2019年07月05日

一生懸命日米安保の価値を称揚する喜劇

【防衛相、日米安保は片務的でない トランプ米大統領発言で】
 岩屋毅防衛相は2日の記者会見で、日米安全保障条約を「片務的」「不公平な合意」としたトランプ米大統領の指摘は当たらないとの認識を示した。日本は基地を提供していることを踏まえ「両国の義務は同一ではないが、全体として見れば双方の義務のバランスは取れている」と述べた。
 日本による在日米軍駐留経費負担について「米国の同盟国の中では、最も高い割合で負担している」とも語った。
 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画を巡る防衛省調査で不手際が相次いでいる問題を巡り、岩屋氏は配備候補地がある山口県の村岡嗣政知事らと県庁で3日に会談する予定。
(7月2日、共同通信)

政府としては特に対応しないと言いながらも、気になって仕方が無いご様子。
喩えるなら、ソ連軍の撤退を打診された東独のような状態なのだろう。
自民党と霞が関の権力基盤はアメリカにあり、その物理的担保として在日米軍が駐留しているためだ。
ソ連の支援を失った東欧諸国が体制を崩壊させたのと同様、アメリカの支援を失った日本の戦後体制は東欧圏ほど劇的ではないにせよ、瓦解すると見て良い。

政府関係者は日米安保を「日米同盟」と言い換えることによって、その片務性を補ってきた。
日米安保は、もともとアメリカを宗主国とする西側陣営が、極東地域において中ソを封じ込めるためのシステムとして成立した。
アメリカは日本、韓国、台湾を極東の防波堤と見なし、日本に親米政権を樹立して、中ソ封じ込めのための軍事力と親米政権を守護する武力の二重の意味で、在日米軍基地が設置された。これは今となっては理解が難しいが、例えば昭和帝などは自国軍に対する圧倒的不信と武装蜂起を狙う共産党などに対する抑えとして、米軍の駐留を懇願している。
また、日本政府としては在日米軍があることによって、軍事費の支出を抑えられ、国内のインフラや社会保障の整備に回すことができ、高度経済成長の要因にも繋がった。

ところが、1990年代に冷戦体制が瓦解すると、「中ソを抑える」「極左勢力対策」としての在日米軍の価値が急低下した。そのため、日本政府は自衛隊を海外派兵してPKO活動などに従事させることにより、極東地域外における米軍の活動を支援する方策を模索し始めた。いわゆる「思いやり予算」が現在の形になったのは1990年前後のことだった。これらは「日米同盟のコストが上昇した」ことに対する日本政府の対応とみて良い。

今日では、アジア地域における中国の覇権確立は避けられない情勢にあり、アメリカとしてはいつまでも「封じ込め戦略」を続けることは難しくなっている。朝鮮半島の和解と在韓米軍の撤退は、さらに拍車を掛けるだろう。
日本にとっては、「沖縄に在日米軍基地があれば、万が一中国がミサイル攻撃してきた場合でも、アメリカが自動参戦する」メリットがある。これに対し、米国大統領としては中国のミサイル攻撃を受けるような場所に、米軍基地や米兵の家族を住まわせておくこと自体が「非人道的」ということになる。技術革新が進んだ現在、最前線に大規模な米軍を駐留させておく必要は非常に低下しており、デメリットばかりが大きくなっている。

まして米国内では、オフショア・バランシング戦略のように「地域の安全保障は地域の当事者間で担わせ、アメリカはあくまでアドバイザー的役割に徹する」考えが強まっている。つまり、アメリカが主体、日本が従属国として、「中露を封じる」戦略など完全に時代遅れのものとなっている。
この辺のアメリカ側の意図が読み取れない、または故意に無視しようとしているため、日本側の対応は完全に喜劇となってしまっているのである。
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2019年07月02日

【補足】トランプ氏が日米安保破棄の意向?

6月26日の記事「トランプ氏が日米安保破棄の意向?」の補足。
オリジナルの英文記事には、日本語に直されなかった部分が少しある。
その一つがこれだ。
James Carafano, vice president of foreign and defense policy studies at the Heritage Foundation, said he doubts the U.S. will withdraw from the treaty with Japan.

“There’s nothing that says we have to abide by treaties for all eternity,” Carafano said. “I just doubt we will revisit U.S. policy on the U.S.-Japan strategic alliance,” which he also referred to as the “cornerstone” of U.S. foreign policy in Asia.
"Trump Muses Privately About Ending Postwar Japan Defense Pact"(Bloomberg, 2019.06.25)

要するにヘリテージ財団のカラファノ外務・防衛政策担当副理事長は、アメリカが日米安保を破棄する可能性を指摘、「永遠に続く同盟など無い」として、米国の外交政策の基礎をなしている日米同盟についても再検討する時期に来ていると述べている。

同報道後、トランプ大統領は「破棄」とは言わないまでも、「日米同盟」の見直し=根本的修正に堂々と触れるようになった。恐らく、「破棄」とさえ言わなければ、「根本的見直し」程度ならOKと判断したのだろう。
実際、大統領が指摘する「日米同盟の片務性」に対して、日本側は「アメリカに基地を提供している」「思いやり予算を出している」程度の返答を出すに止まっており、トランプ氏の問題提起に対してゼロ回答のまま、「日米同盟は強固である」という空疎な「宣言」を出すだけに終わっている。

こうした日本側の対応は、1945年7月のポツダム宣言に対する「黙殺」と同じ効果しか生まない。
宗主国であるアメリカ側が問題提起を行っているのに、衛星国である日本が「外交問題は存在しない」と突っぱねてしまっては、軋轢が深まるばかりだ。恐らくは、トランプ氏は日本側の反応を見越した上で、「カード」を突きつけているのであって、日本側は術中にはまってしまっている。とはいえ、憲法9条がある状態で、「アメリカの対外戦争に全面協力します」とも言えず、現実の選択肢は非常に少ない。

日本としては、憲法9条を破棄してアメリカと攻守同盟(正規の軍事同盟)を締結するか、対米従属を止めて、中露日などで東アジアにおける新たな安全保障体制を構築するか、選択が迫られているわけだが、現状の自民党と外務省にはハードルが高すぎる話になっている。
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2019年06月26日

トランプ氏が日米安保破棄の意向?

【トランプ大統領、日米安保破棄の考え側近に漏らしていた−関係者】
 トランプ米大統領が最近、日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたことが分かった。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。トランプ大統領は日米安保条約が米国にとって不公平だと考えている。
 関係者によれば、トランプ氏は同条約について、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援することは義務付けられていないことから、あまりにも一方的だと感じている。旧条約から数えて60年余り前に調印された安保条約は、第二次世界大戦後の日米同盟の基盤となっている。大統領は条約破棄に向けて実際に措置を取ったわけではなく、政権当局者らもそのような動きは極めてありそうもないことだと話している。トランプ氏の個人的な会話の内容だとして関係者らはいずれも匿名を条件に語った。万が一条約破棄となればアジア太平洋地域の安全保障に役立ってきた日米同盟を危うくする。日本が中国および北朝鮮からの脅威に対して防衛するため別の方法を見つける必要が生じ、新たな核軍備競争につながるリスクもある。
 日本の外務省に安保条約を巡るトランプ大統領の考えについて電子メールで問い合わせたが現時点で返答はない。関係者によれば、トランプ大統領は沖縄の米軍基地を移転させる日本の取り組みについて、土地の収奪だと考えており、米軍移転について金銭的補償を求める考えにも言及したという。また、トランプ氏が日米条約に注目したことは、世界の他の国々との条約においても米国の義務を見直そうという広範な検討の端緒である可能性もあると関係者2人が述べている。
 ホワイトハウスの報道担当者は24日夜、コメントを控えた。大統領はかつて個人的な会話で、日米条約の下での米国の義務を認識していると述べたことがあるが、同時に、他の条約についての立場と同様、より互恵的な関係を望んでいる。大統領が米議会の承認なしにいったん批准された条約を破棄できるかどうか、米国の法律では決着していない。トランプ大統領は5月の訪日時に、横須賀基地で米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」に乗船、乗組員らを前に、「米日の同盟はかつてないほど強固だ」と述べた。同基地について「米海軍の艦隊と同盟国の艦隊が共に司令部を置く世界で唯一の港だ。鉄壁の日米協力関係の証(あか)しだ」と語っていた。
(6月25日、ブルームバーグ)

本ブログの読者なら特に驚くに値しない話だとは思うのだが、中国でも国際関係や安全保障の専門家などに、「日米同盟は遠からず(恐らくこの20年内に)廃棄される、それも米国側からの提案で」と述べているのだが、なかなか本気で受け取ってくれない。
そもそも永遠に続く同盟や従属関係などは存在せず、ある同盟研究の泰斗によれば、歴史的に軍事同盟の平均維持年数はわずか7年に過ぎないという。70年近く続いてしまった日米安保こそ例外中の例外ではあるのだが、それも永遠では無い。
おかげで私が書いた「在日米軍が撤退する日」も、いつまで経っても中国紙に掲載されず、塩漬けされたままになっている。もう我慢できないので、近々若干改変してブログにアップするつもりだ。

専門家というのは、現状を過大評価する傾向が強い。特に技術や軍事部門ではその傾向が強く、例えば戦車勃興期の騎兵科や、空母勃興期の砲術科などは非常に象徴的だ。機関銃ですら、発明当初はイギリスやアメリカでは恐ろしく不評だった。
ソ連の瓦解を最初に予言したのは、ソヴィエト研究者ではなく、歴史学者・人口学者のエマニュエル・トッドだったし、ゴルバチョフが書記長に選ばれるなど、専門家ほど全く予想外だった。

日米関係でいえば、専門家であるほど「日米同盟」のメリットを高く評価し、デメリットを低く評価する傾向が強く、同時に「日米関係以外」の要素を軽んじる傾向がある。
それを否定するために書いたのが「同盟のジレンマと非対称性」(2014年05月29日)だった。
中国脅威論が強まり、アジアでの孤立が深まるほど、日本政府や自民党内で「見捨てられ」の懸念が強まり、「同盟強化」と「国際(実際は対米)貢献」が声高に叫ばれるようになる。ところが、日本が防衛力を強化し、軍事同盟を強化して、海外派兵の兵力や頻度を上げるほど、アジアの緊張が高まってゆく構図に陥っている。だが、アメリカにしてみれば、中国はいまや敵対者ではなく米国債の最大の引き受け手、つまり最大のスポンサーになってしまっており、日中間で緊張が高まれば高まるほど、アメリカにとっての日米同盟の価値が下がる(同盟コスト・リスクが上がる)状態になっている。

東アジア全般的には、中国を盟主とする非対称的同盟の波が広がっている。例えば明示的な同盟関係にはないものの、韓国はすでに米国の勢力圏を脱して自ら中華圏に加わりつつあるが、シュウェラーの言うところの「未来が保証される強国に従う」が適用されるかもしれない。韓国の場合、北朝鮮の暴発を防ぎつつ、日本の軍事大国化に対処せねばならない状態にある上、開発独裁やIMF改革に伴う国内矛盾が頂点に達しつつあり、いまや「遠いアメリカよりも近くの中国」とばかりに中国への従属を強めている。また、東南アジアや中央アジア諸国では「近隣諸国の動向に伴うドミノ効果」で中国の影響圏が拡大しつつある。

4月に米国のオバマ大統領が来日した際には、離日後に韓国、フィリピン、マレーシアと歴訪したものの、このことはアメリカがすでに「面」ではなく「点と線」でしか中国を封じられなくなっていることを示している。同盟国が少なくなれば、残された同盟国に対する(非対称的)要求が増えるのが道理であり、米国で「日米同盟を維持するからには、日本には相応の(増加分)コストを支払ってもらおう」という声が強まるのは必然だった。
但し、他方でアメリカの中には「東シナ海の無人島をめぐる日中紛争に巻き込まれるのはバカバカしい」という意見も浸透しており、「日米同盟のコスト(リスク)が上がりすぎて管理が難しくなっているが、かと言って日本を見捨てればドミノ現象で中華圏に入るか、独自路線で危ない橋を渡りかねない」と同盟自体を厄介視する向きが出ていることも確かだ。

また、トランプ氏が大統領選に勝利する以前、日本では大半の論者がクリントンの勝利を予想していた。しかし、ケン先生はトランプ氏の選出を予想していた。
自称有識者たちは大騒ぎしているが、アメリカ人なら普通トランプ氏かサンダース氏を選ぶだろう。ヒラリー氏の主張は、ソ連共産党におけるゴルバチョフらに対する保守派の批判にそっくりだ。ソ連研究者たちは笑いが止まらないに違いない。
(中略)
日本で「知米派」と目されるジャーナリストや学者がこぞってトランプ氏を非難しているが、これはトランプ氏が大統領になった場合、在日米軍が撤退し、日米安保体制が大幅に変更される可能性があるためだと思われる。
つまり、日本を支配する「安保マフィア」たちからすれば、トランプ氏やサンダース氏は自分たちの傀儡的地位を脅かす「悪魔」でしかない。安倍氏をホーネッカーに喩えれば、トランプ氏はゴルバチョフに相当するだけに、外務省を始めとする霞ヶ関にとっては悪夢なのだ。
ヤンキーならトランプ選びマス」(2016年3月24日)

実のところ専門家の予想ほど当てにならないものはなく、この点、アカデミズムとはつまらないところではある。

現状では、大統領の意向を周囲の者が必死に戒めている様子が窺える。これは、再選を狙うトランプ氏にとっては無視できないものなので、次の大統領選までは表面化することはないだろう。
だが、ト氏が来年の大統領選に再選した場合、周囲に遠慮する必要がなくなるため、「日米安保解体」を本気で進めてくる可能性がある。
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2019年06月13日

日本より中国を選んだロシア

【平和条約「日米の軍事協力が難しくしている」露大統領、交渉長期化示唆】
 プーチン露大統領は6日、日露の平和条約交渉が進展していないことについて「かなりの部分において、日米の軍事協力が難しくしている」との認識を改めて示した。日露両国が平和条約を締結するためには、包括的な関係拡大が欠かせないと指摘。「『この問題を明日にも解決できる』と話せるものではない」と述べ、長期化が避けられないとの見方を強調した。
 プーチン氏は今月28日から大阪市で開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席し、29日に安倍晋三首相と会談する予定。日米安全保障条約が日露の交渉進展に対し障害になっていると指摘。「この条約下で日本が何らかの主権を行使できるのか見極める必要がある」とも語った。
 プーチン氏はロシア第2の都市サンクトペテルブルクで開かれた経済会議に出席し、主要通信社との会見で発言した。「我々は日本が自国の安全を保障する権利を批判しないが、日本も我々の懸念に配慮すべきだ」と言明。日本が配備を予定する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を念頭に置いた批判を繰り返した。そのうえで専門家レベルの協議の必要性などにも言及した。
(6月7日、毎日新聞)

日本の報道だけ見ていると、あたかも安倍首相が譲歩に譲歩を重ねたあげく、プーチン大統領から足蹴にされたかのような印象になってしまうが、それほど単純な話では無い。

6月5日にモスクワで中露首脳会談が行われ、「中露の戦略的関係の強化」で合意された。
中国としては、米中関係が悪化している以上、ロシアとの連携強化は不可欠であり、ロシアも米欧との関係が改善されない以上、中国との連携強化は避けられない情勢にあった。
ただ、ロシアからすれば、中露のパワーバランス上、「中露協商」が一方的に中国側に有利に働く恐れがあった。また、中露協商が上手くいかなかった時の担保として、同時並行的に「日露協商」を進めていた。

恐らくは「中露協商の強化」が現実的なものとなった時点で、ロシア側は対日交渉のハードルを上げたのだろう。
推測でしか無いが、ロシア側が必ずしも現実的な脅威とはなり得ない在日米軍基地の話に拘り始めたのは、「日本が中露協商側に来るなら良いが、対米従属したまま中露協商に乗っかることは許されない」ということを意味しているものと考えられる。

外交関係で複数の国を天秤に掛けることは歴史的にはままあることだ。
日露戦争時には、日本は日露協商と日英同盟を天秤に掛け、日英同盟が成立したため、日露協商路線を破棄して対露開戦を選んだ。
また、1939年の独ソ不可侵条約は、37年に締結された日独伊防共協定の軍事同盟への強化と天秤に掛けられていた。ドイツは日本に対して軍事同盟への昇華と参戦条項と新たな仮想敵としてアメリカの追加を求めたが、日本側は例によって意思決定できず(主に陸海軍の対立によるが、昭和帝も反対)、ドイツはいつまで経っても決断できない日本を見捨て、独ソ不可侵条約を選んだ。この時、日本側では陸軍が賛成していたが、同時並行で進んでいたノモンハン事件で大敗していたこともあって、一時的に権威が落ちていた。
この後、日本はドイツの対仏戦勝利を見て三国軍事同盟を締結(1940.9)した後、41年4月に日ソ中立条約を締結して南進に方針を決めるも、ドイツが対ソ開戦すると、41年7月には14個師団を戦時動員して関東軍特種演習を行い、北進か南進かで大議論している。結局北進は採用されず、南進・対米開戦するも、45年8月には「関特演によって中立条約は破棄された」などの理由をもって、ソ連の侵攻を許している。
日本政府がアメリカを仮想敵とする三国軍事同盟を決断できなかったのは対米開戦の二年半前であり、日ソ中立条約締結から三ヶ月後には対ソ全面動員を行っている。この「行き当たりばったり」観は決してデジャブーではない。

話を戻せば、ロシアからすれば中露協商の強化は、保険的価値しかない日露協商よりもはるかに大きな価値がある。しかし、「美味しい」が故にデメリットも大きく、中国が「次の覇権国家」になってしまうことを恐れている。とはいえ、現状では「背に腹は代えられない」ということなのだろう。
プーチン大統領からすれば、「中露協商強化が実現した以上、日露協商にこだわって、中国の心証を悪くする必要は無い」という判断だったに違いない。というよりも、ロシア側が交渉のハードルを下げる理由が何一つ無くなった、という方が現実的かもしれない。

こうなってしまうと、「次のチャンス」は情勢が一回転するのを待つほかないだろう。
しかし、安倍首相のように強いリーダーシップを発揮できるものが今後現れる保証は無く、日露交渉は一段と厳しさを増すだろう。また、交渉の機会が発生したとしても、その条件はますます日本側に不利になるものと思われる。
対米従属はやめられず、日露協商には失敗し、朝鮮半島情勢にも絡めず、中国からは交渉優先度を下げられつつある日本の外交環境は非常に厳しいものがある。
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2019年06月08日

外務副大臣曰く、米中貿易戦争の本質は資本主義対共産主義

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大事なことなので貼り付けておこう。
佐藤外務副大臣によれば、米中貿易戦争の本質は資本主義対共産主義で、中国の経済外交は軍事と一体化して拡大中で、海洋進出を狙っているから、日米連携を強化しつつ、独自の軍事力も強化しなければならない、とのこと。

全体主義ならともかく共産主義と言ってしまう辺りが超笑える。
ソ連帰りのケン先生的には、ソ連型社会主義というのは50年間パン価格が据え置かれて、挙げ句の果てに家畜飼料の方が高くなってしまって、市民がダーチャで豚を飼って、パンをやるようになり、パン屋からパンがなくなってしまうような体制を指すんだけどね(笑)
また、ソ連ではコムソモール員は毎夏軍事教練を受けていて、「こいつらやべぇ」と思わせるに十分だったけど、今の中国の共青団員とか「とりあえず入っておけば将来安泰か」くらいのかる〜い学生が多いように見えるけどね(笑)

こうやって脳内だけでソ連や中国を考えていると、自分の利益と一体化して、いつの間にか脳内像が変化(へんげ)していっちゃうんだろうな。

それに、日米同盟強化は同盟コストの上昇を意味し、ますます対米従属を強化、アメリカからの要求がますます高くなることを意味する。そこに自国の防衛力も強化して、中国の経済外交にも対抗するとなると、いくら金があっても足りないことは明白。
これでは、ソ連と米英を仮想敵とした戦前の軍部と同じ轍を踏むことになるだろう。
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2019年05月30日

中国製品排除は成功するか

【中国排除、もろ刃の剣=米先端産業に影−ファーウェイ問題】
 先端技術分野で中国排除を狙うトランプ政権の姿勢は米企業にも影を落としている。
 華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置は、同社との取引額が大きい企業の業績を直撃。資金調達や技術者確保にも影響が及んでおり、米国にとって「もろ刃の剣」でもある。
 スマートフォン用部品を手掛けるルメンタム・ホールディングスとコルボは、ファーウェイへの禁輸措置を受けて、それぞれ業績予想を下方修正。両社ともファーウェイ向けの出荷が直近で売上高の15%程度に上り、「いつ再開できるか予測できない」と口をそろえる。
 文書を高速スキャンして保存する技術を持つベンチャー企業リップコードは、米政府が対米投資審査を厳格化したことを受けて外国からの出資割合を制限した。フィールディング最高経営責任者(CEO)は「何倍ものペナルティーとして跳ね返ってくるリスクがある」と語る。
 同社は既に百度(バイドゥ)など中国企業から出資を受けている。ただ、どの投資家であれば問題がないか事前に知るすべはなく、「とても恐ろしい」と警戒する。
 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、輸出規制の対象となる技術を扱う職に外国人を雇う際に必要な米当局の許可について、中国人への承認が停滞していると報じた。「高度技術職の人材層が薄い半導体業界には特に痛手」とする業界関係者の声を伝えている。
(5月26日、時事通信) 

どのマスゴミも「ファーウェイ製品に重大な疑義」などと報じているが、何が問題なのかについては何も報じていない。アメリカの「ロシア疑惑」についてもいまだに決定的な証拠が提示されておらず、「永遠の疑義」となってしまっている。つまり疑義を生じさせること自体が目的で、実態や真実は重要ではないという話だ。

これは戦前期における合法左派の弾圧に際して使われた手口だった。
例えば、1937年に起きた人民戦線事件では、本来共産党と同党員をターゲットにしてきたはずの治安維持法によって、社会民主主義者、労働運動家、マルクス経済学者などが一斉検挙され、一次、二次含めて480名以上が逮捕された。ところが、法廷で有罪判決が下されたのはわずか数人に過ぎず、圧倒的多数は無罪に終わった。数件の有罪判決についても、判決が出る前に容疑者は保釈され、かつ控訴審は延期され続けたまま終戦を迎え、結審に至らずに終わった。このことは、当局(特高=秘密警察)が対象を必ずしも有罪にしなくとも、強制捜査や検挙、拘束することだけで、対象の動き(運動)を抑止することが可能であることを示している。

逆に中国では、欧米日における中国製品排除運動を受けて、再びナショナリズムが加熱しつつある。
また、一党独裁や権力集中の正当性が強調され、支持が強まっている。
これはアメリカにとっては「どうでもいい」ことかもしれないが、隣国である日本にとっては脅威でしか無い。

現状でも日本の技術者の多くが中国企業や大学に流れているが、中国の研究開発費はいまやアメリカと同レベルで、日本の3倍近くに達している。量子分野における中国の優位が確立した場合、技術力バランスは一気に傾いてしまうかもしれない。

マーケットの点でもいまや中国とインドで世界人口の3分の1を占めており、内需拡大に成功すれば、米欧の市場などすぐに取るに足らないものになるだろう。実際、中国の大都市部の生活水準は日本のそれと殆ど変わらないし、私が教えている学生の中には「日本の学生より金持ちだろう」と思える者が少なからずいる。

ファーウェイ排除はしょせん応急処置的な効果しか無く、そこを盲信して対中関係を悪化させることは避けるべきだ。
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2019年05月24日

ロシア世論も少しずつ軟化

【北方領土「合意を」41% 外務省、ロシアで調査】
 外務省は22日、ロシア国内で2月に実施した世論調査の結果を発表した。日ロ両政府が交渉中の北方領土問題の在り方を聞いたところ「両国が相互に合意すべきだ」が41%となった。「(北方四島が)ロシアに帰属し、今後もロシアに帰属する」は53%、「日本に帰属すべき確かな根拠があり、日本に帰属すべきだ」は2%だった。
 2016年3〜4月の前回調査とほぼ変化はなかった。日ロ首脳は昨年11月、日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速する方針で一致。その後、閣僚や高官レベルで交渉を重ねているが、ロシア世論への影響は限定的となっている。
(5月22日、共同通信)

ロシア学徒としては、意外と日本に好意的な結果になっていると思う。
一時期、ロシアがイケイケだった時はこれよりさらに強硬だったことを考えれば、少しずつではあるが、世論も軟化していることが分かる。
とはいえ、日本ほどではないが、そこは大国意識が抜けきらないためだろう。

重要なのはまさしく「両国が相互に合意すべきだ」であり、この点はラブロフ外相ですら「相互に受け入れ可能な内容でなければ意味が無い」と繰り返し述べている。
日ソ共同宣言は条約であるが故に強い拘束力があり、いかにロシア国民といえど、「条約に書いてあるから」と言えば、それ以上強硬反対するのは難しい。つまり「二島引き渡し」である。
あとは、二島「プラスアルファ」の部分でどこまで日本が頑張れるかであり、同時にロシア側に対して魅力的な提案ができるかにかかっている。

その点「四島返還論を引っ込めて二島で妥協してやるんだから、ロシア側が譲歩しろ」的な外務省の塩対応ではいかなる合意も難しい。あれはむしろロシア側を遠ざけるものでしかない。
ロシア側が何度も「歴史を勉強して出直せ」と言うのは、まさにこの点で、いまや交渉に当たる官僚も全て1960年代以降のプロパガンダに洗脳されているものばかりになっているため、交渉を難しくしている。
歴史教育の功罪はあまりにも大きい。
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