2019年06月05日

従業員に年200万も出せない「先進国」

【最低賃金、時給1千円は「全国から悲鳴」 日商が要望書】
 日本商工会議所が28日、最低賃金の引き上げを推し進める政府方針に反対する要望書を厚生労働省や自民党に提出した。経済財政諮問会議では早期に時給1千円にする意見も出ているが、「大幅な引き上げは中小企業の経営を直撃し、事業の存続を危うくする」と訴えている。
 6月にまとめられる政府の「骨太の方針」や、今夏の中央最低賃金審議会に向けて働きかけていく考え。
 政府は2015年、最低賃金を年3%程度引き上げる目標を掲げ、3年連続で3%を超える引き上げを実施した。日商の調査では「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」と回答する企業が毎年増え、今春は38・4%。しかし、この数年の中小企業の賃上げ率は1%前後にとどまる。
 日商は「支払い余力の乏しい中、実力以上の賃上げを強いられている」「全国から悲鳴にも近い声が寄せられている」と指摘した。
(5月28日、朝日新聞より抜粋)

日本の企業(事業者)の99%以上は中小企業であり、被雇用者に占める割合は約7割。そのうち約4割が「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」とのこと。最低賃金は地域や業種で異なるが、おおむね850円から950円程度。月20日労働で換算した場合、年収200万円に遠く及ばない。ほとんど生活保護水準であり、世帯人数にもよるが、「健康で文化的な最低限度の生活」とはかけ離れた生活を余儀なくされる。
この数字だけ見ても、政府統計の「給料は上がっている」「国民は生活に満足している」が虚飾にまみれた大嘘であることが分かるだろう。

これは常々言っていることだが、本来資本主義社会では、こうした低採算の企業や事業は淘汰されて、淘汰されたことで余剰した資本と労働力が、新たな産業や事業に投入されることで、経済成長を遂げるというモデルが想定されていた。
これに対して、ソ連型社会主義では、失業や倒産そのものをイデオロギー的に「悪」と見なし、雇用と企業を完全保護した結果、国民経済と市場の成長が止まり、企業の採算や生産効率は殆ど改善されることなく、長期停滞が続き、国家そのものが頓死してしまった。
実は、日本は果てしなく後者のソ連型社会主義に近づいている。しかも、労働者に対する保護は殆ど無いのだから、「企業社会主義&労働者自己責任」という、企業家天国と言える。

「健康で文化的な最低限度の生活」という憲法理念を具現化させるためには、少なくとも時給1500円と雇用形態に関係なく社会保障の適用を行うべきだが、これを主張するNK党と社民党は殆ど支持されていない。この点は、曲がりなりにもホームレス以外は投票権が認められているだけに、有権者の自己責任と言える部分だろう。

超低賃金で労働環境が劣悪な中小企業が圧倒的多数を占めている現状では、いつまでも低採算の企業が残り、資本と労働力に余剰が生じない。
いわゆる「労働力不足」が生じているのも、この手の低収益企業がゾンビ化して生き残っているためで、超低賃金で労働集約的に働かせるため、生産が効率化されず、労働力に余剰が生じず、賃金が低迷して消費が増えないという構造になっている。
日本は中小企業の割合が他の先進国に比べて大きいと言われるが、それは自民党の基盤が地方の中小企業家に依拠しているところが大きい。その結果、歴史的に中小企業の優遇が行われてきて、制度として固着している。中小企業に対する優遇税制は非常に充実している上、各種補助金も整備されているが、例えばスウェーデンなどの北欧諸国では、中小企業に特化した優遇税制や補助金制度は無いというし、そもそも企業に対する優遇税制や補助金自体が非常に少ないと言われる。
逆に1980年代のソ連では、国家財政の約2割が国営企業の赤字補填に充てられており、ペレストロイカにおける重点改革項目だったが、ついぞ実現できずに終わった。日本は同じ轍を踏もうとしている。

日本の政治家(国会でも地方でも)にとって、最も重要なのは献金してくれる支持者に対して、優遇税制や補助金の適用を斡旋することであり、それが政官業の癒着と腐敗を生むと同時に、地域と国家の低収益構造を構築している。実はこの構造はNK党も当てはまる。

仮に最低賃金のことは脇に置くとしても、規模を問わず企業に対する税制優遇と補助金制度、そして公的融資制度は90%以上撤廃して、低収益・非効率な企業を全面的に淘汰する必要がある。
ソヴィエト学徒からの警告である。

【追記】
5月29日、日経新聞より。
「日本の競争力は世界30位、97年以降で最低 IMD調べ」
「日本は判断基準となる項目別で、「ビジネスの効率性」が46位と低く、ビッグデータの活用や分析、国際経験、起業家精神は最下位と厳しい。IMDは企業の生産効率の向上に向け、働き方改革や人材開発を一層進める必要があると指摘した。「政府の効率性」も38位で、巨額の政府債務や法人税率の高さなどが重しになっている。」
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月20日

ダメなのは無能な経営者のせいである!

20190517SS00001.jpg

20190517SS00002.jpg

20190517SS00004.jpg

東洋経済のアトキンソン氏の記事「日本は、「無能な経営者」から改革するべきだ」。タイトルこそ雑誌っぽく煽情的だが、内容はいつものアトキンソン節である。

要は日本の会社というのは、ゼロ金利によってタダ同然で資金を調達、優遇税制を利用して納税を回避。さらに、韓国よりも低い最低賃金や4割もの非正規労働者(社会保障負担回避)、外国人技能実習制度(労基法や基本的人権の適用除外)などを駆使しつつ、労働時間管理が無く、労働組合の組織率が15%強という中で、労働者を超長時間(通勤時間含めると1日12〜14時間)=「定額働かせ放題」にできる。それに対して日本人は文句一つ言わず、政府の調査によれば「高い幸福度」が示されている。

1980年代まで問題が露呈しなかったのは、政治家や官僚や企業幹部が優秀だったからではなく、単に人口増加のメリット(労働力と消費者の安定供給)を無条件に享受できたためだった。
付言すれば、日本は日米安保のおかげで軍備負担が非常に軽く済んだ上、アメリカの軍事力によって担保された西側経済圏の中で超安価な資源を調達できたことも大きい。

そのため、人口メリットが失われ、資源価格が高騰すると、途端に為す術を失ってしまう。
本来であれば、人口メリットの喪失を補うべく、生産性の向上と経営の効率化を進めなければならなかったが、日本は政官財一体の「ぬるま湯」から抜け出せなかった。
こうした状況は西側世界はみな共有していたが、アメリカは全世界から資金を調達して金融工学によってバブルを繰り返すことで延命、西欧諸国はソ連崩壊によって得た東欧諸国を植民地化(安価な労働力と消費市場の確保)したことによって延命した。
これに対し、日本は国内で収奪を強化することで延命を図る。非正規雇用の割合を3倍にして、企業の社会保障負担を激減させ、税制優遇で企業の延命を図り、歳入難は消費税(大衆増税)によって補った。ゼロ金利政策もその一環だった。それでも無能な企業家はなすすべがなく、ついには公的年金の基金をもって国内株を買い漁り、株価を支えるに至っている。

日本の企業経営層が恐ろしく無能なのは、日本の経営者は経営能力や知識とは無縁の存在であるところが大きい。
日本の人事慣習は、管理職を選別する際に管理能力や経営能力を問うことは稀で、「社に対する忠誠(貢献)」や「幹部の受け」によって評価される。言うなれば、AH社の「クレムリン」みたいなものだ。
欧米の場合は、良くも悪くも、経営層は最初から管理専門職、経営専門職として採用されるケースが多く、その代わり失敗した場合も責任を取らされる。だが、日本の経営者は経営に失敗しても、株主総会などで責任が追及されることはまずない。

その結果、無能な経営者が延々と無能な経営を続け、失敗の責任を追及されることもなく、無能者から無能者へと引き継がれる状態にある。
この点は、日本の政治も同じで、例えば日華事変以降の総理大臣を見た場合、

近衛(世襲議員)
平沼(検事)
阿部(陸軍)
米内(海軍)
近衛(世襲議員)
東条(陸軍)
小磯(陸軍)
鈴木(海軍)

というラインナップだが、経歴的に国家運営の知識がありそうなのは大審院院長だった平沼くらいのもので、その平沼は「欧州情勢は複雑怪奇」と言って総辞職してしまう程度の能力だった。残りはどう見ても「国家運営の才覚あり」と認められて首相位に選ばれた感じはなく、かろうじて米内と鈴木が「軍人としてはマシ」というレベルだった。現に鈴木は何度も「器では無い」と拝辞している。
例えば、陸軍は、内務省が昭和初頭に大都市部の道路舗装を進めようとしたところ、「馬の歩行に障害が出るからダメだ」とクレームを付けて大反対している。この程度の連中が国家運営を行えるはずが無い。
戦時中の8年間に総理大臣が8人もいるという無軌道ぶりも、日本型人事システムがいかに危機や不安定期に弱いかを示している。本質的に「有能な者は予めパージする」ところがあるのだろう。

日本もいい加減「いかにして経営と管理のプロフェッショナルを育成、選別するか」という視点に立たないと、手遅れになるだろう。
あ、いや、もう手遅れか(爆)
posted by ケン at 12:00| Comment(1) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月02日

99周年、メーデー万歳!

メーデー万歳!

The_1st_Labor_Day_in_Japan.JPG

日本の第一回メーデーは1920年に東京上野で開催、八時間労働、失業防止、最低賃金制度が掲げられた。八時間労働制は未だに実現していない。
正確を期すなら、失業が最小限に抑えられているのは無権利状態の非正規雇用が就業者の四割を占めているからであり、また最低賃金は最低生活を保証する金額以下に留まっている。

img_0.jpg
1931年第12回メーデーのポスター

また今年はILO(国際労働機関)結成から100年でもある。
しかし、日本政府は現在に至ってもなお、ILOの国際労働条約第1号「8時間(週48時間)労働制の導入」(1919年)を批准していない。

1917年5月にロシア・ロスラヴリ市でストライキを決行した女性帽子職人組合が要求したのは、「一日八時間労働」「賃金50%アップ」「週休2日」「有給休暇」等だった。

2019年の日本を見た場合、「一日平均十時間労働」「一日平均一時間二十分の無給残業」「有休取得率50%(うち約20%は有休労働か、会社のイベント動員)」「通勤二時間以上」という具合。
労働組合の組織率は17%と5分の1を割り、労働力価値は資本によって一方的に買いたたかれる状態に置かれている。
posted by ケン at 12:00| Comment(3) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月19日

全港湾スト報道に見るNHKの反動

【港湾労働組合 22年ぶり平日にスト コンテナ積み降ろしできず】
 全国の港で働く労働者の組合が最低賃金の引き上げなどを求めて、14日から48時間のストライキを行っています。全国の主要な港でコンテナの積み降ろしなどの作業ができなくなっていて、港湾でのストライキが平日に一日続くのは22年ぶりだということです。ストライキを行っているのは、全国の港で荷揚げや荷降ろしなどをしている1万6000人の労働者で作る全国港湾労働組合連合会です。
 ことしの春闘で、業界団体の「日本港運協会」と最低賃金の引き上げなどをめぐって続けてきた交渉がまとまらず、14日から48時間のストライキに入りました。全国の主要な港でコンテナの積み降ろしなどの作業ができなくなっていて、組合によりますと、港湾でのストライキが平日に一日続くのは22年ぶりだということです。港湾関係者によりますと、荷主がストライキに備えて事前に在庫を調整するなどしていたため大きな影響は出ていないということですが、今回のストライキが終わる16日の朝以降、港の混雑を懸念する声も出ています。組合側は、今月下旬からの10連休中のストライキの通告も示唆して交渉を続けていて、国土交通省は物流への影響が出ないか情報を収集しています。
 青森県八戸市の八戸港でも荷役作業が止まるなどの影響が出ています。このうち、八戸市に本社を置く「八戸港湾運送」は全従業員の8割にあたるおよそ200人が組合員で、14日から続くストライキのために、大型のクレーンなどを使ったコンテナの積み降ろしなどの作業が止まっています。八戸港湾運送は取材に対し、「取引先にストライキの事情を説明するなどして、影響をできるかぎり最小限に抑えたい」としています。
 この影響で、東北地方で唯一の国際拠点港湾である仙台市の仙台塩釜港の高砂コンテナターミナルでは、コンテナ船4隻が入港できない状態が続いています。このため、港は大型のクレーンは動いておらず、車の行き来もほとんどありません。港湾事務所によりますと、ストライキが終わる16日朝以降は一転して、港周辺の混雑が予想されるということです。
(4月15日、NHK)

この報道は色々な意味で象徴的であり、現NHKの階級反動性を示している。
まず、ストライキの理由は「「日本港運協会」と最低賃金の引き上げなどをめぐって続けてきた交渉がまとまらず」とわずか1行のみしか触れていないのに、その後の「ストによる影響」については延々とニュースの半分以上を使っている。
また、ストライキは14日から48時間であるにもかかわらず、報道がなされたのは最終盤の15日夜だった。
そして、運送会社や港湾事務所のコメントは入っているのに、肝心の労働者側のコメントはゼロである。

これらは、「公正中立」と言って全市民、全国民から強制的に視聴料を徴収しているNHKが、実際には100%資本側の立場から報道していることを示している。
戦後日本は、様々な経緯はあったものの、西欧諸国と同様に戦後和解体制を採った。それは、資本と労働が対等的な関係で強調し、政府が再分配を約束し、議会制民主主義が階級調整をなす政治体制だった。ただし、それは現実には第三世界からの収奪の上に成り立っていたのだが、今はそこは問わない。

仮にこの戦後和解体制を前提とするなら、少なくともNHKは再分配と階級調整の弁としての機能が求められ、実際に2000年頃まではそれが一定程度効力を発揮していた。
だが、小泉改革や第一次安倍政権の頃には戦後和解体制はほぼ瓦解し(象徴的には国鉄と日本社会党の解体)、今日に至っている。NHKも例外では無く、今では階級問題や政府に批判的な番組は皆無になっている。
NHKの不誠実は、戦後和解体制を否定しているにもかかわらず、相も変わらず中身の無い「公正中立」を標榜している点だ。だからこそケン先生はNHKの国営化を主張している。

さて、全港湾のことである。もちろんストライキは全面的に支持する。
NHKに限らず、どの報道機関もロクに報道していないこと自体、もはや現行体制にいかなる未練も感じさせない。
上記の報道は、まず「最低賃金をめぐる交渉」と述べているが、その最低賃金を見てみよう。
港湾では労働組合と業界団体が協定を結んでいます。
港湾産別協定(2007年協定)では、港の種類により2つに区分されています。

最低賃金 日額6、310円(7時間労働)、月額157、600円
〔適用港:東京港、横浜港〈川崎港含)、名古屋港、大阪港、神戸港、関門港の場合 〕
〔適用職種:船内荷役作業、沿岸荷役作業、はしけ乗組員、いかだ運送作業員、
  港湾運送関連作業員(港湾倉庫作業は港湾運送関連作業に該当します)〕
全港湾HPより)

驚くべき低さだが、これを約16万4千円に上げよ、というのが、今回の労働側の要求だった。
しかし、資本側はこれを拒否したどころか、産別最低賃金の設定(交渉)すら拒否するという挙に出た。もっとも、これは2016年頃からのことで、今回のストライキは「もう我慢ならん!」という労働側の判断に基づいていた。
産別交渉が否定された場合、労働者は企業別に組合をつくって事業者と交渉に当たるわけだが、交渉力が弱まるのは避けられず、実際には資本の言いなりになる他ない。資本側の狙いは、労働者の団結を破壊し、その賃金交渉力を無力化して、最低賃金(あるいはそれ以下)まで下げるところにある。

本来ニュース報道はここまで書いてようやく労使間のバランスが取れて、「公正中立」を標榜できるはずだ。
この点を省いてしまえば、「無理な賃上げを要求する労働組合が市民に迷惑を掛けるストライキを勝手にやってる」という構図をプロパガンダすることになるし、実際それをやっているのがNHKなのだ。

象徴的なことに全港湾は1972年から2015年まで日本港運協会と団体交渉を行い、産別賃金を設定してきたが、この44年間こそがまさに戦後和解体制そのものだったのだ。そして、資本側が産別統一交渉や生活保護水準の最低賃金の引き上げを拒否するという事態は、戦後和解体制の全面瓦解を象徴している。

マルクスは、自らの待遇を守るために、資本に同調して外国人労働者などの下層労働者の疎外に荷担する労働者を「哀れなプロレタリア」と呼んだが、現行の資本や政府による暴虐に対してなすすべのない西欧社会民主義政党や日本の連合はまさにこれに相当する。
やはり戦後和解体制こそが例外的な体制であり、世界は再び資本と労働が血で血を洗う闘争を演じる時代に突入していくのかもしれない。

【追記】
全く残念ながら私自身は全港湾本部にお邪魔したことは無いのだが、ある同志によれば、委員長室には巨大な赤旗が掲げられ大きなレーニン像が鎮座まし、周恩来の書なども掛かっており、いささか時代錯誤(懐かしさ)を感じさせるところだという。
全港湾労働者の皆さんには、遠くの地より心より連帯の意を表明するものである。

【追記2】
マルクスを持ち出すまでも無く、労働者が団結して、資本の横暴に対抗し、労働者が唯一提供できる「労働力」を結集して提供拒否するストライキは、労働者にとって唯一の武器である。その武器をカードに交渉するのが労働組合の重要な役割となる。とはいえ、伝家の宝刀は抜いてしまえば「それきり」という側面があり、抜かずに済めばそれに越したことは無い。しかし、今回の一連の争議は「ストライキをやらない労働者は一方的に収奪される」というマルクスの指摘が正しかったことを示している。
1970年代以降、ストライキが減少したのは「戦後和解体制」が機能して、労使協調路線が成立したためだが、ソ連崩壊を経て同体制が解体されつつある中、労使の利害が一致しなくなっているわけだが、「平和」の時代が長かったため、労働組合は自らの役割を忘れ、戦力として機能しなくなっている。そして、全港湾がストライキを打てるのは、産業報国会の後進と言える連合の指導下に無いところが大きいと考えられる。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月10日

「貯金ゼロ」が意味するもの

【30、40代「貯金ゼロ」が23% SMBCの金銭感覚調査】
 SMBCコンシューマーファイナンスは6日、30〜40代の金銭感覚に関する調査結果を発表した。「現在の貯蓄額がゼロ」と答えた人が前年比6ポイント増の23.1%になり、平均貯蓄額も同52万円減の195万円に低下。同社は「景気回復が働き盛りの賃金上昇につながっていない」と分析している。
 貯蓄額の平均は30代が前年比4万円減の194万円なのに対し、40代は同120万円減の196万円だった。消費について9割近くが「無理せず買える範囲で買う」と回答し、堅実な消費意識が浮かんだ。「年収がいくらだったら結婚、出産しようと思えるか」との問いでは、結婚が500万円以上、出産は600万円以上と答える人が多かった。
 スーパーなどで「現金よりキャッシュレス決済が多い」と答えた割合は、30代が52.8%、40代が53.4%で、昨年調査した20代の44.1%をいずれも上回った。同社は、子育てなどで出費がかさむ中年世代ほどクレジットカードやQRコード決済のポイント還元を重視しているためとみている。一方、「メルカリ」のようなフリマアプリに直近1年間に出品した人は16.5%。年代別では20代が30.4%と高く、年齢を重ねるごとに低かった。
(3月6日、毎日新聞)

政府統計が信用できなくなった今、こうした調査を重視するほか無いが、なかなか良いところを突いていそうだ。
貯蓄ゼロ世帯は金融庁の調査(2017)でも、二人以上世帯で約3割、単身世帯では4割を超える。単身世帯の30代で40%、40代で45%とあるから、実感としてもそんな感じだ。

貯蓄がある人の場合は、今度は住宅ローンを始めとする負債を持つ場合が大半で、これらは貯蓄、負債ともに増加傾向にあるものの、特に若い層を中心に負債の方が増え方が大きくなる傾向がある。
例えば、40歳未満を見た場合、2008年の平均貯蓄額591万円に対し、2017年は601万円。しかし、負債平均額は、2008年が1389万円に対して、2017年は1893万円に達している。
これは、本来住宅を買えないはずの中低所得層が無理して住宅を購入していることに起因している可能性がある。あるいは、養育費や教育費での借り入れが増えている可能性もある。
いずれにせよ、こうした層を中心に、一度大不況が来れば、途端に負債を返せなくなって、アメリカのように破産者が続出する可能性が高い。
また、すでに大学生の半数以上が負債を抱えて通学しており、つまりこれらの大卒者は赤字状態から社会人を始めている。

興味深いのは、「結婚が500万円以上、出産は600万円以上」とあるが、実は年収500万円以上は全体の30%、600万円以上は20%しかおらず、実質的に江戸時代と同様、「出世した者しか結婚できない」社会になっていることを示している。この分では、少子化はさらに悪化するだろう。
これだけ見ても、日本の未来はどこまでも暗いことが分かる。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月22日

ポイント還元に見る日本経済の末路

【消費税増税対策のポイント還元、想定以上の“費用膨張”の恐れ】
 今年10月の消費税増税の経済対策の柱となるキャッシュレス決済時のポイント還元制度について、世耕弘成経済産業相は5日の衆院予算委員会で、「予定より早く予算が尽きる見込みになった時は、財政当局とよく相談して対応を検討する」と述べた。利用が想定を上回り予算が不足した場合、追加で予算要求する可能性を示唆した形で、費用が膨張する恐れがある。国民民主党の階猛氏への答弁。
 ポイント還元制度は、中小の小売りや飲食店などで現金を使わない手段で決済した場合、決済額の最大5%を国が消費者にポイントで還元する仕組み。政府は2019年度予算案に必要経費として2798億円を計上し、中小店舗への決済端末の導入費用などを除く約1600億円を消費者への還元に充てる。実施期間は来年10月から9カ月間で、20年度も1000億円強の予算を計上する方針だ。
 麻生太郎財務相は予算計上額について「足りなくなることを想定しているわけでは全くない」との考えを示している。ただ、制度は個人だけでなく法人も利用できるため、「企業が備品を大量購入すれば(必要な予算額が)数兆円規模に膨らむ可能性がある」(エコノミスト)との懸念が出ている。
 制度設計を担当する経産省は「キャッシュレス決済比率が大きく伸びるとは想定していない」として予算不足に陥る可能性は低いとみるが、個人・法人ともどこまで利用が広がるかは読み切れない状況だ。
 ソフトバンク系のQRコード決済会社ペイペイが昨年12月に実施した100億円還元キャンペーンは利用者が殺到し、高額商品の購入も相次いだため、4カ月分と見込んでいた還元費用が10日で尽きた。階氏はこの例を引き合いに「(利用が)上振れしたら、途中でやめるのか」と追及した。
 政府内には「企業のコスト削減に使われる還元費用を予算に追加計上するのは国民の理解を得られない」(財務省幹部)と否定的な見方もあるが、「『お金がなくなったから終了』では済まされない」(経済官庁幹部)との声も出ている。
(2月5日、毎日新聞)

ぶっ壊れ感がハンパなくなってきている。

「増税2%に対してポイント還元5%」
「ポイント還元対策予算は2800億円」
「5兆円の増収見込みに対して3兆円の経済対策」
「KM党対策の商品券で1700億円」
「みずほ総合研究所の試算によると、ポイント還元による経済効果は1300億円」


1945年のドイツとまでは言わないが、1944年の東部戦線くらいには崩壊しつつあるように感じられる。
まぁ最近ではクルスク戦についても、「ソ連側の戦略予備を先に潰して1944年まで攻勢を遅らせることに成功した」という評価があるから、
それくらいの効果はあるのかもしれないが(笑)

要は需要の先食いを常に先制しているだけの話で、先制すればするほど効果が減少する仕組みになっている。
少子高齢化と貧困化で需要そのものが低下の一途を辿っているのに、さらに需要を先食いするのだから、当然の話だ。
ところが、肝心の少子化や貧困化に対しては無為無策で、新規公共事業を増やして、将来負担(維持費)を大きくするだけのインフラ整備に力を入れている。これは自民党が小さくなり続けている支持基盤を繋ぎ止めるための政治的目的しかなく、ペレストロイカ末期に西側からの借款を軍需産業と重工業に投じてしまったゴルバチョフ政権の末路を暗示している。

新規住宅が増える一方で、空き家も急増しているが、これは本来住宅を購入できるだけの資力を持たない貧困層に借金させて買わせているだけの話で、空き家のリスクは自治体が負担し、治安や災害のリスクは住民が背負う形になっている。
この点からもどこかで破断界を迎えるのだろうが、後は「誰がババを引くか」という話で、「今のうちに美味しいところはいただいておこう」というのが、自民党議員と官僚の考えなのだろう。

「分配構造の再構築」「労働環境の改善」「公共住宅の整備」といった社会主義的要求をなす政党の不在が今日の問題の元凶にあると考えられるが、それを指摘するものもごくわずかしかおらず、ほぼほぼ自業自得の形になっている。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月10日

公立校の精神疾患休職者が5千人超に

【17年度、休職の教員は5千人超】
 2017年度に公立小中高校などで精神疾患を理由に休職した教員は16年度から186人増の5077人で、4年ぶりに増加したことが25日、文部科学省の人事行政状況調査で分かった。02年度は2687人だったが、その後増え続け、07年度に4995人になって以降、5千人前後の高い水準で推移している。
 公立学校の全教員(約92万人)に占める割合は16年度比0.02ポイント増の0.55%。文科省の担当者は「教員の多忙と長時間労働が背景にあるのではないか」と話している。病気休職者7796人の65.1%が精神疾患で、このうち今年4月1日時点で復職していたのは1994人。
(12月25日、共同通信)

報道では単純に休職者数のみを挙げて「横ばい」としているが、公立校の教員数は10年前の約99万人に対して92万人まで減少しているのだから、母数の減少を考慮する必要がある。また、あくまでも休職者数であり、退職者は含まれないので、どこまで実態を表しているか疑問は残る。

文科省の「担当者」が言う「教員の多忙と長時間労働」は否定しないが、本業以外の業務の煩雑さやクレーム対応に触れていないのは、やはりヤクニンが教職労働の実態を知らないことの現れだろう。そもそも超長時間労働を強いられている教員が、給食費の取り立てから保護者のクレーム対応まで担っているのだから、精神を病まない方がおかしいくらいだ。
容易に認定しない厳格な(当局に都合の良い)基準だからこそ、この人数で済んでいるのであり、欧州基準で診断したら、教職の何分の1かは精神疾患(恐れを含む)の診断がくだされるのではないか。

ケン先生が教職の労働環境に触れたのは、ブログを始めて間もない2007年のことであり、国会に勤務する間もずっと指摘し続けたが、何一つとして改善されていない。それどころか、むしろ悪化していると言える。にもかかわらず、教員組合から「部活動を廃止してくれ」とか「労働時間上限あるいはインターバル規制を導入してくれ」などといった要望を受けたことは一度もなく、労働組合が全く機能していないことも事態を悪化させている。

・教員の質が低下するわけ

先ごろ、私立高校の教員がストライキを行い、「早朝の校長挨拶をボイコットした」旨の報道を見たが、フランスなどでは普通に教員が授業を丸ごとボイコットしたり、学校を封鎖したりしている。
マルクスが強調するように、労働者には労働力しか提供できるものが無いのだから、労働力の提供を止めることでしか資本に打撃を与えることはできない。つまり、教員の場合、本質的には授業をボイコットすることでしか、自らの労働力の価値を訴えることはできないはずなのだ。実際、教員組合本部にはストライキ用に何百億円という資金が溜め込まれているという話を聞いたことがあるが、死蔵になってしまっている。

やはり日本人はマルクスを読み直すところからやり直すべきなのだ。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする