2018年02月13日

核肯定に転じた河野太郎

【<衆院予算委>河野外相「評価しない理由ない」 米核見直し】
 河野太郎外相は5日午前の衆院予算委員会で、米国の核戦略指針「核態勢見直し(NPR)」について「北朝鮮の核・ミサイルの脅威を現実のものと受け止めており、高く評価しない理由はない」と述べた。立憲民主党の逢坂誠二氏が、河野氏の3日の談話を「問題が多い」とただしたことに反論した。
 河野氏は「日本の領土を北朝鮮のミサイルが2度、飛び越えていった」と述べ、オバマ前政権が「核兵器のない世界」の実現を掲げたころより安全保障上の脅威は増したと指摘。「NPRは同盟国にも米国の抑止力はきちんとコミット(関与)すると明確にした。(日本は)核の抑止力を自ら用いることはできない」と評価の理由を説明した。
 逢坂氏は「NPRは米国による核兵器使用のハードルを下げ、核の先制使用の可能性も含む非常に危険な内容ではないか」と政府の対応を批判した。
 安倍晋三首相は、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて「子供たちの未来へ投資するため、恒久財源をしっかり得ていきたい。そういう状況をつくっていきたい」と述べ、増税を先送りしない考えを重ねて示した。立憲の青柳陽一郎氏の質問に答えた。
(2月5日、毎日新聞)

外相に就任するまで、河野太郎氏は、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本支部の代表だった。PNNDは、核軍縮をめざす国会議員の世界的ネットワークで、それなりの権威を持つ団体である。その河野氏をあえて外務大臣にすえ、ここまで言わしめるのは、自民党内の反核派・対米自立派を封じる狙いがあったとはいえ、安倍氏の人事力はなかなか侮れないものがある。やりにくい課題に対して、あえて反対派にやらせるというのは政治の世界ではよくあることで、その最たるものが村山富市氏だった。

今回の米国の核戦略転換は、世界覇権からの撤収と軍縮を前に、「使い勝手の良い核戦力」を充実させることで、全体の軍縮を進める前提条件を整えようという思惑があると見られる。今のところ情報がそろっていないので、この辺は推測に過ぎないが。

日本は戦後の東西冷戦の下で、日米安保を締結してアメリカの核の傘に入ることで、自国の軍事的負担を極小化、経済発展の原動力としてきた。1990年代以降、主敵だったソ連が消失して、アメリカの覇権に陰りが生じ、それに替わって中国が台頭してくる。だが、アメリカはソ連に対して採った直接対立に基づく対称的封じ込め政策を、中国に対しては採らず宥和政策と人権外交を中心とした非対称封じ込め政策を採用してきた。しかし、日本は対中宥和を採らず、対決政策を促進、東アジアの危機を煽ることで、日米安保体制を護持する方針を堅持してきた。

日米安保を維持してアメリカの核の傘を利用することで自国の安全保障を実現するならば、トランプ政権の方針に反対することなどできるはずもない。
本ブログでは何度も指摘してきたことだが、日本の選択肢は多くない。

1.アメリカの核を借用する日米安保体制
2.日中露を軸とした東アジア集団安保体制の構築
3.独自武装(中立)路線


私個人は「3」を理想とするが、その暴走した末路が1945年であったことを思えば、相当にハードルの高い政策で、あまり現実的とは言えない。すると、選択できるのは「1」か「2」かしかなく、「中露と仲良くとかあり得ない」となれば自然と対米従属を維持するしか無い。

とはいえ、日米安保と核抑止を信仰するのであれば、どうして外務大臣職を引き受けたのか。あるいは、それまでの核軍縮スタンスはあくまでもフェイクだったのか、疑問は残る。
我が国は、北朝鮮の核兵器の脅威にさらされています。極めて強い破壊力を持つ核兵器による攻撃を防ぐためには、核兵器による抑止が必要です。抑止のために、核兵器がもたらす破壊力と同等の脅威を通常兵器でもたらそうとすれば、莫大な量の通常兵器が必要になり、とても現実的ではありません。
また、日本は、専守防衛をうたい、非核三原則を堅持する方針を明確にしています。ですから日本は、北朝鮮の核への抑止を米国の核兵器に依存することが必要です。
(中略)
核兵器のない世界を目指すためには米国の核の傘に依存するべきではないという御意見もありますが、北朝鮮による核・ミサイル開発が進展している中で、非核三原則を堅持しながら国民の生命と平和な暮らしを守るためには、日米同盟と米国の抑止力の下で安全を確保していかなければなりません。
(「ごまめの歯ぎしり」 2018年2月5日号 米国の核戦略見直し)
posted by ケン at 12:56| Comment(3) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月26日

アメリカが北を攻撃しないワケ

【陸上型イージス、2基導入を閣議決定】
 政府は19日の閣議で、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備え、陸上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」を2基導入すると決めた。秋田、山口両県に1基ずつ配備し、日本全域を守れるようにする。陸上自衛隊が運用し、24時間体制で警戒にあたる。2023年度の運用開始をめざす。小野寺五典防衛相は閣議後の記者会見で「導入により平素から常時、持続的に防護できるようになる。弾道ミサイル防衛能力が抜本的に向上する」と述べた。
 イージス・アショアは、弾道ミサイルを大気圏外で撃ち落とすイージス艦の迎撃システムを陸上に配備する仕組み。日米で共同開発した新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を搭載すれば、2基で北海道から沖縄まで防護できるという。防衛省は18年度当初予算案で基本設計費として約7億円、17年度補正予算案で米軍からの技術支援費として約28億円をそれぞれ要求している。防衛省によると、施設整備費を含むイージス・アショアの導入費は1基あたり約1千億円かかる。
 政府は14年度にミサイル防衛強化に向けた研究に着手、イージス・アショアと地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)に候補を絞った。防衛省によると、THAADは1基あたり約1100億円かかるほか、日本全域の防護には6基が必要。「2基で守れるイージス・アショアの方が費用対効果が高い」(幹部)と判断した。イージス・アショアは弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイルや爆撃機なども撃ち落とせるよう調整する。防衛省はこうした性能をもつ迎撃ミサイル「SM6」の試験弾薬を18年度に取得し、性能を評価する。イージス・アショア運用の専門部隊を新設し、1基あたり100人規模を配置する方向だ。
(12月18日、日本経済新聞)

ごく簡単な話だが、どうにも理解してもらえないのは、「人は自分の信じたいものを信じる」からなのだろうか。
北朝鮮が核とミサイルで恫喝外交を繰り返す限り、日本と韓国は米国からミサイル防衛システムを購入し続けることになる。それはアメリカの軍需産業にとって「生命線」とすら言える。
仮にアメリカが北朝鮮を攻撃して滅ぼしてしまったら、新たな脅威を作り出さない限り、ビジネスは「あがったり」になってしまう。もちろん、次の脅威としては中国が挙げられるのだが、アメリカは国債の主要な引き受け手である中国とは戦えない構造にあり、無理はできない。
つまり、米国による対北戦争は、アメリカに何の利益ももたらさない一方、むしろ「適度な脅威」であり続けてもらうことが、ビジネスにおいて「上々」ということになる。兵器と薬品しか主要な産業が無い米国にとって、何が国益かはあまりにも明確で、それは「日韓に買わせる」ことなのだ。

韓国はそれが分かっているからこそ、文大統領が緊張緩和に向けて動き、日米から非難されている。
他方、日本は「日米同盟」を維持するために米側の言いなりになるほかなく、どれだけ高額な兵器でも買い続けるほかないのだが、財政難の中でできることは限られており、社会保障の切り下げでは足りず、通常装備や自衛隊員の待遇を切り下げるという話になっている。これはタコが自分の足を食うような話で、中長期的には大きな禍根となると思われる。
posted by ケン at 12:37| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月10日

集団的自衛権解禁から対外攻撃能力保有へ

【護衛艦「いずも」を空母改修=政府検討】
 政府は26日、海上自衛隊最大級の護衛艦「いずも」(写真)を戦闘機の発着が可能な空母に改修する検討に入った。自衛隊の空母保有は初めて。
(12月26日、時事通信)

【長距離巡航ミサイル国産化 政府検討 34年度に試作品】
 政府が敵基地攻撃能力の保有も視野に入れ、長距離巡航ミサイルの「国産化」を検討していることが27日、分かった。平成34年度の試作品完成を目指す。政府は米国などから長距離巡航ミサイルを導入する方針を固めているが、緊迫する北朝鮮情勢や中国の海洋進出に対処するには、独自開発による防衛力整備も必要と判断した。装備品の海外調達費を抑え、国内防衛産業の成長を促す狙いもある。複数の関係者が明らかにした。
 政府は30年度予算案に米国製とノルウェー製の長距離巡航ミサイルの調達費を計上した。米国製は900キロ、ノルウェー製は500キロを誇る。
 防衛省幹部は「長距離巡航ミサイルを持つことで、敵の脅威圏外からの攻撃が可能になる。空自パイロットの安全性は格段に増す」と説明する。
 一方、自衛隊が保有する対艦ミサイルの射程は約170キロ。技術的には長距離巡航ミサイルの国産化は可能とされていたが、「専守防衛」の立場から開発は見送られていた。
 これに対し、12日に開かれた自民党安全保障調査会(中谷元会長)などの会合では「長距離巡航ミサイルを保有するなら国産化も検討すべきだ」との声があがった。
 党国防族は「これまでは『専守防衛の範囲を超える』という批判に配慮してきたが、北朝鮮情勢などで局面は変わった。敵基地攻撃能力につなげるためにも国産化は自然な流れだ」と指摘する。
(12月28日、産経新聞)

戦前とは形態が異なるものの、少しずつ国家の「タガ」が外れてゆく様が見られる。
まず1990年代に海外派兵が解禁されたことを手始めに、2000年代には海外における軍事行動の一部が解禁されて国連以外の枠組みでの派兵も可能となった。そして、2010年代には特例法の必要無しに恒常的な海外派兵が許可されると同時に、集団的自衛権の行使をも容認するところとなった。そして今、集団的自衛権行使を前提とした軍備拡張が進められている。

記事にもあるヘリ搭載型護衛艦は、予算が審議された当初から「空母運用に繋がり、攻撃能力の所持になってしまう」との危惧が上がっていたが、政府・防衛省の説明は「空母運用は想定していない」の一点張りだった。
あれからわずか数年(「いずも」の予算は2010年度)で前言を翻したのだから、議会の権威はますます低下し、行政への権力集中が進む一方となっている。

空母も長距離巡航ミサイルも、本質的には先制攻撃を前提とした攻撃兵器であり、自国の領海や領土外を叩くことを目的に設計される。
政府は、北朝鮮の脅威を理由に挙げているが、それはアメリカの偵察衛星からの情報を受けた日本が先制攻撃を加えて、北の核やミサイル発射能力を先制攻撃で潰すことが前提となる。こうなってくると、ほとんど現行憲法は実質的に廃棄されたも同然となるだろう。つまり、次の憲法改正はこうした先制攻撃を許すための修正が必要となる。

また、現実には日本が想定している攻撃能力で北朝鮮の攻撃能力を無効化することはほぼほぼ不可能であり、「北朝鮮を叩くためにこれらの軍事力が不可欠」という防衛省の説明は、一見合理的に見えて、実質が伴っていない。
となると、やはり実際には、尖閣沖や東シナ海、あるいは南シナ海で中国海軍と戦うことを前提としていると考える方が合理的だろう。

他方、独自の防衛力を高めるということは、政府・自民党側も「日米安保の抑止力の低下」を認識していることを示しており、あるいは「日米同盟後」までにらんでいるのかもしれない。だが、国力が低下する中で、中国、ロシア、北朝鮮を仮想敵とした軍備を整えるのは無謀な話であり、だからこそアメリカににらまれながら対露外交を続け、今度は対中宥和を試みるといった話になっているのだろうが、どうにも「泥棒を捕らえてから縄を綯う」の観が否めない。

【追記】
今後、日中の経済格差が拡大していくと、日本ももた北朝鮮を倣って核武装を検討することになる公算が高い。
posted by ケン at 12:20| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月05日

日本政府曰く、北は崩壊寸前

対北船舶検査で米「圧力を強化」
 マティス米国防長官は29日、米国防総省で記者団に対し、北朝鮮船舶による公海上での石油密輸が問題視されていることに関し、国連安全保障理事会による北朝鮮制裁決議で密輸に関与した疑いのある船舶への検査が加盟国に義務付けられたことなどを受け、「北朝鮮への圧力はさらに強化される」と述べた。米軍として今後、船舶検査を実施するかどうかについては明言しなかった。また、北朝鮮が要求している米韓合同軍事演習や日米合同訓練の一時停止に応じることはないとした。
(12月31日、産経新聞)

官邸に近い人は、経済制裁の効果は上々で北は早々に根を上げるだろうなどと言うのだが、どうにも自分が得ている情報と話が違いすぎる。
まず仮想通貨で決済するご時世に、既存の口座凍結など役に立たない。また取引する企業もペーパー化、仮想化されているので、2年前の情報で制裁対象にされた企業などは、制裁発動時にはすでに存在しないことが多いという。北ではすでに国民の2割前後がスマホを携帯し、国内専用イントラネットやネット通販網まで整備されているとも聞く。日本政府の認識は、「国民政府は一撃加えれば必ず降伏する」と考えていた1937年頃のそれから全く進歩していない。官邸が率先して戦争をやりたがっているところも同じ。
それに乗っかるマスゴミも同罪。まぁ中国崩壊論や韓国崩壊論も、十年以上延々と言われているし(爆)

あ〜早く逃げたい〜
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2017年12月25日

対中宥和へ転換か?

【自公幹事長が中国入り=二階氏「大事な時期、目的果たす」】
 自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長は24日午後、成田空港発の全日空機で中国・福建省入りした。25、26両日に同省アモイと福州で開かれる第7回日中与党交流協議会に出席する。27〜29日には北京に滞在。習近平国家主席ら要人との会談を調整している。出発に先立ち、二階氏は成田空港で記者団に「大事な国だし大事な時期でもあるから、しっかりと目的を果たしていきたい」と述べ、日中関係の改善推進に意欲を示した。中国も賛成して採択された国連安全保障理事会での新たな北朝鮮制裁決議については「極めて当然だ。どう平和を維持していくか率直な意見交換をしたい」と語った。 
(12月24日、時事通信)

二階幹事長はもともと中国利権の元締めで、日中友好議連のような正統派とは異なる系統の親中派首魁なので、同じく親中派のKM党とともに訪中することは普通の光景と言える。
だが、先だって安倍総理は中国の「一帯一路」政策への協力を進める意向を表明したが、これは6月に「協力を検討」から一歩進めたものとなっている。
また、先週には外務省が、1986年に中曽根総理が中国の胡耀邦総書記と会談した際の記録文書を公開したが、これも「中曽根先輩のような右派政権でも日中関係を重視した」ことをアピールする目的があったと想像される。

さらに言えば、先週末に発表された来年度予算案における外務省の「インド太平洋戦略」関連予算は300億円でしかなかった。対中包囲網の要となる最重要政策だったはずだが、中国の「一帯一路」への対抗策としては、いかにもショボ過ぎるだろう。
まぁ外務省は欲張りすぎて色々要求しすぎたからと言えなくも無いが。

これらが一つか二つなら「偶然」で片付けられようが、これだけ重なるということは、何らかの政策転換、具体的には日米同盟一本槍路線、あるいは対中強硬路線からの脱却の可能性を考えて良さそうだ。
posted by ケン at 12:16| Comment(3) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月18日

慰安婦問題で孤立する日本

【マニラに慰安婦像…日本政府は「遺憾」伝える】
 フィリピンの首都マニラに、慰安婦を象徴するフィリピン人女性の像が設置された。 同国での慰安婦像の設置は初めてとみられる。在マニラ日本大使館は比政府に対し、遺憾の意を伝えた。中国国営新華社通信(英語版)によると、像は高さ約2メートルで、フィリピン伝統のガウン姿の女性が目隠しされ、悲しげな表情を浮かべている。在マニラ日本大使館から数キロ離れた官公庁や高級ホテルが多い、マニラ湾に面したロハス大通り沿いの遊歩道に設置され、8日に除幕式が行われた。碑文には、「1942年から45年の日本軍占領下で虐待の被害者となったフィリピン女性を思い出すための記念像」などとタガログ語で書かれている。設置したのは、政府機関「フィリピン国家歴史委員会」と現地の元慰安婦による団体という。
(12月12日、読売新聞)

日本政府や自治体が騒げば騒ぐほど「像」が増えてゆく悪循環にある。
当然だろう。加害者は自らの行為をすぐ忘れるが、被害者はまず忘れないからだ。
彼らからすれば日本側の反応を見れば、「日本人は戦争犯罪を否定する傾向を強めている」と危機感を抱かせるに十分であり、「戦争責任と犯罪行為を風化させてはならない」とむしろ強調する方向に力学が働くのだ。ここで日本側が批判を強めれば、彼ら的には「やっぱりそうだ。さらに対策を強化しよう」ということにしかならない。

特にマニラの場合、慰安婦とは別に1945年の「ベイビューホテル事件」に象徴される集団暴行(強姦)事件や、撤退に伴う大量破壊、大量虐殺事件が発生しているが、そのどれもが未だ十分に真相が判明していない。つまり、日本側は特に謝罪もしていなければ、補償もしていない。

大阪市や日本政府が慰安婦像に対して過剰な反応をするのは、軍部隊に設置された慰安所を「民間業者が勝手にやったこと」「合法的な商行為だった」という認識に立っていることに起因しているが、その認識が被害者・被害国の逆鱗に触れていることには、何とも思わないらしい。
そもそも慰安所自体が、軍民協同による組織的な性暴力システムであり、少なくとも現代の倫理観や人道精神からは決して許されるべきものではないにもかかわらず、「当時は当たり前だったから仕方ない」と強弁する日本側の姿勢が、ますます被害者を刺激しているのだ。

これではますます国際孤児になるばかりだろう。
posted by ケン at 12:53| Comment(3) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月09日

トランプ米大統領訪日の実態と実相

トランプ米大統領が11月5〜7日に来日、日米首脳の親密さを演出する様々なイベントが準備され、政府とメディアは大成果を喧伝している。だが、メディアはゴルフや会食やコイの餌やりの話を伝えるばかりで、実態はよく分からない。では、安倍総理はトランプ大統領とどれだけ話ができたのか、見てみよう。
【11月5日】
ハンバーガー・ランチを済ませた後、ゴルフ(計約3時間半)。
米大統領と安倍首相が夫妻でディナー(約1時間半)。

【11月5日】
日米主要幹部でランチ(約1時間)。
ランチ後、日米首脳会談(約30分)。
迎賓館で晩餐会(約2時間)。

要はまともに話をしたのは30分だけで、残りは会食とイベントだった。安倍氏は英語が話せず、100%通訳を介すため、実質的には15分であり、双方が話すのだから、安倍総理が自らの意思を伝えられたのは10分も無かったことを示している。だが、外務省などの発表ではこの30分間の中で「地域・国際情勢について議論されるとともに、経済についても議論されました」とある。恐らくは、官僚の作文を読んだだけのものだったのだろう。

ここで他国の首脳会談を見てみよう。本年5月にドイツのメルケル首相が訪露、ソチを訪れた際には、プーチン大統領と2時間半の会談を行っている。ましてメルケル氏はロシア語を、プーチン氏はドイツ語を理解する間柄である。
また、今年6月、中国の習近平主席が同じくロシアのプーチン大統領とカザフスタンのアスタナで会談した際には、1時間半の予定が3時間半にも延長されている。

以上から想像されるのは、訪日スケジュールが設定された段階で、「日米首脳間で詰めて話すような問題は無いから親密さを演出しよう」と考えられたか、「二人でまともに話をさせると、どんなボロが出るか分からないから、会談は最小限にしよう」とされたのかのいずれかだろう、ということだ。
ただ、「長時間の首脳会談を実現した場合、貿易・為替問題でトランプ大統領から強い要求がなされ、安倍総理が応じざるを得なくなる」という日本側の懸念は、状況証拠的にはありそうな話だ。結果、日本の外務省的には「トランプ・安倍の個人的親密を内外に喧伝できれば十分(不満は無い)」という判断だったと見られる。

では、内容的にはどうだろうか。外務省の発表(HP)を見てみよう。
まず、首脳会談の総論として次の合意がなされたとある。
両首脳は,日米両国が北朝鮮問題に関し100パーセント共にあること,日米同盟に基づくプレゼンスを基盤とする地域への米国のコミットメントは揺らぎないことを確認するとともに,核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を通じた日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて確認しました。

要は「北朝鮮は日米共通の脅威」「アメリカは極東から手を引かない」「日本はアメリカの核の傘の下にある」ということである。
ところが、会談後に行われた記者会見では、トランプ氏は北朝鮮問題には触れているものの、より多くの時間を日米貿易不均衡と軍需産品の売り込みに費やしている。
ここから推察されるのは、日米安保を維持する代償として、日本がより多くの経済的、軍事的な対米貢献を求められているということだ。それは、日本のさらなる重武装化を意味する。

各論で日本側(外務省)が最も強調しているのは、「対北圧力強化」と「自由で開かれたインド太平洋戦略」である。
「対北圧力強化」は、北朝鮮を暴発させて先制攻撃をさせることで、アメリカの軍事介入を実現させ、朝鮮半島に統一した親米政権を樹立することを目的としている。これは安倍氏の首相官邸では既定方針とされているようだ。

「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、中国の「一帯一路」(Land power)政策に対する、日本側のアンチテーゼ(Sea power)で太平洋地域からインド洋までの海上路をもって、中国の影響力を封じ込めようとする伝統的なタカ派の「力による大陸封鎖」路線である。
ところが、首脳会談後の記者会見でトランプ大統領はこの点に触れず、日本の記者も質問しないことに業を煮やしたNYタイムズ紙のランドラー記者は、
「この2日間で、大統領は日米同盟を再確認し、自由で開かれたインド太平洋地域の構想を描き始めました。しかし2日後には、自由でもなければ開かれてもいない中国を訪問します。そこで私が伺いたいのは、不可避とも思われる中国との紛争をせずに、いかに米国はこの地域で自由と開放を推進していくつもりでしょうか。」

と大統領に質問、ト氏は「私と習近平国家主席との関係もまた良好」としつつ、貿易摩擦と通商問題を触れるに止め、肝心の質問には何も答えなかった。つまり、実際には「日本側の希望は聞いてやった(だけ)」という感じだったことが想像される。
つまり、日本人は「先生、(中国さんを)やっちゃってください!」とトランプ氏の背中を必死に押そうとしているのだが、あまりにも意図がミエミエで、米国側としては「乗せられてたまるか、でも乗ったフリだけはしておこう」というところなのだろう。

本稿ではこれ以上の評価はしない。
posted by ケン at 12:15| Comment(5) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする