2018年09月05日

膨張する予算と財政危機

【概算要求、102兆円台後半に=企業は設備投資増額を―麻生財務相】
 麻生太郎財務相は4日の閣議後の記者会見で、2019年度予算の概算要求総額が102兆円台後半になるとの見通しを明らかにした。また、来年10月に予定される10%への消費税増税を念頭に、「予算編成の段階から(消費税が)2%上がった分で起きるであろうことを予想して対策を取る」と述べ、19年度予算編成で需要反動減対策を講じる考えを改めて示した。
 財務省が3日発表した法人企業統計調査で、17年度末の内部留保が過去最高を更新したことについては、「収益が上がっているのはいいこと」と強調。その上で、「利益の使い方がさらに先の設備投資にいかないと具合が悪い。賃金が上がらないと消費につながらない」と述べ、企業に設備投資の増額や賃上げを求めた。
(9月4日、時事通信)


先に述べたことだが、国債費と地方交付税交付金等を除いた政策経費である2017年度一般歳出58.4兆円に対して、社会保障関係費が32.4兆円で56%、公共事業費が6兆円で10%を占めている。社会保障費は、保険料と窓口負担で賄えない赤字分で、ソ連における食糧価格調整金と同じ類いのものだが、この10年で10兆円以上増えている。
保険料や窓口負担で賄えきれない社会保障分の税による立て替え負担は以前より急増しており、その額は10年前に年5千億円を超え、今では1兆円を超えてさらに増える見込みになっている。社会保障制度の底に大穴が開いて、税金で補填しているものの、全く間に合わず、逐次投入している状態にある。国家予算一般歳出における社会保障費を除く政策経費は、2008年の25.5兆円に対し、3%の消費増税を経ても、同17年で26兆円にしかなっていない。つまり、増税は赤字を補填する程度の効果しか無い。

安倍政権が財政を維持できているのは、税収が増えたことによる。しかし、これは日銀が国債を引き受け、年金で民間株を買い占めたためで、対外的要因で株価が暴落した場合、いきなりサドンデスとなる可能性がある。
例えば、2018年の税収はバブル期並みの58兆円を越える見通しだが、これが2010年の38兆円に激減した場合、政策経費が完全に足りなくなることを意味している。日銀が金融緩和を止められない理由の一つであろう。

ペレストロイカとは、つまるところ財政改革で、歳出の30%を占める国防費、20%を占める食糧価格調整金、20%を占める国営企業赤字補填を可能な限り減らして、政策経費を確保することが目的だった。だが、歳出改革に失敗(1990年でもほぼ同レベル)、資源価格の暴落と対東欧貿易の未払いが重なって歳入が急減、行政が機能不全に陥った。

現代日本もまた同じ道を辿る蓋然性が高い。戦争の場合は歳出増による財政破綻の流れだが、戦争がなくとも、何らかの理由で税収が激減した場合、政府機能が停止、公務員の給与が払われなくなって、行政が麻痺するケースである。具体的には、行政府や学校の閉鎖、治安の急悪化、政情不安、独裁への道という流れだろう。
ソ連やユーゴスラヴィアのケースから考えた場合、東京五輪から10年、つまり2030年前後が戦後体制・昭和帝政の終焉を迎えると推測される。
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2018年08月04日

破綻に向かう日本財政

【17年度の国民年金納付率、実質は40% 低年金課題に】
 厚生労働省が29日に発表した2017年度の国民年金の納付率は66.3%で、6年連続の改善となった。ただ保険料の全額免除者・納付猶予者を含めた実質的な納付率は40.3%にとどまり、ここ数年横ばいが続いている。免除者が低年金になる問題や、都道府県ごとの納付率格差など、国民年金はなお多くの課題を抱えている。
 国民年金は自営業者や農林水産業者などが加入する。17年度の納付率は前の年度と比べて1.3ポイント上昇。最低だった11年度の58.6%から改善傾向が続いている。
 ただこの納付率は低所得などの理由で保険料の納付を全額免除・猶予されている574万人を対象に含まずに算出している。その人数を含めて計算すると、国民年金の加入者のうち6割は保険料を納めていない。
 保険料の免除者は年金額が減る。そのため納付率が低くても年金財政への影響はほとんどないというのが厚労省の立場だ。しかし免除者の多くは低所得者で、老後も低い年金しかもらえない場合は生活保護の受給につながる可能性がある。
 都道府県ごとの納付率のばらつきも解消されていない。最低の沖縄は49.1%と半分に満たず、最高の島根の80.6%とは30ポイント超の開きがある。
(6月29日、日本経済新聞)

年金自体はマクロ経済スライドが導入されているので、給付額が調整されるだけとも言えるが、納付率の低下は納めない分、もらえる額が減ることになるため、結局生活保護の方が良いとなるか、生活保護が得られずに貧困死するか、いずれにしかならない。高齢化と貧困化の同時進行が、ダブルパンチとなって巨大な貧困層を形成する未来が予測される。

より危険なのは医療費で、2015年度の医療費を見た場合、全体の42.3兆円に対し、保険料が20.7兆円、国と地方を合わせた公費が16.5兆円に対し、患者の自己負担分は4.9兆円となっている。医療の高度化と高齢化に伴い、その自然増分は年ごとに1兆円を超えるだけに、制度そのものを見直さない限り、健康な若年層を収奪する結果にしかならない。だが、ただでさえ貧困化が進んでいる若年層からの収奪は、社会の連帯意識を下げ、共同体に対する憎悪を引き起こしかねない。それは、ファシズムの根源でもある。

ペレストロイカとは、つまるところ財政改革で、歳出の30%を占める国防費、20%を占める食糧価格調整金、20%を占める国営企業赤字補填を可能な限り減らして、政策経費を確保することが目的だった。だが、歳出改革に失敗(1990年でもほぼ同レベル)、資源価格の暴落と対東欧貿易の未払いが重なって歳入が急減、行政が機能不全に陥った。

翻って今の日本を見た場合、国債費と地方交付税交付金等を除いた政策経費である2017年度一般歳出58.4兆円に対して、社会保障関係費が32.4兆円で56%、公共事業費が6兆円で10%を占めている。社会保障費は、保険料と窓口負担で賄えない赤字分で、ソ連における食糧価格調整金と同じ類いのものだが、この10年で10兆円以上増えている。

安倍政権で税収が増えたのは、日銀が国債を引き受け、年金で民間株を買い占めたためで、対外的要因で株価が暴落した場合、いきなりサドンデスとなる可能性がある。ソ連学徒的には、2020年の東京五輪は1980年のモスクワ、84年のサラエボ五輪と被って見える。
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2018年07月10日

水道民営化促進法案が衆院通過

【水道法改正案が衆院通過 広域化で老朽化対策急ぐ】
 市町村などが手掛ける水道事業を広域化する水道法改正案が5日の衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決、参院へ送付された。広域化や民間企業の参入を促すことで水道事業の経営を効率化し、水道管の老朽化対策などを急ぐ。大阪北部地震で老朽化対策の遅れが注目された。与党は22日に会期末を迎える今国会での成立をめざす。
 改正案は、複数の市町村で事業を広域化して経営の効率化をはかるため、都道府県が計画をつくる推進役を担う内容だ。市町村などが経営する原則は維持しながら、民間企業に運営権を売却できる仕組みも盛りこんだ。
 市町村などの水道事業者は人口減による収入減などで赤字体質のところが多く、老朽化した水道管の更新が遅れている。厚生労働省によると、40年の耐用年数を超えた水道管の割合は2016年度末に全国で平均14.8%だ。更新率は0.75%で、全て更新するのに130年以上かかるペースになっている。
(7月5日、日本経済新聞)

災害と死刑とワールドカップですっかり霞んでしまっているが、水道民営化促進法案(政府呼称は水道法改正案)が衆議院で成立した。
水道事業の民営化は、1990年代後半から2000年代前半にかけて一部の先進国で進められ、その後他国も追随するようになった。だが、民営化の一方で、一度民営化された水道事業の再公営化も進んでいる。

例えば、水道事業を民営化した米アトランタ市の場合、過剰なコストカットによって技術者が不足して修繕・補修が追いつかなくなり、配水管の破損や路上への水漏れ、汚水噴出などが相次いだ上、必要な技術者を確保できず、いつまで経っても直らないという事態が生じた。そのため、2003年に水道事業を再市営化するところとなっている。
フランスではパリの場合、民営化して14年で水道料金が2倍になった上、利権汚職が続発、2010年に再公営化している。

再公営化した世界の大都市は、パリ(仏)、ベルリン(独)、アトランタ、インディアナポリス(米)ブエノスアイレス(アルゼンチン)、ラパス(ボリビア)、ヨハネスブルク(南ア)、クアラルンプール(マレーシア)などが挙げられる。

これらの民営化事業から見えることは、必ずしもコストダウンに繋がらず、むしろコストカットから投資が滞り、整備不良から漏水などの事故が頻発、同じく人員削減や民間委託から対応の遅れが生じ、安定供給に支障が起きているということだ。
また、再公営化が急がれたのは、水道技術が国や自治体で失われる前に行う必要があったからだという。

日本の場合、現状でも1400近い水道事業者のうち33%が採算割れしており、政令指定都市などの大都市部を除いて倒産の危機にあるという。だからこその広域化・民営化というのがヤクニンの発想らしいが、実際には大都市部以外で民営化しても倒産が前倒しになるだけで事態が悪化するだけになる可能性が高い。
この点でも公共の優先順位を誤った戦後システムは倒壊しつつある。

【参考】
水道代は高騰の一途 
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2018年04月18日

介護もボランティアへ?

【軽いかぜは患者の自己負担上乗せ 医療費など抑制へ提案】
 先進国で最悪の水準の日本の財政を立て直すため、財務省は、医療費や介護費の膨張を抑える制度の見直し案をまとめました。軽いかぜなどで診察を受ける場合は、患者の自己負担を上乗せするよう提案しています。見直し案は、11日開かれた財務省の審議会で示されました。このうち医療の分野では、患者が病院などの窓口で支払う自己負担について、軽いかぜなど少額の外来受診の場合は、負担を上乗せするよう提案しました。
 また医療機関に支払われる「診療報酬」は、今は全国一律の水準になっていますが、地域によって医療費の伸びにばらつきがあり、住民が支払う保険料の負担にも格差が出ていることから、自治体の判断で引き下げることができるようにするべきだと提案しました。
介護の分野では、掃除や調理などの身の回りの世話をする生活援助のサービスについて、ホームヘルパーの代わりに地域の住民やボランティアを活用できるようにして費用を抑えることを提案しています。審議会は、これらの案を基に提言をまとめ、ことし6月までにまとまる国の新しい財政健全化の計画に反映させたいとしています。
(4月11日、NHKニュースより抜粋)

障がい者支援をボランティアに委ねる施策が発表されたのは昨年だった
東京五輪では、通訳スタッフすら無償となり、人手が足らずに中高生まで内申書をちらつかせての動員が進められている。
教職員は非正規化が進められ、居住外国人向けの日本語教育や夜間学校は大半がボランティアで賄われている。

東京五輪には2.5兆円から3兆円かかると見込まれるが、必要とされるボランティア要員は11万人で、仮に期間中20万で雇用したとしても220億円でしかない。にもかかわらず、この11万人はことごとく無償労働奉仕が求められている。この一点からも、誰が誰のために行うイベントであるか想像できよう。

現状ですら在宅介護は「地獄」と形容される惨状にあり、経験者が無償ボランティアで、たとえ生活支援であれ、他者の介護を引き受けるとは思えない。介護を自分でやることなど一生ない霞ヶ関エリートの花畑脳のなせる業だ。
診療報酬の引き下げで病院職員の給与も切り下げられるところとなり、社会保障制度そのものの存続が危ぶまれる状況になっている。

若年層にボランティアを求めるとしても悲劇でしかない。今の若年層は、社会人になる前に教育ローンで負債を抱え、月15万ほどの低賃金で朝から夜半まで休み無く働かされ、四畳半一間の古アパートで生存レベルギリギリの生活を送るものが増えているというのに、さらに地域老人の世話を無償でやらされるとなれば、社会に対する怨嗟は天をも突く勢いとなるだろう。
もっとも、強制力を伴わないボランティアで、進んで無関係の老人の世話をしようというものは殆どいないとは思われる。それだけに、「ボランティアのなり手がいない」という時に、強制徴募のような形が取られる可能性は否めない。

現代の資本主義社会は、農村共同体を解体して労働力を都市部に集約することで発展を続けたが、収奪にさらされた労働者の不満を抑えるために導入された社会保障制度が少子高齢化によって持続性を失うと、今度は農村回帰しようというのが、霞ヶ関エリートの目論見なのだろう。
だが、一度解体してしまった共同体原理を核化著しい現代社会にいきなり適用するのは、どう見ても無理がある。合成の誤謬とも言える。この点、歴史や統治論(ガヴァナンス)についての無知が垣間見られ、日本型エリート統治の限界と終焉が予測される。
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2018年04月02日

民間委託のなれの果て

【“中国企業に個人情報”社長が謝罪】
 日本年金機構から個人情報の入力を委託された会社が、中国の業者に個人情報を渡していた問題で、この会社の社長が謝罪した。SAY企画・切田精一社長「関係者の皆さんにご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」契約に違反して中国の業者に個人情報の入力を再委託していたのは、東京・豊島区にあるSAY企画。同社は「名前」と「ふりがな」500万人分の情報を渡したことを認めた上で、「中国の業者はグループ会社という認識で、再委託にあたらないと思った」「短期間で500万人分の入力が大量だった」と話している。加藤厚労相は20日午後、年金機構の理事長を呼び、委託業務の見直しなどを指示する方針。
(3月20日、日本テレビ系)

最悪の場合、500万人から1300万人分のマイナンバーが再発行となる可能性があるという。
民間委託のなれの果て。先日中国に行ったときに聞いた話では、中国ではクーポン欲しさに携帯番号などを登録すると、翌日には知らない人から電話が来るという。
多少なりとも中国の知識や注意があれば、個人情報を中国企業に丸投げするなど行わないはずだが、利益を出すことを目的とする民間企業では、個人情報も「商品」という認識しか無いのだから、利益を出すために海外委託するのはごく正当な行為と認識されるのだろう。

個人情報は放射能と同じで一旦流出すると回収する手段が無いため、「テヘペロ」で済ませるほか無く、ある意味では「ケツをまくる」のも楽なのかもしれない。個人情報流出に対する罰則も非常に緩いため、雑誌の名誉毀損などと同様、「やり得」になっている側面もある。

もともと年金事業は公共事業であって、営利事業ではないはずだが、公営だと不必要な事業に手を出して癒着・腐敗が生じ、民営にすると利益至上主義となって賭博化する傾向がある。今回の場合、委託料が非常に低く抑えられていたため、海外企業に丸投げすることでしか利益を上げられなかったものと考えられる。聞くところでは、委託されたデータ入力作業は一件4円とも言われ、とても日本で成立する事業では無かったことが想像される。
また、民間委託に踏み切った背景には、低金利の影響で「安全な運用」では利益が上がらなくなって、少子高齢化も相まって年金財政が急速に悪化していることもある。

本件でも年金機構側が隠蔽を図ったという指摘もあり、森友疑獄でかすんでしまっているが、非常に重大な案件である。

「再委託にあたらない」という答弁も官房長官の手法を学んだ跡が見られる。そして、謝罪して終了と。すでに終わってるな。

【追記】
事実確認できていないが、聞くところでは、中国企業に委託した500万件の入力はノーミスだったが、日本側つまり自分たちで入力したデータでは50万件以上の入力ミスが発覚したという。いかに深刻であるか分かる。
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2017年12月15日

生活保護しかも母子加算から削るのか

【生活保護の母子加算、減額の可能性 厚労省方針】
 厚生労働省は来年度、生活保護を受ける一人親世帯に支給する「母子加算」を見直す方針を決めた。支給水準は現在検討中の生活費をまかなう「生活扶助」の新たな基準額しだいで変わるが、減額される可能性が高い。厚労省は年内に、生活扶助を含めた新たな基準額を決める。社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会が12日に示した、生活保護基準改定の方向性を示す報告書の案に盛り込まれた。
 一人親世帯は子育ての負担が重いことなどから、子どもが18歳になるまで毎月、平均約2万1千円(子ども1人の場合)の母子加算が支給されている。ただ、金額の根拠が不明確で、「保護を受ける母子世帯の生活費が、受けていない低所得の母子世帯の水準を上回っている」との指摘もあった。 そこで、新しい計算方法では母子加算を、保護を受ける一人親世帯が二人親世帯と同水準の生活を送るために必要な上乗せ費用と位置づけた。支給額は検討中の生活扶助の新たな基準額しだいで変わるが、数千円減る可能性もある。
(12月13日、朝日新聞)

一人親家庭の貧困率は6割に達するというのに。
給付水準を低所得層に合わせるということらしいが、低所得層に補助を出すなり、最低賃金を上げるなりして底上げを図るのが筋。低い方に合わせるという発想からして、いかにエリート層から相互扶助の概念が失われているかを物語っている。そして、それを支持して、生活保護バッシングを行う国民が少なくないことも影響している。

一人親家庭の貧困率がここまで高いのは、日本の労働環境に起因している。正規雇用が長時間労働や休日出勤、頻繁な出張、転勤などを前提としており、専業主婦のいない世帯では勤まらず、低賃金の非正規雇用に甘んじるほかないためだ。しかも、日本では同一労働同一賃金原則も確立しておらず、非正規雇用は貧困線上の賃金しか得られない。
また、非正規雇用の待遇が改善されないのは、正規雇用労働者の賃金が非正規からの収奪によって担保されているため、正規雇用労働者によって組織された労働組合が、非正規の待遇改善に反対するところが大きい。

連合の支援を受ける民主党などがこうした問題に冷淡だったのは、そのためだ。そして、その後継の一つである立憲民主党も、何の声明も出していない。その辺を主張せずに、憲法だの平和だの言っていれば、近いうちに見限られるだろう。
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2017年09月29日

医療費9年連続最高記録更新中

【医療費が大幅増、42.3兆円 15年度 高額薬剤響く】
 厚生労働省は13日、2015年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)は、42兆3644億円だったと発表した。前年度より1兆5573億円増加。国民1人あたりも1万2200円増の33万3300円で、いずれも9年連続で過去最高を記録した。
 増加率はここ数年、前年度比1〜2%台で推移してきたが、15年度は3・8%の大幅増となった。薬局調剤医療費が6985億円増えており、同年度に保険が適用されたC型肝炎治療薬などの高額薬剤の影響が大きいとみられる。 高齢化の影響もある。75歳以上が入る後期高齢者医療制度の給付は前年度比4・7%増の14兆255億円となった。国民1人あたりの医療費は、65歳未満が18万4900円なのに対し、75歳以上は92万9千円と約5倍だった。
 医療費の財源は、国民や企業が負担する保険料が20兆6746億円で全体の48・8%を占め、国と地方を合わせた公費は16兆4715億円で38・9%、患者の自己負担分は4兆9161億円で11・6%だった。 国民医療費は、保険診療の対象になる治療費の推計。健康診断や予防接種などの費用は含まれない。1990年度に20兆円を突破し、2013年度に40兆円を超えた。
(9月14日、朝日新聞)

医療費の増加は前年比で1兆5573億円。消費税1%分が約2兆円なので、2%上げても3年と保たないことを示している。言うなればバケツの底に穴が開いているわけだ。この穴を塞ぐためには、「窓口負担を増やす」「還付制にする(全額払い後戻し)」「診療費、薬価を上げる」などが考えられる。

日本の医療費が、保険料と窓口負担で賄えず、13兆円を税金で補填、その額が毎年増え続けているのを見ると、ソ連末期の財政とよく似ていることが分かる。ソ連で凄かったことの一つは、1954年から90年までパンの公定価格が一切変わらなかったことだった(70コペイカから1ルーブル)。だが、生産価格を無視した公定価格を維持するために、国庫から際限なく補助金が出された結果、歳出に占める食料価格調整金の割合は90年度の予算で20%にも達していた。そりゃ無理だわと思うわけだが、自国を振り返って見ると、税収45兆円に対して年金の国庫負担が11兆円、医療費の国庫負担が5兆円(自治体負担が9兆円)に達している。果たして我々はソ連崩壊を「他人事」と見ていて良いだろうか。
財政的には公的医療保険制度はすでに破綻状態にある。
2010年度の保険支出(政管、組合、国保の合計)が29兆5千億円であるのに対して、保険料収入(同)は17兆6億円に過ぎず、12兆円近い赤字を出している。この赤字は、国庫負担の4兆9千億円と地方自治体などの負担による8兆円で賄っている。この上、保険外の公費医療(結核ほか)がある。現実の公的医療保険制度は、保険料収入全てで70歳以上の医療費を賄うだけの額にしかなっていない。

国庫負担は1970年度の4千億円に始まり、80年には2兆7千億円、95年には4兆を越し、今や5兆円に達しようとしている。これ以外に公的年金の国庫負担が10兆円を越しており、医療と年金の国庫負担だけで税収の3分の1以上になってしまい、一般歳出を圧迫している。健全な財政を保っていれば、他の公的サービスの提供に深刻な影響が出ているはずだが、税収を上回る国債を発行することで毎年凌いでいるだけなのだ。
公債は将来世代に対する負債であり、建設国債のような「投資」であるならば回収できる可能性もあるが、赤字国債は少子化に伴う生産と消費の低下に際しては額面以上に重くのしかかってくる恐れが強い。
実際、非正規雇用や不安定雇用の増加に伴い、若年世代の給与所得は低迷しており、保険料収入も横ばい状態だ。例えば、2000年度の保険料収入が15.8兆円に対して10年度は17.5兆円で増加分は1.7兆円に止まる。一方支出は23兆円から29兆円と6兆円も増加しており、その差は今後さらに拡大してゆくと見られる。
保険料の高騰を抑えるために税金を投入すると国債発行額が増え、保険料を上げると納付率が低下して収入が伸び悩むほか無保険者が増えるという悪循環が固定化している。2025年度には年金を含む社会保障給付額は150兆円に迫ると試算されており、このうち60兆円が税金等になる見込みだが、現在40兆円足らずの税収が12年後に1.5倍になるというシナリオは非現実的であり、足りない分は国債を増刷する他ないだろう。こうして国債発行が際限なく拡大してゆく。
医療費の肥大化続く、2013.9.19

西欧型の議会制民主主義は、左派政権が財政出動して社会保障を拡充し、その赤字を保守政権が抑制、制度の整理・効率化を行うことでバランスをとり、社会保障制度の持続性を高めている。
だが、日本では一党優位体制にある自民党が独自の社会保障制度を整備し、ごく短期間を除いてほとんど政権交代なく今日まで来ているため、バランス・チェック機能が働かない構造になっている。故に、旧民主党は新自由主義を掲げ、結党が予想される「日本ファースト」も同傾向になると思われるが、どちらも社会保障の切り下げや再整理には踏み込んでおらず、危機的な状況にある。

もっとも、西欧でも保守政権が労働改革できなかったため、エリート化が進んだ社会民主主義政党が規制緩和を進めたところ、国民の信頼を失って存続すら危うい状況に追いやられている党もある。

日本の自民党の場合、大衆からの収奪を進め、自分たちの権益を増大させることについては容赦するつもりはないようだが、高齢化が著しいだけに年金と医療に手を付けるのは「危険」だという認識を持っている。
その結果、放漫財政は修正されることなく、若年層からの収奪(具体的には低賃金、超長時間労働)ばかりが進み、社会の活力が著しく低下しつつある。
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