2019年04月13日

【宣伝】『芳華』

本日日本で公開される中国映画。これがなかなか凄くてイイ。
1970 年代の中国、軍隊芸術団に青春を捧げる青年たち。 劉峰(リュー・フォン)は純朴で人助けが好きな好青年として仲間に信頼されている。何小萍(フー・シャオピン)は希望と 理想を持って芸術団に入団したが、農村出身であるため芸術団の先輩たちにいじめられている。激動の時代、恋の動悸、 人々が運命に翻弄され、思わぬ結末に...

1970年代の「文工団」を舞台とした青春群像劇あるいはラブストーリーなのだが、「文革」「バレエ」「中越戦争」という、ケン先生的には「盛り込みすぎでは?!」というくらい萌え要素満載となっている。実際、前半部と後半部では全く別の映画になってしまっている向きは否めないのだが、決して悪いわけではない。


『芳華』 馮小剛監督 中国(2017)

文工団というのは、要は軍の慰問部隊のことで、ソ連の赤軍合唱団に女性を加えたものと考えれば良いだろう。
ヒロインは父親を労働改造所に送られて、単身文工団に入団するが、それを理由にいじめられてしまうが、努力と根性で認められてゆく。かなり少女漫画の王道すぎる設定ではあるが、文革という背景があるだけに、簡単には片付けられない。
この文工団には多くの少女が所属していて、主に舞踊(中国バレエ)を担っている。舞踊の練習シーンも非常に美しく描かれているのだが、ロシア・バレエ好きのケン先生的には「やっぱソ連・ロシアの方がスパルタだな」などと思ってしまう。

後半に入ると、毛沢東の死を経て、中越戦争が勃発。解放軍の一部である文工団も当然動員され、ヒロインが恋心を抱いていた先輩は、団内で起きた不祥事から最前線送りにされてしまう。そして、二人はそれぞれ心身にダメージを受けて終戦を迎え、文工団は解散、改革・開放時代に突入してゆく。

前半の王道過ぎる少女漫画っぷりと、後半の戦争・戦争後遺症の描かれ方のアンバランスさが、なかなかに上手に融合され、描かれており、ハリウッド映画にありがちな「パンシャブの構造」(恋愛と戦争を一緒に描くな!)に(ギリギリのところで)ならずに済んでいる。

特に中越戦争で中国側がボコボコにされるシーンだけでなく、傷痍軍人やPTSDについてまで真正面から描いていることは、正直なところ良く公開が許可されたと驚きを禁じ得ない。実際、公開直前に当局のストップが掛かって、延期されたというのだが、果たしてどこが検閲・削除されたのか分からないくらいだ。この点だけでも、十二分に見に行く価値がある。当局による言論規制が強まっていると言われつつ、ここまでの表現は認められるということを確認できよう。

ただソ連・ロシア学徒的には、全体的に美しく描かれ過ぎており、わずかに「きれいすぎる」「ゆるい」不満が残ったことは否めない。ケン先生はどうしても中国をソ連・ロシアと比較して、いつも「(良くも悪くも)ゆるいなぁ」と思ってしまうわけだが、ロシアの場合、「幸せは悪」くらいの徹底した悲劇・悲観主義が全てを覆っていて(そこまで不幸にしなくてもといつも思う)、それに慣れすぎているからだろう。
そもそも文工団に可愛らしい女の子が沢山いて、「きゃっきゃ、うふふ」状態なのも、赤軍合唱団愛好者の私的には、「そうじゃないんんだ!!!」と叫びたくなってしまう。

ちなみに、私は日本公開の話を聞いて初めて本作を知り、「見てみたい」と微信にアップしたところ、友人から「(ネットの)QQで見られるよ」と教わり、「5元」をスマホ決済で払って、そのまま鑑賞した。中国語字幕があるので、半分くらいは意味が取れる。いやはや、中国は超便利である。いささか味気ないとは言えるが。
posted by ケン at 00:00| Comment(6) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月29日

映画が1900円に

【TOHOシネマズが鑑賞料金を値上げ 一般1900円に】
 TOHOシネマズが3月18日、映画鑑賞料金の値上げを発表した。アルバイト人件費などの運営コストの増加を理由に、6月1日から料金を改定。TOHOシネマズ名の全国66拠点で、現在1800円の一般鑑賞料が1900円、1100円のファーストデイやレディースデイは1200円に変更される。
 TOHOシネマズは、以下のコメントを発表。「弊社では、デジタル映写機や自動券売機等の導入による運営の効率化を図るとともに、映画をより多くのお客様にお届けし楽しんでいただくために新規出店や鑑賞環境の改善などに努めて参りました。しかしながら、アルバイト人件費を中心とした運営コストの上昇や各種設備投資への負担増により、企業努力だけではこれらの吸収は極めて困難であると判断し、鑑賞料金を改定させていただきます。今後も更なる企業努力により、お客様にご満足いただけるようサービスの向上に努めて参りますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます」。
 改定後は、現在1800円の一般鑑賞料金が1900円に。1100円のシニア、ファーストデイ、レディースデイ、TOHOシネマズデイは1200円、2200円の夫婦50割引(2人で)は2400円となる。大学・高校・中学・小学生、幼児、レイトショーの料金改定はなく、12月1日の「映画の日」は現行料金の1000円で実施される。
(3月18日、映画.com)

色々なものが少しずつ値上がりしているが、映画1900円は高すぎだろう。日本にいた時はさほど気にならなかったが、海外から帰ってみると強く感じる。
そもそも「アルバイト人件費を中心とした運営コストの上昇」ということだが、時給1000円程度でボーナスも社会保障費も無い人件費が経営を圧迫するだろうか。これが本当だとすれば、そもそも経営に失敗しているとしか思えない。
やはりMX4Dを始め、IMAX、TCX、ATMOSなどの映画そのものの上映費用ではなく、付加価値を高めるための投資があまりにも高くついていることが大きいのでは無かろうか。これらは個人的には「どうでもいい」ものであり、そのために値上げされるのは、いささか納得がいかない。

この傾向は2000年代前後に日本の家電メーカーが、中国・韓国ブランドと競争するために、価格競争では無く、付加価値を高めることで対応しようとした結果、使われない機能ばかりが増えて、ユーザーからそっぽを向かれ、ほぼ全滅してしまった(残るはパナと日立のみ)故事が思い出される。

今の時代、映画館での上映など止めて、ネット配信だけで良いのではなかろうか。それで価格が半分以下になるのであれば、その方が良いように思える。少なくとも、その選択肢は欲しいところだ。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月26日

ちいさな独裁者


『ちいさな独裁者』 ロベルト・シュヴェンケ監督 ドイツ(2017)
「RED レッド」や「ダイバージェント」シリーズなどハリウッドで活躍するロベルト・シュベンケ監督が母国ドイツでメガホンをとり、第2次世界大戦末期に起きた実話をもとに描いたサスペンスドラマ。1945年4月。敗色濃厚なドイツでは、兵士の軍規違反が続発していた。命からがら部隊を脱走したヘロルトは、偶然拾った軍服を身にまとって大尉に成りすまし、道中出会った兵士たちを言葉巧みに騙して服従させていく。権力の味を知ったヘロルトは傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、ついには大量殺戮へと暴走しはじめるが……。出演は「まともな男」のマックス・フーバッヒャー、「ヴィクトリア」のフレデリック・ラウ、「顔のないヒトラーたち」のアレクサンダー・フェーリング

ひっそりと上映されているが、かなりマニアックな上、いろいろ「来る」作品である。
ある脱走兵が大尉の制服をまとい、総統の名を連発すると、周囲の人間は皆思考を停止させ、自然に権威に従属することを選んでしまう。
そして権力が肥大化し、暴走して行く。
こう書いてしまうと、いささか陳腐に聞こえてしまうが、それが見事に映像化されていることに本作の意義がある。
実際のところ、ヘロルトは大尉の制服を拾っただけだが、実のところ権威の源泉であるヒトラーも「権力を拾っただけ」と言えなくも無く、そこに権威主義と全体主義、あるいはポピュリズムの恐ろしさがある。

この「権力を拾っただけ」というのは、永田町に勤務していた私には感覚的に理解できるものだ。
現代日本においても、例えば現総理などは30年前の自民党であれば、誰からも見向きもされなかったであろう程度の人物と見られるが、それが全体的な人的水準の低下とともに浮かび上がって、いつの間にか最高権力を得て、さらに権威を肥大化させ続けている。そして、官僚もマスコミも思考を停止させ、権威に従属することを進んで選んでいる。過激化していないだけで、1930年代のドイツと2012年以降の日本は非常に多くの共通点を抱えている。
その意味で、ヘロルトは決して例外的あるいは特殊な人間ではないのである。

映画自体はドイツ映画らしく、いかなるカタルシスもなく淡々と物語が進んで行く。
シュヴェンケ監督はインタビューで、本作を『ヒトラー〜最期の12日間〜』のアンチ・テーゼと位置づけている。
それは、ナチズムやその全体主義の暴力がヒトラー一人の責任に帰せられるものではなく、ドイツ国民の全てに帰せられるものだからだという。
そして監督の祖父を含めて「普通のドイツ人」が全体主義と暴力に加担したことを描く必要を訴えている。

本作のもう一つの魅力は、ドイツ人らしい歴史再現度にある。
もともと史実をベースにしているわけだが、空軍大尉の制服から国民突撃兵の自転車や武装、野戦憲兵隊の装備や仕草、そして脱走兵の収容所に至るまで、1945年のドイツを完璧に再現している。規則や手続き(あるいは人道?)にこだわる収容所の法務官もいい感じの演技になっている。
名作『バーダー=マインホフ 理想の果てに』では、テロリスト(運動家)のアジトにある本棚にある本の並びにまで配慮したという逸話があるが、いかにもドイツ人らしいこだわりである。

確かに本作の物語は1945年4月の「ちいさな」出来事かもしれないが、内包するものは決して古びてはいない。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月24日

【宣伝】The Unknown Soldier (2017)

結局KV戦車の映画は時間の都合(平日夜一回だけとか無理)で見に行けなかったが、良さげな映画の公開情報を知ったので紹介したい。
次回は「継続戦争」だ!
 フィンランドで2017年国内興収No.1の大ヒットを記録し、1テイクに使用した爆薬の量がギネスにも登録された映画『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』が、6月22日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開されることが決定した。

 フィンランドでは有名なヴァイノ・リンナの古典小説『無名戦士』を原作にした本作は、第2次世界大戦時に祖国防衛のために継続戦争をソ連軍と戦った、フィンランド兵士の壮絶な姿を描く戦争アクション。1939年に起きた、フィンランドがソ連と戦った“冬戦争”が翌年に終結。その代償として、カレリア地方を含む広大な国土がソ連に占領された。国土回復を掲げ、1941年にフィンランドはドイツと手を組み、再びソ連との戦争を開始した。これが「継続戦争」である。

 ロッカ、カリルオト、コスケラ、ヒエタネン、年齢や立場、支える家族などそれぞれ生きてきた背景が違う4人の兵士たちを通して、フィンランド軍がいかにしてソ連軍と勇敢に戦ったのかを克明に描写する。非情である最前線で戦う兵士たちに血肉を通わせ、友情、ユーモア、そして生きる意志が兵士たちの団結の力を生み、占領された土地を取り戻していく。最前線を担う各兵士たちの生活とその家族たちの生活を大きく変えてしまった“継続戦争”だが、たとえ戦場で息絶えたとしても戦士たちの生きた証はそれぞれの家族に、そして大地に確実に刻まれていくのだった。

■公開情報
『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』
6月22日(土)より 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
監督:アク・ロウヒミエス
出演:エーロ・アホ、ヨハンネス・ホロパイネン、アク・ヒルヴィニスミ、ハンネス・スオミ
撮影:ミカ・オラスマー
配給:彩プロ
2017年/フィンランド/フィンランド語/カラー/スコープサイズ/5.1ch/132分(インターナショナル版)/PG-12/原題:Unknown Soldier
(2月8日、Real Sound)



posted by ケン at 12:00| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月10日

新・北斎展 HOKUSAI UPDATED

六本木ヒルズにある森アーツセンターギャラリーで開催中の「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」に行く。

00091912.jpg

葛飾北斎の展覧会は一年中どこかでやってそうなくらいのイメージだが、本展は非常に見所が多く、足を運ぶことに。
2000件を超える北斎と北斎派のコレクションを所有していた北斎研究家(コレクター?)の故・永田生慈氏が企画したものだが、ご本人は企画中に亡くなられている。
ごく初期の作品から90歳で逝去する年に描かれた作品まで、70年近い年月を「アップデート」してきた北斎の画家人生を追っている。

WeChat Image_20190210100153.jpg

50代にして先を見据えて画の教本を書いたのに、そこから画家人生をさらに30年以上も続け、特に70代以降の肉筆画の迫力たるや鬼気迫るものあり、西洋画のような写実性ありで、「アップデート」ぶりがよく分かる。
90年の人生で70回も転居を行い、89歳にして江戸と信濃を往復する(もちろん徒歩)など、人間離れしたアクティビティは、空海やレオナルド・ダ・ヴィンチに通じるものがある。
非常に見応えのある展覧会である。

WeChat Image_20190210100202.jpg
ヒルズから見た東京の夜景。左手に新宿、東京都庁。左下に青山墓地と米軍麻布基地。
posted by ケン at 10:20| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月30日

ロマンティック・ロシア展

a3f3f88d79dbd2227c3146b9ab9ad7bc.jpg
トレチャコフ美術館の「ロマンティック・ロシア展」に行く(終了済み)。
滑り込みセーフだった。やはり東京は良い。
中国でも大都市部は美術や芸術のインフラが整いつつあるも、日本のレベルには遙かに及ばない。やはり日本の場合、戦前から培ってきた知識と経験、そして諸外国の美術館との深い関係があることが大きい。
中国の美術館や博物館は建物こそ新しくて立派だが、展示の質はまだまだな感じだ。

本展は19世紀後半のいわゆる「移動派」を中心に、風景画と人物画を展示している。
ロシアの風景画というのは独特の色使いがあって、一見単調な風景の中にロマンと懐古を見いだすことができる。従って、単調と言ってしまえばそれまでだが、そこに何を見いだすことができるかは観る側のセンスや感覚が問われる。想像力が必要なのだ。
何よりも光の使い方が非常に美しい。

クラムスコイ、シーシキン、クズネツォフらの魅力を余すこと無く堪能できる。作品の選別も非常にセンスが良く、トレチャコフに実際に行くよりもむしろコンパクトに凝縮して楽しめる。トレチャコフやロシア美術館は大きすぎて、途中で集中力が切れてしまうところに難があるからだ。

本展だけでも一時帰国して良かったと思える。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月14日

【宣伝】タンク・ソルジャー 重戦車KV-1


鋼鉄の軍団”に挑んだ、不屈の男たち
1942年、激戦が続くロシア戦線。ソ連軍重戦車KV-1を駆り、世界最強のドイツ軍ティーガー戦車部隊に、絶対不利な戦いを敢然と挑んだ戦車兵たちの、驚くべき実話。

ツッコミどころが多すぎるが野暮な話なので何も言わない。
ただKV1が主役でありさえしてくれれば、それで良いのだ!
何とか2月に公開して欲しい。
posted by ケン at 20:31| Comment(3) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする