2018年03月20日

河野外相いわく北朝鮮は制裁に屈服したと

北朝鮮がいよいよ対話を求めてきました。
国際社会全体による経済制裁に耐えられなくなってきたのでしょう。
これまで日米韓三カ国は緊密に連携しながら中露両国の協力も得て、北朝鮮に対する経済制裁をかつてないほど強化する国連安保理決議を実現してきました。
国連安保理決議が完全に履行されれば、北朝鮮の貿易による外貨収入はほぼ枯渇し、石油精製品の輸入は2017年初頭に比べて89%削減されます。
(3月16日「ごまめの歯ぎしり」から抜粋)

ここまで自分に都合の良いことしか言えないというのは、おめでたいと言うべきか、これが現役の外務大臣であると嘆くべきか。

北朝鮮側は、飢餓輸出を行ってまで核とミサイル技術を進めた結果、米本土に届く核ミサイル開発の目処がついたことで、「米帝側が交渉を打診してきた」と認識している。そもそも経済制裁のみで国家が崩壊することはまずなく、北朝鮮の経済はむしろ順調で、デジタル化と仮想通貨の使用が進んで旧来の経済制裁が殆ど無効化している。
また、北朝鮮が崩壊して困るのは、中露韓に共通するだけに、真面目に制裁しようとしているのは日本だけで、その日本は今では北朝鮮と貿易接点を有しない。

現実の日本は、米朝あるいは南北会談に置いていかれて放置、孤立してしまっている。日本側は「日朝首脳会談もやぶさかではない」旨を述べているが、今となっては北朝鮮側に日本と交渉する理由はなくなっており、好きな条件を要求できる立場になっている。結果、日本は「せめて米朝交渉で拉致問題を取り上げてください」と懇願する始末になっているが、別に日本側の要望を聞いてやる必要はどこにもなくなっている。

河野外相の一連の発言は、「欧州情勢は複雑怪奇なり」として辞任してしまった平沼騏一郎を彷彿させるものがあり、現代日本の外交力や諜報力を表していると言える。

【安倍首相、「金正恩との面会を仲介してほしい」】
 日本の安倍晋首相が韓国政府に対し、日朝首脳会談を成功させるための仲裁を要請したことが分かった。南北と米朝米首脳会談を控えて、韓米、韓中日、韓日などのリレー首脳会談が推進される中、16年ぶりに日朝首脳会談の可能性まで高まっており、韓半島を巡る対話局面が本格化している。
韓日関係に詳しい外交筋は18日、「日本政府が韓国政府に対して、安倍首相と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮労働党書記との面会を仲介してほしいと要請した」と明らかにした。日本は4月、日米首脳会談も準備している。これと関連して、安倍首相は16日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との電話で、南北と米朝米会談を機に、日朝対話の可能性への期待を表明したと、大統領府は伝えた。特に安倍首相は、2002年9月、小泉純一郎元首相が訪朝時に発表した「平壌(ピョンヤン)宣言」も言及したことが分かった。平壌宣言は、日朝関係の正常化や日本人拉致問題解決などを盛り込んでいる。
米朝首脳会談の推進は、南北首脳会談に続いて米朝首脳会談が実現されただけに、対北強硬路線を固守しては韓半島の対話政局から押し出されかねないという安倍首相の懸念によるものと見られる。これと関連して北朝鮮の朝鮮中央通信は17日の論評で、「日本は大勢を正しく見て対北朝鮮政策を熟考しなければならない時だ」とし、「我々はすでに日本の反動たちが分別を失って、悪さばかりしていては、永遠に平壌行のチケットを手にできないかねないことを警告した」と主張した。
(3月19日、東亜日報)

まぁこうなるわけで。日本外務省の無能・無定見ぶりがよく現れている。
ただし、この件でこちらが問い合わせても、「そのような事実は無い」と言い張ることは間違いないだろうから、敢えて確認して官僚のウソを録音しておくのも手かもしれない。
posted by ケン at 12:33| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月19日

日露交渉さらに困難に

【色丹島で米企業が発電所建設へ】
 ロシア極東のサハリン州の知事は、北方領土の色丹島で新たに、アメリカ企業がディーゼル発電所を建設する計画を明らかにしました。これはサハリン州のコジェミャコ知事が12日、ユジノサハリンスクで、地元メディアなどに対して明らかにしたものです。
それによりますと色丹島では、ことし9月までに新しいディーゼル発電所が建設される予定で、当初の発電規模は5メガワット、来年には施設を拡大して30メガワットを目指すということです。発電所を建設するメーカーについて、コジェミャコ知事は「アメリカ企業が投資に合意した」と述べ、アメリカに拠点をおく大手機械メーカーの名前をあげました。この発電所で作られる電力は、色丹島で計画が進む、新たな水産加工場の建設や運営に利用されるということです。
ロシアは北方領土の開発にあたって日本以外の第三国の企業にも投資を呼びかけ、今回、アメリカの企業から投資を引き出すことで、日本からの投資だけに頼らない姿勢を強調する狙いがあるものと見られます。一方、日本政府は、北方領土で日本以外の第三国の企業が経済活動を行うことは、ロシアの実効支配を正当化しかねず容認できないという立場で、北方領土の開発に対する両国の方針には大きな隔たりがあります。
(3月13日、NHK)

日露外交は時間を掛ければ掛けるほど、こういう話になる。外務省はもちろんアメリカに「最大限の圧力」をかけるのだろうがw

東アジアをめぐる日本の外交環境はますます悪化している。北朝鮮をめぐる動向では、日本は完全に蚊帳の外に置かれ、外務大臣こそ「圧力の成果」などと強弁しているが、北朝鮮にとってはもはや日本は無視して良い対象になってしまっている。
日中関係は悪化こそしていないものの、国民の対中感情は悪化する一途にあり(悪い印象を持つ者が約9割)、いま日中間に紛争が勃発すれば、再び「暴支膺懲」などと国論が沸騰しかねない情勢にある。

他方、米中関係は良好で、米朝関係の改善が進んだ場合、中国・北朝鮮と険悪な関係にある日本の存在は、米国にとって不安要素となり、日米同盟のコストが上昇する。

日本が「せめてロシアに打開点を」との気持ちを持つのは自然な流れだが、これはいささか大戦末期の「ソ連の信義」とやらに似通ってしまっている。そして、ロシア側は日本の足下を見て、要求水準を上昇させようとしているのだろう。

ロシア側としては、仮に日米同盟が存在するまま北方四島を返還して、米軍基地でもつくられた日には、目も当てられない状況が現出する。ゴルバチョフが口約束を信じてソ連軍を撤兵した結果、ポーランド国境までNATOが進出、ウクライナを飲み込もうとしている悪夢が現出しているだけに、日露同盟が締結されるのでなければ、ロシアが日本を信じることはあり得ない。

まともなロシア研究者が排除された結果、誤った認識が定着、筋違いな政策が採られるという流れは、まさに戦前・戦時中のそれを彷彿させる。
posted by ケン at 12:18| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月21日

北朝鮮の暴発を望む河野外相

【北朝鮮と無条件対話なし=河野外相】
 河野太郎外相は13日の閣議後の記者会見で、ペンス米副大統領が「北朝鮮が望めば、われわれは対話する」と米紙のインタビューに述べたことに関し、「日米韓は極めて緊密に、圧力の最大化を続けていかなければいけないというところで連携ができているから、特に政策に変更はない」と語った。無条件の対話には応じられないとの見解を示した発言だ。 
(2月13日、時事通信)

河野外相のブーメランっぷりはなかなか堂に入っている。
我が国は、北朝鮮の核兵器の脅威にさらされています。極めて強い破壊力を持つ核兵器による攻撃を防ぐためには、核兵器による抑止が必要です。抑止のために、核兵器がもたらす破壊力と同等の脅威を通常兵器でもたらそうとすれば、莫大な量の通常兵器が必要になり、とても現実的ではありません。
また、日本は、専守防衛をうたい、非核三原則を堅持する方針を明確にしています。ですから日本は、北朝鮮の核への抑止を米国の核兵器に依存することが必要です。
(「ごまめの歯ぎしり」 2018年2月5日号 米国の核戦略見直し)

そもそも北朝鮮は、1990年代以降のアメリカによる単独覇権主義、軍事介入路線に対して抑止力を高めるために、飢餓輸出まで行って核の実戦配備を志向してきた。ソ連はすでになく、中国の介入を防ぎつつ単独で国防を確実にするためには核兵器しかなかったからだ。河野氏の言い分は、逆に北朝鮮の主張の正当性を認めてしまっている。

歴史的には、日本が1941年秋に対米戦を決意したのは、アメリカによる「最大級の圧力」と「中国から撤兵しない限り対話は無い」という強硬姿勢があったためだ。保守・ネトウヨには、これを「アメリカの陰謀」として日本の戦争を正当化する向きが強いが、であれば、彼らは北朝鮮による核武装も認めるべきだろう。また、アメリカの強硬姿勢が、当時の日本政府を暴発させたと考えるのであれば、北朝鮮に対する「最大級の圧力」についても配慮して然るべきだ。

逆に日本政府が「最大級の圧力」をかけたのが日華事変・日中戦争だった。
1937年11月、蒋介石は休戦交渉を進める方向で考え、12月2日には一次条件を交渉の基礎として認める旨を駐華ドイツ大使のトラウトマンに伝えた。
一方、日本側では、現地軍は繰り返し南京攻略の許可を参謀本部に求めるが、多田駿参謀次長がこれを握り潰し、国民党政府のメンツが立つ形で講和に導く方針を有していた。11月24日には、大本営御前会議が開かれるも、近衛首相も広田外相も多田の主張に耳を傾けず、12月1日には大陸命第八号を発して南京攻略を命じてしまった。一方、現地の第十軍は中央の命令を待たずに南京への進撃を始めており、文民統制どころかそもそも軍の統率が十分に機能していなかったことが伺われる。

中支那方面軍は12月10日に南京市に対する攻撃を開始、13日には市内を完全に制圧するが、この際にいわゆる「南京事件」が発生、中国側のナショナリズムがさらに高揚した上に、対日国際世論が一気に悪化した。南京事件の真相がどうであれ、日本軍が南京を占領したがために、国民党蒋政権は国内世論的に和平交渉を進めるという選択肢が採れなくなった上に(和平派は沈黙)、「これで米英の支援が得られる」という期待を抱くところとなった。日本側の目論みは裏目に出て、中国側の抗戦意志を強化してしまったのである。さらに12月14日には日本側が華北に傀儡政権を打ち立てたことも、中国側を大きく刺激した。

南京陥落で気を良くした日本側は、休戦条件のハードルを上げ、華北分離政権の承認を要求、満州国の正式承認も加えられた。蒋介石はこの新条件を一蹴するが、国民党内部には異論もあり、回答期限は12月末だったものが翌年1月10日とされるも、正式回答には至らなかった。
1938年1月14日に国民党政府から「現条件は曖昧なので細目を提示されたい」旨の通知が日本側に伝えられるも、ここでまた日本政府と国論は過剰に反応し、「時間稼ぎだ」「誠意が無い」などの声が沸騰して、収まらなくなってしまう。
1月15日午前に大本営政府連絡会議が開かれ、陸軍の多田参謀次長と海軍の古賀軍令部次長が国力の限界から長期戦を戦うことの困難さを説明し、中国側との和平交渉の継続を主張した。ところが、近衛首相「速やかに和平交渉を打ち切り」、広田外相「支那側の応酬ぶりは和平解決に誠意なきこと明瞭」、杉山陸相「蒋介石を相手にせず、屈服するまで戦うべき」、米内海相「統帥部が外務大臣を信用しないのは政府不信任」などと声を揃えて反論され、政府と統帥部の対立が解消されないまま休憩に入った。

その結果、翌16日には「爾後国民党政府を対手とせず」の声明が発表され、和平交渉は完全に頓挫してしまう。日本側の条件が厳しくなったとはいえ、国民党政府側には自国の継戦能力を疑問視する勢力も少なくなかった。日本側が粘り強く交渉を継続し、寛容な姿勢を見せれば、休戦の糸口はまだつかめたかもしれなかった。この時むしろ和平交渉に誠意が無かったのは中国を蔑視し居丈高な態度をとり続けた日本の方だった。
後に撤回したとはいえ、国民党政府を交渉相手と認めなかった日本は、その後も7年半に渡って泥沼の戦争を続け、特に華北部では陰惨極まりない対ゲリラ戦が繰り広げられた。南京入城前にトラウトマン工作で休戦していれば、南京事件はもちろんのこと対米戦すら回避できた可能性があるだけに、日本政府の「敵とは交渉しない」スタンスの愚劣ぶりが際立っている。

80年経ても同じ愚劣を繰り返すのは、敗戦を経てなお現行政府が明治帝政を否定、解体することなく、看板だけ掛け替えて存続してしまったことが影響しているだろう。
posted by ケン at 12:18| Comment(3) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月16日

2018 日露関係の今後は?

【安倍首相、日ロ平和条約締結の意欲強調】
 安倍首相は7日、北方領土の返還を求める会合で、あいさつし、日ロ平和条約の締結に向けた意欲を、あらためて示した。安倍首相は「戦後72年が経過してもなお、日本とロシアの間には平和条約がないのは、異常な状態。何とか、この状況を打開しなければならない。戦後、ずっと残されてきたこの課題に、私とプーチン大統領が終止符を打つ」と述べたうえで、5月にロシアを訪問し、プーチン大統領との首脳会談に臨む決意を表明した。さらに安倍首相は、両国が2016年に合意した、北方四島での「共同経済活動」の実現に向けて、「今後、プロジェクトを具体化するための作業を加速させる」と強調した。
(2月7日、フジテレビ系)

【北方領土「第2次大戦の結果」=平和条約締結を希望―ロ外相】
 ロシアのラブロフ外相は国営テレビのインタビューで、北方領土問題について「第2次大戦の結果」であり、日本がこれを認める必要があるとする見解を改めて示した。 ロシア外務省が11日、インタビュー内容を公表した。ラブロフ氏は平和条約締結後に北方領土の色丹島と歯舞群島の引き渡しをうたった1956年の日ソ共同宣言に触れ、「われわれは平和条約の締結を望んでいる」と発言した。また日ロ首脳が合意した北方四島での共同経済活動の議論が両国間で進んでいると説明した。一方で、平和条約締結交渉では「日米関係が意味を持つ」と指摘。日米安保条約によって「米国は日本の任意の地域に基地を置く権利を持つ」と警戒し、この問題が交渉の焦点となっているとの認識を示した。 
(2月12日、時事通信)

ナショナリストたちが「安倍はプーチンに北方領土をくれてやるのか!」と激高している。日本では、ロシア研究者の絶対数が少ない上に、地位が低く、さらには権力側に都合の良い研究者しか表に出てこないので、まともな分析が主要メディアに載ることはない。それなりの歴史研究者でも、まともに日ソ共同宣言すら読まずに発言しているケースが散見される。

北方領土問題は非常に多くの論者が論じているが、そもそも領土返還要求は日ソ共同宣言で禁止されており、その一点で成立し得ない。

6.ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。

但し、例外的に歯舞、色丹が規定されている。
9.日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

日本は日ソ共同宣言をもって対ソ講和をなした上、国連加盟が認められたため、これを破棄することはできない。にもかかわらず、択捉、国後の領土要求を行っていることは、本来的には講和条約違反に当たる。これは、日ソ間に平和条約が締結されることを望まないアメリカ側の意向が作用したためで、それ以降、日本政府は北方領土返還要求を行うことで、日ソ・日露と平和条約が締結されないよう、距離を置く外交を続けてきた。
だが、2000年以降、中国の国力が膨張し、ついには日本を上回り、同時にアメリカの覇権に陰りが生じ、アジアからの撤退が検討されるに至り、日本は中国を最大の脅威と見なして対露宥和に転じる。これが、今日の日露外交の基本条件となっているが、国内で反ソ・反露・北方領土返還運動を煽りすぎたせいで、日露関係の改善が難しくなっている。NK党が千島全島の返還を要求する様は、ヴェトナムやアルジェリアからの撤退に反対するフランス共産党を彷彿させる。
なお、「国後、択捉島は千島列島ではなく、北海道の一部」とする現政府の主張の欺瞞性については、こちらを参照されたい。

【参考】官製絵はがきに見る政府の欺瞞

ロシアは3月に大統領選を、日本は9月に自民党大会・総裁選を控え、それぞれ再選が確実視されているとはいえ、慎重になる時期だ。だが、両者が再選されれば、自民党総裁の任期である2021年9月まで安定した交渉期間が確保できることになる。また、2016年12月にプーチン大統領が来日した際に、安倍首相と「2018年を日露文化年とする」と取り決めたので、文化交流が進むだろう。

安倍総理が言う「私とプーチン大統領が終止符を打つ」というのは、「2021年9月までに」と捉えるべきだろう。実際、ロシアで圧倒的なリーダーシップを持つプーチン大統領と、極右派に属しながら衆参両院で絶対多数を握り、政権党内に反対者を持たない安倍総理の二人で解決できなければ、平和的な解決は不可能と判断せざるを得ない。その意味で、安倍氏の判断は正鵠を射ている。

日露関係が期待されるほど進展しないのは、ロシア側がNATOを主敵とし、「欧米日による挟撃」という永年の悪夢を回避するために日露関係の改善を望むのに対し、日本側は中国を最大の脅威と認識し、「対中包囲網」を構築すべく、中露の離間を謀るという非対称要素に主因がある。また、日本は常にホワイトハウスの顔色を伺いながら、「怒られない範囲で」のみ日露交渉に臨めるという限界がある一方、ロシアとしては日米同盟の制限下でしか外交できない日本に対する不信がぬぐえないところがある。例えば、オホーツク海の防衛を重視するロシアにとって、仮に引き渡した北方四島に米軍基地が建設されるとなれば、悪夢でしかないだろう。
プーチン大統領は、たびたび「中露の国境問題の解決には40年を要した」旨を述べているが、要は中露に匹敵する信頼・協力関係はいまだ日露間には無いということなのだ。それだけに、安倍総理の抱えている課題はかなりハードルが高いが、中国に対抗するためには、対露関係の改善は不可欠であり、平和条約は最低条件となる。

現実的には、日本がロシアに提示できる好条件はあまりなく、択捉、国後島の共同開発と、両島の非武装化あたりで手を打つのが関の山だと思われる。この辺については、改めて考えてみたい。
posted by ケン at 12:10| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月13日

核肯定に転じた河野太郎

【<衆院予算委>河野外相「評価しない理由ない」 米核見直し】
 河野太郎外相は5日午前の衆院予算委員会で、米国の核戦略指針「核態勢見直し(NPR)」について「北朝鮮の核・ミサイルの脅威を現実のものと受け止めており、高く評価しない理由はない」と述べた。立憲民主党の逢坂誠二氏が、河野氏の3日の談話を「問題が多い」とただしたことに反論した。
 河野氏は「日本の領土を北朝鮮のミサイルが2度、飛び越えていった」と述べ、オバマ前政権が「核兵器のない世界」の実現を掲げたころより安全保障上の脅威は増したと指摘。「NPRは同盟国にも米国の抑止力はきちんとコミット(関与)すると明確にした。(日本は)核の抑止力を自ら用いることはできない」と評価の理由を説明した。
 逢坂氏は「NPRは米国による核兵器使用のハードルを下げ、核の先制使用の可能性も含む非常に危険な内容ではないか」と政府の対応を批判した。
 安倍晋三首相は、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて「子供たちの未来へ投資するため、恒久財源をしっかり得ていきたい。そういう状況をつくっていきたい」と述べ、増税を先送りしない考えを重ねて示した。立憲の青柳陽一郎氏の質問に答えた。
(2月5日、毎日新聞)

外相に就任するまで、河野太郎氏は、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本支部の代表だった。PNNDは、核軍縮をめざす国会議員の世界的ネットワークで、それなりの権威を持つ団体である。その河野氏をあえて外務大臣にすえ、ここまで言わしめるのは、自民党内の反核派・対米自立派を封じる狙いがあったとはいえ、安倍氏の人事力はなかなか侮れないものがある。やりにくい課題に対して、あえて反対派にやらせるというのは政治の世界ではよくあることで、その最たるものが村山富市氏だった。

今回の米国の核戦略転換は、世界覇権からの撤収と軍縮を前に、「使い勝手の良い核戦力」を充実させることで、全体の軍縮を進める前提条件を整えようという思惑があると見られる。今のところ情報がそろっていないので、この辺は推測に過ぎないが。

日本は戦後の東西冷戦の下で、日米安保を締結してアメリカの核の傘に入ることで、自国の軍事的負担を極小化、経済発展の原動力としてきた。1990年代以降、主敵だったソ連が消失して、アメリカの覇権に陰りが生じ、それに替わって中国が台頭してくる。だが、アメリカはソ連に対して採った直接対立に基づく対称的封じ込め政策を、中国に対しては採らず宥和政策と人権外交を中心とした非対称封じ込め政策を採用してきた。しかし、日本は対中宥和を採らず、対決政策を促進、東アジアの危機を煽ることで、日米安保体制を護持する方針を堅持してきた。

日米安保を維持してアメリカの核の傘を利用することで自国の安全保障を実現するならば、トランプ政権の方針に反対することなどできるはずもない。
本ブログでは何度も指摘してきたことだが、日本の選択肢は多くない。

1.アメリカの核を借用する日米安保体制
2.日中露を軸とした東アジア集団安保体制の構築
3.独自武装(中立)路線


私個人は「3」を理想とするが、その暴走した末路が1945年であったことを思えば、相当にハードルの高い政策で、あまり現実的とは言えない。すると、選択できるのは「1」か「2」かしかなく、「中露と仲良くとかあり得ない」となれば自然と対米従属を維持するしか無い。

とはいえ、日米安保と核抑止を信仰するのであれば、どうして外務大臣職を引き受けたのか。あるいは、それまでの核軍縮スタンスはあくまでもフェイクだったのか、疑問は残る。
我が国は、北朝鮮の核兵器の脅威にさらされています。極めて強い破壊力を持つ核兵器による攻撃を防ぐためには、核兵器による抑止が必要です。抑止のために、核兵器がもたらす破壊力と同等の脅威を通常兵器でもたらそうとすれば、莫大な量の通常兵器が必要になり、とても現実的ではありません。
また、日本は、専守防衛をうたい、非核三原則を堅持する方針を明確にしています。ですから日本は、北朝鮮の核への抑止を米国の核兵器に依存することが必要です。
(中略)
核兵器のない世界を目指すためには米国の核の傘に依存するべきではないという御意見もありますが、北朝鮮による核・ミサイル開発が進展している中で、非核三原則を堅持しながら国民の生命と平和な暮らしを守るためには、日米同盟と米国の抑止力の下で安全を確保していかなければなりません。
(「ごまめの歯ぎしり」 2018年2月5日号 米国の核戦略見直し)
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2018年01月26日

アメリカが北を攻撃しないワケ

【陸上型イージス、2基導入を閣議決定】
 政府は19日の閣議で、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備え、陸上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」を2基導入すると決めた。秋田、山口両県に1基ずつ配備し、日本全域を守れるようにする。陸上自衛隊が運用し、24時間体制で警戒にあたる。2023年度の運用開始をめざす。小野寺五典防衛相は閣議後の記者会見で「導入により平素から常時、持続的に防護できるようになる。弾道ミサイル防衛能力が抜本的に向上する」と述べた。
 イージス・アショアは、弾道ミサイルを大気圏外で撃ち落とすイージス艦の迎撃システムを陸上に配備する仕組み。日米で共同開発した新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を搭載すれば、2基で北海道から沖縄まで防護できるという。防衛省は18年度当初予算案で基本設計費として約7億円、17年度補正予算案で米軍からの技術支援費として約28億円をそれぞれ要求している。防衛省によると、施設整備費を含むイージス・アショアの導入費は1基あたり約1千億円かかる。
 政府は14年度にミサイル防衛強化に向けた研究に着手、イージス・アショアと地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)に候補を絞った。防衛省によると、THAADは1基あたり約1100億円かかるほか、日本全域の防護には6基が必要。「2基で守れるイージス・アショアの方が費用対効果が高い」(幹部)と判断した。イージス・アショアは弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイルや爆撃機なども撃ち落とせるよう調整する。防衛省はこうした性能をもつ迎撃ミサイル「SM6」の試験弾薬を18年度に取得し、性能を評価する。イージス・アショア運用の専門部隊を新設し、1基あたり100人規模を配置する方向だ。
(12月18日、日本経済新聞)

ごく簡単な話だが、どうにも理解してもらえないのは、「人は自分の信じたいものを信じる」からなのだろうか。
北朝鮮が核とミサイルで恫喝外交を繰り返す限り、日本と韓国は米国からミサイル防衛システムを購入し続けることになる。それはアメリカの軍需産業にとって「生命線」とすら言える。
仮にアメリカが北朝鮮を攻撃して滅ぼしてしまったら、新たな脅威を作り出さない限り、ビジネスは「あがったり」になってしまう。もちろん、次の脅威としては中国が挙げられるのだが、アメリカは国債の主要な引き受け手である中国とは戦えない構造にあり、無理はできない。
つまり、米国による対北戦争は、アメリカに何の利益ももたらさない一方、むしろ「適度な脅威」であり続けてもらうことが、ビジネスにおいて「上々」ということになる。兵器と薬品しか主要な産業が無い米国にとって、何が国益かはあまりにも明確で、それは「日韓に買わせる」ことなのだ。

韓国はそれが分かっているからこそ、文大統領が緊張緩和に向けて動き、日米から非難されている。
他方、日本は「日米同盟」を維持するために米側の言いなりになるほかなく、どれだけ高額な兵器でも買い続けるほかないのだが、財政難の中でできることは限られており、社会保障の切り下げでは足りず、通常装備や自衛隊員の待遇を切り下げるという話になっている。これはタコが自分の足を食うような話で、中長期的には大きな禍根となると思われる。
posted by ケン at 12:37| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月10日

集団的自衛権解禁から対外攻撃能力保有へ

【護衛艦「いずも」を空母改修=政府検討】
 政府は26日、海上自衛隊最大級の護衛艦「いずも」(写真)を戦闘機の発着が可能な空母に改修する検討に入った。自衛隊の空母保有は初めて。
(12月26日、時事通信)

【長距離巡航ミサイル国産化 政府検討 34年度に試作品】
 政府が敵基地攻撃能力の保有も視野に入れ、長距離巡航ミサイルの「国産化」を検討していることが27日、分かった。平成34年度の試作品完成を目指す。政府は米国などから長距離巡航ミサイルを導入する方針を固めているが、緊迫する北朝鮮情勢や中国の海洋進出に対処するには、独自開発による防衛力整備も必要と判断した。装備品の海外調達費を抑え、国内防衛産業の成長を促す狙いもある。複数の関係者が明らかにした。
 政府は30年度予算案に米国製とノルウェー製の長距離巡航ミサイルの調達費を計上した。米国製は900キロ、ノルウェー製は500キロを誇る。
 防衛省幹部は「長距離巡航ミサイルを持つことで、敵の脅威圏外からの攻撃が可能になる。空自パイロットの安全性は格段に増す」と説明する。
 一方、自衛隊が保有する対艦ミサイルの射程は約170キロ。技術的には長距離巡航ミサイルの国産化は可能とされていたが、「専守防衛」の立場から開発は見送られていた。
 これに対し、12日に開かれた自民党安全保障調査会(中谷元会長)などの会合では「長距離巡航ミサイルを保有するなら国産化も検討すべきだ」との声があがった。
 党国防族は「これまでは『専守防衛の範囲を超える』という批判に配慮してきたが、北朝鮮情勢などで局面は変わった。敵基地攻撃能力につなげるためにも国産化は自然な流れだ」と指摘する。
(12月28日、産経新聞)

戦前とは形態が異なるものの、少しずつ国家の「タガ」が外れてゆく様が見られる。
まず1990年代に海外派兵が解禁されたことを手始めに、2000年代には海外における軍事行動の一部が解禁されて国連以外の枠組みでの派兵も可能となった。そして、2010年代には特例法の必要無しに恒常的な海外派兵が許可されると同時に、集団的自衛権の行使をも容認するところとなった。そして今、集団的自衛権行使を前提とした軍備拡張が進められている。

記事にもあるヘリ搭載型護衛艦は、予算が審議された当初から「空母運用に繋がり、攻撃能力の所持になってしまう」との危惧が上がっていたが、政府・防衛省の説明は「空母運用は想定していない」の一点張りだった。
あれからわずか数年(「いずも」の予算は2010年度)で前言を翻したのだから、議会の権威はますます低下し、行政への権力集中が進む一方となっている。

空母も長距離巡航ミサイルも、本質的には先制攻撃を前提とした攻撃兵器であり、自国の領海や領土外を叩くことを目的に設計される。
政府は、北朝鮮の脅威を理由に挙げているが、それはアメリカの偵察衛星からの情報を受けた日本が先制攻撃を加えて、北の核やミサイル発射能力を先制攻撃で潰すことが前提となる。こうなってくると、ほとんど現行憲法は実質的に廃棄されたも同然となるだろう。つまり、次の憲法改正はこうした先制攻撃を許すための修正が必要となる。

また、現実には日本が想定している攻撃能力で北朝鮮の攻撃能力を無効化することはほぼほぼ不可能であり、「北朝鮮を叩くためにこれらの軍事力が不可欠」という防衛省の説明は、一見合理的に見えて、実質が伴っていない。
となると、やはり実際には、尖閣沖や東シナ海、あるいは南シナ海で中国海軍と戦うことを前提としていると考える方が合理的だろう。

他方、独自の防衛力を高めるということは、政府・自民党側も「日米安保の抑止力の低下」を認識していることを示しており、あるいは「日米同盟後」までにらんでいるのかもしれない。だが、国力が低下する中で、中国、ロシア、北朝鮮を仮想敵とした軍備を整えるのは無謀な話であり、だからこそアメリカににらまれながら対露外交を続け、今度は対中宥和を試みるといった話になっているのだろうが、どうにも「泥棒を捕らえてから縄を綯う」の観が否めない。

【追記】
今後、日中の経済格差が拡大していくと、日本ももた北朝鮮を倣って核武装を検討することになる公算が高い。
posted by ケン at 12:20| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする