2019年12月25日

韓国で合計特殊出生率が1以下に

【韓国18年出生率、初めて1.0割れ 世界最低水準に 】
 韓国統計庁は27日、2018年に同国で生まれた子どもの数(出生数)は前年より3万人あまり少ない約32万7千人で、過去最少だったと発表した。一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は0.98と、データがある1970年以来初めて1を割り込んだ。少子化が進む日本よりも急速に出生率が低下しており、世界でも最低水準となった。
 統計庁によると、18年の出生率は前年に比べ0.08下がった。平均出産年齢は32.8歳と、前年から0.2歳上がった。1980年に2.82だった韓国の出生率は、90年に1.57と日本と並ぶ水準に低下した。00年から15年の間は1.2前後だったが、17年に1.05に急減した。 背景には若者の経済不安がある。韓国では10年ごろから「恋愛、結婚、出産」をあきらめる「3放世代」という言葉が使われ始めた。財閥系の大企業と中小企業の待遇差や、不安定な労働市場に不安が広がったためだ。経済的事情から子供を持つことに慎重な家庭が多いとみられる。加えて、韓国統計庁の担当者は「未婚女性の増加」を理由に挙げる。30〜34歳の女性の未婚比率は、00年の10.7%から15年は37.5%に上昇した。優秀な成績で大企業に入社した女性の中に、結婚よりキャリアアップを優先する意識が強まった。産休をとると昇進が遅れる企業文化が背景にあるとの指摘もある。日本の17年の出生率は1.43。アジアでは台湾が10年に出生率が1を割ったことがあるが、子育て世代の支援を強化したことで現在はやや回復した。米国は17年に30年ぶりの水準に落ち込んだが、1.76にとどまる。
 韓国は予想より早く人口減少が始まる公算が大きい。統計庁は昨年、人口が減少に転じる時期を28年としたが、一部の韓国メディアは「24年ごろに早まる可能性がある」と指摘する。同庁は27日、人口減少時期について「データを精査して3月に説明する」とした。出生率低下が続けば社会保障や経済成長に悪影響を与える恐れがある。政府は過去10年で130兆ウォン(約13兆円)を投じて保育所の増設などの少子化対策を進めたが、目に見える効果はあがっていない。
(2019年2月27日、日本経済新聞)

一年前の報道だが、他人事ではない。
韓国は経済成長率も2%程度にまで落ち込んでおり、安全保障面でも米中の狭間にあって非常に不安定なままとなっており、国内では少子化に歯止めが止まらない状態となっている。

この点、日本は海を隔てている分、安全保障面では韓国ほど切羽詰まってはいないが、それだけに対米依存から抜け出せないという問題を抱えている。また韓国で少子化が日本よりも激しいのは、韓国の方が女性の高学歴化と社会進出が著しい割に、日本以上に男尊女卑思想が根強いためだと考えられる。また、人口の海外流出も日本より激しいことも影響していそうだ。
日本の合計特殊出生率は1.4程度で横ばいとなっているものの、改善される目途は立っておらず、現状の社会労働環境を考慮すれば、今後はさらに低下しそうだ。
韓国の問題は、必ずしも家族政策だけでは出生率が改善しないことを示唆しており、やはり労働環境や社会意識そのものを変えないと難しいことを示している。

これに対し、中国では合計特殊出生率が1.65程度を保っており、2000年代に1.5まで低下したところから、少しずつ改善している。中国は急速な高齢化で、社会保障制度の維持存続に難は生じるだろうが、韓国や日本ほど急速な人口減にはならず、この点でも一定の安定性を維持しそうだ。
中国の出生率については、数字の正確性を疑問視する声もあるが、少なくとも私の周囲には40代以上の単身者や、30代の子のいないカップルは殆どおらず、日本とは大きく異なる印象がある。
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2019年12月18日

アメリカの平均寿命低下からわかること

【経済格差などによる「絶望死」が要因か…アメリカ人の寿命は短くなっている】
 アメリカ人の平均寿命は3年連続で低下している。新しい研究は、25歳から64歳までの「生産年齢」のアメリカ人が、より高い割合で死んでいるという事実を示した。
 この死亡には、健康上の問題の中でも特に、薬物の過剰摂取、自殺、アルコール関連疾患が関与している。複数の専門家は、社会経済的な不平等と経済的困難がアメリカ人の死の増加の原因となっているかもしれないと見ている。アメリカは世界で一番裕福な国だが、平均寿命の針が間違った方向に動いている。1959年から2014年にかけて、アメリカ人の平均寿命はずっと上昇していた。しかし、『Journal of the American Medical Association』に発表された新しい研究によると、ここ3年は連続して低下しているという。
 「アメリカ人は生活のさまざまな面で自分たちが優れているという誤解の下で活動している。これはその一つだ」と、本研究の筆頭著者であるスティーブン・ウルフ氏はBusiness Insiderに語っている。
「世界で最高の医療と最高の平均寿命があると思うかもしれないが、そうではない」
 この低下は、人種や性別、地域に関連しているわけではない。アメリカでは25歳から64歳までの人の死亡率が高く、オピオイド中毒、肥満、アルコール性肝疾患、自殺などの問題に悩まされている。国民一人当たりの医療費が世界一であるにもかかわらず、アメリカ人は「他の国の人よりも65歳未満で亡くなる確率が高い。また、彼らの子どもも同様に長生きはできそうにない」とウルフ氏は付け加えた。
(12月8日、Business Insiderより抜粋)

ソ連学徒的には見逃せないパワーワード。
私の世代はソ連研究に際して、必ずE・トッドを読まされたものだが、「勤労世代の死亡増による平均寿命の低下」はソ連の衰退を示す重要な指標だった。
アメリカではここ数年、乳幼児死亡率や未成年者の死亡率が上昇傾向に転じるという報道もあり、1970年代のソ連と同様の兆候が見られる。これらは、社会資本の非効率的な分配と、社会インフラの老朽化・衰退が大きな原因と考えられるが、現在の米国で改善される兆候は見られない。
米国では、巨大な額の医療費が費やされているが、その恩恵に預かれるのは一部の人間に限られ、貧困層は医療を始めとする社会保障から排除されてしまっている。社会インフラも民営化が進み、公共部門は恐ろしく老朽化が進み、荒廃がとまらないようだ。
巨大な軍事費、非効率的な社会投資、貧富の拡大と社会的分断(分裂)などなど、ソ連の状況とは同じでは無いものの、相似性は否めないだろう。

他方、日本の場合、平均寿命の低下や乳幼児死亡率の上昇は認められないが、経営責任や政治責任が問われない制度が生産性の向上と社会資本の効率的運用を阻害している。また、教育の公的投資を否定し、政治家がこれを私物化することから、教育水準の長期的低下が不可避となっている。少子化に歯止めが効かないことは言うまでも無い。
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2019年12月12日

プレミアム商品券、申請3割どまり

【プレミアム商品券、申請3割どまり 手続き煩雑で】
  内閣府は13日、消費増税対策として準備した低所得者向け「プレミアム付き商品券」の申請率が約34%にとどまっていることを明らかにした。手続きの煩雑さや購入費用の負担がネックになっている。内閣府は自治体がまだ申請していない対象者約1千万人に対し、再度申請書を郵送する費用を負担するなどして、申請率を高める考え。
 集計は10月25日時点。申請期限は自治体によって異なるが、一部では延長を決めたところもある。商品券は子育て世帯と住民税非課税の所得が低い人が購入できる。子育て世帯には自動的に商品券の購入に必要な引換券が送られてくるが、低所得者が購入を希望する場合には事前に自治体に申請する必要がある。
(11月13日、日本経済新聞より抜粋)

そもそも貧困者がまとまった余剰金を持っているはずがなく、さらに言えば申請の手間と時間も無いだろう。平日の昼に誰が役所に行けるんだ?
申請書もう一回送っても同じこと、無駄なカネだ。
これも地元商工会などと結託した政治的癒着構造の一つで、だからこそ自営業に強いKM党(SG)が強力に推進する。

貧困化したことのないヤクニンと政治家が頭だけで考えるとこうなるという見本。
一方、金持ちは税金5000万円使って、新宿御苑で大パーティー。

どうでもいいから、さっさと直接給付にしろ!!
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2019年11月26日

薬の出し過ぎ問題

【医療機関 かぜ患者の30%余に効果がない抗菌薬を処方】
 かぜで医療機関を受診した患者に対して、実際には効果がない抗生物質などの抗菌薬が30%余りの人に処方され、処方される割合は地域によって20ポイントを超える差があることが、全国健康保険協会の調査で明らかになりました。 抗菌薬は細菌には効果がある一方で、ウイルスが原因のかぜやインフルエンザなどには効かず、不必要な処方が薬が効かない耐性菌を増やすことにつながっているとして、国は抗菌薬を適正に使用するよう求めています。中小企業の健康保険を運営する全国健康保険協会は、およそ4000万人の加入者の診療報酬明細書を分析し、「急性上気道炎」、いわゆる「かぜ」の患者に対してどれだけ抗菌薬が処方されているか調べました。その結果、処方された割合は昨年度は31.4%と、43.6%だった2015年度よりは12ポイント余り減っていましたが、依然不必要な処方が多いことが明らかになりました。
 また、都道府県別のデータがある2017年度で分析すると、処方の割合が最も低かった福井県は26.6%でしたが、最も高かった奈良県は48.9%で、20ポイントを超える差がありました。結果について全国健康保険協会は「かぜに対して抗菌薬が使われる割合は依然多く、地域によって大きな差があることが明らかになった。耐性菌の出現を減らし健康を守るためにも、抗菌薬の適切な使用を促していきたい」と話しています。
(10月28日、NHK)

そもそも風邪で医者に行くこと自体が無駄で、むしろ他者にうつしたり、自分が別の病気をうつされたりするという点で、むしろ害悪の方が大きい。風邪に対してできるのは、栄養を取って、暖かくして、安静にすることだけだ。医療技術は関係ない。

しかし、医者の方は患者に来てもらわないと儲からないし、来たからには薬の一つも出さないと「ヤブ」扱いされるし、自分も儲からないので、「何でもいいからだしとく」ということにしかならない。

将来的には一次診断はAIに任せ、人間が診療するのは二次以降(AIの診断後)ということになるのだろうが、もう少し時間がかかりそうだし、それで人が納得するのか疑問もある。まぁそこは人間による一次診断の料金を高く設定すれば良いだけだが。
逆を言えば、人間が診察するから「不正」「無駄遣い」が横行するわけで、「不正・無駄撲滅」という立場に立てば、医療業界へのAI導入を加速すべきなのだ。

いずれにせよ、高齢者が増えれば、風邪などの患者も増えるのが道理(免疫力が低下するから)であり、医療費のさらなる高騰は不可避の情勢だ。早急に手を打つ必要がある。
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2019年11月12日

医療無償化のツケ:徳島の場合

【徳島県立中央病院 来月から小児救急縮小 県内、24時間体制ゼロ】
 徳島県立中央病院(徳島市)の小児科の救急医療体制が、11月1日から縮小される。現在は24時間体制だが、小児科医1人が産休に入るため、維持が難しくなった。今後は徳島赤十字病院(小松島市)と交代で対応する。県内で24時間体制で小児科医が対応できる救急病院はゼロになる。
 県立中央病院の小児診療は11月以降、夜間(午後10時半〜翌日午前9時)の受け入れが火、木曜のほか、金、土、日曜を隔週で赤十字病院と交代で対応する。月、水曜の夜間は赤十字が受け入れる。両病院とも平日の日中の小児診療は通常通り行う。月曜から土曜の午後7時半〜同10時半、日曜・祝日の午前9時〜午後10時半は徳島市夜間休日急病診療所が対応する。
 小児科の救急医療体制は9月、赤十字病院の小児科医が産休に入るなどしたために見直され、赤十字病院が24時間体制でなくなっていた。県医療政策課は「元に戻せる時期は未定。医師の復帰の時期を見て、体制を戻せるよう協議を進めていく」としている。
(10月22日、徳島新聞)

何度も述べているように、ケン先生は社会主義者だが、持続不可能な制度は意味が無い。
医療費無料のことである。

徳島の場合、小児医療助成制度によって自己負担分も還元されるため、実質的な自己負担額はゼロとなっている。
日本全国で小児医療、特に小児救急システムが維持できなくなっているのは、小児医療のコストが高い割に診療報酬が低く抑えられている上、地方に行けば行くほど「少子化対策」として小児医療を無償にしていることが大きい。

小児医療の場合、患者が小さい子どもであるため、自分で病状や症状を説明することが難しく、同時に医者から見ても成人の場合より診断が難しいとされる。そもそも診察を怖がる子どももいたりして、診察自体、非常に多くの時間を要する。結果、看護師の人手も時間も多く取られる。つまり、「営業効率」が非常に悪いのだ。
このコスト高に比して、診療報酬は逆に「子どもだから」と低く抑えられているため、病院経営の面から言えば、小児科は「恒常赤字部門」でしかない。そのため、悪化した病院経営を改革する場合、真っ先に切られるのが小児科ということになる。

中小の病院で小児科がなくなると、大病院に集中することになるが、今度は医師の確保が難しくなる。
大病院の小児科は自然と激務になり、「権藤、権藤、雨、権藤」(古!)のように当直が強制され、小児医は疲弊、辞めるものが増える一方、不足分を募集しても人が確保できなくなっている。
また、医師はできるだけ早く開業しようとするため、常にベテランが不足し、新人を使い潰すような状態にもなっている。
ただでさえ、小児医は女性の比率が高いため、出産や育児によっても制限がかかり、ますます労働力が不足するという形だ。

これに対して、確かに少子化は進んでいるものの、地域小児科不足の進行の方が早い上、「小児医療無償化」もあって、ちょっとした風邪でも救急に行くということも常態化しており、小児医療は「薄い戦線でかろうじて持ちこたえている」状態となっている。

必要なのは、小児医療無償化の廃止と、小児医療の報酬の見直しだが、いずれも政治的理由から困難であり、現状では「薄い戦線」が自然消滅するのを、指をくわえて待っているだけのようなものとなっている。
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2019年10月18日

加速する人口減

【出生数90万人割れへ 19年、推計より2年早く】
 日本の出生数が急減している。1〜7月は前年同期に比べて5.9%減り、30年ぶりの減少ペースとなった。団塊ジュニア世代が40代後半になり、出産期の女性が減ったことが大きい。2016年に100万人を下回ってからわずか3年で、19年は90万人を割る可能性が高い。政府の想定を超える少子化は社会保障制度や経済成長に影を落とす。出産や子育てをしやすい環境の整備が急務だ。
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 厚生労働省の人口動態統計(速報)によると、1〜7月の出生数は前年同期比5.9%減の51万8590人。減少は4年連続だが、19年は月次でも3月に7.1%減となるなど、大きな落ち込みが続く。18年1〜7月は同2.0%減だった。
(10月7日、日本経済新聞より抜粋)

出生数は2016年に100万人を下回ったばかりなのに、2019年には90万人を下回る勢いだという。
要はケン先生や少し下のいわゆる「団塊ジュニア」世代の出産期が終わったことが大きいようだ。
合計特殊出生率では若干の改善が見られるものの、全体をカバーするほどではなく、劇的な変化が起こらない限り、今後は加速度的に減っていくことになりそうだ。
特に若年層は生活保守志向が強いとされており、だとすれば、リスクの高い婚姻はますます忌避されると考えられる。

幼保無償化こそ実現したものの、その他の教育費はますます高騰する気配を見せており、消費増税でも生活難が加している。賃金上昇は上場企業正社員や一部のアルバイトなどに限られており、8割以上の労働者には無縁なものとなっている。
家族を持つこと自体がリスクとなっている以上、合理的に判断するものが多ければ多いほど、増える要因も少なくなる。ある意味で、天皇家もまた現代日本を象徴していると言えよう。

人口減そのものはケン先生も由とするが、急激な減少は非常に深刻な事態を生みそうだ。
政府はそれをカバーすべく、外国人奴隷や人権適用外の外国人労働者の招聘に力を入れているが、そもそも日本の労働市場としての価値が失われているため、非常に低調だという。

家族政策への追加投資などケン先生が政界に入った頃(20年前)から言われてきたが、無視し続けてきた結果なのだ。その意味では、デモクラシー下においては、「市民の選択の結果」だと言える。
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2019年06月25日

「無かったこと」にしてもどうにもならん

【「年金給付水準の低下」原案から削除 財政審が配慮か】
 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が麻生太郎財務相に提出した建議(意見書)で、原案にあった「将来の年金給付水準の低下が見込まれる」「自助努力を促すことが重要」との文言が削除されていたことがわかった。麻生氏が、老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の審議会報告書の受け取りを拒否したことなどで、老後の生活不安問題が夏の参院選の主要争点となる見通しだ。このため、財務省が安倍政権に配慮したのではとの見方も出ている。建議は19日の会議でとりまとめられ、提出された。財政悪化に歯止めをかけるため、社会保障の改革の必要性などを提言した。
 財政審はこの前回の6日の会議で、審議会メンバーら「起草委員」が作成した建議の原案を非公開で議論。関係者によると、原案では、年金について「将来の基礎年金の給付水準が想定より低くなることが見込まれている」「(年金だけに頼らない)自助努力を促していく観点が重要」などの文言が盛り込まれていたが、建議では削られた。
 年金をめぐっては、金融庁の審議会が3日、老後の生活費が「2千万円不足」するなどとした報告書をまとめたが、金融担当相を兼務する麻生氏が11日に「年金制度への誤解と不安を招いた」などとして受け取り拒否を表明したばかりだ。参院選を前に、都合の悪い事実を隠そうとしていると野党などが批判している。
(6月20日、朝日新聞)

私の言いたいことは全て「金融庁の年金報告書が「なかったこと」に」で述べているので、繰り返しになってしまう。
年金は株価予測と違って、保険料と給付金額の関係が非常に明快で、人口の増減や基金運用の正否は予測が外れることもあろうが、基本的には未来予測が可能な世界である。
それだけに基本的に年金額が低い日本の場合、「失われた30年」による収入低下もあって、年金だけでは暮らせない層が増えてゆくのは避けられない情勢にある。
また、2040年には65歳以上の高齢化率が40%近くなるのだから、大増税を行って税による補填を行わない限り、年金の給付額は低下せざるを得ないだろう。なにせ、保険料を負担する層と年金を受給する層が限りなく一対一に近づいてくるのだから。
年金制度そのものが崩壊する可能性は限りなく低いが、給付水準や受給開始年齢などの条件はさらなる悪化は不可避の情勢にある。

そうした「不都合な事実」を指摘した報告書を「無かったこと」にするのは、戦前の総力戦研究所の報告書やミッドウェー作戦の事前演習を彷彿とさせる。

政策の選択肢的には、報告書の通り現行のシステムを維持しつつ、市民の自助努力に委ねるか、さもなければ保険料ないし税を大幅に増やして給付水準の維持・向上を行う他ない。
後は、私が常々述べているように、年金以外のところで公営住宅の増設を行ったり、住宅補助金を出す仕組みを作ることが考えられる。この場合も、財源をどこに求めるかが問題になる。私の提案は資産課税である。

年金問題は本質的に鬼門で、ロシアのプーチン大統領ですら、年金問題で瞬間的に支持率を半分近くまで下げてしまったことがあるくらいだ。
いくら自民党が強いとは言え、それはあくまで「野党が弱すぎる」という相対的なものであり、選挙前の自民党が「無かったこと」にするのは戦術的には正しいのだろうが、戦略的には失敗するほか無い道である。
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