2018年06月19日

人手不足で外国人は必要か

【「骨太」素案 外国人労働者拡大へ新資格 最長10年、在留可能に】
 政府は経済財政運営の指針「骨太方針」の素案に、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格の創設を盛り込んだ。新資格で平成37(2025)年ごろまでに50万人超が必要と想定する。人手不足の深刻化を受け、実質的に単純労働分野での就労を認める方針転換となるが、現行制度でも受け入れ後の生活保護受給者増や悪質な紹介業者の存在など解決すべき課題は山積しており、一筋縄ではいきそうにない。
 政府が検討する受け入れ策によると、農業、建設、宿泊、介護、造船の5分野を対象に、業界ごとに実施する技能と日本語の試験に合格すれば最長5年の新たな在留資格を取得できる。外国人技能実習制度(最長5年)の修了者は試験を免除。技能実習制度から移行した場合は計10年間の滞在が可能となる。
 骨太方針では、新制度を「移民政策とは異なる」と強調。「家族の帯同は基本的に認めない」とも明記したが、新資格で在留中に高度人材と認められれば専門的・技術的分野の資格へ移行でき、本人が希望する限り日本で働き続けられ、家族帯同も可能となる。ただ、日本語能力の不足などから生活保護を受けている外国人は28年度に過去最多を記録。高額な仲介料を徴収する紹介業者も横行している。
 骨太方針では「的確な在留管理・雇用管理を実施する」と掲げたが、なし崩し的な外国人労働者の受け入れ増とならないよう厳格な対応が求められる。
(6月6日、産経新聞)

コンビニと飲食店を見れば一目瞭然だが、需要減退が明白な状態で、安価な労働力を外部から入れて、過剰な供給力を維持しようという試みが、いかなる末路を迎えるかなど、ちょっと想像力を働かせば分かると思うのだが。

確かに現状、どの分野でも人手不足が深刻になってきているが、一方でデフレ傾向が改善されないということは、供給力が需要を上回っている状態が解消されていないことを示している。本来であれば、人手不足が賃金や流通コストなどを上げ、それに伴って物価も上昇、供給を低下させることで需要と供給の均衡が図られるはずだ。実際、パート・アルバイトの賃金は上昇傾向にあるし、物価も上昇傾向にあるものの、コンビニや飲食店などの店舗数については減少傾向にあるものの、大きな変化は認められない。正確には、飲食店数は、2005年の150万軒に対し、2014年で142万軒とやや減。コンビニは2005年の4万軒に対し、2015年で5万3千軒と大幅増。

日本の場合、労働基準法が形骸化しており、超長時間労働や残業代不払いなどのブラック労働が放置されているため、供給を抑制する仕組みが働きにくい。
仮に欧州標準の労働規制がある場合、コンビニや飲食店あるいは様々な分野のブラック企業は成立し得ず、低収益となって廃業あるいは倒産し、余剰労働力が生まれる構造になっているが、日本の場合、不採算の企業でも超長時間労働や残業代の不払いで延命できるため、生産性の低い企業が市場から淘汰されない仕組みになっている。
結果、低収益の企業が労働力も資本も握り続け、成長可能性のある新興企業が労働力の確保に難儀し、成長が抑制される構造に陥っている。これは、まさに1970年代以降のソ連や東欧で見られた現象である。

こうした状況を放置したまま超低賃金の外国人労働者(実質奴隷)だけ導入したのが、外国人技能実習制度だった。その結果、地方の低収益の既存企業が延命したという点では成功したかもしれないが、地場の雇用には何のプラスにも働かず、超低賃金であるために消費にも全く貢献せず、言うなればアナログのオートメーション工場が地方にできただけの話に過ぎなかった。それでも高収益であるならば、自治体に納税することで一定のプラス効果もあったかもしれないが、そもそも外国人奴隷の導入を必要とする企業は、超低賃金の労働力無しでは成立し得ない超低収益構造にあり、納税に期待などできないのが常だった。

今回の政府の新方針は、外国人技能実習制度を全国規模で大々的に拡充しようというものだが、外国人技能実習制度の総括をせぬまま、規模だけ拡大しようというものに過ぎない。これは、誤った認識に基づいて誤った戦略を展開する典型例であり、全国規模で低収益企業の延命を図る上、より大々的に国家規模で人権侵害を行うことになるだろう。
この政府に労働、経済政策を担わせ続けるのは、いかにも不安である。
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2018年06月09日

働き過ぎたから賃金カットという地獄、そして資本主義の終焉・続

【福井市5.8%給与削減、労組と合意 5億円捻出】
 今年2月の大雪の影響により福井県福井市の本年度一般会計が約12億円の財源不足に陥る問題で、市は6月6日、職員給与の削減率について市職員労組と合意し、管理職を含む職員約2300人の給与を7月から来年3月まで9カ月間、平均5・8%、総額約5億円削減する方針を明らかにした。
 玉村公男市総務部長が同日、記者団の取材に応じた。組合員の平均削減率は4・5%。市は給与削減に関する条例改正案を、開会中の6月市議会に13日に提出する意向。市議会の各会派は給与削減について「労使合意が前提」としており、条例改正案は成立する見通し。
 財源不足の12億円の内訳は、昨年度の赤字約2億円と、扶助費や人件費など本年度補正見込みの10億円。市は、151事業の見直しで約5億円を捻出。職員給与の削減による約5億円を加えても不足する約2億円については、市税の収納率向上や歳出抑制など、財政運営のやりくりで賄い、解消したい考え。
 市や職員労組によると、給与は職員の等級に応じ2・5〜8%、管理職(副課長級以上)は10%削減。加えて管理職手当10%、特別職報酬20%も9カ月間削減する。
 5月8日に市側の「職員給与一律10%削減」提案で始まった職員労組との交渉は、約1カ月を経て終結。野田哲生委員長は6日会見を開き、4・5%で妥結した理由について「交渉が長引けば財政再建のスタートが遅れることも危惧しており、ある程度納得できる内容で早期に決着を図った」と述べた。
 玉村部長は市税収納率の向上策について「本年度の市税収入を上げ、昨年度までの滞納分の整理が必要になる」と説明。歳出についても厳格な予算執行で抑制したいとした。
 2016年度の市税収納率は、その年の課税分が98・7%、前年度までの滞納分を含めると93・9%で、11年度から毎年向上している。本年度一般会計予算の市税収入は446億2700万円を見込んでいる。収納率を0・5%上げると、約2億円市税収入が増える計算になる。玉村部長は「現年課税分(その年の課税分)を納めてもらうことが大事。やれることはしっかりとやっていきたい」とした。
 市議会も議員報酬削減案の6月市議会上程を検討しており、さらに財源を確保できる可能性がある。
(6月7日、福井新聞)

「働き過ぎたから賃金カットという地獄、そして資本主義の終焉」の続き。

「除雪費用が膨らんだので職員給与を減らす」という暴挙に出た福井市。予算編成をした首長含む市幹部や、予算審議をした市議会の責任は問わないまま、右翼を動員して市職労に圧力をかけるという、戦前や1950年代の日本を彷彿とさせる事態に陥っていた。
が、組合側がSNSやマスコミに呼びかけたことで、全国的に知られるところとなり、右翼は退去、市当局が組合との交渉に応じたという。
交渉の結果、当初要求の一律10%削減は撤回され、管理職は10%、職員平均で5.8%、組合員平均では4.5%の削減で合意が成立。組合側は勝てないまでも、負けない戦いを演じたと言える。原理主義的な組合だと、「一かゼロか」みたいな話になって、交渉そのものを破綻させてしまうケースが多い。また、下手に目標を高く掲げて交渉を伸ばしてしまった場合、「組合が抵抗して市予算が通らない(行政サービスが低下する)」などという宣伝が当局・資本側からなされ、組合が支持を失ってしまう恐れもある。
「組合員のダメージを最小限度に抑える」というダメージ・コントロールもまた、組織にとって非常に重要な要素であり、福井市職労・自治労県本部の優れた判断力が垣間見える。

ただ一方で、現地からの報告では、「組織内議員は殆ど役に立たなかった」ともいう。
狛江市で市長によるセクハラ事件が発覚した際には、NK党の議員が連日駅頭に立ってビラを配り、声を上げていたのに対し、民進・生活者ネット・社民などの議員(全員女性)は市長が辞任表明する直前まで見かけなかった。
「人間の進化は危機に際してこそ発揮される」と言う。戦後和解体制が機能していた頃は、組織内議員などは「一丁上がり」の名誉職みたいなもので、「数を満たしていれば十分」という側面があったが、労使協調が破綻して、資本の横暴が顕在化してきた今日にあっては、組織内議員は一種の命綱の役割を担うだけに、「出てくれるなら誰でも良い」ではなく、代議員としての実質が問われるところとなる。

以下は繰り返しになるが、福井市の事例は、資本と国家の暴虐がセンセーショナルな形で顕現しているだけであり、遠からぬ将来、日本全国で起こりうるものであることを覚悟しておくべきだろう。

「他の自治体に波及する恐れがある」として総動員を呼びかけた自治労福井県本部の見識は慧眼であり、短期間でギリギリのところで妥結した市職の決断も高く評価したい。率直に敬意を表し、エールを送るものである。
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2018年06月06日

高プロ導入に見る資本主義と民主主義の終焉・下

前回の続き
デモクラシーは、同質性の高い有権者の集合体を前提とした合意形成システムであるが、階級分化と身分固定化が進んだ社会では成立しがたい。ロバート・スキデルスキー師は、「二十世紀の経験は、経済的繁栄はリベラルな民主主義に依存しないが、リベラルな民主主義は、経済的繁栄が欠けている場合、危機に陥る、ということを示している」と述べている。

20世紀を前後して、工業先進国においてデモクラシーを採用する国が増えたのは、資本主義との相性が良かったところが大きい。労働者に政治的権利を付与することによって、資本と労働の合意形成がなされ、階級和解が実現することによって、労働争議が抑えられ、資本と労働が効率化していった。また、効率化と労使合意によって労働者の賃金も継続的に向上、消費が増え、市場そのものが拡大していった。
これに対して、ソ連型社会主義が1960年代後半から70年代にかけて失速して、そのまま浮上できなかったのは、計画経済の中で消費文化を否定したことで市場の発展を阻害、成長を止めてしまったことが大きい。さらに、生産力向上に対して賃金を増やしたものの、家計にある貨幣を吸収する消費財を供給できず、市場に大量の貨幣が滞留、超規模のインフレーションを発生させてしまった。

ソ連が崩壊したのは、フランシス・フクヤマらが言ったような「自由民主主義の優越」に起因するものではなく、単に「市場」を理解できなかったソヴィエトの政治家と官僚が、経済運営に失敗したために起きたものだった。現実に2018年時点で、自由民主主義を否定し、一党独裁を堅持する中国が、アメリカやEUを上回る富を獲得しつつあるが、この現象はフクヤマの論理では説明できない。
むしろ、アメリカと西欧の資本主義は、ソ連崩壊によってロシア・東欧・中央アジアをほぼ無償で市場占有できた上、安価な労働力を得ることができたため、延命することができたと考えるべきだろう。ロシアのプーチン路線は、米欧の新帝国主義に対する反動であり、だからこそ米欧が血眼になって敵視しているのだ。この辺の説明は、別途記事にしたいと思う。
例えば、アメリカの政策金利を見た場合、1993年に3%まで下がっていたものが、1997〜98年には5.5%に回復、2000年には6.5%を達成するも、その後ふたたび低下し始め、リーマンショック後の2009年には0.25%となった。これは、資本主義が安価な資源調達先と占有できる市場が必要であることの傍証でもある。

アメリカは2015年末にゼロ金利政策を止め、現在は1.75%となっているが、日本はリーマンショック後に0.1%としたまま、現在まで続いている。これは、日本企業がアメリカ企業以上に低収益構造の改善が進まないことを示している。
日本の場合、1991年に始まったバブル崩壊を経て、公的資金(主に税金)を投入して大手銀行の一部を救済する一方で、解雇や雇用抑制がなされると同時に、派遣労働や業務請負の解禁が進められた。これらは労働コストを下げることで、収益を改善することを目的とした。
この公的資金投入と税収減の穴を埋めるために、1997年には消費増税と特別減税の廃止がなされ、労働報酬の削減と国民負担増が進んだ。

2000年代に入って、小泉政権が成立すると、派遣労働・業務請負の流れが加速、非正規雇用の割合も急上昇していった。1994年に20%だった賃金労働者に占める非正規雇用者の割合は、2002年には30%を超え、今や38%に達している。非正規雇用者の平均賃金は2016年度で年172万円で、正規雇用者の315万円に対して54%でしかない。
労働分配率を見た場合、2004年に70%を割ったものがリーマンショック前に74%にまで改善されたものの、2012年に安倍政権が樹立すると68%以下にまで下がっている。これに対して、企業利益(付加価値から人件費と租税を引いた分)は小泉期に72〜73兆円を超えていたものが、リーマンショックで一時低下、安倍政権の樹立を経て再び70兆円を超えて、今や過去最大の90兆円近くにまでなっている。
また、租税と社会保障負担を示す国民負担率は、1999年に35.5%だったものが、2018年には42.5%にまで上がっている。

これらの数字は、日本政府が低収益の企業を潰して高収益産業にシフトさせるのではなく、賃金を削減して労働者を収奪することによって企業収益を担保する政策を採り続けてきたことを示している。
2000年以降、社会主義政党が国会に1割の議席も得られず、資本に融和的、協力的な民主党と連合が野党第一党あるいは政権与党であったため、全く抑止力にならなかったと考えられる。

こうした傾向は地方に行くと、より露骨な形で現れる。外国人技能実習制度は、現行の労働法制下では採算が成り立たない低収益企業が、生活保護水準の半分以下の超低賃金で、アジア諸国から欺いて連れてきた労働者を軟禁、酷使することで、延命を図るシステムである。これは、労働法制を適用除外にした上、基本的人権を認めないという点で、現地の自治体議会や警察を含む行政が「全員グル」にならないと成り立たない。その意味するところは、地方経済が疲弊しすぎて、外国人奴隷を軟禁して強制労働させることでしか、地場資本が存続できなくなっているということだ。
「都市部のコンビニや介護にも技能研修者を」という声が高まっているのは、もはや都市部でも非正規雇用程度では収奪が間に合わず、最低賃金以下の奴隷労働なしでは都市資本すら成立しなくなりつつあることを示している。
しかし、先に述べたとおり、賃金削減でしか収益が上がらない経済活動は、縮小再生産するばかりであり、現行の資本主義体制の終焉が近づきつつあることを露呈している。

資本家と労働者が一定の合意を得て市場の発展と国民生活の改善を同時に追求するというのが、「戦後和解体制」と呼ばれる自由民主主義の本質だった。ところが、1990年代にこのシステムが瓦解を始め、2000年代に深刻さを増し、2010年代に危機を迎えつつある。
上記のように、資本による労働収奪が強まり、政府が資本側について賃金削減と雇用不安定化に寄与するところとなるが、従来の社会民主主義政党や日本の民主党は、戦後和解体制から脱却できないまま労使合意に拘ったため、資本の横暴に歯止めがかからず、労働者階層の貧困化が加速していった。
特に欧米の場合、リベラリズムの原則によって難民や外国人労働者を多数受け入れ、社会民主主義政党やリベラル政党が強く推進し、肝心の自国有権者の生活水準を下げてしまい、離反を招いていった。
これは、社会民主主義政党が「民主的」「自由的」であるが故に、支持を失うプロセスにあることを示しているが、彼らはその処方箋を持たないまま、苦境に立たされている。

社会民主主義や自由主義の機能不全に対する抗議意思の表明は、欧米ではポピュリズムの形で顕現しているが、日本はロシア型の権威主義を指向する形で現れている。この辺りの機微が分からないと、イタリアで左派寄りの五つ星運動と右寄りの(北部)同盟が連立政権を組む理由が理解できない。
日本の場合、国政選挙の投票率が55%程度で推移、4割以上の有権者が投票しなくなっている中で、小選挙区制の導入によって45〜50%の得票で当選できるため、絶対的票率では25%、つまり四人に一人の有権者の支持だけで国会議員になれる一方、残る有権者の声は国政に反映されない事態になっている。
にもかかわらず、国内には少なく見積もって2千万人以上の貧困層(生活保護水準以下)がおり、その数は上昇し続けている。社会主義政党を含めてこの層を包摂する政党や政治団体がないことは、デモクラシーが機能不全に陥っていることを示している。
高度プロフェッショナル制度は、その背景にある資本側の狙いと歴史的経緯まで理解する必要がある。
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2018年06月05日

高プロ導入に見る資本主義と民主主義の終焉・上

【連合、ようやく「高プロ反対」 響く昨夏の「容認」騒動】
 連合は29日、働き方改革関連法案に盛り込まれた高所得の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」に反対する初の全国一斉行動を各地で実施した。昨夏、一時的に「容認」に傾いて反発を招き、これまで活動は抑えめだったが、ここにきて「高プロ反対」を浸透させようと懸命だ。
「高プロという、とんでもない内容をもぐり込ませるから、だめだと言っている」。連合の神津里季生(りきお)会長は29日夕、東京・新橋駅前で200人ほどを前に訴えた。高プロの削除を求める立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎・共同代表も参加。野党との連携もアピールした形だが、この日予定されていた法案の衆院通過に事後的に抗議するため、やっと設定された全国行動だった。
 連合は昨夏、働き過ぎ対策を見直す条件つきで高プロを容認する動きを見せ、組織内外から強い反発を浴びた。結局、高プロ反対に立場を戻したが大きな顔はできず、これまでは国会内などで小規模集会を数回開くにとどまっていた。幹部は「昨夏の騒動で傷を負った。あれがなければもう少し動けていた」と話す。
 法案にセットで盛り込まれた残業時間の罰則付き上限規制などが、連合の望みであることも立場を難しくしている。神津会長は、野党が審議を拒否していた4月の会見で「重要な法案の審議すらできないのは極めて問題」と不満を述べた。ある副会長は「残業規制は連合の悲願。徹底反対で法案がつぶれるのが最悪のシナリオ」と、法案全体への対決姿勢には野党と足並みをそろえられない事情を説く。
 今月17日には神津会長が菅義偉官房長官を訪ね、残業規制などの早期実現を要請。これを菅長官が会見で「国会で議論を深掘りすることが重要と意見が一致した」と法案審議を後押しする要請と紹介する場面もあった。神津会長は29日の演説で、残業規制などは「早くスタートしなきゃいけない」としつつも「高プロなんかだめだと、私たち連合はこだわりを持って訴えたい」と強調した。
(5月30日、朝日新聞)

高度プロフェッショナル制度(裁量労働制の適用拡大、労働時間管理義務の放棄)については、すでに四年前に記事にしているので、改めては取り上げていない。
問題は「残業代がゼロになる」のではなく、「労使間合意なしでも使用者は労働時間を永遠に引き延ばせる」点にあるはずなのだが、そうした議論にはなっていない。このことは、日本のナショナルセンターが結局のところ賃上げ闘争にしか興味を持たず、労働環境の改善を目指すべき労働基本権(労働基準法)そのものに疑問を抱いてこなかったことに起因している。具体的に言えば、残業代欲しさに労働時間規制への対応を怠ってきたツケが回っているのである。
政府・財界は「労働時間規制の緩和」などというが、そもそも日本には労働時間規制の実態が存在しないわけで、それを追及せずに「企業が残業代を払わなくなる」と叫んでいるのが労働界の現状と言える。もちろん日本の労働時間規制の実態は、OECD諸国の中で最も緩い部類に入る。
ナショナルセンターの本来の役割は「残業代を出せ」ではなく、「人間らしい生活ができるように労働時間を規制しろ」と主張することにあると思うのだが、そんなことを考えているのは私だけのようだ。
労働者は生かさず殺さず、2014.5.30

いまケン先生が注視しているのは後段の指摘である。
こうした流れは、水野和夫先生の理論から説明できる。
資本主義を成立させるためには常に新しい市場が必要で、資本の核がマーケットを広げながら利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していく。しかし、グローバル化が進んで地理的な意味での新規市場は地球上から消失、次いでバーチャルな電子・金融空間に市場を広げたものの、あっという間に限界に達して利潤を上げることができなくなった(リーマンショックなど)。その結果、利潤を上げられる外部市場の開拓の余地が完全に失われ、その矛先は内部に向けられることになる。内部市場、つまり自国の国民から利潤を巻き上げる構造へと変化してゆく。
具体的には、正規雇用労働者からの「既得権益」の剥奪、非正規雇用労働者の増加、低所得層への融資増(学資ローンも含む)や住宅購入の促進などとなって現れている。家計貯蓄の多さを誇った日本が、いまや3世帯に1つは金融資産ゼロになっていることも象徴的だ。
この急激な中間層の没落と中低所得層からの容赦ない収奪によって高まるだろう国民的不満を解消すべく用意されているのが、排外主義とミリタリズムで、それが具体化したのがヘイトスピーチと集団的自衛権だと考えられる。
(同上)

資本主義を成立させるためには常に新しい市場が必要で、資本の核がマーケットを広げながら利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していく。しかし、グローバル化が進んで地理的な意味での新規市場は地球上から消失、次いでバーチャルな電子・金融空間に市場を広げたものの、あっという間に限界に達して利潤を上げることができなくなった(リーマンショックなど)。その結果、利潤を上げられる外部市場の開拓の余地が完全に失われ、その矛先は内部に向けられることになる。内部市場、つまり自国の国民から利潤を巻き上げるほか無くなって、今回の裁量労働制の拡大や労働時間規制の撤廃という形になって現れている。しかし、これは資本主義システムの終焉を意味する。賃金の削減は消費減退に直結、市場が縮小、収益の上がらない市場に対する投資も減退、収益悪化は賃金削減でしか対応できず、市場そのものが縮小再生産してゆくことになる。
「資本主義のもとでは利潤率が必ず低下し、やがて崩壊する」というマルクスの指摘は、21世紀後半には実現しそうな勢いにある(利潤率が低下の部分は2000年代には具現化)。若い人は今からでもマルクスを勉強しておいた方が良いだろう。

この資本主義の延命を図ろうという試みこそが、TPPであり、中国の一帯一路政策である。しかし、TPPは市場拡大という点で規模が小さすぎて実際には機能しそうにない。これに対し、一帯一路は、未開発のユーラシア内陸部と巨大な人口を擁している上、「Sea PowerからLand Power」へのシフトという戦略的価値も大きいため、当面は機能しそうだが、それも20〜30年くらいのスパンでしかないと見られる。
そもそも近代資本主義は、列強の植民地やいわゆる後進国から資源を不当に安価に買いたたき、加工製品を高く売りつけ、莫大な利潤を上げることで成立してきた。ところが、労働コストと資源価格が上昇するにつれて、利潤が低下したため、先進工業国は重工業からサービス業、ついで金融業にシフトすることで、高収益を維持してきたものの、その仕組みは完全に行き詰まっている。だからこそ、資本の意を汲んだ先進国政府は、こぞって解雇・賃下げを容易にする労働法制の改悪を行い、階級闘争を再発させている。
以下、続く
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2018年05月31日

連合、政治介入路線を継続

【連合、立民と5カ月ぶり懇談 新潟知事選・参院選、連携を確認】
 立憲民主党と連合の幹部懇談会が16日、東京都内のホテルで開かれ、与野党対決の公算が大きい新潟県知事選(24日告示、6月10日投開票)や来年の統一地方選、参院選を見据え、連携を深める方針を確認した。政策協定締結に向け調整を進めることでも一致した。
 連合の神津里季生会長は懇談後、国民民主党とも同じ内容の政策協定を結ぶ意向を記者団に示した。21日に同党との懇談会を開く。
 立憲民主党と連合の幹部懇談会は、旧民主党、旧民進党時代に党執行部と連合が定期的に開いてきた会合の方式を踏襲し、昨年12月に初めて行われた。その後は実施が滞り、約5カ月ぶりの開催となった。
 神津氏は、連合が結成を後押しした国民民主党が7日に結党されて間もないことを念頭に「野党の状況を見定めなければ政策協定の議論のスタートを切ることができない」と説明した。
(5月17日、産経新聞)

おいおい、連合なんか加えたら柏崎原発の再稼働に反対できなくなるぞ。
連合は、野党候補を支援することで、どちらの候補が当選しても、原発推進を担保する戦略を採っているだけに、立民はデーモンを倒すためにデビルと手を結ぶような形になっている。

連合は連合で、政治関与に費やしているコストに比して、政策要求の実現は十分とは言えない状況にある。政党に対する支配力という点でも苦しい情況が続いている。かつて社会党時代には総評の組織内議員が5割を超えたこともあったが、民主党では2割前後にまで下がって、立民と国民に分裂したことで、その割合はさらに低下しそうな勢いにある。同時に、産別によっては自民党支持を明確にするところも出てきて、立民・国民の股裂き状態も相まって、その政治的影響力はますます低下しそうだ。

もともと連合は、社会党・総評と民社党・同盟の合流をもって政権交代可能な政党をつくることを目的に結成されたはずだが、新たな社会主義政党の結成に失敗したことを受けて、やむなく、なし崩し的に民主党を支援してきた。
昨今の連合側の要求を見れば分かるが、現在では「自民党でいいんじゃね?」というものが圧倒的に多い。

TPP推進
原発推進
リニア新幹線推進
高速道路推進
電波オークション反対
大企業保護
残業規制反対(高プロも最近まで賛成)


これを見れば分かるとおり、今日における連合の役割は「万が一政権交代が起きても、大きな政策転換がなされないようにする」ことにある。

立憲も国民も、連合の支援がなければ資金も選挙動員も不足する状況にあるが、それは自らの党組織を作ろうとしない怠慢に起因している。結果、両党とも連合への依存を強め、連合の思惑通りになっている。それだけに、両党とも自民党に対する対抗軸を打ち出せるような態勢にはなく、今後も期待できない情況が続きそうだ。

個人的には、赤い貴族どもが野党を骨抜きにして自民党優位体制の存続に手を貸しているこの情況こそが、日本政治の堕落であると考えている。
もし連合に一片の良心が残っているならば、今すぐ解散するか、政治から一切手を引くか、産業報国会に改名して自民党支持に転換すべきである。
posted by ケン at 12:36| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月26日

働き過ぎたから賃金カットという地獄、そして資本主義の終焉

【除雪がんばったら給料カット!? 福井市職員 猛反発】
 今年2月の記録的な大雪による除雪費膨張の影響で、財政が危機的な状況に陥ったとして、福井市が職員の給与を削減する方針を決めたことに対し、市の職員組合は18日、反対を申し入れました。これを受け自治労福井県本部は21日、総決起集会を開き、この福井市のケースが全国的な広がりを見せないようくさびを打ち込むつもりです。
 「体力の限界まで頑張った見返りが給与カットとは!」「信じられない仕打ち」「来年も今年以上の積雪があったらどうなる」「除雪業務、もう頑張れない」「子育てでお金がかかるのに……」。除雪費が膨らんで財政悪化し、給与カットを打診された福井市職員の声です。
37年ぶりの記録的な大雪に見舞われた福井市。によりますと、今年2月の大雪に伴って昨年度の除雪経費は、当初見込んでいた4億円余りの10倍以上となる50億円に膨れ上がりました。
国の補助金や市の貯金にあたる「財政調整基金」全額を充てたほか、大型公共事業を先送りするなどして予算を捻出しましたがそれでも8億円が不足し、そのため▽一般職員2300人の給与や管理職手当を10%▽市長ら特別職の報酬を20%、それぞれ7月から9カ月間削減してまかなう方針を、市の職員組合に提示していました。
 これに対し、組合側は「給与で被災財源を補填するのは不合理極まりない」として、▽給与削減提案の撤回▽労使合意のないまま給与削減に関する条例改正案を議会に上程しないことなどを、東村市長あてに申し入れました。福井市職員の平均給与は月額32万円余り。10%削減されると月3万円ほど減る計算です。
17日夜の組合員の緊急集会では給与削減の提案に反対する方針を確認しました。また、福井市の提案に他の自治体も同調しないよう自治労県本部や県内のほかの市町の組合のメンバーらも応援に駆け付け反対の輪に加わりました。
福井市職員組合が加盟する自治労福井県本部は、財源不足を職員の給与で補填するといった提案が全国に波及しないよう、21日夜、総決起集会を開き、県内のほかの市町の組合員らと連携を取って、反対の方針を確認する予定です。
(5月21日、福井テレビ)

大雪で除雪を行ったところ、財源が底を尽き、除雪を担った市職員の給与を削減するという話。
民間企業であれば、労働契約法などによって賃金の引き下げに対して非常に厳しい規制が掛けられており、経営危機が理由の場合、労働者個別に合意を得る必要がある。管理職などで見られる「給料の一部返上」についても、懲戒処分以外は、当事者の同意が必要となる。ただし、現実には中小企業などでは、社長がクビをちらつかせるなどして恫喝し、賃金カットの同意を強要するケースが蔓延している。

しかし、公務員の場合、労働法の多くが適用除外となっており、「職員の同意無き賃金カット」が可能になっている。
「労働組合法、労働関係調整法及び最低賃金法並びにこれらに基く命令の規定は、職員に関して適用しない」
(地方公務員法第58条)

「この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない」
(労働契約法第22条)

そして、公務員は労働基本権が大きく制限されており、団結権は認められても、団体交渉権や争議権(スト権)は認められていない。そのうち団体交渉権については、地方公務員の場合、自治体に独立性の高い人事委員会などが設置され、労使関係の調整を行うことになっている。ところが、この人事委員は首長が指名して、議会の同意をもって任命されるため、殆どの自治体で首長と議会が自民党で占められている日本の場合、人事委員会は自民党の影響下に置かれているケースが大半となっている。

給与改定の過程は、人事委員会が人事院勧告と地域の給与水準を鑑みて独自の勧告を行い、それに従って自治体行政が給与改定方針を作成、議会が条例を改正する流れとなる。そのため、人事委員会、首長、議会が同一人格(政党)で占められている地方は、理論上自由に賃金を改定できる。

現実には、1990年代までは、日本社会党がそれなりの勢力を持って自民党と対峙しており、自民党の「やりたい放題」にはならなかったわけだが、社会党なき今、一般公務員の利益を代弁するのは、旧民主党系の自治労組織内議員とNK党だけになってしまっている。現在の立憲民主党の中にも、「公務員の賃金が高すぎる」と主張する議員は非常に多く、自治労が支援する理由が全く分からない。
地方の場合、地域経済の疲弊と余剰インフラに伴う財政破綻が前提にあるところに、社会党という抑制機能が失われ、地域資本の暴走(最後の悪あがき)が始まっていると解釈される。

福井からの報告によれば、自民党側は右翼にテロルの要請を行い、近々右翼の街宣車が福井市職労の周辺で大音量の恫喝活動を行うという。市職労は市役所の中にあるため、実質的には市民に被害が出る恐れが生じる人質作戦とも言える形となるため、公務員組合は基本的にテロルに対する耐性が無い。
こうした手口は、自民党が右翼団体を動員して、まず警察にデモ隊を襲わせて、路地に逃げ込んだ市民に暴力団が暴行を加えたという、1960年の安保闘争。あるいは、大学当局が右翼を動員して、学生運動家に対する個別テロを行った、1968年の日大闘争など、50年代から60年代にかけては日常茶飯事だったが、最近はあまり見られなかった。
このことは、1970年代から2000年代くらいまで成立していた戦後和解体制の瓦解を示しており、マルクスが指摘した「資本は、労働者の利益を犠牲にすることで自己増殖し、暴走する」の復活を意味している。

しかし、地域資本やそれを代表する自民党は、自らの首を絞めているだけでしかない。ただでさえ十分な産業基盤を持たない地方の場合、公務員の給与が地域消費の一大源泉となっているため、公務員の賃金削減は消費減に直結するところとなる。
これは別途記事にする予定だが、地方ではデパートが撤退して、ショッピングモールや大型スーパーとなり、それも撤退して小型スーパーとなり、それすらも経営維持に難儀しているのが実態だ。少子化、人口減解決のメドが立たない以上、企業に投資するインセンティブはなく、地方事業を切り捨て、人件費を抑制するほかなく、その影響は地方自治体にまで出ている。

つまり、デフレと人口減少にあっては、資本主義そのものが成立しえず、日本の地方はその最先端を行っているわけだが、資本家も霞ヶ関官僚もそれを認めないため、資本主義的手法で解決しようとする。
だが、利潤の上がらない地方に投資するメリットは企業になく、公債を発行して公共投資するケインズ的手法は、維持費ばかりかかる余剰インフラを増やして財政を悪化させる効果しか無い。
実のところ、少なくとも地方では、計画経済や協同組合制度に移行する方が望ましいと考えられるが、日本のエリートは思いつきもしないだろう。

話がズレてしまったが、従来の手法では利潤を上げられなくなった資本は、労働を収奪することでしか延命できなくなっている。本来、自由主義を貫くのであれば、不採算・低採算の企業は倒産させて、収益性の高い産業にシフトするように仕向けるべきなのだが、資本と行政と立法とマスゴミ(情報)が一体化している日本の場合、公的資金が優先投入されて不採算・低採算の企業が生き残り、ひたすら賃金コストの圧縮を進める事態になっている。国会で審議されている「高度プロフェッショナル制度」もその延長線上にある。

福井市の事例は、センセーショナルな形で顕現しているが、遠からぬ将来、日本全国で起こりうるものであることを覚悟しておくべきだろう。

「他の自治体に波及する恐れがある」として総動員を呼びかけた自治労福井県本部の見識は慧眼であり、産別労組のモデルであると言える。同志からの報告では、保育士や非正規職員の加入にも力を入れているとのことで、率直に敬意を表し、エールを送るものである。
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2018年05月17日

OECDジェンダー間給与格差ランキング

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OECD諸国における男女の賃金格差ランキング。
韓国のフェミニスト運動を考えれば、日本女性は良い子ちゃん過ぎるくらい。1789年のパリジェンヌを見習うべきかと。

ちなみに中国における女性の賃金は男性の77%で、さらに格差拡大中らしいが、一方で民間企業の管理職の35%が女性で、こちらの比率は上昇中とのことで、若干事情が異なる模様。
男女間の給与格差については、日中に大差は無いものの、日本企業における女性管理職比率は7%にも満たず、「女性活躍」と豪語する割に日本は中国に大きく遅れている。この点も、日本が世界の潮流に遅れる一方であることを象徴していると言えよう。

また、賃金だけでなく、日本では民間企業に総合職で入社した女性の65%以上が10年以内に辞めているという数字もあり、男性の29%に比して倍以上の差がある。これでは、女性管理職を増やすことなどできるわけがない。

今後、裁量労働制の導入拡大などで労働時間規制が撤廃された場合、より長時間働ける男性の優勢がますます強まり、女性労働者に対する教育効果が一層低下、賃金・管理職ともにますます格差が広がってゆくものと推測される。
posted by ケン at 12:22| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする