2017年03月23日

時をかける稽古場 2.0

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時をかける稽古場 2.0』 脚本・演出 冨坂友 アガリスクエンターテイメント
3月22日(水)〜3月28日(火) 東京「駅前劇場」
4月4日(火)〜4月9日(日) 京都「KAIKA」


ケンケンさんのお誘いで、劇団アガリスクエンターテイメント「時をかける稽古場 2.0」を観る。
下北沢「駅前劇場」は初めてだったが、文字通り南口真ん前のビルの3階だった。ただし、ハコは非常に小さく、公式上は座席160となっているが、とてもそうは見えず100席くらいにしか見えない上、とにかく天井が低く、圧迫感がある。雰囲気的には、学生劇をやっていた頃の大学の劇場を思い出す。
主にコメディーを演じる若手劇団で、2014年に上演して好評を得た作品をリファインしている。

超遅筆な脚本家率いる若手劇団「第六十三小隊」は、勝負をかけた公演を二週間後に控えながら、台本が1ページも無いという危機に瀕していた。
ある日、稽古場にて偶然タイムマシンを発見した劇団員達は起死回生の策を思いつく。
それは「稽古最終日まで行って、完成したあとの台本を取ってくる」というものだった…!

平日の初日だったが、満員御礼。若手劇団故か、若年層が多く、自分も含め中高年者はチラホラという程度。パイプ椅子の上に一応座布団が置かれているものの、ギュウ詰めな上、2時間の長丁場なので、とにかく尻が痛かった。

確かに熱演で次々と笑かしてくれたものの、テクニックというよりはノリと勢いで笑いを取っている感じ。演技は、自然体ではあったが、決して高いとは言えず、せいぜいセミプロ級のレベルをノリと勢いで突破しているイメージ。とはいえ、舞台全体としては面白いので、特段の問題は無い。
問題はむしろ脚本と演出にありそうだ。コメディーはノリとテンポが重要なのに、このテーマで2時間は長すぎる。つまり、無駄が多い。特に説明部分が冗長なのと、辻褄合わせのシーンが多いことが尺を伸ばしてしまっており、せっかくの面白さを減じてしまっている。せいぜい1時間半くらいにすべきだろう。タイムマシンによる暗転が多いところも、テンポを悪くしている。

学生演劇の延長水準で粗々なところが多いのだが、着眼点、設定、演出、ノリとパワーの点で面白い舞台に仕上がっていることは間違いない。
個人的には「本番2週間前に脚本が上がっていない」とか「劇団が解散して田舎に帰った」とか、実際に身近なところで経験してきたことなだけに、色々と共感できる部分も多かった。
posted by ケン at 13:04| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月20日

バーバリアンズ・ライジング〜ローマ帝国に反逆した戦士たち〜

半年ほど前にスカパー・ヒストリーチャンネルで放映していたが、録画したまま放置していたので、見てみることにした。CM無しの60分が全8話なので、結構な分量だが、見始めると止まらなくなり、2、3話ずつ視聴した。
1000年以上にわたり恐れられ、征服不可能と思われてきたローマ帝国。当時の人民たちには、自らをローマ帝国の支配に委ねるか、抗い続けるしか生きる術がなかった…。
この番組は、そんなローマ帝国に屈することなく抵抗した勇敢な者による叙事詩である。戦争、陰謀、謎、裏切り、復讐によって支えられた血まみれの権力闘争。それをハンニバル、スパルタカス、アルミニウス、ブーディカ、アラリック、アッティラという史上最も象徴的な戦士たちの視点を通して語ってゆく。700年間の歴史を通し、世界を変えるために灯された革命と自由のためのたいまつを民族から民族、国から国へと灯していく。
歴史における自由の戦士として、建国の立役者として、一般の民の代表として近代の世を創り上げた戦士たちを、ここで再び発見していく。
ヒストリーチャンネルHP
 



制作は基本アメリカだが、撮影はブルガリアで行われ、再現ドラマが映画レベルのエンターテイメント性の高いドキュメンタリーに仕上がっている。ドラマ部分も日本の大河ドラマと違ってリアル路線なので、古代の残虐性もしっかり再現されており、CGも上手く駆使して、映画レベルの規模や戦闘シーンを実現している。
この時代の歴史(古代ローマ)は、殆どの場合がローマ側の視点で描かれ、いわゆる「蛮族」は「ローマ文明と市民を脅かす敵対的な異民族」となるわけだが、本作は視点を逆転させて「蛮族」側に合わせ、「ローマの侵略、圧政、差別に対して立ち上がる異民族」を描いている。
「蛮族王」に「オレ達が欲しいのは自由なんだ!」と言わせてしまう辺りは、どこまでもアメリカンなのだが、そこにさえ目をつむれば、気づかぬうちに「蛮族」に感情移入している自分に気づくだろう。



全8話に登場する「蛮族王」のラインナップは、ハンニバル、ウィリアトゥス(ルシタニア、現スペイン)、スパルタカス、アルミニウス(ゲルマン)、ブーディカ(ケルト族、ブリタンニア)、フリティゲルン(ゴート族)、アラリック(ゴート族)、ガイセリック(ヴァンダル族)、アッティラ(フン族)。自分も初見の人物が多く、斬新な視点と映像を含めて、非常に興味深かった。



肝心のドキュメンタリー部分は評価が分かれるかもしれない。コメントする歴史家は少数で、他に退役軍人が軍事的視点から、政治家や市民運動家が政治的あるいは運動論の視点から現代にも共通する様々な課題を述べるわけだが、必ずしもその時代の歴史や登場人物のこととは限らないので、「もっと本人(王)のことを話せよ」という感想が持たれてもおかしくない。ただ、それとなくローマを現代のアメリカに、「蛮族」を現代の中東やアフリカの諸民族に見立てているようなところがあり、この点も非常に興味深い。
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2017年03月13日

増村寛 遺作展

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一昨年昇天された、中学、高校の恩師である増村先生の遺作展。
自分もそんな年になったのかと。「お前はいつ個展やるんだ?」と言われているみたいで、腰が引けるけど・・・・・・
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2017年03月12日

映画 ハーモニー 伊藤計劃

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『ハーモニー』 監督なかむらたかし、マイケル・アリアス 日本(2015)



『虐殺器官』に感銘を受け、この機に他の伊藤作品も見てしまおうと思った次第。
本作も同様にセリフが膨大で、原作を読まずに映画だけ見てもどこまで理解できるか、というレベルになっている。しかも、『虐殺器官』に比べて動きが少なく、ラストを除くと見せ場というほどの場面も無いため、人によっては退屈を覚えるだろう。この難解さと退屈さで評価が下がってしまうのは避けられないが、話についていけさえすれば、必要最小限にまとめられていることや声優の名演に高評価が与えられるはずだ。特にケン先生は榊原良子ファンなので、徹頭徹尾ウハウハだった(笑)ただ、CGが「いかにもCG」になっている点、敢えて非現実、人工感を出す演出だとは思うのだが、違和感を覚えないではいられない。映像美という点では『屍者の帝国』に軍配が上げられるが、ストーリーや全体の空気感における、「美しい悲劇」という点が傑出している。

流れ的には『虐殺器官』後の世界で、先進国では高度に発展した医療福祉社会が構築され、政府の管理下で国民は健康と幸福が保障されている。国民はひたすら「善なる存在」であり、そこには悪意すら存在しない「満たされた」社会が実現している。果たして、そこに人の意志や意識はどこまで存在しうるのか、自由や個性にいかなる価値があるのか、ユートピアと表裏一体のディストピアなどがテーマになっている。テーマとしては、『PSYCHO-PASS サイコパス』によく似ているし、言ってしまえばSFの常套ネタなのだが、同性愛、自殺、テロルなどの組み合わせとプロットが抜群に上手いのだと思われる。突っ込むべきところは色々あると言えばあるのだが、そこは原作を読んでからにしたい。
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2017年03月01日

LUPIN THE 3rd 血煙の石川五エ門

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『LUPIN THE 3rd 血煙の石川五エ門』 小池健監督 日本(2016)



『次元大介の墓標』に続く新シリーズ第二弾。
今回もどこまでもハードボイルド路線を追求し、一片の甘さも寄せ付けない作りになっている。今回は特に暴力度が増しており、とてもTVでは放映できないレベルで、TVアニメ版のルパンとは似て非なるものになっている。登場人物も、ルパンを始め、「全員悪人」だ。だが、本来のモンキー・パンチ原作はこれに近かったはず。
私的には、「公安の銭形警部」という設定が非常に燃えるわけだが、その上非常に優秀で格好良く描かれているところが、さらに満足度を高めている。今回の主人公である五エ門のストイシズムは見てのお楽しみで。
声優さんたちも気合いの入った演技で全編緊張感が保たれており、2話1時間の構成だが、非常に充実している。ハードボイルド好きにはお勧めの一作。
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2017年02月24日

太陽の下で-真実の北朝鮮-

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『太陽の下で-真実の北朝鮮-』 ヴィタリー・マンスキー監督 ロシア、北朝鮮ほか(2015)




ロシア人監督が撮った、北朝鮮の「ドキュメンタリー」映画。括弧付きなのは、監督は普通にドキュメンタリーを撮ろうとしたところ、一から百まで当局の指導と監督が入り、徹頭徹尾「やらせ」になってしまったため、途中からカメラを回しっぱなしにして、いかに「やらせ」が行われているかを撮影するドキュメンタリーに変更、他の部分でも録画しっぱなしにすることで様々な生の映像を収録している。もちろん北朝鮮当局のOKが出るわけもなく、検閲前の録画データを先に外国に持ち出すことで成立している。その結果、監督は北朝鮮の「お尋ね者」になっているのだから、まさに命がけの映画であり、日本のジャーナリストに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
地味に衝撃的なラストがけっこう精神ダメージ入りマス!

以下ネタバレ注意!

8歳の子どもがいる一般家庭の生活を追うはずだったが、当局は両親の職業を偽装し、アパートも平壌市内の超一等地の高級マンションを用意していた。ところが、それらは余りにも不自然で全く生活臭を感じさせないものになっている。だが、カメラが回り続けているので、当局による細かい演技指導を含めて、全て暴露されてしまっている。
小学校における思想教育は「そのまま」なのかもしれないが、子どもに対する洗脳教育の凄まじさを物語っている。子どもは子どもで、教室を掃除しながら「わが祖国ほど高貴で美しい国は、この世のどこにも無い〜〜」などと歌っているわけだが、つい「日本のネトウヨと同じじゃん」などと思ってしまう。
個人崇拝の究極型なのだろうが、考えてみれば戦時中の日本もこんな感じだったはずだ。現代の大阪のとある幼稚園とかも。

個々の映像は、何の加工もせず、説明も最小限にして、淡々と繋ぎ合わされているだけなので、ある種退屈ではあるのだが、細かいところで本音の表情や仕草が見えるので、一定の知識を持って注意してみないと「気づき」が得られないかもしれない。
街並み的には、私が留学した頃のソ連末期とそっくりで、どこまでも無機質で商店や食堂の類いも殆ど無く、広告類はゼロ、巨大なモニュメントとスローガンばかりが目立つという案配で、「あ〜ソ連もこうだったよな〜」的な懐かしさを覚えてしまう。

とはいえ、北朝鮮ウォッチャーや共産趣味者(この場合は個人崇拝マニアか)でも無い限り、何が面白いのか分からないかもしれない。その割に、公開から1カ月後の劇場は半分以上埋まっており、若い人も多く、「この人たちは一体何が見たかったんだろう?」と疑問を禁じ得なかった次第。
posted by ケン at 12:20| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月22日

映画 虐殺器官

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『虐殺器官』 村瀬修功・監督脚本 日本(2017)



一度満席で断念し、二度目で見られたが、来週で終わってしまうのは惜しい。実は『屍者の帝国』の方が見たかったのだが、この時も一度満席で断念し、次に見ようとしたら終わっていただけに、外せなかった。
伊藤計劃の天才ぶりを見事に映像化している。映像だと情報量(セリフ)が多すぎて脱落者が続出しそうなのが難だが、観客に媚びないスタンスが良い。あの分量を二時間の映画でまとめるのは無理がある話だが、きっちりまとめている観がある。2人での会話シーンが多いのだが、戦闘シーンは戦闘シーンで全く容赦なくリアルに描いており、薬物で人間性を抑えての戦闘がどのようなものになるのか考えさせられる。

原作は2007年だが、「911後のもう一つの世界」を舞台に、自由と暴力の相関性が一つのテーマになっている。ぶっちゃけて言えば、「ある自由を守るためには、ある自由を否定する必要がある、あるいは対価とせねばならない」という対テロ戦争の深層である。
「自由は自由との対価でのみ存在する」とか「内戦と虐殺の普遍化」とか、テーマはまさに「ラビリンス」の世界そのもの。今見ると、リベラリズムの瓦解やトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」を予見させるような展開もあり、その先見性に目がくらんでしまう。

かなり玄人向けの作品なのは間違いないが、ブルーレイを購入して普及に努めたくなる出来だった。
posted by ケン at 12:16| Comment(3) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする