2020年01月04日

日中の海軍力は逆転へ

20191227SS00001.jpg

この五年間における1千トン以上の大型巡視船の生産量は、中国96隻に対し日本11隻だった。もはや日中間は太平洋戦争時の日米と同水準の国力差なっている。日本の選択肢は対米従属を強化して中国に対抗するか、あるいは対米従属を脱して中露に接近するか、の二択になりつつある。

代議制民主主義が本来の機能を発揮していれば、日本には「親米反中」「親中反米」「独立独自」の三路線を代表する政党が議会に議席を持って、議論を戦わせなければならないはずだが、ハッキリしているのは政府の「親米反中」と共産党の「独自路線」くらいなもので、後は真面目に議論する気もない感じ。ある意味では、昭和初期より危機感が無いのかもしれない。
「EUの是非」「反ロシアの是非」が議会や選挙のテーマになるヨーロッパは、今のところまだ代議制民主主義の健全性が保たれていると言えよう。方針すら決められないまま、政府=官僚の既定路線(親米反中)に引きずられてしまうところは、昭和の政治家と同レベルかもしれない。

今後日本は欧州におけるポーランドや日清・日露戦争前の朝鮮のような立ち位置に置かれることになるだろう。理論上は中立、親欧州、独自路線も存在するも、戦間期のポーランドやチェコスロヴァキアを見れば、現実政治では成立しがたいことがわかるだろう。
私の見立てでは、親米路線を継続するためには国防費を現在の2倍にする必要がある(USの要求)。独自路線の場合は国防費を3〜4倍にした上で核武装が必要になる。いずれも現在の日本経済には耐え難いだろう。

海保長官は安倍総理に問われて、「それは是非やれと言われれば初め半年や1年の間は随分暴れてご覧に入れる。然しながら、2年3年となれば全く確信は持てぬ」とでも答えているのだろうか。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月22日

いよいよ人格破綻する日本政府

【政府、「北方領土と言わないで」 ロシアとのトラブル懸念】
 日本とロシアによる北方領土での共同経済活動のパイロット(試行)事業として10月末〜11月初旬に実施された国後、択捉両島への観光ツアーで、日本政府が委託先の旅行会社を通じ、参加者に「北方領土」という表現を現地で口にしないように注意喚起していたことが16日、分かった。政府は「4島はロシアに実効支配されており、ちょっとした言動がトラブルにつながりかねない。やむを得ない対応だ」(外務省幹部)と理解を求めている。
 関係者によると、政府は出発前に旅行会社の担当者を介し、住民との交流時には北方領土と言わずに「北方四島」と呼ぶよう参加者に協力を求めた。
(11月16日、共同通信)

おいおい、もともと「北方領土」なる用語をつくったのは政府、外務省であって、それを反ソ宣伝の材料として60年間使い続けたあげく、関連機関を創設して天下り先にしてきたのもヤクニンどもだっただろうが!

国会議事録を調べればわかるが、「北方領土」という言葉が初めて出てきたのは、1956年3月3日の衆議院外務委員会においてであり、言葉を発したのは外務省の下田武三外務省条約局長だった。

「御承知のように講和会議では、日本政府の希望するような北方領土の定義は下されませんでした。そのかわり日本政府の希望するような定義は下されませんでしたが、他のいかなる定義も下されなかったのであります。」

これは社会党の森島守人先輩が発した「政府は当初、南千島(現在の北方四島)を含めて権利放棄していたはずなのに、主張を翻して領土要求するのはいかがなものか」旨の質問に対する答弁の一環である。もちろん質問者は一言も「北方領土」などと言っていない。
この時は、この一カ所のみだったが、同年11月24日に行われた衆議院「日ソ共同宣言等特別委員会」において、下田局長は「北方領土」を連発、用語の定着を試みている。

「北方領土を日本の帰属のままに残しておいたのではソ連が桑港会議に出てこないから、そこで取りあえず日本の手から離すという意味で、日本の放棄をきめまして、そこで連合国とソ連との間で日本の北方領土の帰属をできれば一年以内にきめたいという腹が実はあったわけです。ところが、仰せの通り、ソ連が入りませんので、その目的が達成せられなかったわけです。そこで、連合国の立場といたしましては、日本が北方領土を取り返しても決して異議は申さないというのが初めからの大前提であり、むしろ連合国は日本に対する同情者の立場である。」

「北方領土」というのは、いわゆる「ダレスの恫喝」を受けた日本政府が沖縄返還を優先して、「ソ連とは今後一切交渉しない」ことを内外(特に米国)に対して宣言するために用いた方便であり、同時に日本国内の世論を反ソで統一させるための意図もあった。当時、特に北海道では漁業の操業上、「色丹、歯舞の返還で手を打って、早く漁業権を回復してくれ」との要求が根強くあり、これを抑える必要があった。

同時に、それまでは、千島、北千島、南千島などと言ってきたわけだが、「北方四島を意味する南千島という表現を使うと、千島放棄を明記したサンフランシスコ講和条約に反するので具合が悪い」と判断され、「北方領土」という造語がなされた。

日本政府は現在もなお「ロシアによって不法占拠下にある北方領土の主権を確認した後、平和条約を締結する」との主張を撤回しておらず、日露交渉が不調である原因の一つは「ロシアによる北方四島支配は歴史的根拠が無い」とのスタンスを崩していないことにある。
にもかかわらず、政府はまず口頭で「不法占拠」を使わなくなり、今度は「北方領土も使うな」と国民に要求している。その要求をするなら、まず自身の過ちを認めて、主張を撤回するところから始めなければ、主権者たる国民に対して不誠実である。
外交権はあくまでも主権者たる国民に帰するものであって、外務省は主権を代理執行しているだけで、主権の保有者ではなく、まして占有者では無い。だからこそ、政治家が行政を統括して、国民に対する説明責任を果たす必要があるわけで、これが三権分立の基本原則だった。

いかなる説明責任も果たさず、情報と意思決定を占有し、独自の判断で外交権を行使する外務省は、暴走した旧軍と全く同じであり、一日も早く解体する必要がある。

森島守人先輩が草葉の陰で泣いておられよう。先輩の『陰謀・暗殺・軍刀 - 一外交官の回想』は名著です。
posted by ケン at 15:00| Comment(7) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月21日

USが日本に中距離ミサイルを配備?

【中距離ミサイル沖縄配備、国防総省「現段階で計画ない」 玉城知事が直接確認も否定】
 訪米中の玉城デニー知事は18日、国務省で国防総省国防長官府筆頭部長東アジア担当のメアリー・ベス・モーガン氏と国務省日本部長代行のテッド・シーガー氏、連邦議員らと面談した。玉城知事は本紙が報じた沖縄への中距離弾道ミサイル配備計画についてモーガン氏に直接確認した。同氏は「沖縄への地上発射型の中距離ミサイルの配備は発表も計画もない」と否定したという。
 玉城知事によると、モーガン氏は沖縄への中距離ミサイル配備計画について「開発には時間がかかることが予想されるので、現段階でどこに配備するかというのは発表できない」と発言。
 これに対し、玉城知事は「過去にオスプレイの配備計画が事前に伝えられていたにもかかわらず、日本政府が県に対して通報したのは配置の1カ月前だった」と指摘し、国防総省側に「そのようなことがないよう情報の共有はしっかりと行うべきだ」と申し入れた。
 記者団に計画が伝えられた場合の対応について問われ、「政府からそのような話があった場合はしっかりと対応したい」と述べた。
 一方、辺野古新基地建設の現場でみつかった軟弱地盤や活断層の問題について、玉城知事の説明を受けた議員の数人から「(軟弱地盤や活断層の存在や、維持管理など)示された懸念について調査をしたい」との発言があったという。玉城知事は「無謀な計画を見直すべきだと説明したことをしっかりと受け止めていただいた。手応えはあった」と振り返った。
(10月19日、琉球新報)

日本国内では沖縄メディア以外報じていないし、米国内でもフリージャーナリストのレベルでしか報じていないので、私も全くスルーしてきたが、何故か中国では、「日米の高官が合意済み」みたいな報道がなされ、ちょっとした騒ぎになっている。私のところにまで問い合わせがあり、正直迷惑している。

20191111SS00001.jpg

米国防省が中距離ミサイルの極東配備を検討しているのは確かで、アメリカによるINF条約破棄を受けて、新たな軍拡競争が遡上に上る中、特に日本と韓国への新配備が検討されているようだ。
防衛省とも意見交換はしているだろうし、報道にもあった10月18日の「会議」はそれを指している模様だが、あまりに政治的に重大な話であり、米軍と自衛隊・防衛省の話し合いで済むものではない。

もし実際に配備するとなれば、日本のどこに配備するのかという問題が生じる。沖縄紙が報じたように、仮に沖縄が配備先となる場合、沖縄県民はただではすまないだろう。そもそも、日本に配備する場合、配備箇所が限定されすぎて、現実に役に立つのか疑問もある。いくら日本国内に米軍基地が山ほどあるとは言っても、実際に配備できる箇所は限られるだろうし、本土となった場合、地元の合意が得られる可能性は非常に低く、「岩国で勝手にやってくれ」と言われるのがオチだろう。
ただでさえ不安定な沖縄の世論に油を注いで火を付けるようなものだ。

それ以上に外交上の影響は大きく、すでにロシア側が激しく反発して、プーチン大統領が極東への中距離ミサイル配備の可能性を述べたように、今でも厳しい日露交渉は完全に頓挫するだろう。また、改善の兆しが見える対中関係も急悪化するなど、外交上の影響が大きすぎて、今ひとつリアリティが感じられない。

普通に考えるなら、米中露が互いにブラフの掛け合いをして、「どこまでならOKか」の探り合いをしているようなイメージなのだが、とはいえ、現実にアメリカ政府から提案、要求された場合、日本政府は断れないだろうから、中国政府が危惧するのもわからなくはない。

しかし、現実的に考えられるのは、ミサイル競争を生じさせることで、日本と中露の関係を緊張させた上で、USが日本政府にミサイル配備を要求、日本が穏便に済ませようとしたところ、「じゃあ、自衛隊が買って配備してくれ」と持って行くパターンだ。
商売という視点で見ると、この辺が現実的なのだが、ミリオタを喜ばせるだけになりそうだ。
今後も注視していきたい。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月20日

「思いやり予算」4倍増??

【米軍駐留経費、日本に4倍増の負担額を要求か…7月来日のボルトン氏】
 米誌フォーリン・ポリシー(電子版)は15日、米国のボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が7月に来日した際、在日米軍駐留経費の日本負担額を現行の4倍に増やすよう求めていたと報じた。
 トランプ大統領は、日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)加盟国など同盟国が、米軍駐留経費の負担額を増やすべきだと主張している。記事によると、ボルトン氏は日本の次に訪れた韓国では、米軍駐留経費の負担額を5倍に増やすよう要求したという。
 防衛省によると、在日米軍駐留経費の日本負担額は、2019年度予算の歳出ベースで1974億円に上る。駐留経費の負担に関する日米間の特別協定の期限は21年3月末に切れる。米政府内には日本に大幅な負担増を求めることに慎重な意見もある。
(11月16日、読売新聞)

米誌の報道というだけなので、確証は無いわけだが、出所が出所なだけに無根拠と放置するのも難しい。
実際、トランプ氏は大統領選挙の公約にもしていたくらいの話で、むしろ大統領が言い出すのを周囲が止めているくらいの感覚で見ておいた方が良い。

まず予備知識として入れておくべきは、概算で在日米軍の総経費(作戦費を含む)は約8千億円で、うち2千億円を日本が「思いやり予算」として出しているものの、残りの6千億円は米国が負担している。つまり、「在日米軍駐留経費の日本負担額を現行の4倍」というのは、「在日米軍の経費は全部日本が出せ」というものであり、米側の主張には一定の合理性がある。

こう言うと、「米軍基地はアメリカの国際戦略上不可欠のものであって、日本を守るためだけにあるわけじゃないだろ」と言い出すものがいるだろうし、日本政府もそう主張するだろう。

しかし、例えばNATOはその規約で加盟国に対して「GDP比2%」を自国の軍事費に充てるよう努力義務を課しているが、これを満たしているのは数カ国に過ぎず、逆にアメリカはGDPの3〜4%を軍事費に充てている。
これに対して、アメリカ議会などでは「連中は米軍を当てにして、本来自国防衛力の充実に充てるべき経費を自国の経済力強化に使っている」などとする「安保ただ乗り論」が根強く存在する。トランプ氏は、これまで表に出て来なかった「安保ただ乗り論」を堂々と公約に掲げ、大統領選に勝利したという点でも、これまでに無い大統領なのだ。

この「GDP比2%」を日本にあてた場合、あと5兆円からの防衛費増が不可避となる。中国の強大化と日露交渉の停滞を考えて、これらに対抗すると考えた場合、「GDP比4%」でも足りないくらいだろう。
トランプ氏の視点で言えば、日本は本来自分で出すべき防衛費をケチって、在日米軍に自国防衛を依存、駐留費の4分の1を出すのみで、「大きな顔しやがって」ということになる。
事実、沖縄の在日米軍は先に中国に沖縄を攻撃させて、アメリカに自動参戦させるための「罠」でもあり、日本にとっては2千億円はおろか、たとえ8千億円を支払っても、「おつりが来る」存在なのだ。だからこそ、米側は大きな顔をして要求できるのである。

これを日本政府が拒否した場合、今度は「じゃあ、もっと自衛隊を中東とアフリカに差し出せ」と言うだけの話であり、それをも拒否すれば「じゃあ、俺らはハワイに帰るから、後は自分でやってくれ」と言うだけの話だろう。
いずれにしても、アメリカにとって懐の痛む話では無い。そもそも米中の勢力が拮抗する2030年代半ばまでには、在日米軍の撤退は不可避となるだけに、「話が早いか遅いか」でしかないからだ。

日本政府はあれこれ理屈を付けて「引き延ばし」にかかると思われるが、トランプ氏には通用しないだろう。
ヤクニンどもと親米論者の反応を楽しませてもらうとしよう。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月08日

日露協商の目は失われた

【ロシアと中国、軍事同盟検討か】
 ロシアが中国に対し、ミサイル攻撃の早期警戒システムの構築を支援していることが判明、両国が事実上の軍事同盟締結を検討しているとの見方が強まっている。ロシアと中国を敵視する米国が中距離ミサイルのアジア配備を検討する中で、軍事協力強化を急ぐ。両国が同盟関係を結べば北東アジアで日米韓との対立が深まり、日本との関係にも影響が出るのは必至。日ロ平和条約交渉が一層難航するのは避けられない。
 中ロはこれまで「同盟関係」を否定している。しかし、中ロ関係に詳しいロシア国立高等経済学院のマスロフ教授によると、両国指導部は「軍事同盟締結」の方針を決定済みという。
(10月29日、共同通信)

中露同盟をもって日露協商の目は失われるだろう。
日本では報道されていないが、安倍首相は昨年十月の訪中時に中国側から日中協商を打診され、これを黙殺したという(香港メディア)。それ自体は「はい、わかりました」と言えるものではないが、中露同盟の成立という背景を考えれば、中国側の申し出を「無視」したことの意味は大きい。要は「ポツダム宣言の黙殺」と同様、敵対関係を選択したようなものだからだ。

ケン先生は中国に来てまだ一年ちょっとであるが、知日派中国人は概ね日本に対する理解が深く、権威主義的かつ右翼的(南京事件や東京裁判の否定など)な安倍政権に対しても好意的であると同時に、「日中連携こそが両国にとってプラスであり、敵対はマイナスでしかない」という認識を持っている。
だが、知日派以外になると、「日本何するものぞ」「しょせん前世紀の遺物」「衰退の一途を辿る旧帝国」といった意識を持つ者もおり、どうやらこうした層が少しずつ増えているようにも見える。
幸いにして、習近平政権は日本に対して比較的好意的であり、だからこそ裏で日中協商を持ちかけたものと見て良い。

これに対して、日本側は政府、政権党、世論のどのレベルで見ても、いまだに中国を下等視する向きが強い。
例えば、先の夏期休暇に際してケン先生は中国の政府関係者の依頼を受けて、自民党に交流の打診を行ったが、「全く興味ない」という身も蓋もない回答で中国側のメンツを丸潰しにしてしまった。
どこまでも愚かである。

確かに中国と直接連携するのは、日米安保の手前、まず無理なのはわかる。が、「そこはそれ」として裏で伏線を描くのが権力者の務めではないか。冷戦期のハンガリーや大戦期のイタリアを少しは見習っても良さそうなものだ。

現実に日中協商は難しいからこそ、安倍政権が始めたのが日露交渉だったわけだが、ケン先生はかねてより「時間が経つほど交渉は日本に不利になる」と主張していたが、まさにその通りになった。もともと日本は自国とアメリカの衰退もあって中露に「押し込まれる」側にあり、交渉に時間をかける余裕などなかったはずだが、歴史認識(ソ連による千島・南樺太の領有を認める)のような比較的妥協可能な要求すらのまずに強硬姿勢を貫いた結果だった。
まぁゲーム的には、アメリカの広告塔である外務省が万事について妨害する中で、「良くやった」とは言えるものの、敗北は敗北である。

今後、日本政府はさらに対米傾斜を深めていくことになるだろう。つまり、アメリカの対外戦争により積極的に参加し、貿易などの交渉もさらに妥協することになる蓋然性が高い。

【追記】
もっとも、この件について中国側は一切反応を示しておらず、「中露同盟」には触れないようにしている。報道も全くない。ロシアによるプロパガンダ的要素が強いことは確かなのだが、中国側が否定しないということは、黙認していると見て良いだろう。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月06日

「誇り持てる自衛隊」は適切か

【河野防衛相「誇り持てる自衛隊を作りたい」】
 河野太郎防衛相は28日、都内で開いた自身の政治資金パーティーで、甚大な被害をもたらした台風19号などの対応に当たる自衛隊員に対し「尊敬され、感謝され、彼らも誇りを持って『私は自衛隊の一員だ』といえるような防衛省・自衛隊を作っていきたい」と述べた。
 河野氏は「私は地元で雨男といわれ、防衛相になってすでに台風が3つ(来た)」と語った上で「そのたびに自衛隊員が出てくれている」と説明。「あらゆるところで自衛隊に頑張ってもらっている。隊員の処遇改善をきちんとやらなければならない」とした。
(10月28日、産経新聞)

自衛隊は今程度のスルー感でちょうどいいくらいじゃないかと。
そもそも「誇り持てる自衛隊」という感覚が、1960年〜80年代くらいの「制服を着て外には出られない」「子どもがいじめられる」などの時代感覚をそのまま残したものであり、若い人はそんな時代があったことすら知らないだろう。
変に誇りを持ちすぎると、「この地方人が!!」と市民に暴力を振るった戦時期みたいになってしまうし、市民が軍人に平伏する社会とか、どこの封建国家だよと。

戦前の日本でも大正軍縮の時代には、軍人が制服着て市電に乗っていると「この税金ドロボーが!」などと罵倒されたというが、その反動が「統帥権干犯」問題に発展し、さらには満州事変のような「じゃ、軍費は自分で稼いでやる!」的な行動に発展していったわけで、そもそも暴力装置なだけに過度に抑圧するのもまずい。

特に現代日本の場合、デモクラシーやリベラリズムが大した根拠の無いところに強制されて成立しているだけに、官僚も自衛隊員もイデオロギー教育がなされておらず、果たして自衛隊幹部がシヴィリアン・コントロールを理解しているかも怪しい。特に空自の教育内容は相当に怪しい感じだ。

歴史的にも自衛隊はもともと「米軍が来援するまで」の補助戦力として成立したものが、今では「基本的に自分のことは自分でやれ」と言われて、世界第6〜8位の軍事力を保有するに至っており、設立当初の理念が成立しがたくなっている側面もある。もちろん、憲法九条との齟齬もある。
それだけに、自衛隊の再定義は不可避となっているわけだが、どう再定義すべきかの議論は全く進まず、だからこそ「誇りの持てる」といった抽象的な議論が噴出し、一部のミリタリー・マニアを熱狂させてしまう事態が生じているのではないか。

河野大臣の発言は「シヴィリアンの代表者」のそれではなく、「自衛隊の代弁者」になってしまっているという点で危うさを覚える次第。
posted by ケン at 12:00| Comment(6) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月04日

公開した外交資料を非開示にして廃棄を進める外務省

【外務省、公開済み内容を「不開示」に 沖縄返還文書など】
 外務省が情報公開請求に対して不開示とした文書と同じ内容が、すでに公開されていることがわかった。朝日新聞が日米関連の文書の開示請求をしたが、安全保障などを理由に開示していなかった。公文書をめぐる問題が続く中、文書のずさんな扱いが情報公開範囲を不当に狭める実態が浮かび上がった。
 問題の文書の一つは、1968年7月15日付の「沖縄返還問題の進め方について」。72年に実現する沖縄返還に向け外務省の東郷文彦アメリカ局長が対米交渉方針を5枚にまとめ、作成当時は極秘とされた。
 朝日新聞は、70年前後の日米安保協議を検証するため当時の文書を2017年に情報公開法に基づき開示請求し、外務省が一部を開示。この文書が含まれていたが、表題がある1枚目を除きほぼ墨塗りがされた。
 外務省は30年経った文書の原則公開を規則で定めるが、この文書の不開示部分に関し、明かせば「国の安全が害される」「米国等との信頼関係を損なう」などのおそれがあると主張。朝日新聞が総務省の情報公開・個人情報保護審査会への審査を求めた結果、開示すべきだと判断され、外務省は今年8月に開示した。
 新たに開示された部分は、沖縄返還交渉の焦点だった緊急時の米側の核持ち込みをめぐる記述だった。朝日新聞が研究者に確認取材をしたところ、これと同じ内容の文書を外務省が10年から公開していることがわかった。民主党政権下であった過去の日米両政府間の密約調査を機に開示されたものだった。
(10月27日、朝日新聞)

「あれは民主党政権が勝手にやったことだから」といったん公開した資料を再び不開示にする外務省。
エリツィン政権が公開したソ連の資料を、プーチン政権が非開示にしてしまった事例とよく似ている。また同時に、沖縄密約の闇の深さと日本政府の後ろめたさを示している。
沖縄問題は明治帝政、戦後帝政のいずれにとっても深い闇を持つ。
明治帝政では、琉球王国の武力併合(同意無き併合)と清国との帰属問題。さらに大戦末期における「近衛和平案」(沖縄放棄はやむを得ないとした)。戦後帝政では、「ダレスの恫喝」に象徴される北方領土問題の起源となる日米関係、そして核密約と駐留米軍の問題がある。
個別に興味のある方は過去ログを読んでもらいたい。一部再掲しておこう。
第二次世界大戦以降については、カイロ会談の前後に蒋介石が、米ルーズベルト大統領から琉球・沖縄の帰属について相談を持ちかけられている。だが、中華民国政府・国民党内では議論が分かれ、「中米共同管理案」や「非軍事化を条件に日本帰属を認める」などの案が上がったものの、戦後の対日関係と対共産党戦など総合的に考えて、ルーズベルトの提案には乗らなかったようだ。この辺のことも未解明のことが多く、今後の研究に期待したい。
だが、国共内戦を経て国民党は後悔したらしく、1953年の奄美群島返還と同71年の沖縄返還に際して、国民党政府は抗議声明を出している。とはいえ、サンフランシスコ講和条約に参加しなかった(呼ばれなかった)同政府は、1952年に日華平和条約を締結するも、その際日本政府に沖縄帰属問題を持ち出すことはなかったため、「後の祭り」と化している。ただ、そうは言っても、中華民国政府が琉球の日本帰属を認めたことは一度も無い。そもそも、米国からして、日本に返還したのは沖縄の施政権のみであって、その帰属と領有権について正式に表明しているのか定かでは無い(少なくとも私は確認できなかった)。
また、中国共産党については、正式な文書で沖縄の帰属を確認したことはないものの、毛沢東が沖縄の日本帰属を認めた経緯もあって、現政府が急に沖縄の領有権を主張するということは無さそうだ。ただ、民間レベルでは、中台の関係が深まり、琉球帰属問題への意識が高まってくる可能性があり、そうなると日中関係次第でどちらに転ぶか分からない。
琉球帰属問題が表面化する日

(1945年)7月8日、東郷外相は軽井沢に滞在中の近衛元首相を訪ね、和平交渉の対ソ特使を依頼、内諾を取り付ける。9日には、昭和天皇が鈴木首相にソ連仲介による和平交渉の促進を督促。翌10日夜、最高戦争指導会議構成員会が開催され、「遣ソ使節派遣の件」が決定された。
12日には近衛が宮中に呼ばれ、天皇から直々に対ソ特使の要請がなされた。軍の反発を想定した鈴木首相と木戸内府による画策だった。
近衛はその日のうちに側近とも言える酒井鎬次中将を呼び出し、近衛を交えて数人で和平交渉案を作成した。交渉案は「要綱」と「解説」の二部からなり、前者は天皇に奏上して御璽を受け、後者は木戸の了解を得て印をもらう予定だった。

その和平案の条件は、第一に「国体の護持は絶対にして、一歩も譲らざること」とし、第二は「国土に就いては、なるべく他日の再起に便なることにつとむるも、やむを得ざれば固有本土を以て満足す」であった。
「解説」によれば、「国体の解釈については皇統を確保し天皇政治を行ふを主眼とす」とあり、但し最悪の場合は昭和帝の退位もやむを得ないとしながらも、それでも「自発の形式をと」るとした。
さらに領土について、「固有本土の解釈については、最下限沖縄、小笠原原島、樺太を捨て、千島は南半分を保有する程度とすること」と説明している。

この条件は、つまり天皇制と皇統の存続が認められない限り和平はあり得ず、本土決戦まで覚悟していたことと同時に、沖縄は日本の「固有本土」ではなく、和平条件として「捨て」うる存在であったことを意味している。
連合軍に占領された地域の返還を和平条件に入れることは、当事者の立場に立つならば現実的ではなかったのだろうが、少なくとも意識の上では沖縄は帝国の本土ではなく、あくまでも明治維新後の帝国主義戦争によって獲得した「帝国領外地」の一つに過ぎなかったことを示唆している。だからこそ和平条件の一つにすることができたのだ。
和平条件としての沖縄と「固有本土」

国民主権の憲法を否定し、米国が公開している50年以上前の情報を非開示し続ける外務省は、存在自体がデモクラシーとリベラリズムを否定するものであり、即刻廃止すべきである。

【参考】
琉球帰属問題が表面化する日
和平条件としての沖縄と「固有本土」
ダレスの呪縛
「核密約」をどう考えるか
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする