2019年06月08日

外務副大臣曰く、米中貿易戦争の本質は資本主義対共産主義

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大事なことなので貼り付けておこう。
佐藤外務副大臣によれば、米中貿易戦争の本質は資本主義対共産主義で、中国の経済外交は軍事と一体化して拡大中で、海洋進出を狙っているから、日米連携を強化しつつ、独自の軍事力も強化しなければならない、とのこと。

全体主義ならともかく共産主義と言ってしまう辺りが超笑える。
ソ連帰りのケン先生的には、ソ連型社会主義というのは50年間パン価格が据え置かれて、挙げ句の果てに家畜飼料の方が高くなってしまって、市民がダーチャで豚を飼って、パンをやるようになり、パン屋からパンがなくなってしまうような体制を指すんだけどね(笑)
また、ソ連ではコムソモール員は毎夏軍事教練を受けていて、「こいつらやべぇ」と思わせるに十分だったけど、今の中国の共青団員とか「とりあえず入っておけば将来安泰か」くらいのかる〜い学生が多いように見えるけどね(笑)

こうやって脳内だけでソ連や中国を考えていると、自分の利益と一体化して、いつの間にか脳内像が変化(へんげ)していっちゃうんだろうな。

それに、日米同盟強化は同盟コストの上昇を意味し、ますます対米従属を強化、アメリカからの要求がますます高くなることを意味する。そこに自国の防衛力も強化して、中国の経済外交にも対抗するとなると、いくら金があっても足りないことは明白。
これでは、ソ連と米英を仮想敵とした戦前の軍部と同じ轍を踏むことになるだろう。
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2019年05月30日

中国製品排除は成功するか

【中国排除、もろ刃の剣=米先端産業に影−ファーウェイ問題】
 先端技術分野で中国排除を狙うトランプ政権の姿勢は米企業にも影を落としている。
 華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置は、同社との取引額が大きい企業の業績を直撃。資金調達や技術者確保にも影響が及んでおり、米国にとって「もろ刃の剣」でもある。
 スマートフォン用部品を手掛けるルメンタム・ホールディングスとコルボは、ファーウェイへの禁輸措置を受けて、それぞれ業績予想を下方修正。両社ともファーウェイ向けの出荷が直近で売上高の15%程度に上り、「いつ再開できるか予測できない」と口をそろえる。
 文書を高速スキャンして保存する技術を持つベンチャー企業リップコードは、米政府が対米投資審査を厳格化したことを受けて外国からの出資割合を制限した。フィールディング最高経営責任者(CEO)は「何倍ものペナルティーとして跳ね返ってくるリスクがある」と語る。
 同社は既に百度(バイドゥ)など中国企業から出資を受けている。ただ、どの投資家であれば問題がないか事前に知るすべはなく、「とても恐ろしい」と警戒する。
 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、輸出規制の対象となる技術を扱う職に外国人を雇う際に必要な米当局の許可について、中国人への承認が停滞していると報じた。「高度技術職の人材層が薄い半導体業界には特に痛手」とする業界関係者の声を伝えている。
(5月26日、時事通信) 

どのマスゴミも「ファーウェイ製品に重大な疑義」などと報じているが、何が問題なのかについては何も報じていない。アメリカの「ロシア疑惑」についてもいまだに決定的な証拠が提示されておらず、「永遠の疑義」となってしまっている。つまり疑義を生じさせること自体が目的で、実態や真実は重要ではないという話だ。

これは戦前期における合法左派の弾圧に際して使われた手口だった。
例えば、1937年に起きた人民戦線事件では、本来共産党と同党員をターゲットにしてきたはずの治安維持法によって、社会民主主義者、労働運動家、マルクス経済学者などが一斉検挙され、一次、二次含めて480名以上が逮捕された。ところが、法廷で有罪判決が下されたのはわずか数人に過ぎず、圧倒的多数は無罪に終わった。数件の有罪判決についても、判決が出る前に容疑者は保釈され、かつ控訴審は延期され続けたまま終戦を迎え、結審に至らずに終わった。このことは、当局(特高=秘密警察)が対象を必ずしも有罪にしなくとも、強制捜査や検挙、拘束することだけで、対象の動き(運動)を抑止することが可能であることを示している。

逆に中国では、欧米日における中国製品排除運動を受けて、再びナショナリズムが加熱しつつある。
また、一党独裁や権力集中の正当性が強調され、支持が強まっている。
これはアメリカにとっては「どうでもいい」ことかもしれないが、隣国である日本にとっては脅威でしか無い。

現状でも日本の技術者の多くが中国企業や大学に流れているが、中国の研究開発費はいまやアメリカと同レベルで、日本の3倍近くに達している。量子分野における中国の優位が確立した場合、技術力バランスは一気に傾いてしまうかもしれない。

マーケットの点でもいまや中国とインドで世界人口の3分の1を占めており、内需拡大に成功すれば、米欧の市場などすぐに取るに足らないものになるだろう。実際、中国の大都市部の生活水準は日本のそれと殆ど変わらないし、私が教えている学生の中には「日本の学生より金持ちだろう」と思える者が少なからずいる。

ファーウェイ排除はしょせん応急処置的な効果しか無く、そこを盲信して対中関係を悪化させることは避けるべきだ。
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2019年05月24日

ロシア世論も少しずつ軟化

【北方領土「合意を」41% 外務省、ロシアで調査】
 外務省は22日、ロシア国内で2月に実施した世論調査の結果を発表した。日ロ両政府が交渉中の北方領土問題の在り方を聞いたところ「両国が相互に合意すべきだ」が41%となった。「(北方四島が)ロシアに帰属し、今後もロシアに帰属する」は53%、「日本に帰属すべき確かな根拠があり、日本に帰属すべきだ」は2%だった。
 2016年3〜4月の前回調査とほぼ変化はなかった。日ロ首脳は昨年11月、日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速する方針で一致。その後、閣僚や高官レベルで交渉を重ねているが、ロシア世論への影響は限定的となっている。
(5月22日、共同通信)

ロシア学徒としては、意外と日本に好意的な結果になっていると思う。
一時期、ロシアがイケイケだった時はこれよりさらに強硬だったことを考えれば、少しずつではあるが、世論も軟化していることが分かる。
とはいえ、日本ほどではないが、そこは大国意識が抜けきらないためだろう。

重要なのはまさしく「両国が相互に合意すべきだ」であり、この点はラブロフ外相ですら「相互に受け入れ可能な内容でなければ意味が無い」と繰り返し述べている。
日ソ共同宣言は条約であるが故に強い拘束力があり、いかにロシア国民といえど、「条約に書いてあるから」と言えば、それ以上強硬反対するのは難しい。つまり「二島引き渡し」である。
あとは、二島「プラスアルファ」の部分でどこまで日本が頑張れるかであり、同時にロシア側に対して魅力的な提案ができるかにかかっている。

その点「四島返還論を引っ込めて二島で妥協してやるんだから、ロシア側が譲歩しろ」的な外務省の塩対応ではいかなる合意も難しい。あれはむしろロシア側を遠ざけるものでしかない。
ロシア側が何度も「歴史を勉強して出直せ」と言うのは、まさにこの点で、いまや交渉に当たる官僚も全て1960年代以降のプロパガンダに洗脳されているものばかりになっているため、交渉を難しくしている。
歴史教育の功罪はあまりにも大きい。
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2019年05月23日

丸山某、禁止区域で外出を試みる

【「女性のいる店で飲ませろ」と丸山氏発言】
 丸山穂高衆院議員が北方領土へのビザなし交流訪問団に参加中の11日夜、「女性のいる店で飲ませろ」との趣旨の発言をし、禁止されている宿舎からの外出を試みていたことが22日、複数の訪問団関係者への取材で分かった。
(5月22日、共同通信)

ロシア学徒的には、こちらの方が「戦争して奪還」よりもタチが悪い。
例えば、外出禁止の場所で他国の国会議員が禁を犯して外出し、当局に拘引された場合、外交問題に発展する恐れがある。あるいはスパイ容疑を掛けられる恐れもある。
ましてや、その外出目的が「飲む、買う」であれば、その「国辱度」は何倍に達するだろうか。

ロシアは本当にこうした点は恐ろしく厳しく、かつてケン先生も旅行先で「滞在登録を怠った」という理由で拘引されたことがあるが、何と空港のタラップ下に軍警を含む10人以上の警官らが待ち構えていて、そのまま連行された。尋問されたのは、鉄格子付きの尋問室であり、亀山門下でスターリン学も修めた私的には、「有無を言わさず、後ろから拳銃で撃たれるのか?」と思ったものだった(笑)
まぁ現実には、ロシア語もできて、ロシア学も修めていたので、ある程度向こう側の出方や論法が分かっていたので、「宿泊先が手間を怠っただけで、自分は何も悪くない!」の一点張りで押し通したわけだが、平均的な日本人であれば、領事館員の厄介になっていたところだったかもしれない。

丸山某の場合、もし「女性のいる店」に行ってしまった場合、ハニートラップに掛けられる恐れもあっただけに、その正気を疑うレベルにある。
丸山某のお友達らしき元ヤクニンは「アル中だから大目に見てやってくれ」との主旨で擁護を試みているが、国益の代弁者たる議員や官僚にそのような「大目」はあり得ない。それはただの特権意識であり、「共産党員なんだから大目に見てくれ」というのと何ら変わるところがない。むしろ一般人よりも厳しい罰を下すべきところだ。

この場合は、除名や辞職勧告ではなく、議会の懲罰委員会にかけて、「倫理規定に反した行動」として適正に処断するのが望ましい。
代議制民主主義といえど、有権者は自分たち以上のレベルの議員を選出するのは難しいことを示していると思うわけだが、大阪19区の有権者はよほど候補者に恵まれていたということだろう。
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2019年05月22日

日露交渉を交渉学から考える

日露間の平和条約交渉が遅延し、合意も遅れていることを受けて、リベラル派を中心に「安倍首相が得点稼ぎにやっていること」などという非難が上がっている。また、「不法占拠」「四島返還」などの主張が後方へとやられたことについても、リベラル派を中心に批判が強まっている。
だが、リベラル派は「北方領土はロシアによって不法占拠されている」「四島一括返還以外あり得ない」などと言いつつ、丸山某が「武力奪還」を唱えると、これも非難するのだから、要は「ロシアとは一切話をするな」と言っているだけに過ぎない。

それはそれとして、中国にあっても、国際政治研究者たちから「日露交渉などやはり無理なのでは」という意見が上がっており、「そんなことは無いですよ」と言うのだが、なかなか納得してもらえない(表向きは反論しないが)。
そこで最近流行しつつある「交渉学」の概念を用いて、日露交渉を検証してみたい。

【1.背景と情勢】
日本をめぐる安全保障環境は大きく変化しつつある。中国が巨大化し、アメリカの影響力が相対的に低下、遅くとも2030年代前半には中国のGDPは米国を抜き、軍事力においても2040年頃までにアメリカを凌駕すると考えられている。これは早くなることはあっても、遅くなることはなさそうだ。従って、2040年頃までには在日米軍は撤退し、太平洋の東西で米中が覇権を分ける形になるだろう。

日本は米国の後ろ盾を失ってゆくわけだが、日本の選択肢としては、@中国に従属、A独自に重武装(核武装含む)、Bロシアやインドと連携しつつ、東アジアの勢力バランスを取る、が考えられる。このうち「比較的無理なく独立性を保てる」のはBであり、その連携先として最も有力なのはロシアとなる。

今後仮に中台併合が実現した場合も、アメリカの東アジアからの退去が進み、日本のシーレーンは中国の影響圏に入るところとなる。これも対中従属の決定的要素となるが、化石資源の輸入を中東・インドネシアからロシアにシフトできれば、中国への依存度は相対的に低くできるだろう。ロシアは核エネルギーの連携相手としても有望。

逆に日露協商に失敗した場合、北朝鮮型の「独自路線」か、今のアメリカが中国に取って代わられることになるが、誰にとっても好ましくないだろう。

【2.ミッション】
日露協商のミッション(大方針)は、些細な領土問題(しかも誰も住みたがらない)ではなく、「アメリカのアジア退去後」を見据えたものでなければならず、中国の独走・覇権化を抑止する目的を持つ。同時に、日本の独自性と国際的影響力を担保しつつ、エネルギー安全保障を充実させる狙いがある。つまり、領土問題はあくまでも「カード」であって、本筋では無い。
当面はエネルギー面と経済面での協力、将来的には軍事協力を視野に入れるべきだろう。

【3.日本の強みとロシアの弱み】
長期低迷しているとは言え、日本はまだ世界で第三位の「経済大国」にある(強みを言う場合は謙虚にならない)。同じく、ロシアが必要としている様々な技術力も有している。そして、人口1億2600万人を有する市場でもある。

ロシアはEUとアメリカから徹底的に敵視され孤立傾向にあるため、中国への依存を強めている。また、シベリアで生産される化石資源の輸出先も、ほぼ中国に占有されており、価格交渉で下手になってしまっている。
ロシアにとっての悪夢は何時の時代でも「東西挟撃=両面戦争」であり、絶対に回避すべきものだが、欧州方面は当面改善しそうに無い。

【4.日本の弱み】
時間が経てば経つほど、中国が強大化して米国が弱体化、日本の立場は不安定になる。経済的にも改善の見込みは無い。少子高齢化の進行で、市場としての魅力も失われつつある。つまり、時間経過は日露交渉において、日本側に不利に働く可能性がある。また、他の連携先としてインドがあるが、日印協商の実現性には疑問が残る。

また、日本では65年にわたるプロパガンダで「択捉、国後は北海道の一部」と考えている国民が圧倒的多数を占めており、これを納得させるためには、安倍政権のような「強い指導力」が不可欠で、今後の内閣で実現できるか不確定要素が多い。

【5.ターゲティングとBATNA】
最も重要な合意点は短期的には「日露平和条約」を締結することで、短中期的にはエネルギーと安保面の協力だが、日露間の信頼関係はまだ十分とは言えず、日露間の信頼醸成に多くの資源を費やす必要がある。

「BATNA」とは「最悪の状況に陥った場合の代替案」を意味する。日露の場合、「領土問題で譲歩しすぎた」と世論が不穏になることが想定される。そのため、無理して短期的にいずれかが譲歩しすぎる形は望ましくない。「無理な合意」は結局のところ「長続きしない」というのが、現代交渉学の定説になっている。

日本政府は既に「不法占拠」説と「四島返還」論を(こっそり)引っ込めており、交渉の土台は十分に積み上がってきている。「日露2プラス2」も順調に進んでいる。
「合意できなかった」と騒ぐのは、交渉(ビジネスでも何でも)を行ったことの無いものが言っているか、あるいは政争の道具とするためだろう。

ロシア側の態度が強硬と判断した場合、日本としては対中従属や日印協商をカードとして提示することも一案であろう。これらは「比較的望ましくない」「実現性が低い」と考えられているだけで、日露協商を絶対のものと考えてしまうと、日本側に不利な交渉になってしまう。

素人はどうしても「交渉するからには合意しないと損」と考えてしまうが、交渉学では「メリットの無い合意はしなくても良い」としている。
古来、外交交渉は「外交よりも内交が難しい」と言われており、自組織内の調整の方が難しい側面がある。
「合意できなかった」のは、むしろ交渉担当者が利害を強く主張した結果であり、国益を守ったためと考えるべきで、安易に非難すべきでは無い。
一方、十五年戦争期の帝国政府のように中国などに対して、どう見ても受け入れ不可能な要求を繰り返し、逆にアメリカから「ハル・ノート」を提示されると、逆ギレして宣戦布告なしで武力行使(真珠湾攻撃時に米政府に送ったものは宣戦布告の要件を満たしていない)するような愚劣さは、重々戒めるべきである。

以上から考えて、日露交渉は十分及第点にあると考えられる。

【参考】
『戦略的交渉入門』 田村 次朗/隅田 浩司 日本経済新聞出版社(2014)
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2019年05月15日

第二次日露開戦、否定される

【維新、戦争発言の丸山衆院議員除名=イメージダウン回避狙う】
 日本維新の会は14日、持ち回りの常任役員会で、北方領土問題の解決手段として戦争に言及した丸山穂高衆院議員(35)=大阪19区=を除名処分にした。
 太いパイプを維持する首相官邸に配慮して厳しい姿勢を示す必要があると判断。大阪都構想の是非を問う住民投票に向け、党のイメージダウンを回避する狙いもあるとみられる。
 松井一郎代表(大阪市長)は14日、市役所で記者団に「議員としてあるまじき行為、発言だ」と丸山氏を厳しく批判。議員辞職を促しているとした上で「今、辞めるべきだ」と強調した。
 丸山氏は10〜13日に北方領土の「ビザなし交流」に参加。同行記者団などによると、11日夜に訪問先の国後島の施設「友好の家」で元島民に「戦争で島を取り戻すことには賛成か反対か」「戦争しないとどうしようもなくないか」などと発言しトラブルになっていた。
 維新幹部の一人は13日に官邸側からの電話で問題発言を知ったという。この時点で党内には事態を楽観する空気もあったが、松井氏の強い意向を受け、丸山氏から提出されていた離党届を受理せず除名処分を急いだ。
(5月14日、時事通信)

日本はいい感じに香ってきた。
この丸山某、東大、経産省、松下政経塾、日本維新の会、国会議員という経歴。これだけでもパワーワード過ぎる。

東大出の後輩の「国家官僚なんてお勉強できれば誰でもなれる」「議員になりたいとか自己顕示欲が強いだけ」という言葉が頭から離れない。
実際、40歳以下で官僚を辞めて議員になる者は、程度の差や方向性の違いはあれど、「この手」の連中が多い。この点も私が永田町を見ていて「もうダメだ」と思ったところでもある。
エリートの決定的凋落である。

一方で、足立某もそうだが、こうした煽情的な発言をもって世論の注意を引き、一部の人気を集めるポピュリズム的手法を利用していたのは、維新の方であり、丸山某だけの問題では無い。政治に世界では、「無名よりは悪名の方が何倍もマシ」と言われ、とにかく「話題づくり」に血道を上げることが当選に不可欠とされる。少数政党では、その傾向がさらに強まるのは言うまでも無い。

もう一点、誰も指摘していないようなので、指摘しておきたい。
丸山某の発言の背景には政府の方針転換がある。
日本政府は従来「北方領土はロシアが不法占拠している」との主張を行っていた。これは、

「ソ連は第二次世界大戦において北方四島を占領したが、それらは北海道に属するものであり、戦争終結(日ソ共同宣言)と同時に占領を解除して、日本に返還されなければならない。だが、ソ連軍はそのまま居座っている」

という論旨だった。
これは後付けの論理で、日ソ共同宣言時には日本政府はそんな主張はしていなかったが、アメリカから「ソ連と仲良くしたら、沖縄返さないかもよ」(ダレスの恫喝)と言われて、震え上がって「すみませんでした!」と平謝りして、ソ連に対しては手のひらを返して「不法占拠」と罵り始めたことに起因している。
ただし、これはあくまでも「対ソ交渉はしない」というスタンスのためのもので、対外的には「すみませんが、そこは北海道の一部なんで、すみやかに赤軍を引いていただけないでしょうか」というものだった。

択捉や国後が「北海道の一部」などという主張は、戦前の地図を見れば一目で大嘘であることが分かるし、当時の人々も「それは無理ポでは」と思っていたのだが、日本政府が数十年にわたってプロパガンダを続けた結果、ごく一部のソ連・ロシア学徒を除いて、全員信じてしまっている。歴史研究者ですら、それを信じているのには本当に閉口させられる。

ところが、日本政府はここに来て対露関係改善の必要が生じたことにより、「不法占拠」論を一方的かつ何の説明も無く取り下げて、「無かったこと」にしてしまった。
政府としては「日露交渉の障害となる(そもそもロシアと話さないための根拠だった)不法占拠論を取り下げよう」という意向だったと推測されるが、何の説明もなされなかったため、これを敢えて穿って見た場合、

「(60年も言って聞かない)ロシアに立ち退きを懇願するのはもう止めだ!実力行使あるのみ!」

と解釈してしまっても、何の違和感も無いのである。これは政府側としては「そんな受け止め方をされるとは想像もしてなかった」と言うしか無いだろう。しかし、これは説明責任を果たさなかった方に問題がある。
そもそも政府の説明では、択捉、国後は北海道の一部であるのだから、少なくとも形而上あるいは論理上は自衛権の行使に何の障害もないのだ。
これを「北方領土に対しては自衛権を行使しない」と言うのは、あくまでも現政府の解釈であって、日本国が自衛権を認めて自衛隊を保有している以上、自衛権の行使範囲は時の政府によって変更可能なのだ。
これは、憲法第九条を恣意的に解釈して、自衛権と自衛隊を認めたことと、対ソ外交と対米従属の狭間にあって「択捉、国後は北海道の一部」と宣言してしまった日本政府の「合成の誤謬」だった。

恐らく丸山某は何の考えもないだろうが、結果的には彼の発言は問題の本質を突いていると言えるのだ。

ただ、敢えて丸山君に「上から目線」で教えてあげるとすれば、対露領土奪還戦争には日米安保は適用されないし、「第二次世界大戦の結果に対する異論、特に武力行使」は即座に国連憲章の敗戦国条項に違背、国連=連合国
に対する再戦と見なされる、ということである。
まぁ昔の軍令部次長によれば、「あと二千万男子が特攻すれば、日本は必ず勝つ」ということではありましたが(爆)
posted by ケン at 00:00| Comment(9) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月10日

ヤラないよりはマシだけどチグハグ

【政府、日朝首脳会談呼び掛けへ 拉致進展前提とせず】
 政府は日朝首脳会談の無条件開催に応じる用意があるとして、北朝鮮に早期実施を呼び掛ける方針を固めた。北京の大使館ルートなどあらゆるレベルの接触を通じ「条件を付けずに金正恩朝鮮労働党委員長と直接向き合う」とした安倍晋三首相の意向を伝達する。政府関係者が7日、明らかにした。
 拉致問題の進展を首脳会談の「前提条件」としてきた従来の交渉方針を転換した形。首相の呼び掛けに、金氏がどう対応するかが焦点となる。会談の無条件開催について、政府は大使館の公式ルートのほか、国際会議の場を利用した高官接触や、首相側近による非公式協議を通じて伝達することを想定している。
(5月7日、共同通信)

【北朝鮮に東京五輪のID付与せず 組織委、制裁が背景】
 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が、選手団参加や入場券配分の手続きを行うために各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)が必要とするIDなどの電子情報を北朝鮮NOCにだけ提供していないことが9日、分かった。北朝鮮国籍保有者の入国を原則禁じる日本独自の制裁が背景にあり、同国に厳しい姿勢を取る首相官邸に配慮した可能性がある。北朝鮮側は「五輪憲章の精神に反する」と反発、国際オリンピック委員会(IOC)を通して正式に抗議することも検討しているという。今後、日朝政府間の接触が実現した場合は、この案件も議題に上る可能性がある。
(3月10日、共同通信)

完全に時機を逸しているが、政府はようやく無条件での日朝交渉に転じる模様。
しかし、自ら拉致問題を掲げて交渉を途絶した結果、交渉ルートすらない有様。
国内的にも北朝鮮とパイプを持つ国会議員などを弾圧、あるいはバッシングした結果、こちらも関係が失われており、実はアントニオ猪木に頼るしか無いくらいにお粗末な状況になっている。
逆を言えば、猪木氏に象徴される少数派議員による議員外交は、正規の外交ルートが失われた場合の命綱になることを示しているわけだが、外務省はこれを絶対的に拒否し、ことあるごとに妨害してきた。やはり外務省は害悪しか無い省庁である。

また、北朝鮮と外交交渉に応じたいなら、当然五輪参加への便宜を図るべきところであるが、一方で五輪参加を拒否しておいて、「無条件の日朝交渉」のみを要求するというのは、余りにも虫が良すぎるだろう。

交渉手法にしても、「拉致問題を解決してから交渉」とか「北方領土の(日本への)帰属を決めてから交渉」とか、自国の都合を押しつけるだけのものであり、そもそも「双方の合意点を探る」という交渉の基本からして守るつもりが無い。

この辺の外交下手は日華事変時の「爾後国民党政府を対手とせず」や、ハルノートを一方的に「最後通牒」と見なして宣戦布告なしで奇襲攻撃を仕掛けた太平洋戦争の頃から一歩も進歩していない。
いっそのこと外務省の仕事は全て外交交渉の上手い国にアウトソーシングした方が良いので無いか(爆)
posted by ケン at 12:00| Comment(5) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする