加味した議会制度」という方が妥当なのだ。
以下続く
posted by ケン at 16:34| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする