2017年04月17日

資本の論理と血統主義の呪縛

【経団連会長、人手不足への対応「日系人に日本で働いてもらう」】
 経団連の榊原定征会長は10日午後の記者会見で、人手不足について「今後さらに深刻になる。いまの外国人労働者の規模では足りなくなる」と認識を示した。そのうえで「海外の労働力の活用を長期的に検討していく必要がある」と述べた。外国人労働者の活用の一例として「日系人に日本で働いてもらう」ことを挙げた。榊原会長は東京電力ホールディングス(9501)の川村隆次期会長(日立製作所名誉会長)に関し「日立が苦境に陥った際に経営改革を実行して立て直した」と評価した。「東電には福島第1原発の廃炉や被災者への賠償など大きな課題があるが、力を発揮してもらえると期待している。経済界としても可能な限り応援していきたい」と述べた。
(4月10日、日本経済新聞)

あまりにも剥き出しの資本の論理と御都合主義的な血統主義に圧倒される。リーマンショック後、日系人労働者が大量に解雇され、経団連の圧力によって「強制帰国事業」が政策化されたのは、ほんの7年前のことだった。文字通り「舌の根も乾かぬうちに」またぞろ「日系人」を徴用したいという。

この話は詰まるところ、「安価な労働力」としての外国人と、「忠実で上に楯突かないだろう」「見た目的に外国人度が低い」日本人の血統を有するという条件が合致したことに起因する話で、要は「いつでも解雇可能で、待遇に文句を言わず、ただ同然で働かせられ、人権を侵害してもあまり文句を言われない」労働力を望んでいるだけなのだ。これは、戦前期において朝鮮人や台湾人を「帝国臣民」と規定しながらも、実際には「二級市民」として扱い、「権利の弱い安価な労働力」として過酷な超低賃金労働につかっていたことと根を同じくしている。
その意味では、巷間指摘される安倍政権による「戦前回帰」は、財界からの要請もあると言えるのかもしれない。

(こういう表現が適切かは別にして)日本人、日本国籍保有者ですら、現状では雇用が守られているのは大企業だけで、労働時間は実質無制限、残業代は支払われればマシな程度、有給休暇制度はあっても好きには利用できない、低賃金、パワハラ・セクハラは放置状態という、欧州人からは想像も付かない地獄的環境にあるが、日本の資本家どもは「日本人労働者は恵まれすぎて利益を出せない」と考えている。クロネコのような大企業ですら、不払いだった残業代のうち払うのはたった2年分だけであるのは非常に象徴的だ。

こうした資本家どもの横暴が放置されているのは、日本の労働運動や社会主義勢力(社会民主主義者とマルキストを含む)がいかなる影響力も無いことに起因している。
労働運動の最大勢力である連合は、全労働者の12%程度を組織しているのみで、それもエリート労働者ばかりで構成されている。連合幹部の家を見てみれば分かるが、そこら辺の中小企業の社長などよりも余程贅沢している。つまり、「官製ではない」というだけで実質的には「赤い貴族」なのだ。その結果、労働時間規制を議論する時でも、「規制が無いよりはマシ」程度の理由で、ストライキを打つこともなく、「残業月100時間」で合意してしまった。これでは、旧東側の官製労組や戦中期の産業報国会と何ら変わらない。

国会(衆議院)を見てみれば、社会主義を奉じている政党(NK党と社民党)の議席は5%にも満たない。これは、日本の労働者が恐ろしく収奪されているにもかかわらず、自らの労働者性を全く認識していないため、自分がいかに虐げられている環境に置かれているかすら気づいていないことが大きく影響していると考えられる。これでは、レーニンの前衛党理論が再評価されても致し方あるまい。逆に考えると、社会党が消失したにもかかわらず、NK党が伸び悩んでいるのは、2000年に前衛党ドクトリンを放棄して「(物わかりの)良い子」になってしまったからかもしれない。

一方、日本の資本家は資本家で相当に頭が悪い。デフレからの脱却が進まず、出生率が上昇しないのは、過酷な労働環境と低賃金・低所得に起因している。同時にいつまでたっても労働生産性が改善されないのは、低賃金の労働者を長時間にわたって酷使できる環境が放置されているため、業務の効率化や機械化を進める必要が無いことに起因している。生産性が上がらないため、賃金も上げられず、消費が増えずに景気が低迷する悪循環だ。
この状況下で、さらに無権利、低賃金の外国人労働者を動員してみたところで、労働生産性をさらに悪化させ、競争力の無い企業を温存させるだけであり、その行き着く先は「資本主義の緩慢死」でしかない。連中の言は、まさに無能な指揮官が上級司令部にひたすら増援要請を行い、「勝てないのは司令部が増援をよこさないからだ」と言うのに等しい。

マジで「バカばっか」

「私が魔法の壺を持っていて、そこから艦隊が湧き出てくるとでも奴は思っているのか?」(ラインハルト・フォン・ローエングラム)
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2017年03月31日

自殺するくらいなら働けって話

【自殺による損失額は4594億円 厚労省が生涯所得算出】
 厚生労働省の研究班は23日、2015年中に自殺した人が生きていれば得られていた生涯所得が推計4594億円だったと発表した。失業率などを考慮して算出した。自殺者数は減少傾向が続いており、損失額は自殺対策基本法が施行される前の05年に比べて992億円減った。都道府県別では、東京都が最多で669億円、大阪府が365億円、神奈川県が364億円と続いた。厚労省の統計では、全国の自殺者数は05年が3万553人で、15年が2万3152人。研究班は、自殺総合対策推進センターの本橋豊センター長や一橋大の金子能宏教授らで構成した。
(3月23日、朝日新聞)

こういう数字を出すこと自体、国家が国民を労働力としてしか見ていない証拠と言える。要は「自殺するとは情けない。死なずに働いて国家に奉仕せよ」ということであり、その結果として「もし自殺者が思いとどまれば、数千億円の生産を増やせる(はず)」などという統計が出てくるのだ。そこには、自国民を精魂を有する生命として捉えるのではなく、収奪すべき労働力という視点しかない。失われた労働力を数値化しているに過ぎないのだ。
言い換えれば、現行政府は、尊厳ある生命の消失を悔やむのでは無く、本来活用できるはずの労働力を惜しんでいるだけであり、国民を労働力としてしか考えられない権力者どもの精神が、国民を自殺に追いやっている。

同じことは、「少子化対策」にも言える。政府は、幸福を感じることのできる国民が減っていることが少子化を招いているとは考えず、「少子化が進むと労働力が減少する」という視点から「少子化対策」を政策化するため、幸福や希望が存在しないディストピアの下、全く実効性が上がらない構造になっている。

また、政府は「自殺者数が減少」と喧伝しているが、この統計は非常に疑わしい。そもそも日本政府の「自殺」定義からして、「死後24時間以内に発見され、かつ遺書が発見されたもの」という非常に狭義に設定されている。つまり、3日後に発見された自殺者も、遺書を書かなかった自殺者も「自殺」とは認められず、「変死」「異状死(死因不明)」として処理されているのが事実だ。結果、警察が検視する「変死体」の数は、2007年に1万4千を、2011年に2万を超えて増加し続けているが、ここ数年は変死体数を発表しておらず、「自殺者を変死者に置き換える」統計操作の疑いがある。しかも、この変死体以外に、検視に処されない「死因不明の死体」(異状死)が15万体以上ある。このうち行政解剖に処されるのは1万体強に過ぎず、約14万人は「異状死」として処理され、遺族が死因を知ることは無い。
この変死者と「死因不明者」の合計数は、17万人を超えるが、このうち相当数が自殺と考えられるものの、限定するのは難しい。が、少なくとも、政府発表の2〜3万人という数字は交通事故の死者と同様、実態を反映しない「公式統計」であるのは間違いない。これは、「神国で自殺する臣民など存在するはずがない」という皇国史観に基づいているものと思われる。
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2017年03月30日

アクセルと同時にブレーキ

【<カジノ法>議員立法で依存症対策…自民が提出方針】
 自民党はカジノ解禁に向けた「統合型リゾート(IR)整備推進法」(カジノ法)に関連し、ギャンブル依存症対策を強化する法案を議員立法で策定する方針を固めた。公明党などに呼びかけ、今国会中の提出を目指す。自民党の細田博之総務会長は17日の記者会見で「依存症問題は各党で検討している。できれば法令化して効果のある対策をとる」と述べ、議員立法が望ましいとの認識を示した。
 依存症を巡っては、衆参両院がカジノ法の採決時に「対策強化」を求める付帯決議をした。自民党はすでに法制化の検討に着手。パチンコなど既存の遊技を含めた依存症患者に対応する相談窓口の充実、国や地方自治体の責務を盛り込む。また、政府は17日の閣議で「IR推進本部」(本部長・安倍晋三首相)を24日に設置すると決めた。全閣僚が入り、カジノに必要な規制や対策などを協議。「実施法案」の国会提出を目指す。
(3月17日、毎日新聞)

カジノ解禁と同時に「依存症対策」とか、どこまでも国民を収奪の対象としか考えない連中だな。現状でも競馬を始めとする公営賭博とパチンコのせいで、公式調査で550万人もギャンブル依存症患者がいて、その数は先進国の中で圧倒的に多い。にもかかわらず、「景気対策」としてカジノ(公営名目実質民営賭博)を解禁し、全国に設置しようというのだから、もはや「国民の生命と財産を保護する」という国家の生存理由そのものを否定する所行だろう。依存症患者の大半は50代以上と言われるが、これは高齢者の老後資金や子どもの教育費を収奪していることを意味する。結果として、生活保護を増やし、子どもの貧困を深刻にしているのだから、まさに「売国的」としか言いようが無い。

これと全く同じことは、「働かせかた改革」にも言える。政府が準備している労働基準法改正案の狙いは、「年収1075万円以上の専門職」にはホワイトカラーエグゼンプションで労働時間規制を外しつつ、「年収1075万円未満の一般職」については裁量労働を広範に導入するところにある。法案が成立すれば、年収に関係なく数十パーセントの労働者に対して裁量労働が適用可能になると言われる。要は、現行法では裁量労働の適用が難しいので、労使合意や様々な手続きが適用を難しくしているという使用者側の主張を受け入れて、手続き面を非常に簡素化するという話なのだ。
また、他方で「年間720時間、月上限100時間未満」の残業規制が労使間合意されたが、「過労死ライン」を超える上限が容認されると同時に、労基署業務の民間委託が検討されており、残業時間規制を担保する術は無いも同然になっている。そもそも裁量労働制の拡大により、「残業」という概念すら消失すると考えられるだけに、この残業時間規制自体が殆ど意味を持たない。

カジノ解禁は、高齢者の貧困を加速、医療費や生活保護費が国家財政をさらに悪化させるだろう。労働規制の緩和は、今以上に労働生産性を低下させ、実質賃金も低下させる。過酷な労働環境が健康を破壊し、医療費や保険費を高騰させ、それが子どもの貧困を併発する。
すでに日本は死んでいる。
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2017年03月29日

クロネコの残業問題

【ヤマト、巨額の未払い残業代 7.6万人調べ支給へ】
 宅配便最大手ヤマトホールディングス(HD)が、約7万6千人の社員を対象に未払いの残業代の有無を調べ、支給すべき未払い分をすべて支払う方針を固めた。必要な原資は数百億円規模にのぼる可能性がある。サービス残業が広がる宅配現場の改善に向け、まずは未払い分の精算をしたうえで、労使が協力してドライバーの労働環境の正常化を進める。
サービス残業が社内で常態化していることを大手企業が事実上認め、全社的に未払い残業代を精算して支払うのは極めて異例。サービス残業や長時間労働が常態化している企業の労務管理に一石を投じる動きだ。
 宅急便を手がける事業会社、ヤマト運輸で働くフルタイムのセールスドライバー(SD、約5万4千人)と営業所の事務職員(約4千人)、ヤマトHD傘下のグループ会社で働く社員(約1万8千人)が対象。フルタイムのドライバーは全員が対象になる。
 ヤマト運輸は昨年8月、SDだった30代の男性2人に残業代の一部を払わず、休憩時間を適切にとらせていなかったとして、2人が勤めていた横浜市の支店が、横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けた。インターネット通販の普及と人手不足を背景に、この頃からドライバーの労働環境の悪化が深刻になってきたという。
 是正勧告を機に、全社的に未払い残業代の調査に乗り出すことを決めた。遅くとも今夏までに、全社で支給を終える方針だ。
 関係者によると、川崎市全域と横浜市の一部の営業エリアではすでに調査に着手しており、3月下旬の給料日にあわせて支給する予定。最大で過去2年分について調べ、1人あたりの支給額が100万円を超えるケースもあるという。
 SDの勤務時間は出退勤の時間を記録するタイムカードと、配送の時に使う携帯端末のオン・オフの二つで管理している。原則として、給与は携帯端末で記録された勤務時間から、自己申告の休憩時間を除いた時間をもとに計算しているが、携帯端末がオフになっているときに作業する▽忙しくて休憩時間が取れないのに取ったと申告する――といったサービス残業が増えているという。
 ヤマトHDの2017年3月期の営業利益は約580億円の見通しで、未払い残業代の支給が経営に及ぼす影響は小さくない。「当然ダメージはあるが、まだ体力はある」(首脳)として、労働環境の改善に優先的に取り組む構えだ。
(3月4日、朝日新聞)

前々から指摘されていたことだが、事実が明らかになると、その膨大な人数と金額に目がくらみそうだ。対象人数にして7万6千人。1人あたり10万円でも76億円に上るが、恐ろしいことに同社横浜市内の支店で起き、記事でも触れている最近調停が成立した事案では、セールスドライバー2人が2年分で計577万円の支払いを要求していた。和解額は不明だが、数百万円であることは間違いなさそうだ。つまり、全体を見ても1人あたり10万円で済むような気配は無い。

こうした「違法残業天国」が放置されてきたのは、経営陣の無能や不道徳もあるが、労働組合の無力によるところが大きい。そもそも最大の原因は、ブラックぶりで知られる佐川急便すら投げ出したアマゾンの荷を、ヤマトの経営陣がロクに価格交渉もせずに安価のまま引き受けてしまったことにある。そのしわ寄せが違法残業となって現れている。佐川の惨状は最初から明らかだったのだから、労働組合側に十分な交渉力があれば、経営側に引き受けないよう圧力を掛けられたはずであり、組合の力である程度は回避可能な事案だった。

アマゾンを引き受けて残業地獄が始まってからも、本来であれば労働組合が職場を監督し、正規の残業手続きを行って、一分たりとも「サービス残業」をさせず、厳格に労働時間管理を行っていれば、現在のような「把握不能な残業」など生じるはずもなかったし、最初から数百億円もの残業代が計上されるのであれば、アマゾンとの契約を解消する選択肢が浮上した可能性もあるだろう。
資本に対する労働者個人の力は、まさに「象と蟻」ほどもある。労働者が提供できるのは、労働力しか無く、労働者が個人で対応する限り違法残業=無報酬労働を受け入れるか、退職するかの二択になってしまう。
だからこそ労働者が団結して、資本の横暴に対抗し、労働者が唯一提供できる「労働力」を結集して提供拒否するストライキが唯一の武器となり、その武器をカードに交渉するのが労働組合の重要な役割となる。とはいえ、伝家の宝刀は抜いてしまえば「それきり」という側面があり、抜かずに済めばそれに越したことは無い。だが、ヤマトの残業地獄は「ストをやらなかったこと=宝刀を抜かなかったこと」が招いた惨事であることも確かであり、「ストライキをやらない労働者は一方的に収奪される」というマルクスの指摘が正しかったことを示している。
1970年代以降、ストライキが減少したのは「戦後和解体制」が機能して、労使協調路線が成立したためだが、ソ連崩壊を経て同体制が解体されつつある中、労使の利害が一致しなくなっているわけだが、「平和」の時代が長かったため、労働組合は自らの役割を忘れ、戦力として機能しなくなっている。

なお、ヤマトの問題は「氷山の一角」に過ぎず、製造業などを除いて、特にサービス業では違法残業=賃金未払いの問題が、エベレストを超えるような規模で存在し、隠蔽されていると見られる。さらに言えば、現行の労働基準法が残業代の未払いについて2年の時効を設けているため、資本側は仮に10年間の違法残業を労働者に強いたとしても支払うのは2年分で済むだけに、「残業させ得」になっている。このザルのような労働法制を改正するのもナショナルセンターの最重要課題であるはずだが、連合からそのような要望を受けたことは一度も無い。
【47事業所で違法時間外労働 長崎労働局 県内88事業所を調査】
 長崎労働局が昨年11月に長崎県内88事業所を抜き打ち調査したところ、53・4%に当たる47事業所で、違法な時間外労働があったことが分かった。労働者を残業させるための労使協定(三六協定)を結んでいなかったり、協定があっても上限時間を超えたりしていた。14事業所では月100時間を超える残業が確認された。月80時間を超す残業で過労死リスクが高まるとされる。国は現在、月45時間を上限の目安としている。抜き打ち調査では、ほかに、賃金を支払わないサービス残業を10事業所で確認。過重労働による健康障害を防ぐ措置を取っていなかった事業所もあり、全体では81・8%に当たる72事業所が何らかの労働基準関係法令に違反していた。それぞれに是正勧告しており、改善されない場合は書類送検も検討するという。調査は、全国的な「過重労働解消キャンペーン」の一環で毎年実施。外部からの情報提供などを基に調査対象を選んだ。
(3月29日、長崎新聞)
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2017年03月15日

瓦解する東芝

【LNGでもリスク…最大1兆円損失 販売先探し難航】
 米原発事業に絡む巨額損失で2017年3月期に債務超過に陥る東芝が、液化天然ガス(LNG)事業で最大約1兆円の損失リスクを抱えている。13年に当時割安だった米国産LNGを仕入れる契約を結んだが、販売先探しが難航しているためだ。売れなければ19年3月期から損失を計上しなければならず、経営危機に陥っている東芝への追い打ちとなりかねない。
東芝は13年、19年9月から20年間にわたって、米国産の天然ガスであるシェールガス由来のLNGを年間220万トン調達する契約を米企業と結んだ。11年の東日本大震災後、国内では原発の再稼働が進まず、火力発電用のLNGの需要が急増。日本が輸入していた中東などのLNG価格は原油価格に連動しており、当時は高騰していた。このため東芝は、当時割安だった米国産シェールガス由来のLNGを調達し、低価格を武器に、自社が製造している火力発電設備とセットで電力会社などに販売しようと計画した。しかし、もくろみは崩れた。原油価格は14年ごろから急落し、中東産などのLNG価格も下落。米国産シェールガス由来のLNGの価格競争力が失われたからだ。
 東芝はこれまでに、調達予定のLNGの半分以上を販売する基本合意書を結んだが、法的拘束力はなく「条件次第では買い取ってもらえない」(広報)という。東京電力フュエル&パワーと中部電力が折半出資する「JERA(ジェラ)」が販売先を紹介する支援をしているが、ジェラは「東芝からLNGを買い取ることはない」としている。
 一方で東芝は、販売先の有無にかかわらず、19年から米企業にLNGの代金を支払う契約になっており、販売先が見つからなければ19年3月期から損失を計上しなければならない。20年間売れない場合の損失は計約1兆円に上ると想定している。「財務基盤が弱い東芝が、米原発事業の巨額損失に加えてLNG事業のリスクに耐えられるのか」(アナリスト)との懸念は強く、経営の新たな火種となる恐れがある。
(3月8日、毎日新聞)

【東芝が米原発損失で決算再延期 期限1カ月、上場廃止も】
 経営再建中の東芝が、14日に予定していた平成28年4〜12月期決算発表を再延期する方針を固めたことが13日、分かった。米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)で浮上した内部統制の問題をめぐり、米国の監査法人から了承を得られないため。14日が四半期報告書の関東財務局への提出期限だった。財務局は再延期を認め、約1カ月の延期になる見通しだが、再延期した期限に間に合わなければ東芝株は上場廃止が現実味を帯びる。関係者によると、東芝は主力取引銀行に「14日の発表は厳しい」と伝えた。
 東芝は、当初予定していた2月14日の決算発表も同日に急遽(きゅうきょ)延期した。WHのダニー・ロデリック会長らが、7125億円を見込む巨額損失を減らすよう部下に圧力をかけた疑惑が浮上し、決算に影響が出る可能性が出る疑念が生じたためというのが理由だった。しかし、提出期限を3月14日まで延期することが認められた後も、日米の監査法人の間で疑惑をめぐる見解が一致しなかった。
 仮に財務局が再延期を認めなければ、東京証券取引所は東芝株を上場廃止の恐れがある「監理銘柄」に指定。さらに8営業日後の27日までに提出できない場合「整理銘柄」に移り、約1カ月後に上場廃止となる。
(3月14日、産経新聞)

「弱り目に祟り目」だな。アメリカに「ババを握らされている」観がハンパないけど、これは騙された方が悪い。問題は「自己責任論」が適用されるかどうか、なのだが。

東芝はFreeport LNGとの間で年間220万トンのLNG購入契約を締結していて、「Take or Pay」契約の関係で、市況が下がっても契約価格での引取り、または固定費の支払いが必要となる模様。
もともと東芝の狙いは、LNG発電機との抱き合わせ販売にあったようだが、そもそも「抱き合わせ」に需要があったのか、どのような見通しで計画が認可されたのか、リスク評価はどうなっていたのか、疑問はつきない。一電機メーカーが資源取引に手を出していること自体、信じられないギャンブルなのだが、推測するに大バクチを打たねばならないくらいに、東芝が追い詰められているということだろう。これは行動経済学でも言われていることだが、人間は負けが込むほど大穴に張ろうとする傾向を強めるのだ。

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そして、本件の説明もあるからこそ、決算を延期せざるを得ないわけだが、この手の「不都合な事実」が次々と表面化しているだけに、全く予断を許さない状況にある。
東芝は、自らの事業、子会社を切り売りして余命を長らえているものの、値が付くのは収益がよりマシな部門なのは言うまでも無く、どこまで切り売りしたところで、どれだけ手元にキャシュが残るのか、綱渡りしている状態だろう。いずれにしても、「詰んでいる」と言えそうだ。

日本型システムは従来護送船団方式を採用して倒産、特に大企業の倒産を最大限回避してきたが、その結果、無能な経営者が責任を問われて馘首されることなく、トップの座に居続け、能力では無く派閥や政治力学で昇進する組織になり、人事も経営も硬直して改善されない構造になっている。東芝のような「恐竜」がいつまでの生き残っているため、資本も労働力も技術者も固定化し、本来需要が見込める新規事業に移転することができず、低成長の原因になっている。ところが、日本では政官財の「腐敗トライアングル」が既存システムの最大の受益者であるため、変更することができない。この辺は、結局のところ共産党に改革はできなかったソ連のペレストロイカと酷似している。
posted by ケン at 12:32| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月13日

野党に寄生して無効化させる連合

【民進党大会 連合・神津里季生会長「私たちにとっては民進党しかありませんから」】
 連合の神津里季生会長は12日午後、東京都内のホテルで開かれた民進党の定期大会でのあいさつし、原発をはじめとするエネルギー政策について「責任ある対応を引き継ぐことが国民の期待に応える」と強調し、「原発ゼロ」の年次前倒しを一時検討した蓮舫代表を牽制した。詳報は以下の通り。
 「昨年3月の結党大会から、もうすぐ1年ということであります。その間に、世界ではさまざまな出来事がありました。英国のEU(欧州連合)離脱、そして米国のトランプ大統領誕生など、懸念されるのは、内向き志向、そして、自分たちさえよければいいという考え方の横行ではないかと思います。政敵を自ら作り出し、自身の支持率の維持向上につなげる、それは本来の民主主義のあるべき姿ではないと思います。リーダーの立場にある人間、あるいは為政者が、自ら対立や分断をあおるようなことはしてはならないと思います」(中略)
 「それは、まず個々の政策をそれぞれ磨き上げて、それらをパッケージ化し、目指す社会像、ビジョンや政権構想として、早期に国民に分かりやすい形で示していただきたいというものであります。こうしたビジョン政権構想は、現政権との間での基本的な立ち位置の違いを明確にするためにも必須であります。個々の政策をバラバラに示しても、なかなか民意を取り戻す、そういった部分にはつながらないのではないかと思います。民進党として、どっしりとした存在感を世にアピールしていただきたい。このことを申し述べたいと思います」
 「いずれにいたしましても、支持率が急上昇するような秘策は私はないと思います。目先の状況だけにとらわれることなく、政権構想を練り上げ、候補者擁立を進めていただき、地道に国民に訴えていただくことで、働く者も生活者も不安を解消していくことが求められていると思います。それこそが、次期衆院選の勝利につながるものだと確信します。私たちも、推薦候補者全員の当選のために全力を尽くして参ります」
 「蓮舫代表を筆頭に、民進党の皆さんがたが、大きな発展に向かわれることを心から願います。私たちにとっては、民進党しかありませんから、ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。ともにがんばりましょう」
(3月12日、産経新聞、一部略)

自分たちの中で圧倒的に無関心層と自民党支持が増えているのに、相も変わらず民進党支持を続ける連合。連合が掲げる政策の殆どは自民党・霞ヶ関に親和的で、むしろ民進党が目指そうとしている社会をかけ離れている。
言うまでも無いことだが、原子力発電を廃止しようとすれば電力総連が反対し、安保法制に反対しようとすればゼンセンがクレームを付け、労働時間規制を導入しようとすれば連合本体が文句を付けてくるという具合で、連合が民進党の政策に口出しすればするほど、民進党の政策は自民党と同質化してゆく構図になっている。

連合・神津執行部の腹は、敢えて「野党第一党の獅子身中の虫」となることで、「強い野党を作らせない」よう、自民党を間接的に支援する、あるいは邪魔させないところにあると思われる。
現状、連合の政治的圧力によって民進党は、全く自民党の対立軸を打ち立てることができず、野党としていかなる影響力も発揮し得ていないことが、それを裏付けている。また、連合の逢見事務局長(UAゼンセン)は頻繁に官邸や自民党関係者と接触しており、彼らから指示を受けているものと推察される。

一方、民進党は民進党で、自前の党員や党組織を持たないため、選挙の実務や人手の大半を連合に依存しており、連合の支援無くして選挙区で勝てるのは衆議院で2桁に行くか行かないかだろうと考えられている。
民進党の前身である民主党が、自前の党員を持たない党組織を指向したのは、かつての社会党が総評と社会主義協会の党員によって牛耳られ、国会議員の影響力が小さく抑えられていたことに対する反省、懸念に基づいている。
ところが、現実には党組織を持たない民進党は、自前で選挙ができないため、全てを連合に頼らざるを得ず、結果的には社会党時代と同様に労働組合依存を強めてしまっている。社会党との決定的な違いは、労働組合そのものの体力が大きく低下しているため、その運動力も集票力も非常に限定されたものになっている点だろう。

その結果、民進党は政策的には自民党と大差がないため「じゃあ自民党でいいじゃん」との評価が固定化、運動力と集票力では地域に密着した自民党に劣り、自民党に対していかなる点においても優越性を発揮できない政党になっている。
連合としては、民進党が「弱い野党」であり続けることで、自身の利益にかなうと同時に、万が一自民党が大不祥事などで総選挙に大敗、下野することがあっても、何らの政策変更がなされない担保となっている。

以上の意味で、連合の存在は、民進党はおろか、日本の議会政治をも「詰ませて」いるのである。

【追記、03/14】
朗報です。連合の努力により、ストを打つことも無く、「残業月上限100時間未満」が実現されました。政府が示す過労死ラインを上回る残業が公認される「歴史的改革」となりました。
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2017年03月03日

戦力計算もできない民進党

【「30年原発ゼロ」連合会長が批判 民進、党内でも賛否】
 民進党の支持母体である連合の神津里季生会長は22日の記者会見で、同党執行部が検討する「2030年原発ゼロ」に対し、「深刻な疑問を持たざるを得ない」と改めて批判した。
(2月23日、朝日新聞抜粋)

【蓮舫氏、「2030年原発ゼロ」表明を断念 連合に配慮】
 民進党の蓮舫代表は27日、3月の党大会での「2030年原発ゼロ」方針表明を断念した。視察先の福島県飯舘村で記者団に「年限はメディアがこだわっている。私たちは中身にこだわりたい」と語った。党内の意見集約が進まず、支持母体の連合の猛反発に配慮した形だ。蓮舫氏はこの日、飯舘村長らと意見交換。その後、記者団に「将来的にゼロが可能だとはこれまでも訴えてきた。その思いを共有、認識できる大会にしたい」と述べた。野田佳彦幹事長も同日の記者会見で「決まっていないことを言うことは出来ない」と明言した。
(2月27日、朝日新聞)

民進党は全くコマンド・コントロールできないことを明らかにしてしまった。本件でも常にダメな選択肢を選んでいる。
まず党内の勢力図を考慮、調整せずに、「2030年原発ゼロ」を打ち出したことで、潜在的な党内対立を表面化させた(減点)上、その対立を解消させることもできない(減点)まま、掲げた方針を撤回したのである(減点)。これらの「減点」は現実には「獲得票の減少」という形で現れるだろう。
近々では6月に行われる東京都議選で、ただでさえ「小池への擦り寄り」と評判の悪い都議会民進党(自称:東京改革議員団)が大敗北を喫すると予想される。すでに内部では「5議席取れれば御の字」「1、2議席の可能性もある」と話されているが、ケン先生も自らの政治的良心に従って協力も投票も拒否を表明している。

「原発ゼロ」の方針は、いくつかの労働組合や業界団体と決して相容れない以上、「二者択一」「損切り」の判断が要求されるのは避けられない。この場合、イデオロギーを抜きにして、リアル・ポリティクス重視で考えるならば、「原発票」と「脱原発票」のどちらが多いかという判断になる。単純に全国平均の票数で考えた場合、民進党を支持する原発票(電力、電機系労組)は小選挙区あたり2千票前後だろう。もちろんこの数字は地域によって差があることは確かだが、ここでは省く。これに対して、民進党が「原発ゼロ」を掲げることで新たに獲得する票が2千を上回るかどうか、あるいは「原発ゼロ」放棄することで失う票が2千を上回るかどうか、が今回の判断基準になる。
他の要素としては、核推進労組による献金(パーティー券の購入)や選挙支援要員(ポスター貼り、電話がけ)もあるが、これも恩恵を受けているのは原発推進を明言している者だけなので、一般化することはできない。

だが、そもそも核推進論者は基本的に自民党に投票しているはずで、民進党内に核推進派がいるのは「野党第一党を拘束することで、自民党・霞ヶ関の核政策を円滑に進める」ために過ぎない。現実に、民進党が「原発ゼロ」を掲げられないことで、原発反対派の票は少数党に細かく分散してしまっている。つまり、連合の戦略は、野党第一党の足を引っ張ることで、政府の核政策を支援するというものだと考えられる。

結果的に民進党蓮舫執行部は、不採算部門の処理ができないまま、再建を図ろうとしている東芝のようになりつつある。中途半端に「2030年原発ゼロ」を掲げたことで、脱原発派の期待を裏切って失望に変えてしまった上、連合に屈したことで労働組合に否定的な層からも愛想をつかされた格好になっている。同時に連合からすれば、民進党は「潜在的反逆者」ということになり、今後はさらに政治統制を強化しようという話になるだろう。

もともと民進党には何の展望も無かったが、今回の件で挽回する(主導権を取り戻す)機会すら失われたのである。
また、連合は連合で一部の業界組合が自己利益の追求で暴走した挙げ句、完全に「業界団体の手先」と化してしまっており、労働団体としての機能を自ら否定してしまっている。連中は「全労働者の代表」を僭称しているが、現実には6千万人の内の6百万人を代弁しているに過ぎず、その中でも不和を生じさせている。連合は連合で、もはや自民党支持に舵を切って、しかも殆ど見向きもされないという選択肢に、自分を追いやりつつある。

どこまでも「バカばっか」である。
posted by ケン at 12:06| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする