2017年03月15日

瓦解する東芝

【LNGでもリスク…最大1兆円損失 販売先探し難航】
 米原発事業に絡む巨額損失で2017年3月期に債務超過に陥る東芝が、液化天然ガス(LNG)事業で最大約1兆円の損失リスクを抱えている。13年に当時割安だった米国産LNGを仕入れる契約を結んだが、販売先探しが難航しているためだ。売れなければ19年3月期から損失を計上しなければならず、経営危機に陥っている東芝への追い打ちとなりかねない。
東芝は13年、19年9月から20年間にわたって、米国産の天然ガスであるシェールガス由来のLNGを年間220万トン調達する契約を米企業と結んだ。11年の東日本大震災後、国内では原発の再稼働が進まず、火力発電用のLNGの需要が急増。日本が輸入していた中東などのLNG価格は原油価格に連動しており、当時は高騰していた。このため東芝は、当時割安だった米国産シェールガス由来のLNGを調達し、低価格を武器に、自社が製造している火力発電設備とセットで電力会社などに販売しようと計画した。しかし、もくろみは崩れた。原油価格は14年ごろから急落し、中東産などのLNG価格も下落。米国産シェールガス由来のLNGの価格競争力が失われたからだ。
 東芝はこれまでに、調達予定のLNGの半分以上を販売する基本合意書を結んだが、法的拘束力はなく「条件次第では買い取ってもらえない」(広報)という。東京電力フュエル&パワーと中部電力が折半出資する「JERA(ジェラ)」が販売先を紹介する支援をしているが、ジェラは「東芝からLNGを買い取ることはない」としている。
 一方で東芝は、販売先の有無にかかわらず、19年から米企業にLNGの代金を支払う契約になっており、販売先が見つからなければ19年3月期から損失を計上しなければならない。20年間売れない場合の損失は計約1兆円に上ると想定している。「財務基盤が弱い東芝が、米原発事業の巨額損失に加えてLNG事業のリスクに耐えられるのか」(アナリスト)との懸念は強く、経営の新たな火種となる恐れがある。
(3月8日、毎日新聞)

【東芝が米原発損失で決算再延期 期限1カ月、上場廃止も】
 経営再建中の東芝が、14日に予定していた平成28年4〜12月期決算発表を再延期する方針を固めたことが13日、分かった。米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)で浮上した内部統制の問題をめぐり、米国の監査法人から了承を得られないため。14日が四半期報告書の関東財務局への提出期限だった。財務局は再延期を認め、約1カ月の延期になる見通しだが、再延期した期限に間に合わなければ東芝株は上場廃止が現実味を帯びる。関係者によると、東芝は主力取引銀行に「14日の発表は厳しい」と伝えた。
 東芝は、当初予定していた2月14日の決算発表も同日に急遽(きゅうきょ)延期した。WHのダニー・ロデリック会長らが、7125億円を見込む巨額損失を減らすよう部下に圧力をかけた疑惑が浮上し、決算に影響が出る可能性が出る疑念が生じたためというのが理由だった。しかし、提出期限を3月14日まで延期することが認められた後も、日米の監査法人の間で疑惑をめぐる見解が一致しなかった。
 仮に財務局が再延期を認めなければ、東京証券取引所は東芝株を上場廃止の恐れがある「監理銘柄」に指定。さらに8営業日後の27日までに提出できない場合「整理銘柄」に移り、約1カ月後に上場廃止となる。
(3月14日、産経新聞)

「弱り目に祟り目」だな。アメリカに「ババを握らされている」観がハンパないけど、これは騙された方が悪い。問題は「自己責任論」が適用されるかどうか、なのだが。

東芝はFreeport LNGとの間で年間220万トンのLNG購入契約を締結していて、「Take or Pay」契約の関係で、市況が下がっても契約価格での引取り、または固定費の支払いが必要となる模様。
もともと東芝の狙いは、LNG発電機との抱き合わせ販売にあったようだが、そもそも「抱き合わせ」に需要があったのか、どのような見通しで計画が認可されたのか、リスク評価はどうなっていたのか、疑問はつきない。一電機メーカーが資源取引に手を出していること自体、信じられないギャンブルなのだが、推測するに大バクチを打たねばならないくらいに、東芝が追い詰められているということだろう。これは行動経済学でも言われていることだが、人間は負けが込むほど大穴に張ろうとする傾向を強めるのだ。

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そして、本件の説明もあるからこそ、決算を延期せざるを得ないわけだが、この手の「不都合な事実」が次々と表面化しているだけに、全く予断を許さない状況にある。
東芝は、自らの事業、子会社を切り売りして余命を長らえているものの、値が付くのは収益がよりマシな部門なのは言うまでも無く、どこまで切り売りしたところで、どれだけ手元にキャシュが残るのか、綱渡りしている状態だろう。いずれにしても、「詰んでいる」と言えそうだ。

日本型システムは従来護送船団方式を採用して倒産、特に大企業の倒産を最大限回避してきたが、その結果、無能な経営者が責任を問われて馘首されることなく、トップの座に居続け、能力では無く派閥や政治力学で昇進する組織になり、人事も経営も硬直して改善されない構造になっている。東芝のような「恐竜」がいつまでの生き残っているため、資本も労働力も技術者も固定化し、本来需要が見込める新規事業に移転することができず、低成長の原因になっている。ところが、日本では政官財の「腐敗トライアングル」が既存システムの最大の受益者であるため、変更することができない。この辺は、結局のところ共産党に改革はできなかったソ連のペレストロイカと酷似している。
posted by ケン at 12:32| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月13日

野党に寄生して無効化させる連合

【民進党大会 連合・神津里季生会長「私たちにとっては民進党しかありませんから」】
 連合の神津里季生会長は12日午後、東京都内のホテルで開かれた民進党の定期大会でのあいさつし、原発をはじめとするエネルギー政策について「責任ある対応を引き継ぐことが国民の期待に応える」と強調し、「原発ゼロ」の年次前倒しを一時検討した蓮舫代表を牽制した。詳報は以下の通り。
 「昨年3月の結党大会から、もうすぐ1年ということであります。その間に、世界ではさまざまな出来事がありました。英国のEU(欧州連合)離脱、そして米国のトランプ大統領誕生など、懸念されるのは、内向き志向、そして、自分たちさえよければいいという考え方の横行ではないかと思います。政敵を自ら作り出し、自身の支持率の維持向上につなげる、それは本来の民主主義のあるべき姿ではないと思います。リーダーの立場にある人間、あるいは為政者が、自ら対立や分断をあおるようなことはしてはならないと思います」(中略)
 「それは、まず個々の政策をそれぞれ磨き上げて、それらをパッケージ化し、目指す社会像、ビジョンや政権構想として、早期に国民に分かりやすい形で示していただきたいというものであります。こうしたビジョン政権構想は、現政権との間での基本的な立ち位置の違いを明確にするためにも必須であります。個々の政策をバラバラに示しても、なかなか民意を取り戻す、そういった部分にはつながらないのではないかと思います。民進党として、どっしりとした存在感を世にアピールしていただきたい。このことを申し述べたいと思います」
 「いずれにいたしましても、支持率が急上昇するような秘策は私はないと思います。目先の状況だけにとらわれることなく、政権構想を練り上げ、候補者擁立を進めていただき、地道に国民に訴えていただくことで、働く者も生活者も不安を解消していくことが求められていると思います。それこそが、次期衆院選の勝利につながるものだと確信します。私たちも、推薦候補者全員の当選のために全力を尽くして参ります」
 「蓮舫代表を筆頭に、民進党の皆さんがたが、大きな発展に向かわれることを心から願います。私たちにとっては、民進党しかありませんから、ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。ともにがんばりましょう」
(3月12日、産経新聞、一部略)

自分たちの中で圧倒的に無関心層と自民党支持が増えているのに、相も変わらず民進党支持を続ける連合。連合が掲げる政策の殆どは自民党・霞ヶ関に親和的で、むしろ民進党が目指そうとしている社会をかけ離れている。
言うまでも無いことだが、原子力発電を廃止しようとすれば電力総連が反対し、安保法制に反対しようとすればゼンセンがクレームを付け、労働時間規制を導入しようとすれば連合本体が文句を付けてくるという具合で、連合が民進党の政策に口出しすればするほど、民進党の政策は自民党と同質化してゆく構図になっている。

連合・神津執行部の腹は、敢えて「野党第一党の獅子身中の虫」となることで、「強い野党を作らせない」よう、自民党を間接的に支援する、あるいは邪魔させないところにあると思われる。
現状、連合の政治的圧力によって民進党は、全く自民党の対立軸を打ち立てることができず、野党としていかなる影響力も発揮し得ていないことが、それを裏付けている。また、連合の逢見事務局長(UAゼンセン)は頻繁に官邸や自民党関係者と接触しており、彼らから指示を受けているものと推察される。

一方、民進党は民進党で、自前の党員や党組織を持たないため、選挙の実務や人手の大半を連合に依存しており、連合の支援無くして選挙区で勝てるのは衆議院で2桁に行くか行かないかだろうと考えられている。
民進党の前身である民主党が、自前の党員を持たない党組織を指向したのは、かつての社会党が総評と社会主義協会の党員によって牛耳られ、国会議員の影響力が小さく抑えられていたことに対する反省、懸念に基づいている。
ところが、現実には党組織を持たない民進党は、自前で選挙ができないため、全てを連合に頼らざるを得ず、結果的には社会党時代と同様に労働組合依存を強めてしまっている。社会党との決定的な違いは、労働組合そのものの体力が大きく低下しているため、その運動力も集票力も非常に限定されたものになっている点だろう。

その結果、民進党は政策的には自民党と大差がないため「じゃあ自民党でいいじゃん」との評価が固定化、運動力と集票力では地域に密着した自民党に劣り、自民党に対していかなる点においても優越性を発揮できない政党になっている。
連合としては、民進党が「弱い野党」であり続けることで、自身の利益にかなうと同時に、万が一自民党が大不祥事などで総選挙に大敗、下野することがあっても、何らの政策変更がなされない担保となっている。

以上の意味で、連合の存在は、民進党はおろか、日本の議会政治をも「詰ませて」いるのである。

【追記、03/14】
朗報です。連合の努力により、ストを打つことも無く、「残業月上限100時間未満」が実現されました。政府が示す過労死ラインを上回る残業が公認される「歴史的改革」となりました。
posted by ケン at 13:48| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月03日

戦力計算もできない民進党

【「30年原発ゼロ」連合会長が批判 民進、党内でも賛否】
 民進党の支持母体である連合の神津里季生会長は22日の記者会見で、同党執行部が検討する「2030年原発ゼロ」に対し、「深刻な疑問を持たざるを得ない」と改めて批判した。
(2月23日、朝日新聞抜粋)

【蓮舫氏、「2030年原発ゼロ」表明を断念 連合に配慮】
 民進党の蓮舫代表は27日、3月の党大会での「2030年原発ゼロ」方針表明を断念した。視察先の福島県飯舘村で記者団に「年限はメディアがこだわっている。私たちは中身にこだわりたい」と語った。党内の意見集約が進まず、支持母体の連合の猛反発に配慮した形だ。蓮舫氏はこの日、飯舘村長らと意見交換。その後、記者団に「将来的にゼロが可能だとはこれまでも訴えてきた。その思いを共有、認識できる大会にしたい」と述べた。野田佳彦幹事長も同日の記者会見で「決まっていないことを言うことは出来ない」と明言した。
(2月27日、朝日新聞)

民進党は全くコマンド・コントロールできないことを明らかにしてしまった。本件でも常にダメな選択肢を選んでいる。
まず党内の勢力図を考慮、調整せずに、「2030年原発ゼロ」を打ち出したことで、潜在的な党内対立を表面化させた(減点)上、その対立を解消させることもできない(減点)まま、掲げた方針を撤回したのである(減点)。これらの「減点」は現実には「獲得票の減少」という形で現れるだろう。
近々では6月に行われる東京都議選で、ただでさえ「小池への擦り寄り」と評判の悪い都議会民進党(自称:東京改革議員団)が大敗北を喫すると予想される。すでに内部では「5議席取れれば御の字」「1、2議席の可能性もある」と話されているが、ケン先生も自らの政治的良心に従って協力も投票も拒否を表明している。

「原発ゼロ」の方針は、いくつかの労働組合や業界団体と決して相容れない以上、「二者択一」「損切り」の判断が要求されるのは避けられない。この場合、イデオロギーを抜きにして、リアル・ポリティクス重視で考えるならば、「原発票」と「脱原発票」のどちらが多いかという判断になる。単純に全国平均の票数で考えた場合、民進党を支持する原発票(電力、電機系労組)は小選挙区あたり2千票前後だろう。もちろんこの数字は地域によって差があることは確かだが、ここでは省く。これに対して、民進党が「原発ゼロ」を掲げることで新たに獲得する票が2千を上回るかどうか、あるいは「原発ゼロ」放棄することで失う票が2千を上回るかどうか、が今回の判断基準になる。
他の要素としては、核推進労組による献金(パーティー券の購入)や選挙支援要員(ポスター貼り、電話がけ)もあるが、これも恩恵を受けているのは原発推進を明言している者だけなので、一般化することはできない。

だが、そもそも核推進論者は基本的に自民党に投票しているはずで、民進党内に核推進派がいるのは「野党第一党を拘束することで、自民党・霞ヶ関の核政策を円滑に進める」ために過ぎない。現実に、民進党が「原発ゼロ」を掲げられないことで、原発反対派の票は少数党に細かく分散してしまっている。つまり、連合の戦略は、野党第一党の足を引っ張ることで、政府の核政策を支援するというものだと考えられる。

結果的に民進党蓮舫執行部は、不採算部門の処理ができないまま、再建を図ろうとしている東芝のようになりつつある。中途半端に「2030年原発ゼロ」を掲げたことで、脱原発派の期待を裏切って失望に変えてしまった上、連合に屈したことで労働組合に否定的な層からも愛想をつかされた格好になっている。同時に連合からすれば、民進党は「潜在的反逆者」ということになり、今後はさらに政治統制を強化しようという話になるだろう。

もともと民進党には何の展望も無かったが、今回の件で挽回する(主導権を取り戻す)機会すら失われたのである。
また、連合は連合で一部の業界組合が自己利益の追求で暴走した挙げ句、完全に「業界団体の手先」と化してしまっており、労働団体としての機能を自ら否定してしまっている。連中は「全労働者の代表」を僭称しているが、現実には6千万人の内の6百万人を代弁しているに過ぎず、その中でも不和を生じさせている。連合は連合で、もはや自民党支持に舵を切って、しかも殆ど見向きもされないという選択肢に、自分を追いやりつつある。

どこまでも「バカばっか」である。
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2017年02月25日

ヤクニン発想のプレ金

【24日はプレミアムフライデー=官民一体で消費刺激】
 毎月最終の金曜日に終業時間を早め、買い物や飲食などを楽しんでもらう官民一体のイベント「プレミアムフライデー」が24日、始まる。旗振り役の経済産業省や産業界などは低迷する個人消費の回復に向けた起爆剤としたい考え。政府は長時間労働の是正など「働き方改革」につながることも期待している。プレミアムフライデーは、昨年2月の経済財政諮問会議で消費喚起策の実施が提案されたことをきっかけに検討が始まった。当初は海外の例を参考に全国規模のセール開催が議論されたが、需要の先食いを懸念する声などに配慮し、普段より少しぜいたくな体験や消費を楽しむという形に落ち着いた。
 経団連は、会員企業に終業時間を前倒しするなどの協力を要請。国会も24日に予定していた2017年度予算案の衆院採決を見送り、省庁職員の早期退庁に配慮した。産業界ではサントリーホールディングスやユニ・チャーム、日産自動車などが午後3時の退社を推奨。日本航空などは半休取得を促している。プレミアムフライデーをPRする専用ロゴマークは22日までに全国で3500以上の企業・団体が使用申請した。プレミアムフライデー向けの商品やサービスでは、夕方の早い時間に出発し目的地のホテルで夕食が楽しめる旅行プランや、各百貨店ではメーク講座といった体験型イベントなどを中心にさまざまな企画が目白押しだ。 
(2月23日、時事通信)

月末、しかも年度末に一体どれほどの人が早退できるのか疑問過ぎるだろう。あとでヤクニンに統計ださせて検証しないと。どうせタイムカード押してサービス残業になるだけ。百歩譲ってなんで月初にしなかったのか。どこまでもヤクニンの発想だな。加えて、「長時間労働の抑制」ではなく「個人消費の促進」を理由にしているところが、これまたブラック。
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2017年02月23日

10年で倍になる貯金は夢か幻か

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若人たちがツイッターで、「信じられない」「あり得ない」「夢のようだ」「どこの銀行?」「さすがドラえもん」などと呆然としていたけど、ありますよ(微笑)

ルーブル建てロシア国債が年利7.94%、複利だから10年で2.14倍になりますよ(ドーン)

(本ブログの読者には少ないと思うが)若者向けに補足しておくと、これはドラえもんの未来の道具の話では無く、本当にあった話。

ちなみにこの頃、つまり『ドラえもん』の連載が始まった1970年代初頭に医療技官となった母の初任給が4万5千円、当直手当は500円だった。その9年後には、給与25万円、当直代1万円になったとのこと。つまり、1970年代というのは給料が10年で5倍になり、貯金すれば10年で2倍になる時代だった。まさに「夢の時代」だったのだ。

具体的に見てみよう。郵便貯金の定額貯金3年以上の金利(利子)は、1973年で8%、1978年で4.75%、1990年で6.33%だった。通常貯金(市銀の普通預金に相当)ですら、1973年で4.32%、1978年で2.4%、1990年で3.48%だった。それが今や、定額貯金で0.01%、通常貯金で0.001%である。
実際に計算すると、金利8%の10年複利で計算すると、1万円が21500円になる。4.75%でも15900円だ。現代の0.01%だと、10年預けても10010円である。物価との兼ね合いは別にしても、団塊世代が一生懸命貯蓄に励んだ一方、現代人が貯金するインセンティブを欠くのは当然だろう。

さらに続けると、ケン先生が学部生だった頃(四半世紀前)に比して、現在の大学の学費は170%、給与水準は90%になっており、金利の急低下と相まって、中産階級の子弟が大学に行くためには、自ら借金するほかない構造になっている。
団塊世代は、「教育保険」などで積み立てれば、学費と金利のミックスで、何とか学費くらいは貯金でまかなえたわけだが、今の世代は子どもの学費を積み立てたところで、全く金利がつかない上に、学費は高騰、給与は下がり、雇用は不安定化するという感じで、学費分を用意するのも厳しくなっている。現実に大学生の約半分が、学生ローンを借りていることがこれを裏付けている。

そう考えると、いまどき子どもをつくっている連中には例外なく「財務計画を提示しろ!」と言いたくなる。
そして、低金利時代というのは、それ自体が「夢の無い時代」なのだと言えよう。

【追記】
金利が下がるのは、自由市場が機能していると仮定した場合、資金需要が低下しているためと考えるべきだろう。資金需要が低下しているのは、市場の需要に対し生産力が過剰になっているからだ。これがデフレの原因であるわけだが、デフレ下では利潤効率が下がるため、企業は労働力を搾取することで利潤を守ろうとする。西欧諸国の場合、労働運動が存在するため、容易に搾取できない構造になっているが、日本では労働運動が貧弱であるため搾取が容易になっている。結果、雇用形態の転換(非正規への移行)と長時間労働(労働単価の切り下げ)が横行し、労働価値が急低下、個人消費が低迷し、企業利潤がさらに低下、さらなる労働搾取へと繋がっている。社会主義者としては心苦しいが、「夢の無い時代」は「マルキシズムが機能しない」ことにも一因があると考えられる。
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2017年02月17日

化学総連が自民支持を決定

【化学総連は自民を支援 次期衆院選 連合離脱、民進離れ加速も】
 昨年まで民進党最大の支持団体である連合に加盟していた「全国化学労働組合総連合」(化学総連)が次期衆院選で自民党を支援する方針を決めたことが13日、分かった。化学総連幹部が同日、自民党本部で茂木敏充政調会長らと面会し、意向を伝えた。政府が進める働き方改革への要望やエネルギー政策についても意見交換を行った。
 大手化学各社の労組でつくる化学総連(昨年7月1日現在、組合員4万6348人)は昨年5月、春闘などで連合との窓口になっていた「日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)」との協力関係を解消し、連合を離脱した。
 「独自に政策提言したい」との理由だったが、昨夏の参院選に向け共産党との選挙協力を進めていた民進党への不満があったとみられる。産別労組全体の離脱は平成元年の連合発足以来初めてだった。
 連合では最近、「民進党離れ」が加速。神津里季生会長の出身産別である基幹労連が昨年4〜5月に組合員に支持政党を尋ねたところ、自民党が約23%で、民進党の約18%を上回った。
 今月9日には、連合の有力産別である電力総連の小林正夫参院議員が代表世話人を務める民進党の「連合組織内議員懇談会」が野田佳彦幹事長と面会。次期衆院選公約で執行部が検討している「2030年原発ゼロ」について慎重に判断するよう申し入れた。
 一方、神津氏は昨年12月に安倍晋三首相と会談し、働き方改革などで意見交換。同年11月には自民党と連合の幹部が5年ぶりに意見交換会を開き、政策協議を行う機会が急増している。
 神津氏は民進党と共産党との共闘を批判し、連合の次期衆院選基本方針でも「連合が共産党と連携することはあり得ない」と明記。今後、化学総連のような動きが加速する可能性もありそうだ。
(2月14日、産経新聞)

化学総連が連合を脱退した件は、すでに「遠心力働く連合」で扱ったが、早くも自民支持を決定した。
連合が自民党と合一的である理由について」で説明した通り、すでに正社員互助会と化した連合の利害関係は、民進党よりも自民党に近くなっており、連合が民進党を支持する理由はすでに大方失われている。にもかかわらず、連合が民進支持を保持し続けているのは、「野党第一党の最大支援組織」としてのポジションを保つことが政府、自民党に対する最大の影響力となり得るという判断に起因している。だが、もう一つは、「民進支持を止めて自民支持に転じる」だけの交渉コストを支払うだけの体力が、すでに連合に無いことに依る。

化学総連が連合から脱退したのは、もともと巨大な加盟費に比して得られる利益が少なすぎることと、もはや民進党を支持し続けることに組合員の合意が得られなくなっていることが原因になっていると考えられる。
これは化学総連に限った話ではなく、連合傘下の組合の大半に共通する問題で、基幹労連のような右派組合はおろか、いまや自治労やJPでも組合員の2割以上が自民党に投票していると言われ、旧総評や同盟といった枠組みとは無縁であることが分かる(基幹労連も総評だが)。むしろ旧同盟系の方が組合内の内部統制が強固であるため、民進党への投票が多いという話も聞くくらいだ。

「野党第一党の最大支援組織」であり続けたい連合と、選挙に勝つためにはNK党との連携が不可欠になるまで力を失っている民進党の利害は、今後ますます一致点が少なくなってゆくものと見られる。同時に、連合内で「民進支持」の合意が保持されなくなるのは時間の問題であり、「自民支持」に舵を切るか、分裂するかの選択肢を迫られる日が近づいている。
posted by ケン at 13:06| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月16日

赤い貴族は自民党支持

【<次期衆院選>民進に危機感 基幹労連の組合員支持逆転】
 民進党を支持する産業別労組「基幹労連」が昨年4、5月に組合員を対象に実施したアンケートで、自民党支持率が民進党支持率を初めて上回った。民進党関係者は「こうした傾向は基幹労連に限らない」とみており、次期衆院選で党勢回復を図りたい同党は危機感を強めている。
 アンケートでは「支持政党なし」が約53%で最も多く、自民支持約23%、民進支持約18%。安倍晋三首相が経済界に賃上げを直接要請する「官製春闘」が定着し、政府が働き方改革に着手していることなどが、組合員の自民支持につながったようだ。ある民進党衆院議員は「(経済政策)アベノミクスの恩恵で給料は上がっている。比例代表で組合が抱える候補に投票しても、選挙区では民進党の候補に投票しない組合員がどの組織でも少なくないだろう」と指摘する。基幹労連は鉄鋼、造船重機、非鉄、建設などの産別労組。連合の神津里季生会長は基幹労連出身だ。
(2月9日、毎日新聞)

「何を今さら」ではあるが、こうして数字が表になるのは良いこと。長くなるが、過去ログから再掲しておきたい。
連合は民進党に「安倍政権との違い」を求めるよりも、自民党支持に転じて政策要求した方が、はるかに自分たちの主張を実現させられる可能性が高いのだ。実際のところ、今回の新潟知事選にしても、鹿児島県知事選にしても、連合は与党候補を支援している。新潟知事選の場合、連合はまず民進党に原発推進の独自候補の擁立を要求、できないとなると、自民党の候補を支持した。最初から無理難題をふっかけて、民進党を封じて、与党候補の支持に回るというのが、連合のやり口なのだ。
連合はなぜ自民党を支持しないのか) 

連合は、ナショナルセンターの総評と同盟が合流してできたものだが、この二つのナショナルセンターは、戦後和解体制における最大の受益者でもあった。そして、戦後和解体制下で得た正規雇用労働者の「特権」の数々を維持するために、90年代以降の構造改革に積極的に協力していった。非正規雇用を容認する労働法制改悪を容認したのは、正規雇用者の待遇を守るためだった。最低賃金の引き上げに消極的なのも同じ理由から説明される。
電力総連や電機連合が原発を支持し、自動車総連がTPPを支持するのは、まさに「正社員の待遇を守るために経営側に積極的に協力する」という戦後和解体制の慣習そのものなのだ。だが現実には、原発の下請けや自動車工場の期間工や外国人労働者を見た場合、『蟹工船』同様の惨劇がまかり通っており、正社員の待遇は同じ労働者の搾取の上にしか成り立っていない。
つまり、戦後和解体制の残滓となっているのが連合であると解釈すると、分かりやすい。大企業の正社員互助会である連合としては、組合員の待遇を守るためには、今まで通り資本に協力するのが「合理的」であり、それは非正規雇用労働者を積極的に搾取することでしか成り立たない。そのスタンスは自然、野党では無く、自民党や政府に近いものにしかならない。
にもかかわらず、民進党を支持し続けているのは、hanamaru同志が指摘されているように「野党の最大支援組織」というポジションが、自民党に対しても政府に対しても最も有効な交渉材料(カード)であるためだと推測される。そして、その「ムリ」が表面化しているのが、昨今の惨状なのではなかろうか。
連合が自民党と合一的である理由について
 
連合の主な加盟員である、正規雇用労働者というのは、同じ工場で働く期間工や外国人労働者と同質の労働を担いながら、雇用が保障されると同時に、数倍の給与が支払われているものたちであり、それは言うまでも無く、期間工、外国人労働者、下請けに対する過酷な収奪の上に成り立っている。これは、ソ連型社会主義が、農民に対する過酷な収奪の上に成り立っていたことと相似形にある。大企業において、労働組合の役員を担うことが出世の条件になっていたり、縁故採用の核になっていたりするところは、ソ連における「ノーメンクラツーラ」を思い出させる。

その意味では、連合の中でも最右派と目される基幹労連において、自民支持が23%「しか」なかったことと、民進支持が18%「も」あったことは、むしろ驚くに値する。同時に、「支持政党なし」が過半数である事実こそが彼らの非階級性(社会のどの階層にも属している意識が無い)ことを表しているのかもしれない。つまり、根源的には自民党と利害を一致させていながらも、意識はされていない、ということなのだろう。
そして、連合幹部はこの無自覚を利用して、「野党の最大支援組織」の地位を、あるいは交渉カードとして、あるいは民進党の「行き過ぎ」を抑止するストッパーとしての役割を果たすよう、策謀を重ねていると見て良い。結果、連合は自民党・霞ヶ関から「赤い貴族」の地位を配慮されつつ、野党第一党が野党として最低限以上の機能を果たさないよう監視する地位に収まっている。政府による「働き方改革」や「同一労働同一賃金」が骨抜きにされた無内容のものになり、原発再稼働・再建設に舵が切られている事実がこれを裏付けている。

もっとも、上の状況は右派組合に限った話ではない。聞くところによれば、左派系組合の雄たる地方公務員の組合でも、2012年の総選挙では組合員の25%前後が自民党に投票、同14年の総選挙でも20%前後が自民党に投票しているというのだから、状況としては殆ど変わらないのかもしれない。
posted by ケン at 12:23| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする