2018年01月05日

日本政府曰く、北は崩壊寸前

対北船舶検査で米「圧力を強化」
 マティス米国防長官は29日、米国防総省で記者団に対し、北朝鮮船舶による公海上での石油密輸が問題視されていることに関し、国連安全保障理事会による北朝鮮制裁決議で密輸に関与した疑いのある船舶への検査が加盟国に義務付けられたことなどを受け、「北朝鮮への圧力はさらに強化される」と述べた。米軍として今後、船舶検査を実施するかどうかについては明言しなかった。また、北朝鮮が要求している米韓合同軍事演習や日米合同訓練の一時停止に応じることはないとした。
(12月31日、産経新聞)

官邸に近い人は、経済制裁の効果は上々で北は早々に根を上げるだろうなどと言うのだが、どうにも自分が得ている情報と話が違いすぎる。
まず仮想通貨で決済するご時世に、既存の口座凍結など役に立たない。また取引する企業もペーパー化、仮想化されているので、2年前の情報で制裁対象にされた企業などは、制裁発動時にはすでに存在しないことが多いという。北ではすでに国民の2割前後がスマホを携帯し、国内専用イントラネットやネット通販網まで整備されているとも聞く。日本政府の認識は、「国民政府は一撃加えれば必ず降伏する」と考えていた1937年頃のそれから全く進歩していない。官邸が率先して戦争をやりたがっているところも同じ。
それに乗っかるマスゴミも同罪。まぁ中国崩壊論や韓国崩壊論も、十年以上延々と言われているし(爆)

あ〜早く逃げたい〜
posted by ケン at 00:00| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月25日

対中宥和へ転換か?

【自公幹事長が中国入り=二階氏「大事な時期、目的果たす」】
 自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長は24日午後、成田空港発の全日空機で中国・福建省入りした。25、26両日に同省アモイと福州で開かれる第7回日中与党交流協議会に出席する。27〜29日には北京に滞在。習近平国家主席ら要人との会談を調整している。出発に先立ち、二階氏は成田空港で記者団に「大事な国だし大事な時期でもあるから、しっかりと目的を果たしていきたい」と述べ、日中関係の改善推進に意欲を示した。中国も賛成して採択された国連安全保障理事会での新たな北朝鮮制裁決議については「極めて当然だ。どう平和を維持していくか率直な意見交換をしたい」と語った。 
(12月24日、時事通信)

二階幹事長はもともと中国利権の元締めで、日中友好議連のような正統派とは異なる系統の親中派首魁なので、同じく親中派のKM党とともに訪中することは普通の光景と言える。
だが、先だって安倍総理は中国の「一帯一路」政策への協力を進める意向を表明したが、これは6月に「協力を検討」から一歩進めたものとなっている。
また、先週には外務省が、1986年に中曽根総理が中国の胡耀邦総書記と会談した際の記録文書を公開したが、これも「中曽根先輩のような右派政権でも日中関係を重視した」ことをアピールする目的があったと想像される。

さらに言えば、先週末に発表された来年度予算案における外務省の「インド太平洋戦略」関連予算は300億円でしかなかった。対中包囲網の要となる最重要政策だったはずだが、中国の「一帯一路」への対抗策としては、いかにもショボ過ぎるだろう。
まぁ外務省は欲張りすぎて色々要求しすぎたからと言えなくも無いが。

これらが一つか二つなら「偶然」で片付けられようが、これだけ重なるということは、何らかの政策転換、具体的には日米同盟一本槍路線、あるいは対中強硬路線からの脱却の可能性を考えて良さそうだ。
posted by ケン at 12:16| Comment(3) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月18日

慰安婦問題で孤立する日本

【マニラに慰安婦像…日本政府は「遺憾」伝える】
 フィリピンの首都マニラに、慰安婦を象徴するフィリピン人女性の像が設置された。 同国での慰安婦像の設置は初めてとみられる。在マニラ日本大使館は比政府に対し、遺憾の意を伝えた。中国国営新華社通信(英語版)によると、像は高さ約2メートルで、フィリピン伝統のガウン姿の女性が目隠しされ、悲しげな表情を浮かべている。在マニラ日本大使館から数キロ離れた官公庁や高級ホテルが多い、マニラ湾に面したロハス大通り沿いの遊歩道に設置され、8日に除幕式が行われた。碑文には、「1942年から45年の日本軍占領下で虐待の被害者となったフィリピン女性を思い出すための記念像」などとタガログ語で書かれている。設置したのは、政府機関「フィリピン国家歴史委員会」と現地の元慰安婦による団体という。
(12月12日、読売新聞)

日本政府や自治体が騒げば騒ぐほど「像」が増えてゆく悪循環にある。
当然だろう。加害者は自らの行為をすぐ忘れるが、被害者はまず忘れないからだ。
彼らからすれば日本側の反応を見れば、「日本人は戦争犯罪を否定する傾向を強めている」と危機感を抱かせるに十分であり、「戦争責任と犯罪行為を風化させてはならない」とむしろ強調する方向に力学が働くのだ。ここで日本側が批判を強めれば、彼ら的には「やっぱりそうだ。さらに対策を強化しよう」ということにしかならない。

特にマニラの場合、慰安婦とは別に1945年の「ベイビューホテル事件」に象徴される集団暴行(強姦)事件や、撤退に伴う大量破壊、大量虐殺事件が発生しているが、そのどれもが未だ十分に真相が判明していない。つまり、日本側は特に謝罪もしていなければ、補償もしていない。

大阪市や日本政府が慰安婦像に対して過剰な反応をするのは、軍部隊に設置された慰安所を「民間業者が勝手にやったこと」「合法的な商行為だった」という認識に立っていることに起因しているが、その認識が被害者・被害国の逆鱗に触れていることには、何とも思わないらしい。
そもそも慰安所自体が、軍民協同による組織的な性暴力システムであり、少なくとも現代の倫理観や人道精神からは決して許されるべきものではないにもかかわらず、「当時は当たり前だったから仕方ない」と強弁する日本側の姿勢が、ますます被害者を刺激しているのだ。

これではますます国際孤児になるばかりだろう。
posted by ケン at 12:53| Comment(3) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月09日

トランプ米大統領訪日の実態と実相

トランプ米大統領が11月5〜7日に来日、日米首脳の親密さを演出する様々なイベントが準備され、政府とメディアは大成果を喧伝している。だが、メディアはゴルフや会食やコイの餌やりの話を伝えるばかりで、実態はよく分からない。では、安倍総理はトランプ大統領とどれだけ話ができたのか、見てみよう。
【11月5日】
ハンバーガー・ランチを済ませた後、ゴルフ(計約3時間半)。
米大統領と安倍首相が夫妻でディナー(約1時間半)。

【11月5日】
日米主要幹部でランチ(約1時間)。
ランチ後、日米首脳会談(約30分)。
迎賓館で晩餐会(約2時間)。

要はまともに話をしたのは30分だけで、残りは会食とイベントだった。安倍氏は英語が話せず、100%通訳を介すため、実質的には15分であり、双方が話すのだから、安倍総理が自らの意思を伝えられたのは10分も無かったことを示している。だが、外務省などの発表ではこの30分間の中で「地域・国際情勢について議論されるとともに、経済についても議論されました」とある。恐らくは、官僚の作文を読んだだけのものだったのだろう。

ここで他国の首脳会談を見てみよう。本年5月にドイツのメルケル首相が訪露、ソチを訪れた際には、プーチン大統領と2時間半の会談を行っている。ましてメルケル氏はロシア語を、プーチン氏はドイツ語を理解する間柄である。
また、今年6月、中国の習近平主席が同じくロシアのプーチン大統領とカザフスタンのアスタナで会談した際には、1時間半の予定が3時間半にも延長されている。

以上から想像されるのは、訪日スケジュールが設定された段階で、「日米首脳間で詰めて話すような問題は無いから親密さを演出しよう」と考えられたか、「二人でまともに話をさせると、どんなボロが出るか分からないから、会談は最小限にしよう」とされたのかのいずれかだろう、ということだ。
ただ、「長時間の首脳会談を実現した場合、貿易・為替問題でトランプ大統領から強い要求がなされ、安倍総理が応じざるを得なくなる」という日本側の懸念は、状況証拠的にはありそうな話だ。結果、日本の外務省的には「トランプ・安倍の個人的親密を内外に喧伝できれば十分(不満は無い)」という判断だったと見られる。

では、内容的にはどうだろうか。外務省の発表(HP)を見てみよう。
まず、首脳会談の総論として次の合意がなされたとある。
両首脳は,日米両国が北朝鮮問題に関し100パーセント共にあること,日米同盟に基づくプレゼンスを基盤とする地域への米国のコミットメントは揺らぎないことを確認するとともに,核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を通じた日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて確認しました。

要は「北朝鮮は日米共通の脅威」「アメリカは極東から手を引かない」「日本はアメリカの核の傘の下にある」ということである。
ところが、会談後に行われた記者会見では、トランプ氏は北朝鮮問題には触れているものの、より多くの時間を日米貿易不均衡と軍需産品の売り込みに費やしている。
ここから推察されるのは、日米安保を維持する代償として、日本がより多くの経済的、軍事的な対米貢献を求められているということだ。それは、日本のさらなる重武装化を意味する。

各論で日本側(外務省)が最も強調しているのは、「対北圧力強化」と「自由で開かれたインド太平洋戦略」である。
「対北圧力強化」は、北朝鮮を暴発させて先制攻撃をさせることで、アメリカの軍事介入を実現させ、朝鮮半島に統一した親米政権を樹立することを目的としている。これは安倍氏の首相官邸では既定方針とされているようだ。

「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、中国の「一帯一路」(Land power)政策に対する、日本側のアンチテーゼ(Sea power)で太平洋地域からインド洋までの海上路をもって、中国の影響力を封じ込めようとする伝統的なタカ派の「力による大陸封鎖」路線である。
ところが、首脳会談後の記者会見でトランプ大統領はこの点に触れず、日本の記者も質問しないことに業を煮やしたNYタイムズ紙のランドラー記者は、
「この2日間で、大統領は日米同盟を再確認し、自由で開かれたインド太平洋地域の構想を描き始めました。しかし2日後には、自由でもなければ開かれてもいない中国を訪問します。そこで私が伺いたいのは、不可避とも思われる中国との紛争をせずに、いかに米国はこの地域で自由と開放を推進していくつもりでしょうか。」

と大統領に質問、ト氏は「私と習近平国家主席との関係もまた良好」としつつ、貿易摩擦と通商問題を触れるに止め、肝心の質問には何も答えなかった。つまり、実際には「日本側の希望は聞いてやった(だけ)」という感じだったことが想像される。
つまり、日本人は「先生、(中国さんを)やっちゃってください!」とトランプ氏の背中を必死に押そうとしているのだが、あまりにも意図がミエミエで、米国側としては「乗せられてたまるか、でも乗ったフリだけはしておこう」というところなのだろう。

本稿ではこれ以上の評価はしない。
posted by ケン at 12:15| Comment(5) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月06日

防衛費拡大へ

【GDP比2%防衛費「参考」 自民調査会が中間報告】
 自民党の安全保障調査会(会長・今津寛衆院議員)は20日、平成31年度から5年間の次期中期防衛力整備計画に向けた提言の中間報告をまとめた。北大西洋条約機構(NATO)加盟国が防衛関係費について国内総生産(GDP)比2%を目標としていることに関連し、「(NATOの目標を)参考にしつつ、厳しい安全保障環境を踏まえた上で、十分な規模を確保する」と明記した。日本の防衛関係費はGDP比1%程度にとどまっている。中間報告では増額の幅について「あくまで必要不可欠な装備の積み上げの結果に基づいて判断する」とした。調査会は当初、先の国会開会中に最終報告をまとめ、政府への提出を目指していた。しかし、宇宙やサイバー分野など議論を深める必要があると判断、来春まで検討を重ねて最終報告をまとめることにした。
(6月21日、産経新聞)

まぁこうなるわな、と。
安倍・自公政権が対中強硬路線を選択する以上、軍事費の肥大化は避けようが無い。現状、2016年の軍事費で中国が2152億ドルに対して、日本は461億ドルでしかなく、中国の戦力は全て太平洋に向けられているわけでは無いにせよ、確かに在日米軍の存在によって拮抗が保たれていると考えてもおかしくはない。単純比は21.4%である。
中国にロシアを加えれば2844億ドルとなり、比率は16%になってしまう。もっとも、ロシアの軍事力の大半は欧州方面に向けられている。とはいえ、安倍政権が必死に日露協商を志向するのは、対中強硬路線を採る上で「他に選択肢は無い」ためだ。
しかも、中国の経済力は成長が衰えたとは言え、年6〜7%もあるのに対し、日本は1%という有様で、彼我の戦力差が日に日に拡大するのは隠しようが無い。

従来の冷戦構造下では、日本と韓国と台湾が西側の最前線となっていたが、台湾は実質的に中国の影響圏入りを認め、韓国も抗戦意思を失って中国の影響圏入りを受容しつつある。彼我の国力差を考えれば、当然の選択だが、日本だけが徹底抗戦を試みようとしている。

とはいえ、中国は経済成長の赴くままで歳入も自動的に増え、特別な負担無くして軍事費を増やせる算段だが、ゼロ成長の日本の場合、軍事費を増やすためには増税するか、他の歳出を削減するほかない。
現状、日本の軍事費はGDPの1%、歳出の約5%であるが、これを2倍のGDPの2%にした場合、歳出の10%を占めることになる。だが、国債費と地方交付税交付金等を除いた政策的経費である一般歳出で見た場合、2017年度予算で8.7%に達しており、軍事費を2倍にすると単純計算で17.4%にもなる。そのしわ寄せは、自民党政権である以上は、大衆増税ないしは、社会保障費や教育費の削減に向けられることは間違いなく、今後国内の不穏はさらに高まってゆくものと思われる。

そう考えると、この間自公政権が、刑事訴訟法改正、通信傍受拡大、秘密保護法、共謀罪と治安法制を強化し続ける一方、公文書管理法や情報公開法の有名無実化を進めた理由が見えてこよう。
posted by ケン at 12:51| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月05日

領土交渉は粛々と、だが急ぎ足で

【第2次大戦の結果認めよ=平和条約交渉でロシア外相】
 ロシアのラブロフ外相は週刊紙「論拠と事実」とのインタビューで、北方領土問題を含む平和条約締結交渉について、「日本は第2次大戦の結果をはっきりと認めなければならない」と従来の主張を繰り返した。同紙が28日、インタビュー内容を報じた。ラブロフ氏は平和条約締結後の色丹島と歯舞群島の引き渡しをうたった1956年の日ソ共同宣言の有効性は認めた。しかし「日本は平和条約の締結を拒否し、(北方)4島について領有権の主張を試みた」と述べ、交渉が進展しなかった原因は日本にあると指摘した。ラブロフ氏は北方四島での共同経済活動について「集中的に作業している」と述べつつも、「事業の実現に当たってはロシアの法律に反してはならない」と強調した。 
(3月28日、時事通信)

北方領土問題については長いこと、何度も触れており、新事実や見解も無いので繰り返しになってしまう。同問題については、若干のニュアンスの違いはあるいしても、ロシア側の主張は一貫している。
1945年8月10日あるいは14日に日本政府が行ったのは「ポツダム宣言受諾表明」だが、これは軍の作戦行動を中止させる法的根拠にはならず、それは休戦条約の締結をもって保証される。せいぜいのところ、休戦協定の締結交渉中は作戦行動が自粛される程度の話だろう。その休戦条約の締結が、1945年9月2日に先送りされたため、それまでの間、ソ連軍の侵攻を止められなかっただけのことだった。ただ、歯舞と色丹は、休戦協定の成立後にソ連が占領しているだけに違法性が問われる。故にソ連は、1955年の日ソ共同宣言で二島の「引き渡し」を約束したのだ。
その日ソ共同宣言には、

【賠償・請求権の放棄】
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日(ソ連の対日参戦の日)以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。

とある。つまり、休戦条約が成立する前にソ連が占領した国後島と択捉島に対する請求権を、日本はすでに放棄しているわけで、北方四島を要求すること自体、本来は日ソ共同宣言(正規の条約)に違背しているのだ。
馬鹿というヤツがバカな話

北方領土に関する日本政府の主張は、
「サン・フランシスコ平和条約で我が国は、千島列島に対する領土権を放棄しているが、我が国固有の領土である北方領土はこの千島列島には含まれていない。」
(内閣府HP、外務省HP)

というもの。だが、日本政府が第二次世界大戦の終戦から平和条約交渉の頃までは、択捉や国後を千島と認識していた。ところが、「ダレスの恫喝」を経て、日ソ共同宣言の後に方針を転換して「北方4島は千島ではない」と強弁し始めた。
その動かぬ証拠として、1951年11月6日、参議院の「平和条約及び日米安全保障条約特別委員会」における楠見義男議員(緑風会)の質問に対する政府答弁がある。

草葉隆圓(外務次官):歯舞、色丹は千島列島にあらずという解釈を日本政府はとつている。これははつきりその態度で従来来ております。従つて千島列島という場合において国後、択捉が入るか入らんかという問題が御質問の中心だと思います。千島列島の中には歯舞、色丹は加えていない。そんならばほかのずつと二十五島でございますが、その他の島の中で、南千島は従来から安政條約以降において問題とならなかつたところである。即ち国後及び択捉の問題は国民的感情から申しますと、千島と違うという考え方を持つて行くことがむしろ国民的感情かも知れません。併し全体的な立場からすると、これはやつぱり千島としての解釈の下にこの解釈を下すのが妥当であります。

言い換えると、「択捉・国後は国民感情的には千島じゃない」かもしれないが、従来の政府見解や地理学上の通説から判断すると、「千島じゃない」と強弁するには無理がある、ということなのだ。

戦後の日本が独立すらままならないギリギリの状態の中で、当時の政府が、「歯舞、色丹だけでも返還されれば御の字」と考えていたことが(痛いほど)分かる。
質問した両者は、ともに農水畑の議員で、根室近海の漁業従事者にとって、歯舞と色丹の返還、そして日ソ漁業協定の締結は、火急の問題だった。
それは、日ソ共同宣言となって具現化されるが、その頃には、米ソ対立が決定的となり、アイゼンハワー政権のダレス国務長官が、重光葵外相に対して、「日本が、二島返還でソ連と妥結した場合、沖縄は返還しない」と圧力を加えるに至った。
米帝に恐れをなした日本外務省が考えついた言葉が「北方領土」だった。
(「ダレスの呪縛」戦闘教師ケン)

日ソ共同宣言の北方領土に関する部分(平和条約締結後に二島引き渡し)を反故にした日本政府は、米帝からの圧力に屈したことを隠すと同時に、自らの立場を正当化するために、「ソ連・ロシアによる不法占拠」「四島返還後(潜在主権の確認)に平和条約締結」などと主張し、「北方領土返還運動」なるプロパガンダを始めた。そのプロパガンダには50年を経た今日でも毎年10億円以上もの予算がつぎ込まれ、それが利権化、「北方領土マフィア」を形成している。
官製絵はがきに見る政府の欺瞞) 

つまり、ロシア側の主張は日ソ共同宣言から何も変わっていない。ただ、ソ連崩壊から新生ロシア勃興期の混乱の最中に力技で「買い取る」チャンスがあったものの、日本側の強欲と吝嗇がその機会を逃してしまった。
今となってはその目は完全に失われ、宗主国アメリカとともに衰退期に入った日本は今後外交交渉力を低下させてゆくことが確実な情勢にある。一方で、日本は中国、北朝鮮、韓国と敵対的あるいは非友好的な関係にあり、日本国内でもタカ派路線が支持される傾向にあるだけに、今後も外交関係が改善される見込みは無い。結果、極東地域で日本は孤立状態にある。
他方、ロシアにしてみれば、直接的には最大の脅威はNATOであるが、潜在的には中国こそが最も危険な対手であるだけに、可能な限り日本とは友好関係を築いて、対中カードにしたいところだ。だが、それもプーチン大統領の意向に依存しているところが大きく、仮にメドヴェージェフ前大統領のような親中派が再び大統領になった場合、どうなるか分からない。

それだけに、プーチン氏が大統領である間に、領土紛争を解消し、早急に平和友好条約を締結することが不可欠であろう。今も昔もそうだが、北方領土問題とは日本の国内問題なのだ。

【参考】
・プーチン氏訪日首脳会談を評価する 
・北方領土マフィアなるもの 
posted by ケン at 12:24| Comment(7) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月17日

テロ戦争と無人機の実像

【無人機攻撃「成人男性」なら戦闘員と見なす?】
 オバマ大統領1期目の就任直後の09年1月、初の無人機攻撃で少なくとも9人のパキスタン市民が殺害された。調査報道協会(本拠ロンドン)が先週発表した報告では、それから5年間に世界で行われた無人機作戦で2400人が死亡。うち少なくとも273人は民間人だ。「パキスタンやイエメン、ソマリアで、オバマ政権は5年間に390回以上の無人機攻撃を実施した。ブッシュ前政権の8倍だ」と報告にはある。
 ブッシュ政権とオバマ政権初期には、無人機の主な標的はパキスタンのイスラム武装勢力だった。11年初めに、アルカイダ系テロ組織が活動を活発化させるイエメンに作戦は広がった。ケリー米国務長官は昨年8月、パキスタンでの無人機攻撃を早急に終わらせると約束した。
 標的を定めた無人機攻撃が合法かどうかは非常に曖昧だ。国家主権、戦争規則、国際条約や国内法がいろいろと絡んでくる。アメリカの無人機作戦の合法性を判断しようとする機関や組織もまだ現れていない。それでも米自由人権協会(ACLU)など国内の団体が、無人機作戦に関わった米当局者を相手に訴訟を起こす動きがある。
 攻撃前に標的が特定されているケースもあるが、CIAはパキスタンやイエメン、ソマリアなどで「連座」方式を採用している、とかつてオバマの対テロ政策顧問を務めたマイケル・ボイルは言う。兵士になり得る男性はすべてアメリカの敵と見なす、つまり作戦の犠牲者が成人男性なら「戦闘員」として処理される。これでは罪のない人が殺されてもどうにもできない。
 イギリスでは先週、米無人機攻撃で父親を殺害されたパキスタン人男性が、作戦に関与したとして英諜報機関を訴えた裁判があった。しかし外国の行動を裁くのは難しいという理由で、原告の訴えは退けられた。
 男性を支援する人権団体リプリーブのカット・クレイグは、この結果を強く非難する。「同盟国アメリカと一緒なら、イギリス政府は殺人を犯しても許されるようだ」
(2014.02.05. Newsweek日本版)

3年前の記事だが、日本ではまず報道されないので紹介しておきたい。
『ドローン・オブ・ウォー』や『アイ・イン・ザ・スカイ』で映画化されて少しずつ認知されているようだが、一般的にはまだまだ知られていない無人機による現代戦の実相。

無人機による攻撃はすでに米ブッシュ政権時には常態化していたが、オバマ政権は実戦力から無人機へのシフトを進め、多用していた。確かに数字上の戦果は上がったかもしれないが、『アイ・イン・ザ・スカイ』を見れば分かるように、アフリカや中東の市街地に突然米軍のミサイルが撃ち込まれるのだから、殺害した「テロリスト」の数以上に新たな敵が生まれ、米欧に対する不支持、憎悪が高まり、拡散している。同時に、自国民に対する軍事攻撃を容認する自国政府に対する不信が増大、むしろ不安定化を促進している側面もある。
中東やアフリカでは、無通告で普通の市民が「テロリスト」として殺害されているのに対し、それを実行した米欧の軍人は表彰されこそすれど、殺人として訴追されることは決して無い。「これはテロ戦争であり、殺されたものは全てテロリスト」というのは、欧米側の一方的な主張に過ぎず、これは言うなれば「国家が逮捕したものは全て犯罪者」と言うのに等しい。

もう一つの問題は、将来、ロシアや中国、あるいは日本などが無人機攻撃を始め、国内の「テロリスト」や「分離主義者」に対する無差別攻撃を行った場合、誰もこれを非難する術を持たないということである。
日本の自衛隊が、沖縄の反基地運動家や独立運動家に対し、問答無用でヘルファイアを撃ち込む可能性は、「現状は無い」というだけで、将来的には十二分にあり得るだろう。中国におけるウイグル、ロシアにおけるチェチェンは言うまでも無い。
これらに対し、米欧が非難できない状況は、自分たちが唱えてきた「正義」(自由や人道主義)を否定するものでしかなく、リベラリズムとヒューマニズムの没落は避けられそうに無い。かつて、盧溝橋事件が日中全面戦争に発展する勢いにあった際、参謀本部作戦部長の石原莞爾が、対中強硬派で同課長だった武藤章をたしなめたところ、「自分は閣下の行動(満州事変)を見習ったまでであります!」と不貞不貞しく言い返されて、二の句をつげなかったという故事があるが、いまや米欧がそれを言われる立場にある。
つまり、米欧諸国は軍事の効率化を図るあまり、自分たちの金科玉条を否定するという、長期的不利益を自ら進んで受容している。

21世紀は「そういう」時代であることを、我々は認識しておく必要がある。
posted by ケン at 12:25| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする