2018年08月20日

パラドックス定数「5 seconds」

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東京裁判、226事件、731部隊、グリコ森永事件など昭和史の闇を舞台化し続けている野木萌葱氏が主宰する劇団パラドックス定数の公演。
渡航前最後の観劇となる。

「機長やめてください!」「逆噴射」で知られる羽田沖日航機350便墜落事故がテーマ。
精神疾患の疑いで病院(史実では松沢病院)に収容された機長と接見する弁護士の二人が、4幕(暗転するだけ)100分間、延々と会話するだけの舞台。音楽すら無い。演劇初心者にはかなりハードルが高そうだが、十分に見応えあった。

滑走路まで500メートルのところで逆噴射を行って、機体を垂直に墜落させた機長は業務上過失致死罪等で起訴される。
刑法39条を駆使して無罪を勝ち取ろうとする弁護士が、統合失調症の疑いがある機長から有用な情報を得ようと悪戦苦闘するが、どこまでも話がかみ合わない。

2人の会話だけで100分間もたせなければならず、コメディー要素もないだけに、純粋に脚本と役者の演技力が問われる。
面白くしようとすれば、「スターリンの葬送行進曲」のようにコメディ化すれば良いのだろうが、奇をてらうこと無く真正面から取り組む野木の真骨頂と言える。

気づいてみれば36年前のことで、演じている二人も事件を知らなかったという。
爺になるわけですな。

posted by ケン at 09:30| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月15日

スターリンの葬送狂騒曲


『スターリンの葬送狂騒曲』 アーマンド・イアヌッチ監督 イギリス(2017)
1953年、ソビエト連邦の最高権力者スターリンが、脳出血の発作で危篤に陥る。“粛清”という名の大量虐殺による恐怖で、国民はもちろん部下たちも支配してきた独裁者だ。今こそ彼の後釜につくチャンスだと色めき立つ側近たちが、互いを出し抜くオトナげない駆け引きを始めるなか、スターリンは後継者を指名することなく息を引き取る。表向きは厳粛な国葬の準備を進めながら、スターリンの腹心だったマレンコフ、中央委員会第一書記のフルシチョフ、秘密警察警備隊長のベリヤが3大トップとなり、各大臣にソビエト軍の最高司令官ジューコフ陸軍元帥までが参戦し、権力バトル開始のゴングが鳴った! 嘘と裏切り、仕掛け合う罠─勢力地図は1秒ごとに目まぐるしく塗り替えられ、国を担うはずの男たちの“なんでもあり&やったもの勝ち”のゲスな本性が暴かれていく─。 「驚くべき物語が、さらに驚くことに、ほとんど事実」であるために、フランスで出版されるや物議と人気がヒートアップしたベストセラーの映画化が実現。


宣伝されているほどには「コメディ」ではなかった。確かに細部はオーバーアクションと恣意的な解釈が披露されているが、大まかなところは史実に即していると思われ、興味深かった。日本史で喩えるなら『日本のいちばん長い日』をコメディ化するような話で、確かにロシア人的には受け入れがたいに違いない。岡本喜八の同映画は、当事者たちから「俺たちはあんなに狂っていなかった」と非常に不評だったことが思い出される。ただ、ソ連学徒としては『フルスタリョフ、車を!』を見た方が勉強になると思う。

とはいえ、本作はあくまでも創作であり、歴史映画としてみると大変な勘違いをしてしまうので、鑑賞にはリテラシーが求められる。
例えば、映画では葬儀に参列に来た市民をNKVDが虐殺するシーンがある。しかし、史実としては、モスクワに厳戒態勢が敷かれた結果、一部の街道と広場に参列者が集中、トルーブナヤ広場で将棋倒しが起こり、死亡者が出たわけだが、今日まで被害者の数は不明で、当時は「一万人以上」などとまことしやかに語られたが、現実には100人前後から数百人だろうと見られている。ベリヤの罪状については、外交への介入と数々の専断、そして女性暴行などが挙げられており、件の事件は無縁だ。

史実を確認したいのであれば、この辺りの資料として一番入手しやすく、分かりやすいのは、和田春樹先生の『スターリン批判』(作品社)ないしは、モンテフィオーリ『スターリン―赤い皇帝と廷臣たち』(白水社)がお勧め。
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2018年06月25日

ゲッベルスと私

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『ゲッベルスと私』 クリスチャン・コロネルほか オーストリア(2016)



ナチス・ドイツの宣伝相だったゲッベルスの秘書ポムゼル女史が、103歳にして69年間の沈黙を破り、ひたすらしゃべるまくるドミュメンタリー。インタビューは総計30時間に及び、記録映像を交えながら約2時間に編集しているが、実質的には彼女が2時間近く延々と回顧するだけの映画なので、映画館では爆睡者が続出、私も一度寝かけたほどだった。

取材が行われたのは2014年で、当時103歳ということは1911年生まれで、実際彼女の記憶は一次大戦が勃発して父親が出征するところから始まる。先頃94歳で亡くなられたK顧問も、ご父君がシベリア出兵に出征されて国家主義から社会主義に目覚めた経緯を話されていたが、まさに想像を超える歴史そのものである。

彼女自身はありふれた中流の家庭のベルリン市民で、より良い仕事を求めてナチ党に入党し、1933年に放送局に就職、仕事ぶりが認められて、1942年に宣伝省に入り、大臣官房の秘書となっている。放送局に入る前は、ユダヤ人の法律・保険事務所で事務員を務めており、純粋に「より良い仕事」を求めただけの話だったという。
大量虐殺などナチスによる蛮行については、一切関与を否定、強制収容所の存在は知っていたとしつつも、「自分は何も知らなかった」と繰り返す。

顔こそ皺だらけで年相応なのだが、その記憶力と話し口はおよそ100歳超のものではなく、80歳超の者でさえ、あそこまで蕩々と話せるものは少ないのでは無かろうか。この点は超人的と言える。その記憶も非常に精密で、覚えていないところはハッキリ言い、よどむところが殆ど無い。感情を露わにするところも非常に少なく、むしろ空恐ろしいほどに淡々と述べているのが印象的だ。
作り手は殆ど操作せずに生のインタビューを流しているだけに、批判的、懐疑的に読み取るのが難しく、聞き手のリテラシーが問われるドキュメンタリーになっている。

私なども若い頃には「十五年戦争に際して、なぜもっと戦争に反対しなかったのか」と考えていたクチであったが、今日のデモクラシーの危機やポピュリズムあるいはナショナリズムの高揚に際して、積極的に抵抗しているとは言えず、むしろ本格的な危機に陥る前に亡命を選択している。自分が採れる選択肢が、「身一つで逃げる」しか無い、あるいは比較的容易に採れるものだからだ。実際に、全体主義政権や軍部独裁が成立してから抵抗あるいは逃亡するのは命がけになってしまい、英雄願望を排除した場合、現実的な選択肢とは言えないだろう。

リベラル系の知識人は「市民の無関心がファシズムを生んだのであって、市民一人一人が批判精神をもって為政者を監視、対峙しなければならない」などと軽く言うが、理想論としては正しくても、その認識は現実的なのだろうか。
全体主義学徒であるケン先生的には、「市民が主体的に日常課題の暴力的解決を望んだ」とするE・トッド先生の解釈を支持するものである。そうでなければ、日本の日比谷焼き討ち事件も南京陥落時の熱狂も説明が付かない。ファッショに至らずとも、日清・日露戦争における開戦要求は、むしろ市民レベルの方が高揚していた。

ポムゼル女史は前後、5年間ソ連に拘留された後、釈放、東ドイツにて放送局に再就職し、人生を全うしている。
「女史が何を語ったか」以上に、受け手が考えさせられる好ドキュメンタリーである。ただし、居眠り注意だが。
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2018年06月10日

軍中楽園

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『軍中楽園』 鈕承澤 台湾(2014)



中国と台湾の緊張が続く1969年。台湾青年兵ルオ・バオタイは、大陸沿岸からわずかしか離れておらず砲弾が降り注ぐ最前線の島のエリート部隊に配属される。しかし泳げないことがわかり、軍中楽園と呼ばれる娼館・特約茶室を管理する831部隊に回されることに。ここには、様々な事情を抱える女性たちがいた。小悪魔のように男たちに愛を囁くアジャオとの未来を夢見る大陸出身の老兵ラオジャン。過酷な現実に打ちのめされ、空虚な愛に逃げる若き兵士ホワシン。バオタイはどこか影のある女ニーニーと奇妙な友情を育んでいく。純潔を誓った婚約者から別れの手紙が届いたバオタイの悲しみを受け止めたのは、ニーニーだった。バオタイはやがてニーニーに惹かれていくが、彼女は許されざる罪を背負っていた……。

名作『モンガに散る』のニウ・チェンザー監督の新作。鈕氏は、古き良き昭和テイストとノスタルジーを見事に再現する希有な映画監督である。「台湾なのに昭和?」と思われるかもしれないが、こればかりは実際に観てみないと実感できないだろう。

その鈕監督が、軍娼・軍営娼館という台湾の黒歴史(廃止は1992年)に焦点をあて、国共内戦の最前線である金門島を舞台に様々な人間模様を描いている。ある意味、タブーだらけの作品で、台湾で完成、公開できただけでも大したものだったが、観客動員はあまり芳しくなかったらしい。

全体的には、暗く厭世的になりがちなテーマを、政治的な描写を避けつつ、兵士と娼婦の日常と人生を情緒的に描いている。いささか美しく、情緒的に描きすぎているところが、気になる人はいそうだが、ケン先生的にはこれで丁度良いくらいに思えた。2時間以上の長尺で、ストーリーに起伏があるわけでもないが、微細な笑いと哀しみが見事に混ざり合って、映像美から目が離せない。敢えて陰惨な描写を避けることで、エンターテインメントと歴史ドラマを両立させている、希有な作品と言える。
ヒロインを演じた万茜女史や下士官長役を演じた陳建斌氏の演技はプロフェッショナルのそれであり、演技としても一見の価値がある。

韓国と台湾を冷戦の最前線にしたことで高度成長を果たした日本人としては、慰安婦問題も含めて、正面から向かい合うべき課題を秘めているだけに、是非とも観ておくことを薦めたい。
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2018年06月08日

映画『マルクス・エンゲルス』

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『マルクス・エンゲルス』 ラウル・ペック監督 フランス・ドイツ・ベルギー(2017)


1840年代のヨーロッパでは、産業革命が生んだ社会のひずみが格差をもたらし、貧困の嵐が吹き荒れ、人々は人間の尊厳を奪われて、不当な労働を強いられていた。20代半ばのカール・マルクスは、搾取と不平等な世界に対抗すべく独自に政治批判を展開するが、それによってドイツを追われ、フランスへと辿りつく。パリで彼はフリードリヒ・エンゲルスと運命の再会を果たし、エンゲルスの経済論に着目したマルクスは彼と深い友情をはぐくんでゆく。激しく揺れ動く時代、資本家と労働者の対立が拡大し、人々に革命的理論が待望されるなか、二人はかけがえのない同志である妻たちとともに、時代を超えて読み継がれてゆく『共産党宣言』の執筆に打ち込んでゆく――。
原題は「The young Karl Marx」で確かに20代後半の数年間のマルクスを描いているのだが、実質的にはエンゲルスとコンビを組む過程が中心軸になっている。ストーリーは、マルクスがドイツを追われてパリに移住し、そのパリからも追放されてブリュッセルに行き、『共産党宣言』を準備するところまで。
マルクスは評伝を読む限り、友人だろうが恩人だろうが、考え方が異なる者に対しては容赦なく罵倒、攻撃する人物であり、人間的にはなかなかのロクデナシで、この傾向は年を経るごとに悪化するのだが、焦点を若年期に絞ることでロクデナシ要素を薄めている。史実では、奥さんとエンゲルスが寛大すぎると思うのだが。

哲学論争は最小限度に抑え、時代の空気感や背景、マルクス・エンゲルスをめぐる人間模様に焦点を当てることで、難解にならないようにつくられている。確かに分かりやすくはなっているが、物足りなく思う人もいそうだ。
とはいえ、1840年代に何故マルクスが歴史の表舞台に登場し、2010年代に再評価されるのかを考えるに際して、映像で見ておく価値はあるだろう。
posted by ケン at 12:41| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月02日

祝!あそあそアニメ化!

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『あそびあそばせ』 涼川りん 白泉社より既刊5巻

日本生まれ日本育ちでまったく英語ができない
金髪の美少女・オリヴィア、真面目で知的な雰囲気を漂わせながら
英語がまったくできないショートカットの眼鏡っ娘・香純かすみ、
そして明るいけれど、リア充になれないおさげ髪の少女・華子はなこ、
3人の女子中学生が作ったのは「遊び人研究会」!? 
最高に可愛くて最高に楽しい抱腹絶倒の
JCガールズコメディが今、幕を開ける!

涼川りん先生の『あそびあそばせ』がアニメ化され、今夏より放送されると聞き、心よりお祝い申し上げます。

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ケン先生は、昔からギャグ・コメディを嗜む習慣を持たないが、本作は例外と言える。中国赴任に備えて、KINDLEを購入する予定だが、本作は絶対に外せないと考えているくらい。
ネット上では、「表紙詐欺」とか「圧倒的な画力の無駄遣い」と言われているが、どちらもその通りだ。

中学生らしい日常(正気)と妄想(狂気)の暴走っぷりが、涼川先生の「画力の無駄遣い」によって見事に使い分けられているところは、岡本喜八の映画すら思わせるところがある。
しかも、登場人物はみな腹黒い部分を抱えており、一つ一つは些細なことだが、友人を貶めることも、友人を見捨てることも躊躇しない。そのドス黒さも、それが裏目に出るところも、いきなりテンションマックスになったかと思えば、いきなり急降下するところも、抱腹絶倒させられる。

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演出過剰を楽しむギャグ漫画ではあるのだが、何度読んでも笑えるだけの魅力(魔力)を備えている。
アニメになるとどうなのかという不安はあるものの、楽しみにはしている。最後まで見られないのが惜しすぎるが。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月30日

ヴァイオレット・エヴァーガーデン原作入手!

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前期最高傑作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の原作三冊を入手!「終戦後」と戦争後遺症をテーマにした珍しいラノベ。
posted by ケン at 12:06| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする