2019年01月10日

公立校の精神疾患休職者が5千人超に

【17年度、休職の教員は5千人超】
 2017年度に公立小中高校などで精神疾患を理由に休職した教員は16年度から186人増の5077人で、4年ぶりに増加したことが25日、文部科学省の人事行政状況調査で分かった。02年度は2687人だったが、その後増え続け、07年度に4995人になって以降、5千人前後の高い水準で推移している。
 公立学校の全教員(約92万人)に占める割合は16年度比0.02ポイント増の0.55%。文科省の担当者は「教員の多忙と長時間労働が背景にあるのではないか」と話している。病気休職者7796人の65.1%が精神疾患で、このうち今年4月1日時点で復職していたのは1994人。
(12月25日、共同通信)

報道では単純に休職者数のみを挙げて「横ばい」としているが、公立校の教員数は10年前の約99万人に対して92万人まで減少しているのだから、母数の減少を考慮する必要がある。また、あくまでも休職者数であり、退職者は含まれないので、どこまで実態を表しているか疑問は残る。

文科省の「担当者」が言う「教員の多忙と長時間労働」は否定しないが、本業以外の業務の煩雑さやクレーム対応に触れていないのは、やはりヤクニンが教職労働の実態を知らないことの現れだろう。そもそも超長時間労働を強いられている教員が、給食費の取り立てから保護者のクレーム対応まで担っているのだから、精神を病まない方がおかしいくらいだ。
容易に認定しない厳格な(当局に都合の良い)基準だからこそ、この人数で済んでいるのであり、欧州基準で診断したら、教職の何分の1かは精神疾患(恐れを含む)の診断がくだされるのではないか。

ケン先生が教職の労働環境に触れたのは、ブログを始めて間もない2007年のことであり、国会に勤務する間もずっと指摘し続けたが、何一つとして改善されていない。それどころか、むしろ悪化していると言える。にもかかわらず、教員組合から「部活動を廃止してくれ」とか「労働時間上限あるいはインターバル規制を導入してくれ」などといった要望を受けたことは一度もなく、労働組合が全く機能していないことも事態を悪化させている。

・教員の質が低下するわけ

先ごろ、私立高校の教員がストライキを行い、「早朝の校長挨拶をボイコットした」旨の報道を見たが、フランスなどでは普通に教員が授業を丸ごとボイコットしたり、学校を封鎖したりしている。
マルクスが強調するように、労働者には労働力しか提供できるものが無いのだから、労働力の提供を止めることでしか資本に打撃を与えることはできない。つまり、教員の場合、本質的には授業をボイコットすることでしか、自らの労働力の価値を訴えることはできないはずなのだ。実際、教員組合本部にはストライキ用に何百億円という資金が溜め込まれているという話を聞いたことがあるが、死蔵になってしまっている。

やはり日本人はマルクスを読み直すところからやり直すべきなのだ。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月26日

革命は医療現場から?

【医師の働き方改革 休息義務9時間に委員から「現場回らない」】
 医師の働き方改革を巡り、厚生労働省は17日の有識者検討会で、仕事を終えてから次に働き始めるまで一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」を「9時間」、宿直明けは「18時間」とする案を示した。連続勤務時間は「28時間」とした。委員から「これでは現場が回らない」などと批判が相次いだため、19日の会合で再度議論する。
 医師の残業時間の上限について、厚労省は、一般的な医療機関の医師▽地域医療に従事する医師▽専門性や技能などを高めたい若手医師――の3パターンに分類。地域医療や、技能を高めたい若手医師は過酷な医療現場で長時間労働が想定されることから、インターバルや連続勤務時間の制限を義務付ける。
 医師の休息時間について、厚労省は8時間を軸に検討していたが、医師の健康を維持するには9時間が必要と判断。宿直明けは2日分に当たる18時間、宿直も含めた連続勤務時間は28時間とした。
 だが、この日の検討会で、複数の委員から「かなり厳しい設定だ。地域医療は守られるのか」「義務化したら現場はとても回らない」と批判が相次いだ。厚労省は、残業時間の上限も含めて、年内にはまとめる方針。
(12月17日、毎日新聞)

改革とは言えない改革案。改革そのものが不可能になっている末期症状を象徴している。
別の記事では、「一般労働者の上限「年720時間(休日を除く)」を超える見通しで、地域医療の中心となる病院の医師と、高い技能を身につけようとする若手医師はより高い上限として長時間の残業を容認する」旨も言っており、どう見ても形式的に「医師の労働環境を改善した」ポーズだけとって、実質的な成果を得ることは前提としていないとしか思えない。

この手の残業規制やインターバルを含む労働時間規制は、強力な労働組合が監督することによってのみ実現可能であり、医師の裁量や自由意志に任せていたら、「現場が回らない」の一言ですべて反故にされてしまうことは間違いない。断言してよいだろう。
この点は、旧同盟系の民間労組が優れており、特に工場などでは終業後、必ず組合員が現場を見て回り、残業の適法性や必要書類を検査、違法残業の摘発を行うという。逆に公務員系の労組では、殆どこうした取り組みが行われておらず、自治体や教職では超長時間労働が放置されている。
未組織率が非常に高く、労働者としての意識が低い医師も後者の部類に入るため、仮に制度で一定の労働時間規制を行ったところで、それをチェックする仕組みがないため、まず守られることはない。

そもそも「医療現場が回らない」などというのは経営・資本側の論理であって、個々の労働者にとっては本来「どうでもいい」ことであるはずだが、「人の生命がかかっているんだぞ!」という宗教的倫理や精神論による弾圧・人権抑圧がまかり通っている。これは「他人の生命の前では、お前の生命の価値など無い」と言うに等しく、しかも過労によって死んだり、精神を病んだりするのは病院長ではなく、現場の医師であるという点、「お国のために死ね」という旧軍の論理や腐敗と酷似している。

上記の改革案もまたこの手の資本の論理によって作られている。例えば、厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の委員を見た場合、病院長、大学教授、県知事など資本家あるいは統治者しかおらず、医師や看護師など労働側代表あるいは若手代表は一人もいない。これでは、フランス革命時の三部会よりも酷い。繰り返すが、過労死するのは医師であって、病院長や大学教授ではない。

改革の発想そのものが逆転している。医師などの労働環境が整って、「人間らしい生活」が担保されれば、潜在的な医師(免許を持っていても医療活動から離れた)の現場復帰が期待できるし、個々の医師の生産効率も上がるだろう。それでも足りない場合は、医学部の定員を増やす話になる。
しかるに実態は、「現場の兵力が足りない」「増援はない」「既存の戦力で現場を死守せよ」と言っているばかりで、現場の戦力をすり減らす一方にある。つまり、指揮官が無能である証拠だ。これでは破断界を迎えるのも遠くないだろうし、現に地方では次々と崩壊している。

ジャコバン派のマラー、中華革命の孫文、キューバ革命のゲバラなど、古来革命は医師と法律家によって担われてきた。日本でも医師の中から革命家が誕生する日も遠くないかもしれない。
posted by ケン at 12:00| Comment(8) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月19日

学習塾という労働地獄

【学習塾「80日間、休みゼロ」 元講師「生徒のため」で疲弊、無念の退職】
 入試に向けてラストスパートを迎え、学習塾が熱気を帯びるこの時期。関東の大手塾講師2人が、過酷な労働環境により労災認定されたことが相次いで報じられた。11月27日、神奈川県の大手学習塾「ステップ」で教室長も務めていた塾講師(40代)は、40連勤の末に適応障害を発症し、労災認定されていた。また、12月7日には、進学塾「栄光」で働いていた男性(当時49)が長時間労働が原因で亡くなったとして、労災認定されていたことも明らかになった。
 学習塾業界でなにが起きているのか。都市部を中心に展開する大手学習塾で働いていた元塾講師の小野さん(仮名・32歳)が、弁護士ドットコムの取材に応じた。小野さんも長時間労働でうつ病を発症し、今年7月、横須賀労基署に労災認定された。塾講師のおかれた過酷な労働環境について、話を聞いた。 小野さんは2010年に正社員として採用され、神奈川県内の教室で働いていた。勤務時間は13時から22時となっていたが、実際は10時前後に出社することを推奨され、帰宅は24時をまわることが日常化していたという。小野さんによると、営業や講義の準備などの仕事におわれ、徹夜や1時間睡眠の日がほとんどで、3時間寝られればよい方だった。
 教室の生徒数は多いときで、約150人。この人数を正社員2人、学生アルバイト5、6人、パート事務1人でまわしていた。しかも、正社員はどちらかが休んでも補充はない。たとえ1人が入院しても、異動になったとしても、長いこと補充はこなかった。小野さんは2015年の9月から12月までの80日間、1人で教室を回さざるを得なくなり、休みなく勤務していたという。
(12月15日、弁護士ドットコムより抜粋)

私の周りにも塾業界で働いていた人がいるので、話には聞いていたが、その凄まじさは言語を絶する。
結局のところ、少子化による供給過剰が競争激化を生み、デフレ競争となって値引き合戦や、少人数化・個別化が進み、利潤を上げるためにアルバイト化と正社員の超長時間残業が加速された、ということだろう。
まさに日本社会の縮図と言える。

本来であれば、学校が正常に機能していれば、ごく上位一部の受験者のみが通うだけで良いはずだ。しかし、学校は学校でイベントとクラブ活動の過多、教員の超多忙、教員の水準低下、意味不明な「総合学習」や「英会話」などの要因で機能を低下させる一途にあり、普通の子どもにまで塾需要が高まってしまっている。

超長時間労働が許容され、摘発されない労働法制を含め、これらの複合的な要因がますます日本を蝕んでいる。
人間的に生きたければ、日本には住めない時代を象徴している。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月12日

戦争屋が外国人労働者を組織する悩ましさについて

【外国人3千人が加入の労組結成 日高屋、大半が非正社員】
 中華料理店「日高屋」を首都圏で約400店展開する「ハイデイ日高」(本社・さいたま市)で、外国人従業員が約3千人加入する企業内労働組合が結成されたことが分かった。組合員の約3分の1を占めるといい、これだけ多くの外国人が入る労組は極めて異例だ。政府が外国人労働者の受け入れ拡大を進める中、外国人の待遇改善をめざす新たな動きとして注目を集めそうだ。
 同社や労組関係者によると、名称は「ハイデイ日高労働組合」。今年5月に繊維・流通・食品業界などを束ねる産業別労働組合「UAゼンセン」に承認され、労組の中央組織・連合の傘下に入った。店舗網の拡大による従業員数の増加を受け、社内で労組の結成が長く検討されていた。関係者は「今年ようやく話がまとまった」という。
 組合員数は約9千人。パートやアルバイトなどの非正社員が8千人超を占め、このうち約3千人がベトナムや中国、ネパール、ミャンマーなどから来ている従業員だ。週28時間以内なら働くことができる日本語学校や専門学校で学ぶ留学生らが多いという。
(11月21日、朝日新聞より抜粋)

労働組合とはかくべきである。労組は、未組織の労働者を加入させ、同時に未組織の企業や分野に組織を広げていかなければ、あっという間に既得権益団体に堕してしまい、資本との一体化を余儀なくされるところとなるからだ。その意味で、ゼンセンは現代の日本にあって、労働組合として真っ当に機能している数少ない存在ではあるものの、同時にゼンセンならではの問題も抱えている。

ゼンセンは元々「全繊維」という繊維産業を基盤とする産別労組であり、日本の近代化を当初から共に歩んできた、最も歴史のある組合を起源としている。
しかし、それだけに帝国主義の恩恵の享受者であると同時に、日本の軍産複合体の一部をなしてきた。戦前の日本において、繊維産業は最大の輸出部門であったためだ。また、軍服や日用品、テントなどを始め、軍需物資に占める繊維の割合は非常に高く、日清戦争以降、50年間に渡る軍拡時代にあって、日本の繊維産業は軍事と一体化してきた歴史がある。
一度は敗戦によって危機的状況に陥ったものの、復活を果たした原因が朝鮮戦争特需(次いでベトナム戦争)であったことは、ゼンセンにとって戦争が「最も景気の良い公共事業」であるという成功例になっている。

それは現在にまで継承されていて、私が議員秘書時代に話を交わした某幹部も「自衛隊の海外派遣や新安保法制、今後の軍拡で我々はしばらく安泰(中略)我々は本来安倍政権をこそ支持すべきであり、民進党をなどを支援する理由はないはず(だから感謝しろ)」旨のことを言っていた。彼の意見が組織を代表するわけではないが、その意見は彼らの歴史的背景を考えれば、十二分に妥当なものなのだ。

日教組のように平和や反原発運動には積極的なのに肝心の労働者の権利を守る運動はほぼ無力である総評系と、戦争賛成・核推進ながら労働者の権利を守ることに積極的な同盟系、本来的には後者が「正しい姿」であるとは分かっているものの、すんなりとは肯定できないところが苦しいところである。
posted by ケン at 12:00| Comment(5) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月30日

外国人技能実習制度さらに拡充へ

【技能実習に「宿泊業」追加=新在留資格の人材確保狙う】
 政府は外国人が日本で職業訓練を受けるための在留資格「技能実習2号」の対象に、宿泊業を追加する方針だ。
 政府が今国会成立を目指す出入国管理法改正案は、技能実習2号を修了した外国人が新たな在留資格「特定技能1号」に無試験で移ることを認めている。技能実習2号の対象拡大で特定技能1号の人材を確保する狙いがある。
 技能実習は日本の技術を途上国に移転するため、外国人に日本で働いてもらう制度。入国1年目の技能実習1号、2〜3年目の2号、4〜5年目の3号がある。一方、衆院で審議中の入管法改正案は、技能実習2号の修了者は特定技能1号取得に必要な試験を免除すると定めている。
 ただ、特定技能1号の対象14業種のうち、宿泊業と外食業は技能実習2号の対象になっていない。このため、与党内から「技能実習2号の対象業種を拡大し、特定技能1号の人材供給源にすべきだ」との声が上がっていた。
 観光庁の金井昭彦審議官は21日の衆院法務委員会で「技能実習2号の対象に宿泊業を追加すべく、検討を重ねている」と説明。理由として「わが国の宿泊業はきめ細やかなサービスや清潔感が特徴。観光が重要な産業である場合が多い途上国では技能習得のニーズが高い」と語った。
 政府は、5年間で最大34万5000人と見込む特定技能1号取得者のうち、45%は技能実習2号からの移行組とみている。野党は、新在留資格は技能実習制度と「密接不可分」で、新資格の導入よりも失踪者が相次ぐ技能実習制度の問題の解決を優先すべきだと主張している。
(11月24日、時事通信) 

この問題はすでに何度も繰り返し論じているが、過去ログを再掲しながら触れたい。
日本の場合、労働基準法が形骸化しており、超長時間労働や残業代不払いなどのブラック労働が放置されているため、供給を抑制する仕組みが働きにくい。
仮に欧州標準の労働規制がある場合、コンビニや飲食店あるいは様々な分野のブラック企業は成立し得ず、低収益となって廃業あるいは倒産し、余剰労働力が生まれる構造になっているが、日本の場合、不採算の企業でも超長時間労働や残業代の不払いで延命できるため、生産性の低い企業が市場から淘汰されない仕組みになっている。
結果、低収益の企業が労働力も資本も握り続け、成長可能性のある新興企業が労働力の確保に難儀し、成長が抑制される構造に陥っている。これは、まさに1970年代以降のソ連や東欧で見られた現象である。

こうした状況を放置したまま超低賃金の外国人労働者(実質奴隷)だけ導入したのが、外国人技能実習制度だった。その結果、地方の低収益の既存企業が延命したという点では成功したかもしれないが、地場の雇用には何のプラスにも働かず、超低賃金であるために消費にも全く貢献せず、言うなればアナログのオートメーション工場が地方にできただけの話に過ぎなかった。それでも高収益であるならば、自治体に納税することで一定のプラス効果もあったかもしれないが、そもそも外国人奴隷の導入を必要とする企業は、超低賃金の労働力無しでは成立し得ない超低収益構造にあり、納税に期待などできないのが常だった。
人手不足で外国人は必要か

政府や財界が主張する「労働力不足」というのは、「低賃金で長時間働かせられて、かつ社会保険等の負担が必要ない労働力」のことであって、人道上の概念に相当する人間のことではない。
本来であれば、必要な労働力は賃金や待遇などを改善することで確保できるはずだが、高賃金が保障できない低収益・低生産性の企業がこぞって政府に圧力をかけ、自民党やKM党が同調したことで、「外国人奴隷制度」が成立している。

中国に来て思うのは、人海戦術的な部分も根強く残っているが、他方でキャッシュレス化を始め、自動化がものすごい勢いで進んでいるということである。ロクにキャッシュレス化も進まず、低賃金の前近代的な労働力動員に依存する日本と比較した場合、生産性の差は今後拡大する一方だろう。

つまり、日本では超低賃金労働に依拠しなければ採算が確保できない低収益産業と企業がどこまでも淘汰されること無く生き残り、資本と労働力を囲い続けることになる。そして、技術革新や構造改革が起きない社会となる。これは、一面で1970年代のソ連と同じ状態であることを意味する。
本来であれば、低収益で労働力を確保できない産業は衰退し、余剰した資本と労働力が新産業に流入することで、産業構造が変化し、成長が維持される。日本は自らこのサイクルを否定する流れにある。

コンビニや飲食店、小売業などは過剰供給にあるだけの話で、本来であれば、数を減らせば良いだけの話だろう。
宿泊業については欧米諸国に比して低すぎる価格設定が従業員の待遇を悪いものにすると同時に、「働き手不足」にしているわけだが、デフレ下で誰も価格を上げようとしないから悪循環に陥っている。民泊などを導入して、その傾向はさらに悪化していると言える。
農業や漁業については、本来自動化や大規模化を進めるべきところを、外国人奴隷制度などがあるために、従来の生産性の低い業態が存続してしまっている。これらは、本来はAIやロボットを導入して効率化すべきところを、「安価な労働力」があるために構造変化がもたらされること無く、前近代的な業態が存続することを意味する。

結果、特に地方を中心に市場価格の半分以下で雇える外国人奴隷によって産業が維持され、労働価格が超低レベルで維持される上、新産業が育たず(起業が発生しない)、奴隷を雇っている企業主まで含めて全員定収入であるため、税収も上がらず、数少ない若年層は都市部に流出、あるいは地元に戻る機会も与えられず、ひたすら衰退の一途を辿ることになる。技能実習制度は、利用者の低収益が故に、同制度なくしては事業の存続ができず、地元政治家や官僚との癒着を深めるほかない。
同時に、その低収益性が故に、事業が継承されることは無く、今の世代でほぼ壊滅するものと思われる。だが、その頃には地方には事業を再生産するだけの体力が残っておらず、ソ連崩壊後の廃墟が如き様相が日本全国で見られることになるだろう。

日本は明らかに誤った政策を採って、自ら衰退を招いている。それを糊塗するために、五輪や万博などで「起死回生の一発」を打とうとしているが、これは明らかに「負けが込んできたダメな博打打ち」の姿なのである。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月20日

連合、今さら教員過剰労働を指摘

【過労死ライン超えの教員、公立校で半数 仕事持ち帰りも】
 連合は18日、公立学校教員を対象に緊急調査を実施した結果、半数が過労死ラインとされる週60時間以上の勤務を超えていたと発表した。「時間内に仕事が処理しきれないか」という質問には8割以上が「とてもそう思う」または「まあそう思う」と答え、20代と30代では9割以上に上った。
 調査は9月、公立学校教員1千人を対象にインターネット上で行われた。それによると、1週間の平均勤務時間は平日で約56時間、休日で約6時間で計約62時間だった。約6割の教員が管理職から「早く退勤するように」言われた経験があったが、このうち約7割は「仕事の量を減らしてから言ってほしい」と考え、4割以上が「持ち帰り仕事が増え、総労働時間は変わらない」と回答した。
(10月18日、朝日新聞)


何をいまさら!
本ブログでは、教員の過剰労働問題について2007年には取り上げている(教員の質が低下するわけ)。ブログを移転させた際に古い記事の一部が消失してしまい、確認が不十分だが、10年前から指摘していたことは間違いなく、その基礎資料はNK党系の全教の調査を参考にしていた。
ケン先生は、10年ほど連合系の野党で議員秘書を努め、連合系の教員組合とも浅からぬ接点があったものの、予算獲得や平和運動などで相談や陳情を受けたことはあっても、労働問題に関する陳情を受けたことは記憶にない。
こうした政治運動や既得権の保護に注力した教員組合、あるいはナショナルセンター「連合」のスタンスが、さらなる労働環境の悪化をもたらしたことは、想像に難くない。
結果、まともな教員から脱落、離職している上、教員志望者はますます減少、その質的低下は凄まじいものになっているという。

秘書だったおりには、とある自治体公務員からそこのJ治労が労働時間や職場環境の改善に全く取り組まない旨の愚痴を聞かされたことがあるが、労働組合が組合として機能せず、本来業務外の運動にばかり注力している現状は、政府や政党ばかりでなく、社会のすみずみにまで腐敗が及んでいることを示している。
既得権を守ることしか考えていない、労働人口の10%程度のエリート労働者しか組織していないナショナルセンターなど、害悪でしか無い。
posted by ケン at 12:00| Comment(6) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月19日

自由貿易体制を盲信する日本政府

【自由貿易体制への挑戦=米保護主義を懸念―通商白書】
 世耕弘成経済産業相は10日の閣議に、2018年版の通商白書を報告した。「グローバル経済は、世界貿易機関(WTO)に基づく自由貿易体制に対する挑戦など(を受け)、大きな転換点にある」として、名指しを避けつつも保護主義的なトランプ米政権の貿易政策に懸念を表明。中国とのハイテク摩擦にも触れ、「自由で公正な高いレベルの通商ルールの構築の重要性が高まっている」と訴えた。白書は、安全保障上の脅威を理由に米国が発動した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置について「日本製品は米国の安全保障に悪影響を与えず、米国の産業や雇用に貢献している」と反論、全面的な適用除外を求めていると説明した。 
(7月10日、時事通信)

政府の説明では、「安倍総理がトランプ大統領に対して懇切丁寧に自由貿易の重要性を説いてご理解いただく」とのことだったが、アメリカはますます保護貿易に突き進んでいる。そもそもトランプ大統領は、オバマ・クリントンのグローバリズム・覇権派に対するアンチテーゼを掲げて当選した経緯があるだけに、自由貿易支持に転じた場合、自らの正統性を失うことになる。国内の反グローバリズム勢力から支持を得ているからこそ、トランプ氏は大統領の権威を保持できるのであって、彼らからの支持を失えば、レームダックと化すだろう。事実、トランプ氏の保護貿易政策は国内から一定の支持を得ているが、ウォールストリートの支配下にあるアメリカの報道陣は批判的な視点からの記事しか書かないため、なかなか実像が伝わらない。

これまでリベラル・デモクラシーによる国際秩序が保たれていたのは、そのイデオロギーが優越していたからでは無く、西側陣営の軍事力が世界を圧倒していたからであり、その中心にいたのがアメリカだった。自由貿易体制を護持するためには、アメリカ(米帝)による覇権が不可欠なのだが、アメリカはその覇権が維持できなくなりつつある。覇権を維持するためには、他を圧倒する経済力と軍事力が必要だが、米中の経済力は拮抗しつつある一方、アメリカはその軍事力が維持できなくなっている。

同時に、自由貿易は、その交渉力の差から経済力の大きい国あるいは人が一方的に有利になるシステムであるため、貧困と経済格差を拡大させる効果があり、その矛盾は大国ほど深刻になる。
例えば、日本でも農業や漁業が産業として成立しがたいのは、価格の交渉単位が農漁業者が個人あるいは組合であるのに対して、食糧メジャーは国内に数社しかない大企業であり、自由交渉では圧倒的な不平等が生じているためだ。これは、世界レベルでも言えることで、西側自由貿易体制は、圧倒的な資金力を持ち、アメリカの軍事力を担保にしている資源メジャーが、旧植民地・第三世界から資源や労働力を不当に安く買い叩き、高い付加価値を付けて売りつけることで膨大な利潤を得ることによって成立していた。だが、中間国が工業化を遂げ、経済発展したことで、労働賃金や資源価格が相対的に上昇していった。同時に資金供給が常に過剰となり、利息が低下を続け、いまやマイナス金利すら当たり前となっている。そのため、先進国では利潤を上げ続けるためには、国内で労働力や資本を収奪するほかなくなっている。

アメリカの場合、資源価格の高騰を受けて、労働コストを削減するために工場を海外に移転させたことによって国内の疲弊が始まり、利潤低下を受けて国民を借金漬けにする政策が採られ、金融バブルと低所得層に対する住宅販売を組み合わせたサブプライム・ローン問題を引き起こした。結果、アメリカのある経済サイトの調査では市民8人のうち3人が破産寸前まで借金しているという。
資本主義と自由貿易は、必ず内部矛盾を抱え、その矛盾は解決する術が無く肥大化、崩壊して行くというマルクスの予言は150年以上の時を経て的中しつつある。

2017年の米中貿易におけるアメリカ側の赤字額は7962億ドル(約86兆8千億円)に上り、過去最高を更新している。「もはや自由貿易はアメリカにとって不利なシステムである」というのが、トランプ氏と支持者の認識であり、アメリカの多数派を占めている。だが、日中貿易もまた、2012年から16年まで5年連続で赤字が続いており、2017年には均衡を取り戻したものの、先行きは暗いだろう。少なくとも、日本にとって「日中間の自由貿易は絶対的に日本に有利である」とは言えなくなりつつある。
技術的優位を失いつつあると同時に、資源調達でも割高になっている日本は、輸出上の優位を失いつつある。その日本がこの期に及んで自由貿易を主張し続ければ、いざ不利になった時に看板を下ろしづらくなるだろう。
同時に、自由貿易と自由市場が国内の貧困や経済格差を助長している。政府呼称「働き方改革」は、労働規制の大幅緩和=自由化を意味するが、これも貧困と格差を助長するものでしかない。これが放置された場合、マルクスの予言が、日本でも実現する日は遠くなさそうだ。

自由が人を幸福にする時代は終わったのである。
posted by ケン at 14:35| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする