2017年11月09日

トランプ米大統領訪日の実態と実相

トランプ米大統領が11月5〜7日に来日、日米首脳の親密さを演出する様々なイベントが準備され、政府とメディアは大成果を喧伝している。だが、メディアはゴルフや会食やコイの餌やりの話を伝えるばかりで、実態はよく分からない。では、安倍総理はトランプ大統領とどれだけ話ができたのか、見てみよう。
【11月5日】
ハンバーガー・ランチを済ませた後、ゴルフ(計約3時間半)。
米大統領と安倍首相が夫妻でディナー(約1時間半)。

【11月5日】
日米主要幹部でランチ(約1時間)。
ランチ後、日米首脳会談(約30分)。
迎賓館で晩餐会(約2時間)。

要はまともに話をしたのは30分だけで、残りは会食とイベントだった。安倍氏は英語が話せず、100%通訳を介すため、実質的には15分であり、双方が話すのだから、安倍総理が自らの意思を伝えられたのは10分も無かったことを示している。だが、外務省などの発表ではこの30分間の中で「地域・国際情勢について議論されるとともに、経済についても議論されました」とある。恐らくは、官僚の作文を読んだだけのものだったのだろう。

ここで他国の首脳会談を見てみよう。本年5月にドイツのメルケル首相が訪露、ソチを訪れた際には、プーチン大統領と2時間半の会談を行っている。ましてメルケル氏はロシア語を、プーチン氏はドイツ語を理解する間柄である。
また、今年6月、中国の習近平主席が同じくロシアのプーチン大統領とカザフスタンのアスタナで会談した際には、1時間半の予定が3時間半にも延長されている。

以上から想像されるのは、訪日スケジュールが設定された段階で、「日米首脳間で詰めて話すような問題は無いから親密さを演出しよう」と考えられたか、「二人でまともに話をさせると、どんなボロが出るか分からないから、会談は最小限にしよう」とされたのかのいずれかだろう、ということだ。
ただ、「長時間の首脳会談を実現した場合、貿易・為替問題でトランプ大統領から強い要求がなされ、安倍総理が応じざるを得なくなる」という日本側の懸念は、状況証拠的にはありそうな話だ。結果、日本の外務省的には「トランプ・安倍の個人的親密を内外に喧伝できれば十分(不満は無い)」という判断だったと見られる。

では、内容的にはどうだろうか。外務省の発表(HP)を見てみよう。
まず、首脳会談の総論として次の合意がなされたとある。
両首脳は,日米両国が北朝鮮問題に関し100パーセント共にあること,日米同盟に基づくプレゼンスを基盤とする地域への米国のコミットメントは揺らぎないことを確認するとともに,核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を通じた日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて確認しました。

要は「北朝鮮は日米共通の脅威」「アメリカは極東から手を引かない」「日本はアメリカの核の傘の下にある」ということである。
ところが、会談後に行われた記者会見では、トランプ氏は北朝鮮問題には触れているものの、より多くの時間を日米貿易不均衡と軍需産品の売り込みに費やしている。
ここから推察されるのは、日米安保を維持する代償として、日本がより多くの経済的、軍事的な対米貢献を求められているということだ。それは、日本のさらなる重武装化を意味する。

各論で日本側(外務省)が最も強調しているのは、「対北圧力強化」と「自由で開かれたインド太平洋戦略」である。
「対北圧力強化」は、北朝鮮を暴発させて先制攻撃をさせることで、アメリカの軍事介入を実現させ、朝鮮半島に統一した親米政権を樹立することを目的としている。これは安倍氏の首相官邸では既定方針とされているようだ。

「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、中国の「一帯一路」(Land power)政策に対する、日本側のアンチテーゼ(Sea power)で太平洋地域からインド洋までの海上路をもって、中国の影響力を封じ込めようとする伝統的なタカ派の「力による大陸封鎖」路線である。
ところが、首脳会談後の記者会見でトランプ大統領はこの点に触れず、日本の記者も質問しないことに業を煮やしたNYタイムズ紙のランドラー記者は、
「この2日間で、大統領は日米同盟を再確認し、自由で開かれたインド太平洋地域の構想を描き始めました。しかし2日後には、自由でもなければ開かれてもいない中国を訪問します。そこで私が伺いたいのは、不可避とも思われる中国との紛争をせずに、いかに米国はこの地域で自由と開放を推進していくつもりでしょうか。」

と大統領に質問、ト氏は「私と習近平国家主席との関係もまた良好」としつつ、貿易摩擦と通商問題を触れるに止め、肝心の質問には何も答えなかった。つまり、実際には「日本側の希望は聞いてやった(だけ)」という感じだったことが想像される。
つまり、日本人は「先生、(中国さんを)やっちゃってください!」とトランプ氏の背中を必死に押そうとしているのだが、あまりにも意図がミエミエで、米国側としては「乗せられてたまるか、でも乗ったフリだけはしておこう」というところなのだろう。

本稿ではこれ以上の評価はしない。
posted by ケン at 12:15| Comment(5) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月06日

防衛費拡大へ

【GDP比2%防衛費「参考」 自民調査会が中間報告】
 自民党の安全保障調査会(会長・今津寛衆院議員)は20日、平成31年度から5年間の次期中期防衛力整備計画に向けた提言の中間報告をまとめた。北大西洋条約機構(NATO)加盟国が防衛関係費について国内総生産(GDP)比2%を目標としていることに関連し、「(NATOの目標を)参考にしつつ、厳しい安全保障環境を踏まえた上で、十分な規模を確保する」と明記した。日本の防衛関係費はGDP比1%程度にとどまっている。中間報告では増額の幅について「あくまで必要不可欠な装備の積み上げの結果に基づいて判断する」とした。調査会は当初、先の国会開会中に最終報告をまとめ、政府への提出を目指していた。しかし、宇宙やサイバー分野など議論を深める必要があると判断、来春まで検討を重ねて最終報告をまとめることにした。
(6月21日、産経新聞)

まぁこうなるわな、と。
安倍・自公政権が対中強硬路線を選択する以上、軍事費の肥大化は避けようが無い。現状、2016年の軍事費で中国が2152億ドルに対して、日本は461億ドルでしかなく、中国の戦力は全て太平洋に向けられているわけでは無いにせよ、確かに在日米軍の存在によって拮抗が保たれていると考えてもおかしくはない。単純比は21.4%である。
中国にロシアを加えれば2844億ドルとなり、比率は16%になってしまう。もっとも、ロシアの軍事力の大半は欧州方面に向けられている。とはいえ、安倍政権が必死に日露協商を志向するのは、対中強硬路線を採る上で「他に選択肢は無い」ためだ。
しかも、中国の経済力は成長が衰えたとは言え、年6〜7%もあるのに対し、日本は1%という有様で、彼我の戦力差が日に日に拡大するのは隠しようが無い。

従来の冷戦構造下では、日本と韓国と台湾が西側の最前線となっていたが、台湾は実質的に中国の影響圏入りを認め、韓国も抗戦意思を失って中国の影響圏入りを受容しつつある。彼我の国力差を考えれば、当然の選択だが、日本だけが徹底抗戦を試みようとしている。

とはいえ、中国は経済成長の赴くままで歳入も自動的に増え、特別な負担無くして軍事費を増やせる算段だが、ゼロ成長の日本の場合、軍事費を増やすためには増税するか、他の歳出を削減するほかない。
現状、日本の軍事費はGDPの1%、歳出の約5%であるが、これを2倍のGDPの2%にした場合、歳出の10%を占めることになる。だが、国債費と地方交付税交付金等を除いた政策的経費である一般歳出で見た場合、2017年度予算で8.7%に達しており、軍事費を2倍にすると単純計算で17.4%にもなる。そのしわ寄せは、自民党政権である以上は、大衆増税ないしは、社会保障費や教育費の削減に向けられることは間違いなく、今後国内の不穏はさらに高まってゆくものと思われる。

そう考えると、この間自公政権が、刑事訴訟法改正、通信傍受拡大、秘密保護法、共謀罪と治安法制を強化し続ける一方、公文書管理法や情報公開法の有名無実化を進めた理由が見えてこよう。
posted by ケン at 12:51| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月05日

領土交渉は粛々と、だが急ぎ足で

【第2次大戦の結果認めよ=平和条約交渉でロシア外相】
 ロシアのラブロフ外相は週刊紙「論拠と事実」とのインタビューで、北方領土問題を含む平和条約締結交渉について、「日本は第2次大戦の結果をはっきりと認めなければならない」と従来の主張を繰り返した。同紙が28日、インタビュー内容を報じた。ラブロフ氏は平和条約締結後の色丹島と歯舞群島の引き渡しをうたった1956年の日ソ共同宣言の有効性は認めた。しかし「日本は平和条約の締結を拒否し、(北方)4島について領有権の主張を試みた」と述べ、交渉が進展しなかった原因は日本にあると指摘した。ラブロフ氏は北方四島での共同経済活動について「集中的に作業している」と述べつつも、「事業の実現に当たってはロシアの法律に反してはならない」と強調した。 
(3月28日、時事通信)

北方領土問題については長いこと、何度も触れており、新事実や見解も無いので繰り返しになってしまう。同問題については、若干のニュアンスの違いはあるいしても、ロシア側の主張は一貫している。
1945年8月10日あるいは14日に日本政府が行ったのは「ポツダム宣言受諾表明」だが、これは軍の作戦行動を中止させる法的根拠にはならず、それは休戦条約の締結をもって保証される。せいぜいのところ、休戦協定の締結交渉中は作戦行動が自粛される程度の話だろう。その休戦条約の締結が、1945年9月2日に先送りされたため、それまでの間、ソ連軍の侵攻を止められなかっただけのことだった。ただ、歯舞と色丹は、休戦協定の成立後にソ連が占領しているだけに違法性が問われる。故にソ連は、1955年の日ソ共同宣言で二島の「引き渡し」を約束したのだ。
その日ソ共同宣言には、

【賠償・請求権の放棄】
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日(ソ連の対日参戦の日)以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。

とある。つまり、休戦条約が成立する前にソ連が占領した国後島と択捉島に対する請求権を、日本はすでに放棄しているわけで、北方四島を要求すること自体、本来は日ソ共同宣言(正規の条約)に違背しているのだ。
馬鹿というヤツがバカな話

北方領土に関する日本政府の主張は、
「サン・フランシスコ平和条約で我が国は、千島列島に対する領土権を放棄しているが、我が国固有の領土である北方領土はこの千島列島には含まれていない。」
(内閣府HP、外務省HP)

というもの。だが、日本政府が第二次世界大戦の終戦から平和条約交渉の頃までは、択捉や国後を千島と認識していた。ところが、「ダレスの恫喝」を経て、日ソ共同宣言の後に方針を転換して「北方4島は千島ではない」と強弁し始めた。
その動かぬ証拠として、1951年11月6日、参議院の「平和条約及び日米安全保障条約特別委員会」における楠見義男議員(緑風会)の質問に対する政府答弁がある。

草葉隆圓(外務次官):歯舞、色丹は千島列島にあらずという解釈を日本政府はとつている。これははつきりその態度で従来来ております。従つて千島列島という場合において国後、択捉が入るか入らんかという問題が御質問の中心だと思います。千島列島の中には歯舞、色丹は加えていない。そんならばほかのずつと二十五島でございますが、その他の島の中で、南千島は従来から安政條約以降において問題とならなかつたところである。即ち国後及び択捉の問題は国民的感情から申しますと、千島と違うという考え方を持つて行くことがむしろ国民的感情かも知れません。併し全体的な立場からすると、これはやつぱり千島としての解釈の下にこの解釈を下すのが妥当であります。

言い換えると、「択捉・国後は国民感情的には千島じゃない」かもしれないが、従来の政府見解や地理学上の通説から判断すると、「千島じゃない」と強弁するには無理がある、ということなのだ。

戦後の日本が独立すらままならないギリギリの状態の中で、当時の政府が、「歯舞、色丹だけでも返還されれば御の字」と考えていたことが(痛いほど)分かる。
質問した両者は、ともに農水畑の議員で、根室近海の漁業従事者にとって、歯舞と色丹の返還、そして日ソ漁業協定の締結は、火急の問題だった。
それは、日ソ共同宣言となって具現化されるが、その頃には、米ソ対立が決定的となり、アイゼンハワー政権のダレス国務長官が、重光葵外相に対して、「日本が、二島返還でソ連と妥結した場合、沖縄は返還しない」と圧力を加えるに至った。
米帝に恐れをなした日本外務省が考えついた言葉が「北方領土」だった。
(「ダレスの呪縛」戦闘教師ケン)

日ソ共同宣言の北方領土に関する部分(平和条約締結後に二島引き渡し)を反故にした日本政府は、米帝からの圧力に屈したことを隠すと同時に、自らの立場を正当化するために、「ソ連・ロシアによる不法占拠」「四島返還後(潜在主権の確認)に平和条約締結」などと主張し、「北方領土返還運動」なるプロパガンダを始めた。そのプロパガンダには50年を経た今日でも毎年10億円以上もの予算がつぎ込まれ、それが利権化、「北方領土マフィア」を形成している。
官製絵はがきに見る政府の欺瞞) 

つまり、ロシア側の主張は日ソ共同宣言から何も変わっていない。ただ、ソ連崩壊から新生ロシア勃興期の混乱の最中に力技で「買い取る」チャンスがあったものの、日本側の強欲と吝嗇がその機会を逃してしまった。
今となってはその目は完全に失われ、宗主国アメリカとともに衰退期に入った日本は今後外交交渉力を低下させてゆくことが確実な情勢にある。一方で、日本は中国、北朝鮮、韓国と敵対的あるいは非友好的な関係にあり、日本国内でもタカ派路線が支持される傾向にあるだけに、今後も外交関係が改善される見込みは無い。結果、極東地域で日本は孤立状態にある。
他方、ロシアにしてみれば、直接的には最大の脅威はNATOであるが、潜在的には中国こそが最も危険な対手であるだけに、可能な限り日本とは友好関係を築いて、対中カードにしたいところだ。だが、それもプーチン大統領の意向に依存しているところが大きく、仮にメドヴェージェフ前大統領のような親中派が再び大統領になった場合、どうなるか分からない。

それだけに、プーチン氏が大統領である間に、領土紛争を解消し、早急に平和友好条約を締結することが不可欠であろう。今も昔もそうだが、北方領土問題とは日本の国内問題なのだ。

【参考】
・プーチン氏訪日首脳会談を評価する 
・北方領土マフィアなるもの 
posted by ケン at 12:24| Comment(7) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月17日

テロ戦争と無人機の実像

【無人機攻撃「成人男性」なら戦闘員と見なす?】
 オバマ大統領1期目の就任直後の09年1月、初の無人機攻撃で少なくとも9人のパキスタン市民が殺害された。調査報道協会(本拠ロンドン)が先週発表した報告では、それから5年間に世界で行われた無人機作戦で2400人が死亡。うち少なくとも273人は民間人だ。「パキスタンやイエメン、ソマリアで、オバマ政権は5年間に390回以上の無人機攻撃を実施した。ブッシュ前政権の8倍だ」と報告にはある。
 ブッシュ政権とオバマ政権初期には、無人機の主な標的はパキスタンのイスラム武装勢力だった。11年初めに、アルカイダ系テロ組織が活動を活発化させるイエメンに作戦は広がった。ケリー米国務長官は昨年8月、パキスタンでの無人機攻撃を早急に終わらせると約束した。
 標的を定めた無人機攻撃が合法かどうかは非常に曖昧だ。国家主権、戦争規則、国際条約や国内法がいろいろと絡んでくる。アメリカの無人機作戦の合法性を判断しようとする機関や組織もまだ現れていない。それでも米自由人権協会(ACLU)など国内の団体が、無人機作戦に関わった米当局者を相手に訴訟を起こす動きがある。
 攻撃前に標的が特定されているケースもあるが、CIAはパキスタンやイエメン、ソマリアなどで「連座」方式を採用している、とかつてオバマの対テロ政策顧問を務めたマイケル・ボイルは言う。兵士になり得る男性はすべてアメリカの敵と見なす、つまり作戦の犠牲者が成人男性なら「戦闘員」として処理される。これでは罪のない人が殺されてもどうにもできない。
 イギリスでは先週、米無人機攻撃で父親を殺害されたパキスタン人男性が、作戦に関与したとして英諜報機関を訴えた裁判があった。しかし外国の行動を裁くのは難しいという理由で、原告の訴えは退けられた。
 男性を支援する人権団体リプリーブのカット・クレイグは、この結果を強く非難する。「同盟国アメリカと一緒なら、イギリス政府は殺人を犯しても許されるようだ」
(2014.02.05. Newsweek日本版)

3年前の記事だが、日本ではまず報道されないので紹介しておきたい。
『ドローン・オブ・ウォー』や『アイ・イン・ザ・スカイ』で映画化されて少しずつ認知されているようだが、一般的にはまだまだ知られていない無人機による現代戦の実相。

無人機による攻撃はすでに米ブッシュ政権時には常態化していたが、オバマ政権は実戦力から無人機へのシフトを進め、多用していた。確かに数字上の戦果は上がったかもしれないが、『アイ・イン・ザ・スカイ』を見れば分かるように、アフリカや中東の市街地に突然米軍のミサイルが撃ち込まれるのだから、殺害した「テロリスト」の数以上に新たな敵が生まれ、米欧に対する不支持、憎悪が高まり、拡散している。同時に、自国民に対する軍事攻撃を容認する自国政府に対する不信が増大、むしろ不安定化を促進している側面もある。
中東やアフリカでは、無通告で普通の市民が「テロリスト」として殺害されているのに対し、それを実行した米欧の軍人は表彰されこそすれど、殺人として訴追されることは決して無い。「これはテロ戦争であり、殺されたものは全てテロリスト」というのは、欧米側の一方的な主張に過ぎず、これは言うなれば「国家が逮捕したものは全て犯罪者」と言うのに等しい。

もう一つの問題は、将来、ロシアや中国、あるいは日本などが無人機攻撃を始め、国内の「テロリスト」や「分離主義者」に対する無差別攻撃を行った場合、誰もこれを非難する術を持たないということである。
日本の自衛隊が、沖縄の反基地運動家や独立運動家に対し、問答無用でヘルファイアを撃ち込む可能性は、「現状は無い」というだけで、将来的には十二分にあり得るだろう。中国におけるウイグル、ロシアにおけるチェチェンは言うまでも無い。
これらに対し、米欧が非難できない状況は、自分たちが唱えてきた「正義」(自由や人道主義)を否定するものでしかなく、リベラリズムとヒューマニズムの没落は避けられそうに無い。かつて、盧溝橋事件が日中全面戦争に発展する勢いにあった際、参謀本部作戦部長の石原莞爾が、対中強硬派で同課長だった武藤章をたしなめたところ、「自分は閣下の行動(満州事変)を見習ったまでであります!」と不貞不貞しく言い返されて、二の句をつげなかったという故事があるが、いまや米欧がそれを言われる立場にある。
つまり、米欧諸国は軍事の効率化を図るあまり、自分たちの金科玉条を否定するという、長期的不利益を自ら進んで受容している。

21世紀は「そういう」時代であることを、我々は認識しておく必要がある。
posted by ケン at 12:25| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月30日

自由主義外交を放棄する日本

【対中国「もっと強硬に」55% 本社世論調査】
 日本経済新聞社の世論調査で、中国やロシアとの首脳会談を控える安倍晋三首相の外交姿勢について聞いた。中国公船の相次ぐ領海侵入を踏まえ、中国に「もっと強い姿勢で臨むべきだ」が55%に上った。韓国ソウルの日本大使館前の少女像移転が進まない中、元慰安婦支援を決めたことには異論がくすぶる。秋の安倍外交は国内世論をにらみながらのかじ取りになる。
(2016/8/28 日本経済新聞抜粋)

韓国釜山領事館前の少女像設置に対する駐韓日本大使の本国召還に対する支持は74%に及ぶという。
フィリピンでは、麻薬マフィアや反政府運動家(テロリスト)に対する無法な殺害が続いているが、そのフィリピンに対し、安倍政権はミサイルの供与や旧式武器の無償提供
を申し出ている。
また、国内で様々な人権問題が取り沙汰されているトルコとは原子力協定を結び、同じく国内外の行動で人道上の疑義が呈せられているロシアにも超接近を試みている。

これらは中国、朝鮮、韓国を一つのブロックと考え、これを包囲して封じ込めようとする冷戦期に似た思考、戦略に基づいているが、冷戦期と異なるのは、封じ込め戦略が優先されるため、自由や民主主義といったイデオロギーの前提を排除することを躊躇しないスタンスにある。
例えばトルコは、一時期は議院内閣制で政治体制的にモデル国とすら言えたものが、自ら首相位を廃し、象徴でしか無かった大統領に全権を委任しつつある。先のクーデター未遂事件に起因する粛清では、法律に基づかない捜査や裁きが横行しているとされる。

「理想よりも実利」と言えば聞こえが良いが、現実には日本自身が民主主義から距離を置き、権威主義に傾きつつある。
安倍政権は、中国ブロックと全面対峙し、権威主義国と連携強化を図りつつ、自国軍事権の拡大(海外展開のフリーハンド化)に努めている。国内政策では、秘密保護法、盗聴・監視の大幅強化、教育(思想)の中央統制、メディア統制、犯罪を検討しただけで検挙できる予備(共謀)罪の創設が進められている。
列挙してみると、昭和初期の日本と大差ないレベルでリベラリズムの放棄が進んでいることが分かる。にもかかわらず、国内の支持率は7割に達しようというレベルにある。

あとは一度傾き始めた傾斜がどこまで行くのかという話で、どこかのタイミングで戦争や大規模テロが起きた場合、それを理由にして戦時体制に移行、自由や民主主義など跡形も無く消去されるかもしれない。日本にしてもドイツにしても、1930年の段階で数年後に自国がファッショとミリタリズムに染まると考えていたものなど殆どいなかったのだから。
posted by ケン at 13:08| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月24日

そもそも島嶼は適用外デス

【尖閣へ安保条約適用、継承を=菅官房長官】
 菅義偉官房長官は12日午前の記者会見で、次期米国務長官に指名されたティラーソン氏が上院外交委員会公聴会で、沖縄県・尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象との認識を示したことに関し、「米国とは累次の機会に尖閣諸島はわが国の施政下にあり、日米安保条約5条が適用されることを確認している。次期国務長官にもこうした立場を取ってほしいとの思いだ」と述べた。 
(1月12日、時事通信)

相変わらず役にも立たないことを言っているが、まぁ国内向けのプロパガンダなのだろう。こんなものを垂れ流すマスコミだから「マスゴミ」呼ばわりされるのだ。米国側が「尖閣は安保の適用内」と言おうが言うまいが、全く意味が無い。一応説明しておこう。
まず日米防衛ガイドラインから。
2.日本に対する武力攻撃が発生した場合
b.作戦構想
C.陸上攻撃に対処するための作戦

自衛隊及び米軍は、日本に対する陸上攻撃に対処するため、陸、海、空又は水陸両用部隊を用いて、共同作戦を実施する。

自衛隊は、島嶼に対するものを含む陸上攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する。必要が生じた場合、自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する。このため、自衛隊は、着上陸侵攻を阻止し排除するための作戦、水陸両用作戦及び迅速な部隊展開を含むが、これに限られない必要な行動をとる。

自衛隊はまた、関係機関と協力しつつ、潜入を伴うものを含め、日本における特殊作戦部隊による攻撃等の不正規型の攻撃を主体的に撃破する。

米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

つまり、島嶼防衛についてはあくまでも自衛隊が担うものであり、米軍は自衛隊の作戦を「支援」するだけでしかないことが明確に規定されている。
そして、日米安保第5条。
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

このキモは「日本の施政権下にある領域」にある。北方四島に対して日米安保が適用されないのは、「施政権下に無い」からで、このことは従来政府も認めている。
問題は、島嶼の場合、敵国が占領してしまった場合、一時的であれ日本は施政権を失ってしまうため、「施政権下にある領域」でなくなってしまう点にある。少なくとも、米国側はそういう主張ができるので、仮に尖閣が他国に占領された場合、米政府が手のひらを返して「もうそこは日本の施政権下に無いから安保の適用外」と主張を一変させたところで、日本政府としては返す言葉も無い。

いずれにせよアメリカがアジアから手を引くのは時間の問題ではあるものの、当面は日本人をあやしてなだめすかして時間を稼ぐために「尖閣は安保の適用対象」と言っておく可能性が高いものの、あくまでもリップサービスであり、中身的には意味が無い。
posted by ケン at 12:46| Comment(10) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月23日

米国が入国者にSNSアカウントの登録を要求

【アメリカ政府が日本人旅行者に「FacebookやTwitterの報告要求」を開始 / ESTAで個人SNSを登録】
 アメリカ国土安全保障省は、日本人を含むESTA(電子渡航認証システム)登録が必要な外国人旅行者に対し、FacebookやTwitter、YouTubeなどの個人SNSの報告要求を開始した。ESTAとは、アメリカ国内に渡航する際、一般の日本人は必ず事前登録しなくてはならない渡航登録システムだ。いままでは名前や住所、国籍などの個人情報を登録すればよかったが、それに追加してFacebookやTwitterなどのSNSのアカウント報告を求められるようになったのだ。ESTAのプルダウンメニューで選択可能なSNSサービスは以下のとおり(引用者により略)。SNSサービスが選択肢にない場合は「Other」を選択してタイピングで記入する。
「オンラインサービスを利用する際、どのプラットフォーム、アプリケーション、ウェブサイトを使用して協働、情報の共有、他者との交流を行っているか、またその際使用しているアカウントのユーザーネームを入力してください」
SNSの報告は、犯罪にかかわる人物や、テロリストと関連の可能性がある人物を特定(またはターゲッティング)するためと考えられている。この案が浮上した際は、消費者保護派から強い反発があったものの、2016年12月、ESTAにSNSの報告プルダウンメニューが実装されるに至った。このSNSの報告要求は強制的ではなく、無視してESTA登録を進めることができる。よってFacebookやTwitterアカウントがあることを隠すこともできるが、その場合は「しっかりSNS登録した旅行者」よりも入国時に念入りに調べられる可能性(リスク)があるので、「SNSを教えるなんて嫌!」という人は、そのあたりのリスクを考える必要がありそうだ。
(1月6日、Buzz Plus News)

以前から可能性が指摘されていたことだが、いよいよ実現したようだ。記事にあるように登録は義務では無いものの、登録しなかったことで不審者と見なされる恐れがある以上、「任意の形式を取った強制」になっている。日本の警察が、「黙秘するのはいいけど、何度でも再逮捕して永遠に拘束するから」と言うのに近い。まぁ入国者に限った話なので、アメリカに行かなければ良い話だが、今後はこの手の「強制登録」が拡散・普及してゆく可能性が高い。

米国はすでに全世界のSNSを監視するシステムを導入しているはずだが、わざわざ入国者に登録を求めるのは、後から「登録していなかった」と責める根拠にすると同時に、登録者の交友関係を探ることでテロ組織や反政府組織との繋がりを予め把握したいがためと考えられる。いまや「SNS監視システム」は、「協力者不要のシュタージ」と化している。
これは、日本政府にとっても有益であり、公安関係者からすれば心の底から欲するものであるだけに、「マイナンバーの登録」と同様に、何らかの手段で登録を促し、収集し始めるものと見られる。対テロ戦争の主役であるアメリカと異なり、日本はジハーディストと直接敵対しているわけではなく、その監視対象は自然、国内の不満分子に向けられる。

今後は当局の監視を免れる「地下ネット」の需要が高まりそうだ。特に、量子通信による秘匿性の高いネットワークをめぐって、個人の自由と交響の治安を優先する当局の争いが本格化するだろう。まさにSFの世界である。
posted by ケン at 12:33| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする