2020年09月25日

Netflix リベリオン

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ダブリンで起こったイースター蜂起をきっかけに、英国軍と革命を求めるアイルランド人の対立が加速。血で血を洗う争いが続き、アイルランドを分断していく。

1916年のアイルランド・イースター蜂起から独立戦争(19-21)を経て、1922年の内戦勃発までを描いたNetflixドラマ。
指導者視点ではなく、複数の参加者の視点から描かれる群像劇。
弾圧側の英国視点やアイルランド人ながら英国軍に投じている者の視点もあり、非常にめまぐるしくはあるが、それだけにテンポも良く、あっという間に10話見てしまった。
十話と言っても五話ごとの2シーズンで、第一シーズンと第二シーズンで主要人物が異なる上、相変わらず縁戚関係が多く人間関係がわかりにくい面もあるが、ついて行けないほどでは無い。

相変わらずドラマとは思えない作り込み具合で、当時のダブリンの街並みから衣装、装備まで良く再現されている。
ストーリーもいささか作り込み過ぎな嫌いはあるものの、日本の歴史ドラマのような嘘くささはなく、没入できる。
人物が良く描けており、演技も上々で、完成度の高いドラマに仕上がっている。

本作を見れば、ほんのちょっと前までイギリス人がアイルランドや植民地でやっていたことは、現代の権威主義国家の手本であったことがよくわかるだろう。英国人にこれを突きつけて、「貴君のやっていることと同じことをやっているだけだが、何か?」と言ってやれば、ぐうの音も出ないに違いない。
しかし、英国ではこの手のアイルランドなどの独立問題のドラマが登場するたびに、「英国の名誉をおとしめる歴史修正主義」との声が保守派から上がるそうで、どの国でも同じなのだということもよくわかる。
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2020年09月23日

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン


『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』 石立太一監督

原作とは異なる展開を見せたアニメ版のラストを飾る一作。
京アニ渾身の完成度と映像美で観客を圧倒してくれる。
アニメ映画で2時間20分のボリュームがあるが、全く時間を感じさせない。
台詞に間を置いたり、冗長なシーンがあって、アニメ的ではない演出手法を駆使しているが、それがまた素晴らしい。
文字にするのは野暮ってもんだ。


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2020年09月16日

小森白『大虐殺』(東宝、1960)



歴史修正主義と右傾化が加速し、社会主義者としては無事生命の危機におびえる日々が続く。
今年も関東大震災における虐殺を全否定する勢力が跋扈し、ますます増殖している模様。
小森監督の『大虐殺』は、それを描いた恐らく唯一の映画であり、積極的に残して上映していくべきだろう。

大正十二年九月一日、未曽有の大地震が関東地方を襲い、多くの被災者を出した。かねて社会主義の一掃を企てていた軍部は、この機を活用して目的を達成しようと図った。社会主義者、朝鮮人数百名を検束し殺害、遂には左翼の巨頭大杉栄が甘粕大尉によって殺された。−−先輩の和久田に紹介され、大杉の同志になることを許された古川は、これを知ると、新聞誌者・高松、その妹で恋人の京子の言も入れず、軍部打倒のために立ち上った。銀行を襲って資金を調達した。戒厳司令官の福田大将を暗殺することに決まった。爆弾は同志の青地がダイナマイトを加工して作ることになった。計画が実行されることになったが、陸軍省の会議が予定より一時間遅れたため、この計画は未遂に終った。やがて大震災一周年が来た。福田大将の記念講演会が行われることになり、一味は今度こそと策を練った。しかし、また失敗に終った。次の機会−−陸軍巨頭会議が陸軍省で開催されることになったのだ。彼らは準備にとりかかった。しかし、古川が事件を起し、死刑台に登ることを恐れた京子の密告によって古川のアジトが警視庁の手入れを受けた。そして、警備員に捕えられた。護送車に押しこまれながら古川は絶叫した。“亀戸、荒川の虐殺事件はなぜ処罰を受けないのだ!なぜ皆この不合理に怒らないのだ!俺たちが死刑になっても後に続く者は必ず出る!軍閥が亡びる日は必ず来る!”と。


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維新とか都民ファーストとかはこんな連中ばかり。亡命先を確保しなければ、普通にしゃべることもできない。
しかし、興味深いのは、私のようなガチガチの社会主義者ではなく、むしろ「なんちゃってリベラル」な人びとが「アカ」として攻撃されている点にある。この点、むしろ戦前において、社会大衆党系の人びとよりも自由主義者、平和運動家、反戦宗教家などへの風当たりが強かったことと類似しているのかもしれない。

いずれにしても、日本も遠からず再び「テロルの時代」が訪れそうである。
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2020年09月03日

『剣の舞 我が心の旋律』


『剣の舞 我が心の旋律』 ユスプ・ラジコフ監督 ロシア・アルメニア(2018)
第二次世界大戦下のソ連。疎開中のキーロフ記念レニングラード国立オペラ・バレエ劇場は、10日後にお披露目するバレエ『ガイーヌ』のリハーサルに集中していた。しかし、アラムは振り付け家のニーナから修正を求められ、その上、文化省の役人プシュコフから曲を追加せよと難題を命じられる。過去にアラムとトラブルを起こしたプシュコフは、周囲を巻き込み復讐のチャンスを虎視眈々と狙っていたのだ。作曲家としての意地とアルメリア人としての誇りを胸にアラムはピアノに向かう。様々な感情が渦巻く中、鍵盤の上でひとつのリズムが踊り始めた。

ハチャトゥリアンの映画と聞いて、早速見に行った。
日本では1960-70年代にブレイクしたものの、その後は一部のマニアが愛好する作曲家になってしまった印象がある。
しかし、当時のソ連ではショスタコーヴィチ、プロコフィエフに次ぐ若手大作曲家だった。

映画的には、いじめ役の文化庁の役人とハチャトゥリアンを慕うバレリーナという、超テンプレなストーリーである上、典型的なロシア映画のスタイルに基づいた説明不足、人間関係のわかりにくさ、唐突な終幕という、大半の日本人にはわかりづらいし、見づらい作品と言える。
しかし、アルメニアの風景は美しいし、映像美にも溢れているので、悪くは無い。
バレエ好きのケン先生的には、バレエのシーンを増やして欲しかったし、曲もきっちり使って欲しかった。

色々残念なところはあるものの、全否定するほどではなく、ハチャトゥリアンに関心があれば、見ても良いかもしれない。
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2020年08月17日

門馬司/鹿子『満州アヘンスクワッド』

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門馬司/鹿子『満州アヘンスクワッド』ヤンマガKCスペシャル

これは良いものだ!

アヘンの製造と販売は満州国の国策であり、国家専売にしていた。
国家設立の財源とされた3000万円分の初回満州国債の担保は「阿片専売公社の売り上げ」だったが、建国前から「やる気満々」だったことがわかる。
さらに建国翌年に陸軍が行った熱河作戦は、「芥子栽培に最適」という理由もあったくらいだった。

こうした情報も、すべて極東軍事裁判に提出された資料によって判明しており、日本人が自分で戦犯裁判を行ったら、何一つ出てこなかった蓋然性が高い。

満州国の阿片事業について無反省な連中が、麻薬密売の最大拠点である香港を擁護するのだから、中国本土人が激高するのも当然だろう。
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2020年08月13日

Netflix「ラスト・ツァーリ: ロマノフ家の終焉」

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Netflixのドキュメンタリー・ドラマ。再現ドラマと有識者の解説が併行する形式。
再現ドラマと言っても、日本のそれのようなチャチさはなく、十分豪華で、相応のリアリティがある。部分的に現地で撮影しているようだ。
アメリカなどの役者が演じているだけに、ロシア人には見えないのだが、その辺もそれなりに頑張っており、普通の人はわからないかもしれない。
全て英語で会話されているため、ロシア語話者的には違和感を覚えてしまうのだが、史実では皇帝夫妻はずっと英語で会話し、「ニッキー」「アリクス」と呼び合い、英語で手紙を書いていただけに、実はこちらが史実に近い。
ニコライ二世の母マリアの姉は英王ジョージ五世の母であり、つまりニコライとジョージは従兄弟で、顔も「瓜二つ」と言われたほどよく似ていた。実際、革命後にイギリスに亡命したロシア貴族が、ジョージ五世を見て、「陛下も亡命できたのか」と思ったほどだったという。そして、ニコライの妻アレクサンドラ皇妃は幼少期に長く英王室にて育てられ、母語のドイツ語よりも英語の方が得意だった。

先に紹介したスタインバーグ『ロマーノフ王朝滅亡』と合わせて見ると、非常に面白い。ドラマ・ドキュメンタリーの方はいささか通俗的な理解に偏っており、ラスプーチンやアレクサンドラ皇妃の個人的な問題に多くの責任を帰してしまっているものの、最後まで皇帝の権威を信じて疑わなかったロマノフ一家の道化っぷりが良く描かれている。
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2020年08月08日

『ソ満国境 15歳の夏』

『ソ満国境 15歳の夏』がGYAO!にて9月3日まで無料公開中
敗戦直前の1945年5月、ソ連国境最前線の「東寧報国農場」に勤労動員として派遣された130名の末路を回顧する。



本作の日本側舞台は福島県。
もともと本土内の労働力過剰や食糧難から始まった移民政策だったが、敗戦によって600万人からの海外在住邦人が帰国したことと、1945年の大凶作や各種流通途絶によって飢餓が広まった。戦後のGHQ改革によって農地改革が行われたり、旧皇族領や国有地の払い下げが進められ、帰還した移民にも一定の分配がなされたものの、定着したのは概数で3割に満たなかった。
土地再分配の恩恵にあずかれなかったものは、悪名高きドミニカ移民を始めとする南米に再移民していった。幸運にも定着できた帰還移民たちも、例えば三里塚(成田空港)、六カ所(核燃サイクル施設)、上九一色(オウム事件)、飯舘・浪江(福島原発事故)などに象徴されるように、戦後政治の負の側面を一身に受けて悲劇の舞台となるところが少なくなかったのである。
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