2018年07月18日

嫌がらせで内閣不信任案?

【<衆院議運委>首相海外出張了承せず 野党が反対】
 衆院議院運営委員会は6日の理事会で、政府が求めた安倍晋三首相の欧州などへの出張を了承しなかった。主要野党が、首相が出席する予算委員会集中審議を開催すべきだなどとして反対した。国会開会中の首相や閣僚の海外出張は議運委の許可を得るのが慣例だが、拘束力はない。首相の出張が了承されなかったのは5年ぶり。
 首相は11〜18日にベルギー、フランスなど4カ国を訪問する予定。ブリュッセルでは日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)に署名し、フランスではマクロン大統領と会談する予定だ。
 これに対し、立憲民主党の福山哲郎幹事長は6日の党会合で「これほど目的のはっきりしない(首相の)外遊を認めるわけにはいかない」と批判した。同党は首相出発前日の10日の内閣不信任決議案提出を検討している。
 一方、公明党の井上義久幹事長は記者会見で「首相を海外に行かせないため、国会審議を延ばすための不信任案が出されれば粛々と処理する」と述べ、けん制した。
(7月6日、毎日新聞)

【批判を懸念、異例の外遊中止 官邸は最後まで実現模索】
 西日本を中心とする豪雨被害を受け、安倍晋三首相の欧州・中東訪問が中止になった。首相官邸は最後まで実現を模索したが、大きな被害が出るなか初日の対応を疑問視する声も出た。「(外遊に)大きな案件はない。災害対応に万全を期すべきだ」(野党幹部)と高まる批判を懸念した。
 首相は11日に日本を出発し、ベルギーで欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の署名式、フランスで日本文化を紹介するイベントの開会式などに出席する予定だった。その後、サウジアラビア、エジプトを18日まで歴訪。サウジでは、将来のエネルギーの安定確保を目的に関係強化を進めるはずだった。
 菅義偉官房長官は9日午後の記者会見で「災害対応に万全を期すため」と述べ、首相の外遊の取りやめを発表した。EPA署名式については、安倍首相が9日夕にユンケル欧州委員長と電話で協議し、17日に東京で開催する方向になった。
 計画された首相の外遊が全面的に中止になるのは異例だ。安倍首相は、昨年7月の九州北部の豪雨災害や13年1月のアルジェリア人質事件の発生で、外遊を途中で切り上げたことがある。自民党幹部によれば今回も欧州のみに短縮する案などが検討されたが、最終的に中止に踏み切った。
(7月9日、朝日新聞)

最終的に官邸側が先手を打って外遊中止を決断、野党の陰謀は不発に終わったが、改めて評価してみたい。

戦術的には有効でも戦略的には最低な結果をもたらしかねないパターン。最も典型的なところでは、軍事的成果は挙げたものの、米国民を戦争支持で団結させ、国際的非難を浴びることになった真珠湾強襲が挙げられる。

仮に野党が総理の訪欧を阻止できたとしても、それは野党が「オレはやったぜ!」と快哉を上げるだけの話に過ぎず、外遊を準備してきた国家的コストや急遽中止になってしまった訪問先の損失、訪問先の国の評価減など失うものが非常に大きく、当然ながら政権党側は野党の責任を追及、マスゴミも追随するだろう。
安倍外交が「外国を回ってカネを配るだけ」という側面が強いのは確かだが、例えば中国などはその点だけでも高く評価して脅威を覚えているのだから、全く評価できないわけでもない。

真珠湾攻撃もそうだが、行動経済学的には、目に見える効果は現実に得られる利益よりも高く評価される傾向があり、逆に目に見えないリスクやデメリットは現実に被る損失よりも低く評価されることが分かっている。
地方で財政事情を鑑みずに大型の箱物が続々と立てられるのも同じ論理で説明できる。

今回の立憲の対応は「首相の外遊を阻止する」という目に見える効果を過剰に高く評価する一方、「首相外交を妨害した」と非難されるリスクを非常に低く見たことに端を発していると推測される。
最終的には、「彼らに政権運営は任せられない」という評価に落ち着くだろう。
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2018年06月01日

安倍氏三選か

【安倍首相、連続在職3位 総裁選3選で歴代最長も】
 安倍晋三首相の連続在職日数が28日で1980日となり、小泉純一郎元首相と並んで歴代3位、29日に単独で3位となる。9月に行われる自民党総裁選で3選を果たせば、通算在職も含め歴代最長記録の更新が視野に入ってくる。
 安倍首相は平成18年9月からの第1次政権で366日務めて退陣した後、24年12月に再び首相に就いた。同月の衆院選を含め自民党総裁として衆参両院の国政選挙5連勝は初めてで、長期政権を築いている。
 連続在職日数は、9月の総裁選で3選を果たせば来年2月21日に吉田茂氏(連続2248日)を抜いて2位となる。
 さらに32(2020)年8月24日に佐藤栄作氏(連続2798日)を抜いて、歴代1位となる計算だ。33(2021)年9月末までの3期目の党総裁任期を全うすれば連続3201日に達する。
 一方、通算の在職日数はこの28日で2346日となった。これは戦後で3位、戦前も含めた歴代では5位だ。
 順調ならば、来年8月24日に佐藤栄作氏(2798日)を抜いて戦後1位、11月20日には歴代1位の桂太郎氏(2886日)を抜き、憲政史上最長の首相となる。
(5月29日、産経新聞)

財務省から森友・加計関連資料が提出されたことを受けて、これまでの政府答弁の多くに虚偽があったことが発覚、国会は炎上して野党が追及を強めているものの、首相も官僚も「どこ吹く風」で相変わらず「質問と無関係の説明をする」「個別案件には答えられない」などに終始している。
これは、本来近代議会が有する行政監督権が全く機能していないことを意味し、今後さらに腐敗が蔓延してゆく可能性を示唆している。実際、狛江市長や日大幹部の対応を見ても、明らかに閣僚や霞ヶ関官僚の答弁を模したものになっていることが分かる。

一方、野党は野党で、提供された資料から判明したこと以外は新たな証拠を提示するには至っておらず、事実を突きつけて逃げ道を塞ぐまでにはなっていない。
そもそも政府側が今まで隠してきた資料を出してきたのは、「この程度では内閣は倒れない」という判断があるからで、麻生財務大臣も余裕顔を続けている。
「証拠文書を廃棄してしまえば罪に問われない」という社会文化は近代国家にはそぐわず、戦後民主主義の終焉を暗示している。

全国的には支持率を下げつつある安倍氏であるが、自民党内での支持は堅く、内部調査では二位の石破氏を大きく引き離してダントツのトップにあるという。これが僅差であれば、派閥力学が作用して変動も起こりうるが、現状では安倍氏三選の確率が上がっている。
当初は「国会延長はやっても数日間」と言われていたものが、今では「二、三週間」となっていることも、自民党側に余裕があることを示している。要は「野党の攻勢は国民の支持を受けておらず、脅威にならない」という認識である。

現状では、さらなるスキャンダルが出ない限り、安倍氏が三選すると思われるが、大手紙が大スキャンダルを準備しているとの情報もあり、その場合は8月末か9月頭に暴露されることになるだろう。ただ、これも野党側の希望的観測である可能性が高い。
また、「総裁選前に辞任する」という観測もいまだ根強く存在するが、根拠は無く、やはり希望的観測の域を出ない。

仮に「三選危うし」という状況となった場合、安倍氏は衆議院を解散して、総選挙に挑むパターンも考えられたが、現状ではわざわざリスクのある解散に打って出る必然性は非常に低い。

なお、安倍氏が三選した場合、政権や政府の腐敗が容認されることを意味するだけに、統治システムの腐敗と劣化が急速に進むと考えられる。
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2018年05月02日

チキンレース化する国会

【働き方改革法案、衆院で審議入り 野党6党は欠席方針】
 安倍政権が今国会の最重要法案と位置づける働き方改革関連法案が27日午後、衆院本会議で審議入りした。野党6党は審議拒否を続け、主要野党が欠席する中で目玉法案の審議が始まる異例の事態となった。審議日程は限られてきていて、今国会での成立には不透明感が増している。
 衆院本会議には安倍晋三首相も出席。趣旨説明や質疑の後、衆院厚生労働委員会に審議の場を移す。立憲民主党や希望の党など野党6党は、森友・加計(かけ)学園問題や自衛隊活動報告(日報)の隠蔽(いんぺい)、前財務次官のセクハラ報道などを受け、麻生太郎財務相の辞任などの要求が認められなければ審議拒否を続ける構えだ。
 野党は、法案を所管する厚生労働省や法案そのものにも反発を強めている。裁量労働制を違法適用していた野村不動産への昨年12月の特別指導について、加藤勝信厚労相が今年2月に裁量労働制の乱用を取り締まった例として国会答弁で言及。だが、指導のきっかけが男性社員の過労自殺だったことが3月に発覚した。野党は「都合の悪い過労自殺を隠していたのでは」とみて詳しい経緯の説明を求めているが、厚労省側は拒んでいる。
 法案に盛り込まれた「高度プロフェッショナル制度」の導入にも反対する。年収約1千万円超の一部の専門職を労働時間の規制から外す制度だが、「残業代ゼロ制度」と批判して削除を求めている。
 働き方法案は、高プロ新設という規制緩和と、残業時間の罰則付き上限規制などの規制強化の抱き合わせで、労働基準法など8本の改正法案を束ねる。非正社員の待遇改善を目指す「同一労働同一賃金」も柱だ。当初は裁量労働制の対象拡大も含まれていたが、根拠となる労働時間データが不適切だった問題を受けて削除された。
(4月27日、朝日新聞)

90年代までであれば、与野党の国対幹部がこっそり料亭で杯を交わしながら、「落としどころ」をさぐって、与党は野党に花を持たせて審議再開に持ち込む流れがあった。だが、「出来レースは許されない」とガチンコが要求された結果、国会が一度紛糾した場合、これを止める手段がなくなってしまった。これはプロレスと似ていて、「筋書きは認めない」「格闘技はガチに限る」とやったところ、衰退に歯止めがかからなくなってしまったようなものだ。

野党がどれだけ息巻いたところで衆議院で100議席ほどしか有しておらず、政党支持率でも自民党にはるかに及ばない。
審議拒否は、「オレらの要求を聞いてくれなきゃ、お前の話なんて聞いてやらない」という、本質的に子どもじみた戦術であるだけに、よほどの正当性と有権者からの強い支持が無い限り、長くは続けられない。
自公は衆参両院で過半数を持っているだけに、淡々と審議を続け、「単に野党が勝手に欠席してるだけ」という形さえ見せてやれば、いずれ非難の声は「国政を審議しない野党はケシカラン」となるだろう。
だからこそ、90年代までの野党は審議拒否して、国対幹部が「ボス交」を行って、「手打ち」の演出を行ってきた。だが、現代ではこのボス交が行われないため、与野党幹部はともに「本音と建前」の使い分けができなくなっており、互いに主張を引っ込めることができなくなってしまっている。

野党幹部は、与党幹部に「解散カード」をちらつかされて、いきり立っているが、与党側はわざわざ解散に打って出るまでもなく、野党不在の議会で淡々と法案を通してゆけば良いだけで、何の問題も無い。真に受けている野党幹部は、自意識過剰というものだ。

とはいえ、与党は与党で、野党不在のまま法案を通すことは可能なものの、与野党の関係をますます悪化させるだけで、次の国会にまで影響してしまうだけに、好ましくはない。やり過ぎると、いつ批判の矛先が与党に向けられるかも分からない。同時に、野党不在で、審議の無いまま成立した法律に、どこまで正統性が求められるのかという問題も生じる。

また、自民党は自民党で、より分権的だった小選挙区導入以前に比べて、総理・総裁に権限が集中しており、国対の一存で勝手に野党と妥協することができなくなっているため、圧倒的に有利な立場にある総理・総裁が妥協するはずもなく、解決の糸口をなくしている。

国会の停滞は、日本社会において旧来の合意形成システムが機能不全に陥っていることの一つの象徴なのかもしれない。

【追記】
野党が国会を欠席したまま、議員会館の大会議室に官僚を呼び出して叩きまくる手法も、非常に評判が悪く、自己満足に終わっている。何らの戦略も持たないまま、小さな戦術的勝利にこだわる野党の無能ぶりが見て取れよう。
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2018年04月12日

統治不全を示すもりかけ疑獄

【<加計問題>柳瀬氏の参考人招致を容認へ 自公】
 自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長らは11日午前、東京都内で会談し、学校法人「加計学園」の獣医学部新設を「首相案件」と発言したとされる柳瀬唯夫首相秘書官(当時)の国会への参考人招致を容認する方針を決めた。自民党の森山裕国対委員長は記者団に「審議を通じて、必要があれば与野党でしっかり協議して決める。その方向性を与党として確認した」と語った。
 野党が柳瀬氏招致を強く求めており、早期収拾のためにやむを得ないと判断した。森山氏は「政府はしっかり調査して説明責任を果たし、国民の負託に応えてもらいたい」とも述べた。与党は11日の衆院予算委員会の集中審議を踏まえ、柳瀬氏の参考人招致を最終判断する。さらなる集中審議の開催も検討する。
(4月11日、毎日新聞)

ここに来て急に「無かったはずの文書」が表面化している。これは、「今さらありましたとは言えないよな〜〜」と隠蔽したいたものが、複数箇所で暴露されたことで、「今なら出しても目立たないから、今のうちに出してしまおう」という流れになっているものと考えられる。
同時に、全てを官僚と現場の責任として、自分たちは逃げてしまった政治に対する官僚側の恩讐が噴出しているようにも見られる。佐川氏の場合、5千万円程度の退職金を人質に屈服させて、全責任を負わせ、実際に無理難題を押しつけてきた政治家は誰も知らんぷりというのでは、キレて当然だろう。

こうした大規模スキャンダルが発生した場合、90年代以前であれば、政権党内の派閥力学が作用して、党内非主流派が主導権を握り、総裁を解任あるいは辞任させる流れをつくるものだった。ロッキード事件で田中角栄が辞任した後に、「清廉」とされた三木武夫が登板したのが好例だろう。同時に、野党国対と折衝して、野党側にも十分に「花」を持たせる場をつくることで(具体的には法案取引や証人喚問)、長期混乱を回避して国会の正常化を実現させる仕組みがあった。
だが、90年代の政治改革によって小選挙区制が導入された結果、総理総裁の権限が強化され、与野党国対による「馴れ合い政治」は弱まったものの、同時に派閥や国対の機能は大きく減退、政権党内の自浄作用が働かなくなり、議会が不正常になった場合の与野党協議が困難になった。
さらに総理の権限が強く、司法も報道も機能せず権力分立が不十分なため、巨大な権限を持った腐敗した総理大臣が延々と権力の座にあり続けるという事態になっている。

今回仮に安倍氏が辞任することになったとしても、こうした統治システム上の弱点を克服しない限り、同様の問題は何度でも発生するであろう。

【追記】
今こそ追撃戦の最大のチャンスであるはずだが、野党は分裂・再編中で有効打を放てない状態にある。同時に、しばらく選挙が行われないため、自民党内で自浄作用(これでは選挙に勝てない)が働く見込みも無い。現状では、9月の自民党総裁選前に安倍総理が辞任、新総裁に禅譲するシナリオが比較的有効だと思われる。
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2018年04月06日

森友疑獄は不発終了?

【政党支持は自民36%、立民9%…読売世論調査】
読売新聞社が3月31日〜4月1日に実施した全国世論調査で、政党支持率は、自民党36%(前回38%)、立憲民主党9%(同9%)などの順。無党派層は41%(同38%)となった。
(4月1日、読売新聞)

佐川氏の証人喚問が終わって、内閣支持率は回復基調にある一方、政党支持率はこの期間を通じて大きな変化は無く、野党・立民の支持率もほぼ横ばいのままだった。
先に述べた通り、野党側はまともな証拠も無いまま、状況証拠のみで証人喚問を要求、与党側が応じて、佐川氏は証言法を盾に証言拒否を続けたことで、何も起きないまま終了した。

言うなれば、野党側は準備不十分のまま決戦を要求し、与党側は上手くいなして、互いにほぼ無傷のまま対峙しただけで終わったイメージである。野党は大言を吐いておきながら、何の成果も挙げられなかったのだから、支持率が下がらなかっただけマシだったかもしれない。
大きなチャンスを得ながら、本来の支持層から支持を拡大できなかったのは、基本的には国対(国会対策)に責任を帰せられる。しかし、立民の担当者は「国民の後押しが足りなかったから」などと責任を転嫁している。これは心得違いも甚だしく、野党が政府・政権党の腐敗の全貌を明らかにできたなら、自然と支持が集まるわけで、国民の支持があるから政府の腐敗が明らかにされるわけではない。これは、つまり彼らが従来の支持層の「顔を立てる」ためにスキャンダルを取り上げていただけに過ぎなかったことを示している。

立憲民主党の支持率が上がらない理由については、別途検討したいと思う一方で、「バカバカしい」と思わなくも無いので、どうしても筆が進まない。
ただ、本質的には「財政再建」「公務員の人件費削減」「連合の支持」に象徴されるように、階級に依拠しないプチブル・リベラル政党であるため、「なら自由民主党で良いじゃん」という話にしかならないのだろう。

その一方で、「森友疑惑解明は不十分」との意見も多数を占めており、野党の支持率が上がらないのに政府不信ばかりが募るという、「行き場のない不満」が強まる状況になっている。

【参考】
・マルキシズムは現在も有効
・メランション候補が訴えたもの・続
・民進党代表選で論じられないもの
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2018年03月28日

佐川証人喚問は不発だったが

【<証人喚問>与党「森友」収束急ぐ 「官僚の責任」論を展開】
 政府・与党は、27日の証人喚問で佐川宣寿前国税庁長官が学校法人「森友学園」への国有地売却問題に関し首相官邸の指示を明確に否定したことを受けて早期の幕引きを図りたい考えだ。しかし、佐川氏が決裁文書改ざんの理由など核心部分の証言を拒否したため「疑惑は深まった」と野党は批判。与党内にも佐川氏の証言だけで、国民の疑念を晴らすことはできないとの声がある。
「(首相官邸は)何もしていなかったから、なかったということだ」。菅義偉官房長官は27日の記者会見で、官邸からの指示を否定した佐川氏の証言についてそう語った。安倍晋三首相は同日夕、官邸で記者団から「証人喚問が終わりましたが」と声をかけられたが、「どうも」とのみ返答し、コメントしなかった。
 政府・与党は、国有地売却を巡る一連の問題を「官僚の責任」として切り離し、首相や麻生太郎副総理兼財務相の責任を問う声を抑えてきた。佐川氏の証人喚問に応じたのも、証言を通して官邸の関与や忖度(そんたく)がなかったことを印象付ける狙いがあったからだ。
 実際に27日の証人喚問の与党質問はこうしたシナリオに沿った展開となった。自民党の丸川珠代参院議員は、首相と妻昭恵氏からの指示についてそれぞれ「ありませんでしたね」と確認するように尋ね、佐川氏は「ございませんでした」と応じた。さらに、丸川氏は、菅氏や首相秘書官、麻生氏についても「指示はありましたか」とそれぞれ尋ね、佐川氏は「ございませんでした」を繰り返した。
 終了後、自民党の森山裕国対委員長は「多くの疑念が解消された」と強調。野党が求める昭恵氏らの証人喚問は「関知していないことははっきりし、必要はない」と断言した。
 政府・与党は28日に2018年度予算案を成立させたうえで、働き方改革関連法案など重要法案の審議に入りたい考えだ。首相は4月中旬に訪米、5月下旬に訪露の予定。北朝鮮問題への対応など外交に焦点を当て、支持率回復を狙う考えだ。
 ただ、自民党の石破茂元幹事長は「誰が、なぜ、ということが一切分からない極めて異例な証人喚問だった」と指摘。昭恵氏の関与を否定したことについても「全くそういうことはなかったと言い、でもそれを理財局職員に確認したわけでもないと言う。一体何だったのだろうという思いを強めた印象だ」と語った。
 公明党の山口那津男代表は「理財局の中で(改ざんが)行われたことを(佐川氏が)はっきり認めた」と述べ、証人喚問の意義を認めたうえで、「誰がどういう理由で行ったかについて触れなかったのは極めて残念な対応だ。実態解明に向け国会として努力していかなければならない」と強調した。
(3月27日、毎日新聞)

予想通りと言えば予想通りだったが、佐川前理財局長の証人喚問は不発に終わった。自分も院内中継で見ていたが、与党議員は「総理などの関与は無かったんですね」と誘導尋問を連発、「政治家の関与は無かった」証言を勝ち取った。
他方、野党議員は二百三高地に向かって正面突撃を繰り返すような有様で、「疑惑が増した」「証言拒否」と言うのが関の山だった。ゲーム的には、野党側の完全敗北である。

ボスには苦言を呈したのだが、証拠が出そろってないにもかかわらず、野党側が証人喚問、証人喚問と大騒ぎした結果だった。欧米の刑事ドラマを見れば一目瞭然だが、証拠を積み上げて、相手の逃げ道を封じた上で、事実確認を迫るからこそ、相手も罪を認めるのだ。ところが、日本の警察も政治家も状況証拠を提示して、自白を迫るだけで、警察の場合は長期拘留と拷問によって自白を引き出すわけだが、国会の証人喚問は、今回の場合、一人5〜15分の持ち時間しかなく(答弁時間を考えると実質半分)、「無理ゲーにもほどがある」状態だった。

これなら下手に質問するよりも、佐川氏は高橋和巳を愛読していたらしいから、『孤立無援の思想』とか『堕落』を読み上げて、心理戦で氏の心を折りにいった方が良かった(戦術的に妥当)のである。

とはいえ、戦術的には政府・自民党の圧勝だったとは言えるが、全体的には、現行のリベラル・デモクラシーと官僚制度に対する信頼を失墜させ、政府内に腐敗が蔓延し、政官業の癒着構造の腐臭が強まっているにもかかわらず、「国権の最高機関」である国会がいかなる自浄能力も発揮できなかったことを露呈してしまった。
確かに佐川氏は議会証言法のルールに則って証言を拒否したわけだが、結果として証人喚問に求められる統治機構の自浄能力を阻害するところとなった。言うなれば、一プレイヤーが勝利のためにルールを悪用(穴を突いた)した結果、ゲームそのものが台無しになってしまったのである。
官僚も自民党議員も自覚していないだろうが、連中は自分が助かろうとして、無自覚のまま自分の首にロープをかけてしまったのだ。
皇帝への権力集中は、社会統治者集団としての官僚の独自性を消滅させ、彼らは皇帝の私的隷属者に成り下がっていく。皇帝の意を代行する最高の私的隷属者である宦官の下に、権力は集中することになる。(中略)明代に典型的に見られるようになった皇帝への権力集中と、行政の無責任化・統治能力の低下とが、じつは表裏一体の関係にある……
足立啓二『専制国家史論−中国史から世界史へ』(筑摩書房)

あれ?自分は確か中国研究を始めたはずなんだけど……
posted by ケン at 12:20| Comment(6) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月22日

最近の自民党若手は?

【首相「秘書を敵に回すな」 豊田氏を念頭?3回生に指南】
 安倍晋三首相は13日夜、首相公邸で当選3回の自民党所属の衆院議員約20人と会食し、「秘書を敵に回さないように、大事にするように」と指南した。元秘書への傷害と暴行の疑いで書類送検され、不起訴となった豊田真由子前衆院議員と当選同期の「魔の3回生」らで、豊田氏を念頭にした発言とみられる。当時2回生だった時期に暴行疑惑や不倫報道など不祥事が相次ぎ、「魔の2回生」という不名誉な呼称がついていた。出席者によると、首相は会食の席で、憲法改正について「国会でこれだけ議論するのは初めて。しっかり議論してほしい」とも述べたという。8日の当選2回生との会食では、憲法9条に自衛隊を明記する重要性を訴えていた。
(2月13日、朝日新聞)

【安倍晋三首相“魔の3回生”と会食 「地元回って声を拾って」】
 安倍晋三首相は13日夜、首相公邸で自民党の衆院当選3回生約20人と会食し、「1回生から3回生は国民の皆さんに近いので、よく地元を回って声を拾い、自民党の議論を活性化させてほしい」などと激励した。出席者によると、首相は昨年10月の衆院選で当選したことをねぎらった上で、憲法改正について「議論することが大事だ。若い世代の(議員の)中でもしっかり議論してほしい」と呼びかけたという。首相は1日には当選1回生約20人を、8日にも当選2回生約20人を首相公邸に招いて会食している。
(2月14日、産経新聞)

同じネタでも媒体によってかなり印象が異なることが分かる。同時に様々な情報が読み取れる。
朝日の記事からは、自民党の若手議員にパワハラや暴力行為が蔓延していることが分かる。わざわざ総理・総裁が出てきて会食するというのに、「自分の秘書を大事にしろ」と言わなければならないのは、それだけ状況が深刻であることを示している。

産経の記事からは、若手議員が地元に帰らず、選挙区回りが不十分だという、執行部の認識が読み取れる。2012年以降、自民党は三回連続して圧勝しており、三回生以下は相対的に労少なくして当選しているだけに、地元回りの重要性や選挙の恐さを知らないものが多いのだろう。

次いで両方の新聞が指摘している、「(憲法を)しっかり議論してほしい」と言うのは、若手内に憲法に無関心な層が多いこと、自民党内での改憲議論が低調であることを示している。

これらは、自民党の秘書からも聞かれるので、まず正確だと見て良い。公共媒体と内部情報を照らし合わせて情報の確度を上げることは、情報戦の基本である。

もっとも、パワハラや暴力が横行しているのは自民党に限った話では無く、立憲や希望でもかなり酷い話が聞かれる。これらの一因には、野党分裂などによる業務量の増加に対し、議員の財政悪化から秘書が減らされ、業務が全般的に滞るケースが増え、それに対して議員が逆ギレするケースが多いようだ。
いずれにせよ、与野党や中央と地方を問わず、議員の劣化が著しく、「まともな人間は立候補などしない」傾向が加速していることを傍証している。
posted by ケン at 12:43| Comment(2) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする