2015年10月02日

アベコベな介護政策

【首相「総裁第2期」の課題 介護離職 「経済に打撃」強い危機感】
 安倍晋三首相が24日の記者会見で表明した介護施設の整備や介護人材の育成は、超高齢社会の到来に備え、家族による在宅介護の負担を軽減しなければ、現役世代の「介護離職」につながり「国の経済は大きな打撃を受ける」との危機感が背景にある。厚生労働省によると、介護施設のうち特別養護老人ホーム(特養)の利用者は全国で約54万人(平成26年度)。これに対し、入所待機者は約52万人。うち一人で身の回りの世話ができず、自宅で待機している「要介護3」以上は15万人も存在する。
 厚労省は4月から介護の必要性が高い人に特化するため、特養の入所条件を原則「要介護1以上」から「要介護3以上」に引き上げた。介護度の軽い人は在宅介護を促す一方、「中重度の要介護の人は介護福祉士ら専門家が充実している施設に誘導する」(幹部)狙い。首相としてもアベノミクスの新たな「三本の矢」の実現には、入所待機者を抱える家族の介護負担の軽減が欠かせないという意識が強い。介護離職は年10万人に上り、40代から50代の働き盛りが少なくない。厚労省は介護離職を食い止めるため、介護を必要とする家族1人当たり原則1回しか取得できなかった介護休業を、分割取得できるよう法改正を検討している。一方、介護職の人材不足も深刻で、施設を増やしても働き手が確保できなければ、十分な介助ができない懸念がある。
(産経新聞、9月25日)

安倍首相は、安保法制の審議と強行採決により低下した支持を回復するために、またぞろ「新三本の矢」なる経済政策を発表したが、すでに新味はなく、「やっつけ仕事」観が強い。中でも記事の介護政策は従来の路線に反するものであり、もはや「思いつき」と言って良いレベルだ。

国の介護政策は、「施設から在宅へ」シフトするというもので、在宅を推進することで社会保障費の赤字や自治体負担を減らすことを主目的としていた。そこに自民党政権の復古により、「家族の介護は家族ですべき」という保守イデオロギーが加わって、さらに在宅路線が強化されていった。
確かに介護施設が充実すると、専門家による医療・介護が保証されることによって、余命が伸び、介護が長期化、待機者が増える上に施設需要が増大するという悪循環に陥っている。結果、介護施設を増やせば増やすほど施設需要が高まるものの、他方でサービス水準が低下して虐待などの事故が増加するという問題が生じている。これは、保育でも同じ問題が起きている。

また、実際に施設を増やすとしても、介護労働者の確保は至難な情勢にある。ただでさえ、今年に入って安倍政権は、サービス別に設定した「介護基本報酬」を軒並み引き下げており、特別養護老人ホーム(特養)などの事業者の大半が減収を余儀なくされ、従業員の離職に拍車が掛かっている。これは、事業者の収入減が人員削減やサービス低下に直結し、その負担が残された従業員に課されるためである。介護報酬が公定価格である以上、事業者としては独自に労働者の待遇を上げることも叶わず、離職希望者を慰留するのは難しい環境にある。

まして、安倍政権は労働基準法の改定を準備しており、これによって労働時間上限規制の撤廃と残業という概念の廃止(残業代不払いの容認)が可能になる。現段階では「部分的解禁」に止まっているが、自民党を支持する財界からは全面解禁が要望されており、時間の問題であろう。その場合、ただでさえ労働時間が長く、さらに残業代もロクに出ない介護業界のブッラク性が公認されることになり、ますます従業員の確保が難しくなるだろう。
それを少しでも緩和するために、外国人技能実習生の介護分野への「解禁」がなされるわけだが、人数的に「焼け石に水」の観が強いだけで無く、「奴隷労働の拡大」ということで国際的非難がさらに強まることになりそうだ。

結局のところ、「労働力が足りない」という財界の要望を受けて、介護政策の転換や外国人技能実習制度の拡大がなされているだけで、そこには「国民・高齢者の幸せな老後はどうあるべきか」という根本的な考え方がどこにも存在しない。そして、財界の要望を実現している限り、労働時間がさらに長期化すると同時に賃金所得はさらに低下、出生率も低下するという流れは確実と言える。

【追記】
「一億総活躍」とか「国民総動員かよ」と思わざるを得ない。ただでさえ我々の世代は年金支給年齢が70歳前後になると目され、今の30歳前後などは75歳?という有様で、一体我々は何歳まで働かねばならないのか、年金が支給される頃には施設入りか、という状態にある。かつて我々の先輩(社会民主主義者)は、ソ連をして「労働者が国家に奉仕する社会」と非難したものだが、いまや日本も誰からも強制されないのに「労働者が自主的に国家に奉仕する社会」と化している。ボリシェビキからすれば、理想的な社会なのかもしれない(爆)
posted by ケン at 12:35| Comment(4) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月30日

日本国債の格付けは下がる一方

【S&P、日本国債1段階格下げ「経済好転の可能性低い」】
 米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は16日、日本の国債格付けについて、「AAマイナス」から「Aプラス」へと1段階引き下げたと発表した。「デフレ脱却や経済成長をめざした政府の経済政策が、国債の信用力の低下傾向を今後2〜3年で好転させる可能性は低い」として、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果が見込めないことを理由に挙げた。格付けは、借金の返済能力を判断したもので、S&Pが日本国債の格付けを下げるのは2011年1月以来、4年8カ月ぶり。Aプラスは21段階あるS&Pの格付けのうち上から5番目。AAマイナスの中国や韓国より悪くなり、アイルランドと同水準となる。安倍政権は6月末、政権の成長戦略である「骨太の方針」と、20年度までの財政健全化計画を決定。高い経済成長と税収増によって財政健全化を進めていく姿勢を鮮明にした。
(朝日新聞、9月17日)

国会終盤の多忙にかまけて見逃してしまっていたようだ。S&P社が日本国債の格付けを引き下げたことにより、Moody’s、Fitchの2社を含めて大手三社の日本国債の格付けが全て中国と韓国を下回る結果になった。ちなみにS&P社のA+はスロヴァキア、アイルランドと同格、Moody’s社のA1はチェコ、エストニアと同格、Fitch社のAは中国、チェコ、スロヴァキアの一段下というレベル。

S&P社の説明を続けると、経済成長率の鈍化で2011年度から14年度の間に、日本の国民1人当たりの平均所得が減少、日本経済がデフレから脱却できずにいることや、巨額の財政赤字を抱えていることを指摘。また、先進国で最悪の水準にある財政状況を「信用指標における重大な弱み」とした上で、2014年4月に消費税率を8%に引き上げたが、高齢化で年金や医療などの社会保障費が膨らむため、さらに財政が悪化すると懸念を示している。

これに対し、麻生財務相は9月18日の記者会見で、「格下げで長期金利がどれだけ上がったか。市場は反応していない。格付け会社の影響力がなくなった」と反論しているが、どうであろう。
「アベノミクス」の旧「三本の矢」の一つである「異次元緩和」は、日本銀行が日本国債を無条件で大量に購入し保持し続けることで、長期金利の上昇を抑えると同時に、政府が歳出を増やして市場に現金をバラ巻くという構図の上に成り立っている。市場の通貨流通量が増えれば、通貨価値が下落し、相対的に物価が上昇、デフレを脱却するというのが財務省のシナリオで、これを日銀に強要するために財務官僚の黒田氏を日銀総裁に据えているのだ。
故に長期金利が上昇しないのは、日銀が国債を保持している間だけの話なのだが、日銀が借り換え続ければ、政府の財政規律が緩み、歳出の無制限拡大を許す恐れがある。実際、安倍政権下で大型公共事業が続々と計画されている。逆に、日銀が国債を手放すと、長期金利が上がり、民間が保有する国債は金利を付けて決済しなければならないため、国民の税負担が増えることになる。
要するに日銀の「異次元緩和」は「今のところ問題ありません」というだけで、長期的には大きなリスクを抱えたまま、「どっちに転ぶか分からない」ものなのだ。言うなれば、今の日本は負けが込んでいるギャンブラーが借金して穴に賭けているようなものであり、格付け会社が格付けを下げるのは、むしろ彼らが健全な証拠である(米国債については別の話)。
posted by ケン at 12:47| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月10日

原理は良いけど筋悪

【経団連、消費税還付案に理解 軽減税率導入には反対】
 経団連は8日、「2016年度税制改正に関する提言」を公表した。事業者の負担が増えるとして消費税10%引き上げ時の軽減税率導入に反対する一方、低所得者対策には「簡素な給付措置」を求め、負担増分を後から還付する財務省の案に理解を示した。消費税増税は17年4月に予定通り実施すべきだと主張。財務省が示した対策について、榊原定征会長は7日の記者会見で「基本的には経団連の考えに沿ったもので検討に値する。今後しっかり詰めて欲しい」と評価した。法人税改革では、30%台の実効税率をできるだけ早期に20%台に下げ、将来的には25%の実現を求めた。安倍政権は16年度に31・33%まで下げる方針だが、経団連は同年度の引き下げ幅の拡大を求める考えだ。化石燃料にかかる地球温暖化対策税は「エネルギーコストの上昇に拍車をかけている」として廃止を訴えた。
(朝日新聞、9月8日)

財務省が消費税の還付案を示したことに対し、マスゴミが一斉に反発している。新聞社や医師会のごとき特権階級がさらなる特権(軽減税率)を求め、その要求に政府が応じないためだ。KM党が軽減税率を強硬に主張している点だけ考えても、これが利権目的であることが分かる。
新聞業界や医師会の主張は、フランス革命前の貴族や僧侶と同じである。
新聞は再販価格維持制度によって、(小売)販売店に対して定価での販売を強制することが認められている。これは「新聞業界には市場原理が適用されない」という民間企業では考えられないような保護(独禁法が適用されない)を受けていることを示しているが、自分たちはその特権について一切触れない。
また、医師会(開業医)は自ら法人化することで所得税の超過累進課税(50%)を免れて、法人税(30%強)が適用される上に、社会保険診療報酬分は免税措置が取られるため、実質的な税率は民間企業よりも大幅に低くなっている。
これは特権のごく一部に過ぎないが、マスコミや医師会がこぞって自民党の支持母体(皇室の藩屏)である理由が分かるだろう。だが、連中は既存の特権に飽き足らずに、さらなる免税措置を要求しているのだ。
免税を求める特権階級ども
 
私はかねてより軽減税率の否と還付式の導入を訴えている。長くなるが過去ログを引用したい。
軽減税率を求める層の多くは、消費税の逆進性を指摘して低所得者対策として「EU諸国では当たり前」などと考えているようだが、まずこの点で大きな誤解がある。消費税に逆進性があるからこそ、軽減税率を導入した場合に得られる利益は富裕層の方が大きく、低所得層に還元されるのはわずかになってしまうからだ。具体的に考えてみよう。
税率10%、軽減税率5%と仮定した場合、2万円の牛肉で軽減される額は1千円になるが、500円の鶏肉で軽減されるのは25円でしかない。絶対額で得られる部分が富裕層に大きいのだ。
これを避けるためには、高級牛肉には通常税率を、庶民的鶏肉には軽減税率を適用しなければならないが、その境界線を決めるのは難しい。100グラム千円の牛肉でも10グラム毎にバラ売りした場合、どうするのか。
実際に欧米のケースを見た場合、国産トリュフは軽減だが輸入キャビアは通常税率が適用されるフランス、店内でピザを食べれば軽減だがテイクアウトすると通常税率が適用されるドイツ、ドーナツ6個以上は軽減だが5個以下だと通常税率が適用されるカナダなど、合理的説明がつかないナゾの境界線が続出している。
そのため、軽減税率の適用をめぐって壮烈な陳情合戦・政治戦が繰り広げられることになる。その最たるものが新聞で、今となっては完全に官邸のプロパガンダ機関に成り下がっている。今後は「官邸詣で」や「自民党参り」が急増するだろうが、結局のところ資金力や集票力による政権党に対する貢献度が検討されて優先的に軽減税率を適用されるだけの話になるだろう。また、一度決まった軽減税率は深い利害関係が絡むため、容易に変更できないという問題もある。

では、低所得者対策として軽減税率はどう作用するのか。先に結論を言えば、上記の例からも分かるとおり、軽減税率で得られる低所得者層の恩恵は小さく、軽減せずに通常税率を取って改めて低所得者に給付する方がはるかに本来の目的に合致するだろう。
政府の試算によれば、消費税を8%から10%に上げた時の増収分は5.6兆円とされるが(個人的には多いように思われる)、食料品全体を8%に据え置いた場合、増収分は4.6兆円に止まるという。この場合、軽減税率の効果は1兆円ということになる。
これをミクロで見た場合、単純計算だが、世帯年収300万円でエンゲル係数を35%として、その食費は年間105万円、軽減税率2%として2万1千円が恩恵分ということになる。他方、年収1千万円、エンゲル係数25%の家庭だと、食費は年間250万円で5万円が軽減税率の恩恵となる。普通に考えれば、格差が拡大する方向に働くだろう。
さて、現在の日本の貧困率は16%で約953万世帯が貧困と見なされているが、単純に1千万世帯と考えて軽減税率2%分の1兆円を直接給付した場合、1世帯あたり10万円の給付が可能になる計算となる。もちろん現実には、様々な行政コストや貧困線上の層の調整などの問題があるものの、少なくとも軽減税率よりははるかに低所得者対策に合目的であることが分かるだろう。
改めて軽減税率に反対する理由
 
上記の理由から今回の財務省案には基本的に賛成なのだが、どうにも筋が悪い。食料品の2%軽減税率分は1兆円〜1兆3千億円とされるのに、今回還付されるのは4千億円でしかなく、いかにもケチくさい。しかも、全世帯を対象としているため、一人当たりの還付額は最大で年間4千円でしかなく、耳を疑う少なさだ。4人世帯でも最大1万6千円とか、およそ消費税2%分の「還付」に相当するものとは言えない。

しかも、還付金をもらうためには、マイナンバー・カードを常に所持して買い物のたびに提示、小売店はカード・リーダーに通す必要がある。今時どの店でも店舗カードが付きものであり、二度手間となることはほぼ確実だろう。高齢者を中心にマイナンバー・カードの紛失が増えることも間違いない。ナンバーの重要性を考えれば、カードの紛失が市民生活及ぼす影響は非常に大きい。ネット販売や自販機にどう対応するのかもナゾだ。

エンゲル係数というのは低所得層になるほど上昇するだけで無く、格差が生じにくくなるため、国税庁が市民全員の食料品の購買リストを全て把握するなど無駄も良いところだ。財務相の現行案では、4千円の還付を行うために4千円以上の行政コストが掛かることになるだろう。であれば、問答無用に全員に一律1万円の還付を行う方がよほど有意義(消費に貢献)だろう。
個人的には、やはり16%の貧困層を中心に、一人当たり2〜3万円の還付を行うことで、所得格差の是正(再分配)をなすのが望ましいと考える。そもそも所得を正確に把握するためにマイナンバーが導入されるのだから、積極的に活用すべきだろう。消費税はその逆進性が問題なのだから、還付に際しては低所得層に厚くしなければ逆進性の解消にはならないからだ。
財務省案は、技術論に固執しすぎて税制の全体像を見失っているものと思われる。
posted by ケン at 12:53| Comment(2) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月18日

乱立する官民ファンド

国主導の下、民間企業やプロジェクトに投資する「官民ファンド」の設立が相次いでいる。現在のところ、確認される主な官民ファンドがすでに11、これ以外に地域金融機関が官の出資を受けて設置している「地域ファンド」が全国に無数にあり、乱立状態にある。しかも、主な11ファンドのうち、9つまでが安倍政権以降の設置で、政府出資額は6千億を超え、政府保証の規模は3兆円に上る。出資額の大きなものを挙げると、産業革新機構(経産省、2860億円)、官民イノベーションプログラム(文部科学省、1000億円)、競争力強化ファンド(財務省、1000億円)があり、さらに農水省、国交省、環境省、総務省などが所管するファンドもあり、各省庁が競ってファンド設立を目指しているようにも見える。

政府の説明によれば、官民ファンドは民間が供給を渋るようなリスクマネーを、政府保証を付けて供給することで、新規市場の開拓を促進するために設置しているという。これだけ聞くと「ごもっとも」と思ってしまうが、そこはさすがヤクニンで不都合なことは気づかせもしない。しかし、冷静に検討してみると問題だらけだ。

そもそもこれらのファンドは主に財政投融資の特別会計から歳出されているが、当然ながら国庫の税金が原資であり、一定期間後には低利とはいえ利子を付けて償還しなければならない。ところが、ファンドの出資先は民間がリスクを覚えて供給を渋るような企業や事業であって、いわばリスクマネーなのだ。つまり、リスクマネーを率先して供給するのに、償還の義務があるという二律背反を抱えている。確かにリスクマネーを供給し、国策として産業構造転換や新規市場開拓を促進するのは、政府系金融機関の本来の役割であることは否めない。省庁毎にファンドをつくってリスクマネーを供給する必要があるのか、個々のファンドについて説明を受けると「なるほど」と思うものの、すでに11のファンドがあり、さらに設置される予定などと言われると、「おい、ちょっと待て!」と言いたくなる。

第二の視点としては、上記の難しいリスク管理が要求されるファンドの運営を担えるだけの人材を本当に確保できるのかという問題がある。株価が上昇して金融系が好調な今、わざわざ民間から半官半民の新規ファンドに移ってくる現役金融マンなどいないだろう。優秀な人ほど民間は手放さず、来そうなのはどこかで失敗した者ばかりだろう。そうなると、すでに退役した金融OBか、官僚の天下り、あるいは現役官僚の出向ということに成らざるを得ない。それすらも、優秀なOBはすでにどこかのファンドに入っているはずで、単純に考えてファンドが新設されるたびに人材水準が低下していくと考えられる。例えば、ゆうちょ銀行ですら前任の社長が退任して後継が見つからず、日本郵政の社長が一時兼任していたほどなのだ。

第三の視点として、検証システムの脆弱性が挙げられる。官民ファンドがその趣旨に基づいて適正に運営(出資)されているかどうかについては、現在のところ内閣官房の「関係閣僚会議幹事会」に設置された検証チームが行っており、政府の説明では「民間人で構成されており、適正に運営されている」ということだが、誰が信じるだろうか?そもそも政府に批判的なものを検証チームに入れるメリットは政府側に無いわけで、政府がメンバーを選ぶ以上、必ず恣意的になると見るべきだ。「同一人物がプレイヤーと審判を兼ねている」という批判は的を射ている。検証が甘ければ、出資はルーズとなり、そこに官民の癒着が生まれる余地が出てくる。

第四の視点として、天下りの温床となる可能性が非常に高いことが挙げられる。現在のところ、直接的な天下りには厳しい規制がかけられている。だが、その手段は巧妙さを増しており、まず現役時代にこの手の機関や特殊法人に出向し、そこでパイプを構築して癒着関係を築いた先に再就職(天下る)という形が採られている。特に官民ファンドの場合、民間から借りられないリスクマネーを、「特別な事情と関係」に基づいて供給することになるため、その融資先としては天下りを拒否できない関係になりがちだ。今のところ多くのファンドが新しいため、統計的に確認することはできないが、省庁毎にファンドが新設されている動きを見ても、ほぼ間違いなく「天下り仲介組織」を兼ねていると見て良い。

民主党政権で一度は抑制したはずの「コンクリート」や「天下り」がゾンビのように復活しているのを目の当たりにし、かつ対抗策を打てない現状は何とも歯がゆい限りである。
posted by ケン at 12:07| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月04日

改めて軽減税率に反対する理由

国会が始まったせいか、またぞろ軽減税率を求めるメールやら陳情が増えている。新聞社などはKM党の支援を得て軽減税率の導入が既定路線となり、すっかり勝った気でいる。政府税調の有識者会議では、低所得者対策として「軽減税率」と「給付付き税額控除」を検討し、圧倒的多数が後者を支持したにもかかわらず、軽減税率が選択されている。メディアとポピュリズムの勝利、あるいは知性の敗北なのだろうか。
私は古い稿で軽減税率の問題点を指摘していたが、ブログを引っ越した際に消失してしまったようなので、改めて整理しておきたい。

軽減税率を求める層の多くは、消費税の逆進性を指摘して低所得者対策として「EU諸国では当たり前」などと考えているようだが、まずこの点で大きな誤解がある。消費税に逆進性があるからこそ、軽減税率を導入した場合に得られる利益は富裕層の方が大きく、低所得層に還元されるのはわずかになってしまうからだ。具体的に考えてみよう。
税率10%、軽減税率5%と仮定した場合、2万円の牛肉で軽減される額は1千円になるが、500円の鶏肉で軽減されるのは25円でしかない。絶対額で得られる部分が富裕層に大きいのだ。
これを避けるためには、高級牛肉には通常税率を、庶民的鶏肉には軽減税率を適用しなければならないが、その境界線を決めるのは難しい。100グラム千円の牛肉でも10グラム毎にバラ売りした場合、どうするのか。
実際に欧米のケースを見た場合、国産トリュフは軽減だが輸入キャビアは通常税率が適用されるフランス、店内でピザを食べれば軽減だがテイクアウトすると通常税率が適用されるドイツ、ドーナツ6個以上は軽減だが5個以下だと通常税率が適用されるカナダなど、合理的説明がつかないナゾの境界線が続出している。
そのため、軽減税率の適用をめぐって壮烈な陳情合戦・政治戦が繰り広げられることになる。その最たるものが新聞で、今となっては完全に官邸のプロパガンダ機関に成り下がっている。今後は「官邸詣で」や「自民党参り」が急増するだろうが、結局のところ資金力や集票力による政権党に対する貢献度が検討されて優先的に軽減税率を適用されるだけの話になるだろう。また、一度決まった軽減税率は深い利害関係が絡むため、容易に変更できないという問題もある。

では、低所得者対策として軽減税率はどう作用するのか。先に結論を言えば、上記の例からも分かるとおり、軽減税率で得られる低所得者層の恩恵は小さく、軽減せずに通常税率を取って改めて低所得者に給付する方がはるかに本来の目的に合致するだろう。
政府の試算によれば、消費税を8%から10%に上げた時の増収分は5.6兆円とされるが(個人的には多いように思われる)、食料品全体を8%に据え置いた場合、増収分は4.6兆円に止まるという。この場合、軽減税率の効果は1兆円ということになる。
これをミクロで見た場合、単純計算だが、世帯年収300万円でエンゲル係数を35%として、その食費は年間105万円、軽減税率2%として2万1千円が恩恵分ということになる。他方、年収1千万円、エンゲル係数25%の家庭だと、食費は年間250万円で5万円が軽減税率の恩恵となる。普通に考えれば、格差が拡大する方向に働くだろう。
さて、現在の日本の貧困率は16%で約953万世帯が貧困と見なされているが、単純に1千万世帯と考えて軽減税率2%分の1兆円を直接給付した場合、1世帯あたり10万円の給付が可能になる計算となる。もちろん現実には、様々な行政コストや貧困線上の層の調整などの問題があるものの、少なくとも軽減税率よりははるかに低所得者対策に合目的であることが分かるだろう。

そして第三に事務負担の大きさが挙げられる。すでに家賃、教科書、医療・介護、埋葬関連などが非課税となっているが、これに軽減税率が加わると3つの税率が存在することになる。企業や行政の事務コストが急騰するほか、軽減税率で仕入れた商品を通常税率で仕入れたことにしたり、同税率で販売したりといった脱税が横行する危険性がある。それを回避するためには、インボイス方式を導入する必要があるが、これも企業と税務当局の負担を大きくするものでしかない。ただ、消費税の滞納額は全税の50%を超えており、ここでは説明しないがその背景を考えるとインボイスの導入自体は反対するものではない。
上記の理由を整理すると、

@ 政治性を排除、税の公平性を担保
A 低所得者対策に合目的
B 少ない負担、良効率

の3点から軽減税率ではなく給付型税額控除を導入すべきであるというのが私のスタンスである。「EUに倣って軽減税率を導入すべき」ではなく、EUの失敗と苦悩を学んで軽減税率を回避すべきなのだ。
posted by ケン at 13:08| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月30日

補正予算に見るバラマキ復活

【補正予算案「生活」「地方」に重点 3.1兆円閣議決定】
 政府は九日、臨時閣議を開き、個人消費の喚起や地方活性化などの経済対策に重点を置いた二〇一四年度補正予算案を閣議決定した。歳出総額は三兆千百八十億円で、補正後の一四年度一般会計の予算総額は九十九兆円に膨らむ。政府は補正予算案を今月下旬に召集される通常国会に提出し、早期の成立を目指す。
柱としては、円安による原材料のコスト上昇や消費税増税に苦しむ「生活者・事業者の支援」に約一兆二千億円を投入。アベノミクスの恩恵が行き届いていない「地方の活性化」に約六千億円、自然災害に対応するための「災害復旧・復興加速」に約一兆七千億円を計上した。特別会計を含めた経済対策の総額は三兆五千二百八十九億円となる。具体的には、自治体の裁量で使える交付金に二千五百億円を計上し、地域で使える商品券の発行などを行う。事業者支援では中小企業の資金繰り支援や高速道路の料金割引を盛り込んだ。消費税増税後に大幅に冷え込んだ住宅市場を刺激するため「住宅エコポイント制度」の復活や、長期固定金利の住宅ローン「フラット35S」の金利優遇も実施する。
 補正予算の財源には、所得税や法人税など税収が当初予想よりも増えた分の約一兆七千億円や、昨年度の余剰金約二兆円を充てるなどして、新規国債発行(借金)には頼らない。加えて一四年度当初予算で予定していた国債の発行額も約七千五百億円減額する。
(東京新聞抜粋、1月15日)

民主党政権時に「子ども手当」や「高校無償化」をバラマキと批判してきた自民党だが、自分たちの流儀によるバラマキはOKらしい。特に「地方創生」の1700億円、商品券などの2500億円、それに住宅関連は、4月の統一自治体選挙が目前に控えているだけに、露骨な有権者買収と見て良いだろう。
常識的に考えれば、「地方創生」にしても地域商品券にしても、国が予算を組んだところで各自治体が具体的な案をつくって予算化しなければ実施できないわけで、可能になるのは早くても夏以降になるだろう。であれば、本予算でやれば良い話で、わざわざ優先的にかつ短期間で審議される補正予算でやるべきではない。それだけに、バラマキ政策をぶち上げて有権者の歓心を買いたい自民党の意図が丸見えだ。特に商品券の場合、偽造対策などで余計に時間が掛かる上に、自治体や地元商工会などが独自に行っている既存の商品券などとの整合性の問題もあって、そもそも予算だけ組んでも実施可能なのか微妙だという。
少なくとも従来の商品券や給付金の類いは十分な効果が認められておらず、今回の政策も失敗に終わる可能性が高い。

「地方創生」にしても、既存の政策を検証すること無く、とりあえず予算だけ付けようというのは、砂漠に水をまくだけのような話になりかねない。これも時間をかけて検討する必要がある。同時に、いずれの政策も予算額が少なく、実施したところで「戦力の逐次投入」にしかなりそうにない。

住宅政策は、若年層の収入や雇用環境が悪化していく中で、いつまでマイホーム(持ち家)政策を続けるのは無駄どころか有害であり、検証もせずに従来の政策を辿るだけのものに過ぎない。そもそもマイホーム政策自体が、建設業者、不動産業者、銀行による搾取を行政と立法が合法化するという醜悪なシステムであり、徹底的に批判して低所得者向けの賃貸住宅を充実させる政策に転換する必要がある。詳細は過去記事を参照してもらいたい

持家を購入するには、年収の5〜10倍以上の金額がかかる。
よほどの資産家でない限り、即金で購入することは出来ないため、ローンを組み、政策的に低利の融資が供給されることになる。
日本の場合、単身者は公営住宅に入居できず、長期安定雇用を前提とした賃金体系で若年者の賃金が安いこともあり、会社の安価な寮や社宅に入らない限り、貯蓄は難しく、自然と頭金は小さくなりがちだった。若年の単身者の公営住宅入居が認められたのは、なんと2012年の今年なのである。
一般的には30代で平均して30年間のローンを組んで購入するわけだが、これはつまるところ必ず定年まで働くことを想定していた。
しかも、こうした超長期ローンの場合、低利と言っても実質的な支払総額は、借用額によるが金利だけで1千万円以上になることも珍しくない。
この借金を返済するために、世帯主は長時間の残業を自ら率先して担うと同時に、長期安定雇用の保障を受けるために会社に対して従順であり続けねばならなかった。
「社畜」という言葉の裏には、政府のプロパガンダによって、自ら借金を背負い、その返済のために企業に従順に奉仕し続ける労働者像があるのだ。

この政策によって大きな利益を受けるのは、国民ではなかった。
結局のところ、公的機関による低利融資というのは、税金の補填の上に成り立っている。
そして、ローンの返済中は、持家の真の所有者は銀行であって、購入者ではない。ローンの返済が滞った途端に、所有権は失われるからだ。
故に、持家の購入者は死に物狂いで定年、あるいは死ぬまで(生命保険)働くことを強要される。
会社に対して従順で、異動や遠隔地への単身赴任にも文句を言わない労働者は、持家購入に伴うローンによって縛り付けられた奴隷労働とすら言える。
そして、実際に利益を受けるのは、粗悪な住宅を「市場価格」で提供する建設業者・不動産屋と、税制優遇を受けながら住宅ローンという商品を売りまくった銀行だった。
銀行からすれば、家族の住まいを担保にして、安定雇用の労働者に巨額の超長期ローンを売りつけられるのだから、これ以上に美味しい話はないのである。
そして、利益を受ける業者からは建設官僚や大蔵官僚、あるいは自民党の議員に献金がなされ、また天下りのポストが用意された。

日本の住宅政策は、「土建、不動産、銀行、官僚、議員」による癒着と搾取を象徴するものであり、これを廃絶すること無く「庶民のための政治」など永遠に実現しないであろう。
住宅政策にしてもバラマキ政策にしても、その有効性を検証すること無く、利権と癒着の中でただ続けているだけのものに過ぎない。これを検証して問題を指摘するのは、マスメディアと議会(野党)の役割であるはずだが、本来の機能を果たせないために、国家とデモクラシーの根幹が急速に劣化しつつあると言えよう。
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2014年11月17日

消費増税の是非を考える

消費増税先送りの是非を問う解散・総選挙が取りざたされている。財務省的には、増税のお膳立てとして株価を操作して「アベノミクスの成功」を演出するために、影響下にある黒田日銀総裁を使って追加金融緩和を実現した。それも日銀内部ではギリギリの判断だったという。その財務省からすれば、政権を延命させるために増税を先送りし、しかもそれをネタに解散するなど、腸煮えくりかえるような話に違いない。財務省はすでに来年10月からの増税を前提に予算を組んでいるだけに、これから増税無しの予算に組み直さねばならず、その点でも我慢ならないだろう。
もっとも逆の見方をするならば、財務省に従属して公約違反の消費増税を強行した民主党の菅・野田内閣に対して、安倍内閣は「財務省を都合良く利用した」という点で自民党らしい老獪さを見せたとも言える。財務官僚の憎悪が選挙後の新内閣にどのように跳ね返ってくるか見物だ。

私は再分配を肯定する立場から一般論として消費増税を是認する立場を取っているが、菅政権下での消費増税は2009年の選挙公約に反することから反対しており、「増税を強行するなら解散すべきだ」とボスにも進言していた。
過去に触れているが、

税金とは何か 
消費増税をめぐる政治の貧困 

近代議会は、王権=行政による一方的な課税に対して、納税者が歯止めをかけ、課税とその使途についてチェックするために創設された。国家が無軌道に税を徴収できるとなれば、何に使われるか分からないし、無限の権力を許すことになるためだ。
近世において軍の動員は国王の権限だったが、その財源(税徴収)については議会の権限であった。清教徒革命は、アイルランド鎮圧のために新規課税を望んだ国王と、それを拒否した議会との対立から始まった。また、アメリカ独立革命も「代表なくして課税なし」に象徴されるように、植民地居住者に対する根拠のない課税から始まった。
それだけに課税の是非を民意に問うのは議会制度の根幹であり、民意を問わないで増税を強行した民主党こそ議会史を無視した暴挙を行ったのである。その意味で、増税先送りの是非を問う安倍政権は、政権存続が本音だとしても、議会の伝統に適っている。ただ、自民党は民自公の三党合意で消費増税を認めており、しかも「先送り条項」は民主党が懇願して入れた経緯があるだけに、これを自民党が選挙に利用するのは信義には反するかもしれないが、そこは政治闘争の常であろう。
この問題では(他もそうだが)、自民党の老獪さと民主党の幼稚さが際立っている。とはいえ、新規課税するのではなく、「増税を止めること」を一々民意に問う必要があるのかという問題はある。

さて、肝心の消費増税だが、私は「予定通り増税」の立場を採っている。過去ログを引用しながら説明したい。

国家財政から見たデモクラシーの脆弱性について

高齢化が加速する中で社会保障費の拡大が止まらない。2010年度予算の社会保障関係費は27.3兆円(前年度比2.4兆円増)であり、国の一般歳出の51%を占めている。このうち医療保険給付諸費は8.1兆円を計上しており、一般歳出の15%を占めるに至っている。この額は、医療費の自然増と診療報酬の改訂に伴い、前年比で3500億円の増加となっている。これはすでに公的保険のみでは社会保障が維持できなくなり、大規模な財政支出を余儀なくされていることを示している。
基礎年金も同様で、すでに国庫負担割合は2分の1になり、例えば2011年度の場合、基礎年金給付額22兆円に対して国庫負担は10兆円を超えている。この割合は09年に3分の1から2分の1に上げられたが、その差分については現在もなお恒久財源が見つからず、財政投融資などの「埋蔵金」に頼っている始末。しかも、現役世代の減少と共に保険料収入は減り、逆に年金受給者は増える一方で、国庫負担に求められる額は天井知らずとなっている。また、労働人口の減少と景気停滞で税収も停滞しており、国庫負担が重くなればなるほど歳出における行政政策費の枠が小さくなってゆく。13年度予算では、社会保障費は29.1兆円(前年比2.7兆円増)で一般歳出の54%を占めるに至っている。

社会保障費の増大と税収の低迷に対しては、社会保障の給付額を減らすか保険料を上げるか、増税するかでしか対応できず、対応しなければ赤字国債を際限なく発行する他ない。小泉政権の時に社会保障給付の肥大化に一度は足止めを掛けたものの、09年の政権交代で民主党政権が成立し、再び肥大化が進行している。
社会保障費は高齢化と医療の高度化に伴い年間1兆円以上もの自然増が発生していると言われるが、それに対応する消費増税も本当に実施できるのか微妙な情勢になっている。その消費増税にしても、実現したところで税収増と消費減退を考慮すれば、社会保障費自然増分の数年分にしかならないとも言われる。
2015年に高齢化率が25%を超え、同50年には40%に至るが、絶対数で言えば2040年ごろがピークになると考えられ、その頃までは社会保障費が増大すると想定されるが、保険料収入は減少の一途を辿り、税収も今日の水準を維持するのは難しいだろう。

とはいえ、今回の議論は「増税先送り」であって、「増税不履行」ではない。法改正して「景気回復が認められたら」とか「一年半後に自動的」といった条項を盛り込もうという話なのだろうが、問題は景気回復が本当に実現するのか、「一年半後なら大丈夫」なのか、という点だ。
すでに日銀は追加金融緩和とともに国債の大量買い取りを進めている。日銀は財政法によって国債の引き取り(国から直接購入)が禁じられ、市場からの購入に限定されている。これは、市銀や年金基金などが大量に有している国債を日銀が買い上げて、国内外の株式・債権の購入を促すもので、その結果として株価が急騰している。株価が上がると、今度は海外投資に目が向くのが一般的だが、円安によって購入価格が上昇しているため、リスク分散が図れない弱点を露呈している。
一方、日銀が保有する国債はすでに200兆円を超え、2018年までに国債発行高の半分を日銀が有することになるという。これは実質的には、財政法が禁じる「引き受け」と同じだろう。これによって株価を一時的に上昇させることはできようが、それは円の通貨としての信頼性と公的年金や預貯金の運用リスクを引き替えに実現している。

安倍政権や霞ヶ関は長いこと「円安になれば輸出が増えて景気が良くなる」と言い続けてきたが、もともと日本の外需依存度は15%以下しかなく、輸出産業にしても円安による販売価格の引き下げを渋っている様子が見られる。安倍政権は強調しているが、賃上げの範囲が狭いことからも、輸出増による景気回復は限定的に終わりそうだ。
他方、内需や購買力は低下の一途を辿っている。増加し続けている非正規雇用の割合はすでに38%を超えており、派遣法の改悪などでさらに増える可能性が高い。この非正規労働者の平均年収は168万円に過ぎない。つまり、労働者の4割が200万円以下の年間所得しかない有様で、この傾向はさらに助長されようとしている。
本来であれば、均等待遇を実現して非正規雇用の待遇改善を実現するか、再分配機能を充実させて収入格差の是正を図る必要があるのだが、前者はサプライサイドのロビー活動と労働組合の弱さによって否定され、後者は増税反対の世論によって実施不可能になっている。
公的年金が大きなリスクにさらされると同時に、購買力の低い層が増えていくのだから、国民消費が拡大する可能性は非常に低いと考えられる。

円安によって輸出産業の一部は好業績を上げて賃上げしているかもしれないが、圧倒的多数の国民にとっては、これから来るだろう円安による物価高・インフレの悪影響の方が大きいはずだ。従って、一年半であれ三年であれ、増税を先延ばしにしたところで、恐らくは今よりもさらに困難な経済情勢を迎え、またぞろ「増税無理」という話になるだろう、というのが私の見立てである。

【追記】
今日の日米欧で見られる現象として、貧困層が再分配に否定的な右派を支持する傾向が強まっている。従来は「教育水準の低さが感情を刺激するナショナリズムを支持させる」との観点からデモクラシーにとって教育の普及が不可欠であることが訴えられた。ところが、日本では大学進学率が高まるほどポピュリズムとナショナリズムが強まって、インテリ層が排撃されるか、同調するかの二択を迫られる有様になっている。もっとも、増税しない場合は、社会保障を大幅に切り下げるかスーパーインフレを起こす必要があることを言わないのは、政府も議会も為政者として不誠実だとしか言いようが無い。今回「消費増税反対」を掲げる候補者たちは「医療費自己負担1割増、年金支給額1割減」を同時に訴えていただきたい。

【追記2】
消費増税先送りは、アベノミクスが失敗ないしは効果が非常に限定的だったことを政府・政権党が認めることを意味し、実際に先送りや再増税そのものに反対する者たちの大半は「景気が回復していない、悪化している」と言う。にもかかわらず、マスゴミは政府・自民党の経済・財政失政には一切触れず、「国民生活を憂える安倍閣下が増税を先送りしてくださる」というトーンで宣伝している。その陰でマスゴミは「軽減税率の適用」を懇願しており、その癒着ぶりを示しているが、そこには紙の配給を懇願して政府・軍部のために戦争熱を煽った戦前の反省は微塵も感じられない。
posted by ケン at 13:58| Comment(4) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする