2020年10月09日

菅総理の日露外交は?

【菅首相「2島引き渡し」軸に交渉 プーチン大統領と初の電話会談】
 菅義偉首相は29日夜、ロシアのプーチン大統領と初めて電話会談し、1956年の日ソ共同宣言を基礎とした平和条約締結交渉を進める方針で一致した。日本政府関係者が明らかにした。2018年11月に当時の安倍晋三首相とプーチン氏が合意した方針を再確認した形。安倍政権の路線を継承し、北方領土の色丹、歯舞の「2島引き渡し」を軸に交渉する姿勢が鮮明になった。両首脳は近く直接会談することで合意した。電話会談で首相は「日ロ関係全体を発展させたい。北方領土問題を次の世代に先送りせず、終止符を打ちたい」と表明。プーチン氏は「2国間のあらゆる問題について対話したい」と語った。
(9月29日、共同通信)

「エリカちゃん」も外務省の職員もこぞって四島返還論に回帰する中、菅総理は厳しい交渉を強いられそうだ。
古来、「外交は外交そのものよりも内交の方が難しい」と言われるように、外交は非常に難しい。

日本では、明治憲法下において外務省が天皇の外交権を代行していたことから、軍部同様に国会の統制を受けることなく、最終的には暴走、日中戦争と対米英戦に突入した。戦後、軍部は解体されるが、外務省は全ての責任を軍部に押しつける形で存続、今日に至っている。
自衛隊よりもタチが悪いのは、侵略と植民地政策に対する反省がないまま、明治体制を存続させている点にある。
そのため、今日でも最も政治統制、国会による統制、民主的統制から最もほど遠い省庁になっている。

安倍氏はそれを承知していたが故に、内閣人事局を創設することで霞が関に対する統制を強化しつつ、対露外交の主導権を奪って、官邸主導とした。
自民党史の中で、最大の権力を有したと思われる安倍氏ですら、対露外交は「対話を進めた」程度に終わり、日露平和条約も内容の交渉には及ばなかった。

菅氏は、安倍氏よりも権力基盤がはるかに弱い上、高齢のため長期政権は期待できず、外交の経験値も持たないため、日露外交は「ほぼ無理」な印象がある。
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2020年09月26日

今後の日露交渉は?

【"領土引き渡し禁止"盛り込んだロシア新憲法 大統領側近「読めば答えわかる」北方領土問題は難航必至に】
 辞意を表明した安倍首相に北方領土問題を巡り「残念ながら解決には近づかなかった」と厳しい評価を口にしたロシアの大統領側近が、「新憲法を読めば明確な答えがわかる」と、四島を日本に返還する気がないことを改めて強調しました。
 ロシアのプーチン大統領側近のペスコフ大統領報道官は9月10日、ロシアメディアに「島についての答えは非常に簡単だ。新憲法を読めば、明確な答えが分かる」と話しました。
 ロシアの通信社が行った会見で、「新しい日本の首相が任命された後、クリール諸島(北方領土と千島列島)に何が起こるか」との質問に答えました。
 ロシアで7月に成立した新しい憲法には「領土の引き渡しの禁止」が明文化されていて、ペスコフ報道官の発言は、ロシアが北方領土を返す気がないことを、改めて強調した形です。
 ペスコフ大統領報道官は9日、辞意を表明した安倍首相の対ロシア政策について「残念ながら(領土問題や平和条約締結交渉の)解決には近づかなかったと認めざるを得ない」と厳しい評価を口にしていました。
 日本側はロシアの新しい憲法に「領土の引き渡しの禁止」が盛り込まれたことについて、「領土問題を解決して平和条約を締結する基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉に取り組んでいきたい」(茂木敏充外相、7月)としています。
(9月11日、北海道文化放送)

ロシア駐在経験者も含めて、「ロシアは憲法改正して、領土引き渡しを禁止したから、ロシアとの北方領土交渉はもう不可能」旨の認識を平気で掲げている。これは、連中がロシア語の原典に当たらず、英文の西側報道をそのまま日本語に直して流しているためだ。

現実には、憲法改正(ロシア的には修正)によって確かに「領土引き渡しの禁止」条項が入れられたものの、「国境画定作業に伴うものは除外」旨の規定も入れられている。
これを言うと、多少ロシア語が読めるものは、「7月16日にロシア外務省が『日露平和条約交渉は国境画定とは何の関係もない』と発表した」と反論してくるわけだが、これは日ソ共同宣言に記載されていない択捉と国後の日本側領土要求を指していると見るのが妥当だ。
歯舞、色丹については、「平和条約締結後の引き渡し」が国際条約に明記されており、これこそがまさに「国境画定作業に伴うもの」であるからだ。
この例外規定は、わざわざプーチン大統領が求めて加筆されたものであることを考えても、それが妥当だろう。

しかし一方で、ロシアが日ソ共同宣言を確実に遵守するとは限らないわけで、そこをキッチリ交渉するのが、日本側の手腕ということになる。
ところが、右派もリベラル派も「ロシアとはもう交渉不可能」とばかりに最初から敵視することしか考えておらず、北方領土についても日本政府のプロパガンダ(四島返還論)を相変わらず信じている。
平素二言目には「ファクトチェックガー」などと言うリベラル派も、対ロシア・対中国については原典をあたろうとしないのは、連中の二枚舌ぶりを示している。

いずれにせよ、日本が長期的に勢力を減退させ、中国との勢力比が拡大の一途を辿る中、ロシア、北朝鮮、さらに韓国とも敵対するという選択肢が「アリ」と思っている連中ばかりが増えており、自分の都合しか考えない昭和初期の軍人、政治家と同レベルの思考回路に陥りつつあることを示している。
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2020年09月18日

朝日の外交社説は赤点

【(社説)対ロシア交渉 失敗を検証して出直せ】
 ロシアはきわめて重要な隣国ながら、いまだに平和条約を結んでいない。この戦後の外交課題に取り組むのは政府の責務だが、安倍政権の交渉はあまりに稚拙だった。
 専門家の意見に耳を貸さず、無原則な譲歩に走った。その成果はなかっただけでなく、重い負債が残された。次の首相は、この失敗を直視して態勢の立て直しを図るほかない。
 北方領土問題をめぐり、安倍首相は一昨年11月、重大な方針転換に踏み切った。四島返還の要求を封印し、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)2島の返還による決着をめざすことにしたのである。
 しかしロシア側は、第2次大戦の結果として四島全てがロシア領になったと確認するのが平和条約の役割だと主張した。
 1956年の日ソ共同宣言は、将来に2島を日本に引き渡すと約束している。ロシア側はこれも「主権まで渡すとは書かれていない」と繰り返し、交渉はかみ合わなかった。
 プーチン大統領は、安倍氏との交渉の過程で態度を硬化させたわけではない。以前からの立場を単に継続しただけだ。
 日本の外務省には、過去の経緯やロシアの論理に通じた人材がいる。だが安倍氏と側近はその専門知を軽視し、「2島返還ならプーチン氏も応じるだろう」との思い込みで、長年の主張を一方的に後退させた。
 対外政策の原則をゆがめたことも禍根を残した。14年にロシアは国際法を無視して隣国の領土を一方的に併合したが、それ以降も安倍氏はプーチン氏の顔色をうかがう接近を続けた。
 主要7カ国(G7)の一員としてロシアに経済制裁を科しながら、一方で対ロ経済協力を担う閣僚ポストを新設したのは、いかにも二枚舌の対応だった。法の支配などの重視をうたった安倍政権の「価値観外交」は、看板倒れだった。
 主権者である国民にも国会にも説明を拒んできたのは、民主主義に反する。交渉の駆け引きは明らかにできないとしても、基本方針を秘密裏に根本から変えたことは重大な問題だ。
 次の首相は、対ロ平和条約交渉について、立ち止まる必要がある。これまで何が行われていたのかを検証し、国民に明らかにすることが出発点だ。
 ロシアでは、反政権派の指導者に対し神経剤を使った暗殺計画の疑惑が浮上している。国際社会が厳しい目を向けるなか、日本の姿勢も問われる。
 安倍首相がプーチン氏と会談を重ね、親しい関係を築いたのは確かだ。しかし外国首脳とにこやかに握手を交わしたとしても、実のある交渉ができるかどうかは別ものなのである。
(9月7日、朝日新聞)

日ソ共同宣言、サンフランシスコ講和条約、極東国際軍事裁判判決文などを読まずに、外務省のプロパガンダだけ見て書いた、Wikiのコピペのような作文。ソ連、ロシア政治の科目レポートで書いたらC評価も怪しいレベル。
朝日新聞は廃刊すべきだろう。

朝日新聞は、いっそドイツで「東プロイセン(現カリーニングラード)の返還をロシアに求めましょう。日本国民が全面的に協力します」と呼びかけてみてはどうだろうか。

最も単純な論点として、日本は二次大戦の結果に異論を唱えないことを条件に連合国(日本通称は国連)への加盟が認められたわけで、北方領土要求自体、国連憲章第53条の適用を求められかねない危険なものである。それ以外のことは些末でしかない。

ところが、日本の「自由主義者」にはこの手の連中が多く、そもそも会話が成り立たないケースが多い。
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2020年08月28日

【メモ】基地攻撃能力保有に関する議論の現状

自民党は8月4日の政調審議会で党ミサイル防衛検討チームがまとめた「国民を守るための抑止力向上に関する提言」(別添)を了承し、同日、安倍晋三首相に提出、説明を行った。これに対し、首相は「防衛に空白が生じてはならないという考え方のもと具体的な提言をお示しいただいた」と応じている。同じ8月4日には、安全保障会議四大臣会合(首相、外相、防衛省、内閣官房長官)が開催され、新たなミサイル防衛についての協議を本格化させ、配備計画を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策を検討、全体的な方向性を9月末までにまとめ、年末までに国家安全保障戦略の改定を目指すことを確認した。

自民党の提言は「敵基地攻撃能力」の名称は避けつつ、「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力」の必要性を強調している。自民党内や公明党の慎重論にも配慮して、「憲法の範囲内で専守防衛の考え方の下」との記述を入れ、防衛力について「攻撃的兵器を保有しないなど自衛のために必要最小限度のものに限る」との従来の政府方針を確認した。同時に、日米安保における役割分担(日本の自衛隊が防衛し、米軍が攻撃を行う)を維持しつつ、抑止力の向上に向けてさらなる連携強化を行うとしている。

これを受けて、防衛省を中心に政府内では基地攻撃能力に関する検討が進められている。8月10日現在、最も有力なのは島嶼防衛用に計画している長射程ミサイルなどで敵ミサイルや施設を攻撃する案である。衛星などで標的を特定し、敵レーダーを無力化して航空優勢を築いた上で戦闘機が爆撃する完結型の「ストライク・パッケージ」を独自保有する案も検討されたが、費用対効果などに難点があり見送る方向のようだ。現在のところ、北朝鮮を仮想し、「JASSM(AGM-158)」、「トマホーク」、あるいは極超音速誘導弾などが候補となっている。中でもJASSMは2018年の「防衛計画大綱」で研究・調達の意向を示しており、最も有力となっている。

基地攻撃能力保有に関しては、2000年代以降北朝鮮の脅威が増す中、自民党などから検討を求める声が上がっていたが、政府は憲法第九条との関係、日米安保における役割分担の問題などから検討を避けてきた経緯がある。しかし、根源的には1956年の鳩山一郎内閣が、「他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ、可能だ」との政府統一見解を示しことを根拠に、「法的には保有可能だが、政治的理由から保有しない」スタンスを現在まで続けてきた。具体的には日本政府は、憲法9条第2項が禁じている「戦力」とは、「自衛のための必要最小限度を越えるもの」との統一見解を示し、その上で、「自衛のための最小限度」や「専守防衛」の条件を満たすものとして、「攻撃的兵器は持たない」とした。この中には、北朝鮮のミサイル施設を攻撃できる長射程の空対地ミサイルや、トマホークなどの艦対地ミサイルが含まれている。しかし、米朝和解に向けた動きが停止し、米中対立が激化、日本近海における中国艦船の活動が活発化する一方、米トランプ政権からは長距離巡航ミサイルの配備が求められており、政府内でも自民党内でも「2000年代とは状況が全く違う」との認識が広まっている。

だが、現実には長距離ミサイルの保有は容易ではない。まず連立与党の一角を担う公明党は、「平和」を党是としており、他国を直接攻撃する能力の保有に対して強い慎重姿勢を示している。とはいえ、公明党は2013年の特定秘密保護法や15年の平和安全法制など安全保障問題については政権側に大きく妥協してきた経緯があるので、今回も何らかの妥協をする余地はあると見られる。とはいえ、公明党は「憲法第九条との整合性」「従来の政策を転換して攻撃的兵器を保有することの正当性」を明確にするよう、自民党に要求するものと予想される。実際、公明党内では、「先制ミサイル攻撃は相手の反撃と交戦を誘発し、明らかに専守防衛の枠を超えている」とする慎重論が強いという。

より大きな問題は軍事技術上の課題である。例えば、北朝鮮の弾道ミサイルを標的とする場合、北朝鮮が保有すると見られる150基以上の移動式発射機をリアルタイムで捕捉するための手段が日本には無く、その手段を確保するためには偵察衛星の拡充と偵察用の無人機を配備し、運用する必要がある。それを検討せずに長距離ミサイルのみを保有するのは現実的ではない。仮に中国の航空基地に対する先制攻撃を想定するならば、米軍の補助的機能として軍事的意義も成立しうるが、中国との全面戦争については政府内でも自民党内でも想定はしていない模様だ。実際、日本の安全保障理論を支える日本国際問題研究所や防衛研究所は、基地攻撃能力の保有について慎重なスタンスを示している。例えば、日本国際問題研究所「朝鮮半島情勢の総合分析と日本の安全保障」(2015)は、対兵力打撃(敵基地攻撃)について「日本は敵の領域に到達して攻撃できるプラットフォーム、敵基地や移動式発射機を常続的に監視するアセット、情報をリアルタイムに処理・伝達できるネットワークなど、敵基地攻撃に求められる能力の多くを質・量ともに保有しておらず、独自の敵基地攻撃能力保持が整備されるまでには、相当の時間と費用が必要になる」との評価を下している。少し古くなるが、防衛研究所の高橋杉雄は「専守防衛下の敵地攻撃能力をめぐって」(防衛研究所紀要第8巻第1号、2005)において、「我が国が専守防衛政策の中で敵地攻撃能力を整備するか否かは、慎重に利益とコストを計算した上での判断でなければならないといえる」と結論づけている。基盤整備まで含めると、基地攻撃能力は巨額の費用がかかることは明白であり、国家歳入の3割以上を公債に依拠する深刻な財政難の中で、防衛費の大幅な増額は難しく、巨額の新規費用が発生する基地攻撃能力の保有は現実的ではないとする判断が、現在においても研究者の間では多数を占めている。

今回の基地攻撃能力保有に関する議論は、米中対立が深刻化し、日中関係が緊張度を増す中、自民党内のタカ派が勢力を強めたことから急速に展開している。しかし、戦略目的と戦略目標、コストと効果、憲法と従来政策と日米安保の整合性などの議論は不十分なままにあり、結論ばかりが急がれている印象がある。
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2020年08月19日

軍事的自立を求めるアメリカ

【日本に「大きな責任」求める 駐日大使指名ワインスタイン氏 米上院委】
 トランプ米大統領が次期駐日大使に指名した保守系シンクタンク「ハドソン研究所」のケネス・ワインスタイン所長(58)の人事案承認をめぐる公聴会が5日午前(日本時間6日未明)、オンライン形式の上院外交委員会で行われた。ワインスタイン氏は、日本に対し「より大きな責任を引き受けるよう求めていく」と強調。軍事力や技術力を高める中国を念頭に北東アジアの安全保障上の課題で貢献拡大に期待を示した。就任には上院の承認が必要だ。ワインスタイン氏は、トランプ氏と安倍晋三首相の友好に触れ「日米関係は非常に緊密だ」と指摘。「日米同盟はインド太平洋地域の平和、安全、繁栄の要になっている」と称賛した。
 今秋以降に始まる在日米軍駐留経費の日本側負担の交渉については「実り多い結果になることを楽観している」と述べた。大幅な増額を求める考えのトランプ氏の要求に応えるよう促した形だ。また、1月に発効した日米貿易協定に続き「包括的な貿易協議に取り組むことを期待する」と表明。「特に自動車分野でさらに(交渉を)進める必要がある」と訴えた。準備書面の中で、北朝鮮による日本人拉致について「日本人の心にとって大切なものだ」と言及した。トランプ氏がシンガポールとハノイの米朝首脳会談で提起したことも改めて強調した。
 ハガティ前大使は今年11月の上院選出馬のため、2019年7月に辞任した。以来、駐日大使の空席が1年以上続く異例の事態となっている。 ワインスタイン氏は日本専門家ではないが、安倍首相に近いことで知られる。対日関係を重視し、ハドソン研究所に日本部門を設置。マクマスター元大統領補佐官(国家安全保障担当)を日本部長に招聘した。 
(8月6日、時事通信)

対米依存をますます強める日本政府(霞が関)に対し、アメリカは日本に対し軍事的自立を求めている。
アメリカの方針は1990年代から示されているものの、日本側は「国際貢献」を増やす程度に止め、アメリカが求める「軍事的自立」は黙殺してきた。それは「軽武装・経済優先」の吉田ドクトリン以来の方針であり、そのおかげもあって、「対GDP比1%」の軍事費枠がほぼ守られてきた。アメリカがNATO同盟国に求めるそれは「対GDP比2%」であり、日本はよほど恵まれた条件下にあった。

ところが、アメリカの国力と影響力が相対的に低下し、日本がアメリカと中国という「巨獣に挟まれた小犬」と化しつつある現在、70年前の吉田ドクトリンは通用しなくなっている。
にもかかわらず、自民党は帝政復古主義者と無関心層(利権にしか興味が無い)しかなく、野党には吉田ドクトリンか非武装中立しかないという有様。

やはりここは国家社会主義しか無いのきゃ?
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2020年07月02日

専守防衛から攻勢防御へ

【自民、週内に敵基地攻撃能力の議論開始 検討チーム設置へ】
 自民党は22日、敵の発射基地を攻撃することで発射をためらわせる「敵基地攻撃能力」の保有を含むミサイル防衛に関して検討チームを立ち上げ、週内に初会合を開き、議論を始める方向で調整に入った。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画の事実上の撤回を受け、安倍晋三首相は18日の記者会見で能力保有を検討する意思を示していた。
 検討チームは党の安全保障調査会(会長・小野寺五典元防衛相)と国防部会(会長・原田憲治前防衛副大臣)を中心に構成する。北朝鮮が昨年以降、17回の弾道ミサイル発射を繰り返し、技術を高度化するなど周辺国の脅威が増す中、能力保有の是非や技術的課題などを検討する。夏までに政府への提言をまとめたい考えだ。
 政府は従来、敵基地攻撃能力について「他に手段がなければ法理的には自衛の範囲で、憲法上許されるが、政策上保有しない」と解釈している。連立政権を組む公明党には反対論が多く、与党内の調整も課題となる。
(6月22日、産経新聞)

「イージス・アショア」配備計画の撤回は、戦略的には「対米自立(独自路線)への一歩」、軍事的には「先制攻撃能力の保有へ」という意味を持つ。だが、戦略的にも軍事的にも現行憲法第九条が障壁となっているため、憲法改正を経ない実務的な議論は、ますます憲法の空文化を促進するところとなる。

大臣は自ら「システム改修に10年程度かかる」旨を理由に挙げており、それまでにシステムが陳腐化してしまうリスクを考えてのことと考えられる。それに、北朝鮮を相手にするだけならともかく、中国を考えた場合、2030年には米中の勢力バランスが完全に拮抗すると見られるだけに、「他の方法」を検討した方が良いと判断したのかもしれない。
とはいえ、五月には防衛省内では結論が定まっていたにもかかわらず、発表が遅れたのは、国会での議論を避けたかったことと、安倍政権の中にあって、河野大臣は最も親米寄りなので、抵抗した可能性もある。また。中止を発表した瞬間に自民党が動くというのは、党内での調整があったものと見て良いだろう。

確かに政府は現状でも先制攻撃能力について、「自衛の範囲で、憲法上許されるが、政策上保有しない」と説明しているが、他国領土に対する先制攻撃を「憲法上許される」とするのは、無理筋も良いところであり、だからこそ「政策上保有しない」と留保せざるを得ない。
北朝鮮に限って言えば、「米軍がやられる前にやってくれるはず」という前提の上に成り立っていたが、米軍による朝鮮侵攻どころか、半島からの撤退が視野に入っている今となっては、「親分がやらないなら、自分でやらせていただきます」という議論を勝手に始めようとしているのが、今の自民党であると言える。
安保や憲法関係の議論そのものを拒否する主要野党の姿勢に問題があることも指摘しておきたい。

政府がF-35の導入に固執し、「いずも」の空母改修を進めているのも、空母搭載のF-35による先制攻撃を想定していると見て良い。
もっとも、これも「敵基地」が1、2カ所の話で、その場所を事前に探知できるという前提であり、「やらないよりはマシ?」というレベルの机上の空論感は否めない。

【参考】
中道左派ライトウイング視点による憲法9条と日米安保のおさらい
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2020年06月17日

日本が中国非難声明に参加拒否

【日本、中国批判声明に参加拒否 香港安全法巡り、欧米は失望も】
 香港への国家安全法制の導入を巡り、中国を厳しく批判する米国や英国などの共同声明に日本政府も参加を打診されたが、拒否していたことが6日分かった。複数の関係国当局者が明らかにした。中国と関係改善を目指す日本側は欧米諸国に追随しないことで配慮を示したが、米国など関係国の間では日本の対応に失望の声が出ている。
 新型コロナの感染拡大などで当面見合わせとなった中国の習近平国家主席の国賓訪日実現に向け、中国を過度に刺激するのを回避する狙いがあるとみられる。ただ香港を巡り欧米各国が中国との対立を深める中、日本の決断は欧米諸国との亀裂を生む恐れがある。
(6月7日、共同通信)

肯定的に見れば「独自外交の成果」、否定的に捉えるなら「二大強国に挟まれた小国の悲哀(戦国期の韓や近代ポーランドのような)」。

西側では「中国の覇権主義」「自由の簒奪」と捉える向きが強いが、中国人的には「阿片戦争と植民地時代の汚名返上」「真の独立回復」という意識が強い。つまり、一国二制度自体が、植民地宗主国によって強制された分割統治法であって、欧米列強の植民地主義であるという理解。これが分からないと、中国のことは永遠に理解できないし、日本人もまた「名誉白人」のままということになる。

イデオロギー外交への同調を叫ぶのは容易だが、輸出入の二割、インバウンド観光の三割、海上交通路の六割以上をリスクにさらす覚悟が必要であることを忘れてはならない。

「中露とは少なくとも敵対しない」選択肢を採らない場合、日本は際限なき軍備拡張が必要となるだろう。
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