2018年12月12日

戦争屋が外国人労働者を組織する悩ましさについて

【外国人3千人が加入の労組結成 日高屋、大半が非正社員】
 中華料理店「日高屋」を首都圏で約400店展開する「ハイデイ日高」(本社・さいたま市)で、外国人従業員が約3千人加入する企業内労働組合が結成されたことが分かった。組合員の約3分の1を占めるといい、これだけ多くの外国人が入る労組は極めて異例だ。政府が外国人労働者の受け入れ拡大を進める中、外国人の待遇改善をめざす新たな動きとして注目を集めそうだ。
 同社や労組関係者によると、名称は「ハイデイ日高労働組合」。今年5月に繊維・流通・食品業界などを束ねる産業別労働組合「UAゼンセン」に承認され、労組の中央組織・連合の傘下に入った。店舗網の拡大による従業員数の増加を受け、社内で労組の結成が長く検討されていた。関係者は「今年ようやく話がまとまった」という。
 組合員数は約9千人。パートやアルバイトなどの非正社員が8千人超を占め、このうち約3千人がベトナムや中国、ネパール、ミャンマーなどから来ている従業員だ。週28時間以内なら働くことができる日本語学校や専門学校で学ぶ留学生らが多いという。
(11月21日、朝日新聞より抜粋)

労働組合とはかくべきである。労組は、未組織の労働者を加入させ、同時に未組織の企業や分野に組織を広げていかなければ、あっという間に既得権益団体に堕してしまい、資本との一体化を余儀なくされるところとなるからだ。その意味で、ゼンセンは現代の日本にあって、労働組合として真っ当に機能している数少ない存在ではあるものの、同時にゼンセンならではの問題も抱えている。

ゼンセンは元々「全繊維」という繊維産業を基盤とする産別労組であり、日本の近代化を当初から共に歩んできた、最も歴史のある組合を起源としている。
しかし、それだけに帝国主義の恩恵の享受者であると同時に、日本の軍産複合体の一部をなしてきた。戦前の日本において、繊維産業は最大の輸出部門であったためだ。また、軍服や日用品、テントなどを始め、軍需物資に占める繊維の割合は非常に高く、日清戦争以降、50年間に渡る軍拡時代にあって、日本の繊維産業は軍事と一体化してきた歴史がある。
一度は敗戦によって危機的状況に陥ったものの、復活を果たした原因が朝鮮戦争特需(次いでベトナム戦争)であったことは、ゼンセンにとって戦争が「最も景気の良い公共事業」であるという成功例になっている。

それは現在にまで継承されていて、私が議員秘書時代に話を交わした某幹部も「自衛隊の海外派遣や新安保法制、今後の軍拡で我々はしばらく安泰(中略)我々は本来安倍政権をこそ支持すべきであり、民進党をなどを支援する理由はないはず(だから感謝しろ)」旨のことを言っていた。彼の意見が組織を代表するわけではないが、その意見は彼らの歴史的背景を考えれば、十二分に妥当なものなのだ。

日教組のように平和や反原発運動には積極的なのに肝心の労働者の権利を守る運動はほぼ無力である総評系と、戦争賛成・核推進ながら労働者の権利を守ることに積極的な同盟系、本来的には後者が「正しい姿」であるとは分かっているものの、すんなりとは肯定できないところが苦しいところである。
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2018年11月30日

外国人技能実習制度さらに拡充へ

【技能実習に「宿泊業」追加=新在留資格の人材確保狙う】
 政府は外国人が日本で職業訓練を受けるための在留資格「技能実習2号」の対象に、宿泊業を追加する方針だ。
 政府が今国会成立を目指す出入国管理法改正案は、技能実習2号を修了した外国人が新たな在留資格「特定技能1号」に無試験で移ることを認めている。技能実習2号の対象拡大で特定技能1号の人材を確保する狙いがある。
 技能実習は日本の技術を途上国に移転するため、外国人に日本で働いてもらう制度。入国1年目の技能実習1号、2〜3年目の2号、4〜5年目の3号がある。一方、衆院で審議中の入管法改正案は、技能実習2号の修了者は特定技能1号取得に必要な試験を免除すると定めている。
 ただ、特定技能1号の対象14業種のうち、宿泊業と外食業は技能実習2号の対象になっていない。このため、与党内から「技能実習2号の対象業種を拡大し、特定技能1号の人材供給源にすべきだ」との声が上がっていた。
 観光庁の金井昭彦審議官は21日の衆院法務委員会で「技能実習2号の対象に宿泊業を追加すべく、検討を重ねている」と説明。理由として「わが国の宿泊業はきめ細やかなサービスや清潔感が特徴。観光が重要な産業である場合が多い途上国では技能習得のニーズが高い」と語った。
 政府は、5年間で最大34万5000人と見込む特定技能1号取得者のうち、45%は技能実習2号からの移行組とみている。野党は、新在留資格は技能実習制度と「密接不可分」で、新資格の導入よりも失踪者が相次ぐ技能実習制度の問題の解決を優先すべきだと主張している。
(11月24日、時事通信) 

この問題はすでに何度も繰り返し論じているが、過去ログを再掲しながら触れたい。
日本の場合、労働基準法が形骸化しており、超長時間労働や残業代不払いなどのブラック労働が放置されているため、供給を抑制する仕組みが働きにくい。
仮に欧州標準の労働規制がある場合、コンビニや飲食店あるいは様々な分野のブラック企業は成立し得ず、低収益となって廃業あるいは倒産し、余剰労働力が生まれる構造になっているが、日本の場合、不採算の企業でも超長時間労働や残業代の不払いで延命できるため、生産性の低い企業が市場から淘汰されない仕組みになっている。
結果、低収益の企業が労働力も資本も握り続け、成長可能性のある新興企業が労働力の確保に難儀し、成長が抑制される構造に陥っている。これは、まさに1970年代以降のソ連や東欧で見られた現象である。

こうした状況を放置したまま超低賃金の外国人労働者(実質奴隷)だけ導入したのが、外国人技能実習制度だった。その結果、地方の低収益の既存企業が延命したという点では成功したかもしれないが、地場の雇用には何のプラスにも働かず、超低賃金であるために消費にも全く貢献せず、言うなればアナログのオートメーション工場が地方にできただけの話に過ぎなかった。それでも高収益であるならば、自治体に納税することで一定のプラス効果もあったかもしれないが、そもそも外国人奴隷の導入を必要とする企業は、超低賃金の労働力無しでは成立し得ない超低収益構造にあり、納税に期待などできないのが常だった。
人手不足で外国人は必要か

政府や財界が主張する「労働力不足」というのは、「低賃金で長時間働かせられて、かつ社会保険等の負担が必要ない労働力」のことであって、人道上の概念に相当する人間のことではない。
本来であれば、必要な労働力は賃金や待遇などを改善することで確保できるはずだが、高賃金が保障できない低収益・低生産性の企業がこぞって政府に圧力をかけ、自民党やKM党が同調したことで、「外国人奴隷制度」が成立している。

中国に来て思うのは、人海戦術的な部分も根強く残っているが、他方でキャッシュレス化を始め、自動化がものすごい勢いで進んでいるということである。ロクにキャッシュレス化も進まず、低賃金の前近代的な労働力動員に依存する日本と比較した場合、生産性の差は今後拡大する一方だろう。

つまり、日本では超低賃金労働に依拠しなければ採算が確保できない低収益産業と企業がどこまでも淘汰されること無く生き残り、資本と労働力を囲い続けることになる。そして、技術革新や構造改革が起きない社会となる。これは、一面で1970年代のソ連と同じ状態であることを意味する。
本来であれば、低収益で労働力を確保できない産業は衰退し、余剰した資本と労働力が新産業に流入することで、産業構造が変化し、成長が維持される。日本は自らこのサイクルを否定する流れにある。

コンビニや飲食店、小売業などは過剰供給にあるだけの話で、本来であれば、数を減らせば良いだけの話だろう。
宿泊業については欧米諸国に比して低すぎる価格設定が従業員の待遇を悪いものにすると同時に、「働き手不足」にしているわけだが、デフレ下で誰も価格を上げようとしないから悪循環に陥っている。民泊などを導入して、その傾向はさらに悪化していると言える。
農業や漁業については、本来自動化や大規模化を進めるべきところを、外国人奴隷制度などがあるために、従来の生産性の低い業態が存続してしまっている。これらは、本来はAIやロボットを導入して効率化すべきところを、「安価な労働力」があるために構造変化がもたらされること無く、前近代的な業態が存続することを意味する。

結果、特に地方を中心に市場価格の半分以下で雇える外国人奴隷によって産業が維持され、労働価格が超低レベルで維持される上、新産業が育たず(起業が発生しない)、奴隷を雇っている企業主まで含めて全員定収入であるため、税収も上がらず、数少ない若年層は都市部に流出、あるいは地元に戻る機会も与えられず、ひたすら衰退の一途を辿ることになる。技能実習制度は、利用者の低収益が故に、同制度なくしては事業の存続ができず、地元政治家や官僚との癒着を深めるほかない。
同時に、その低収益性が故に、事業が継承されることは無く、今の世代でほぼ壊滅するものと思われる。だが、その頃には地方には事業を再生産するだけの体力が残っておらず、ソ連崩壊後の廃墟が如き様相が日本全国で見られることになるだろう。

日本は明らかに誤った政策を採って、自ら衰退を招いている。それを糊塗するために、五輪や万博などで「起死回生の一発」を打とうとしているが、これは明らかに「負けが込んできたダメな博打打ち」の姿なのである。
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2018年10月20日

連合、今さら教員過剰労働を指摘

【過労死ライン超えの教員、公立校で半数 仕事持ち帰りも】
 連合は18日、公立学校教員を対象に緊急調査を実施した結果、半数が過労死ラインとされる週60時間以上の勤務を超えていたと発表した。「時間内に仕事が処理しきれないか」という質問には8割以上が「とてもそう思う」または「まあそう思う」と答え、20代と30代では9割以上に上った。
 調査は9月、公立学校教員1千人を対象にインターネット上で行われた。それによると、1週間の平均勤務時間は平日で約56時間、休日で約6時間で計約62時間だった。約6割の教員が管理職から「早く退勤するように」言われた経験があったが、このうち約7割は「仕事の量を減らしてから言ってほしい」と考え、4割以上が「持ち帰り仕事が増え、総労働時間は変わらない」と回答した。
(10月18日、朝日新聞)


何をいまさら!
本ブログでは、教員の過剰労働問題について2007年には取り上げている(教員の質が低下するわけ)。ブログを移転させた際に古い記事の一部が消失してしまい、確認が不十分だが、10年前から指摘していたことは間違いなく、その基礎資料はNK党系の全教の調査を参考にしていた。
ケン先生は、10年ほど連合系の野党で議員秘書を努め、連合系の教員組合とも浅からぬ接点があったものの、予算獲得や平和運動などで相談や陳情を受けたことはあっても、労働問題に関する陳情を受けたことは記憶にない。
こうした政治運動や既得権の保護に注力した教員組合、あるいはナショナルセンター「連合」のスタンスが、さらなる労働環境の悪化をもたらしたことは、想像に難くない。
結果、まともな教員から脱落、離職している上、教員志望者はますます減少、その質的低下は凄まじいものになっているという。

秘書だったおりには、とある自治体公務員からそこのJ治労が労働時間や職場環境の改善に全く取り組まない旨の愚痴を聞かされたことがあるが、労働組合が組合として機能せず、本来業務外の運動にばかり注力している現状は、政府や政党ばかりでなく、社会のすみずみにまで腐敗が及んでいることを示している。
既得権を守ることしか考えていない、労働人口の10%程度のエリート労働者しか組織していないナショナルセンターなど、害悪でしか無い。
posted by ケン at 12:00| Comment(6) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月19日

自由貿易体制を盲信する日本政府

【自由貿易体制への挑戦=米保護主義を懸念―通商白書】
 世耕弘成経済産業相は10日の閣議に、2018年版の通商白書を報告した。「グローバル経済は、世界貿易機関(WTO)に基づく自由貿易体制に対する挑戦など(を受け)、大きな転換点にある」として、名指しを避けつつも保護主義的なトランプ米政権の貿易政策に懸念を表明。中国とのハイテク摩擦にも触れ、「自由で公正な高いレベルの通商ルールの構築の重要性が高まっている」と訴えた。白書は、安全保障上の脅威を理由に米国が発動した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置について「日本製品は米国の安全保障に悪影響を与えず、米国の産業や雇用に貢献している」と反論、全面的な適用除外を求めていると説明した。 
(7月10日、時事通信)

政府の説明では、「安倍総理がトランプ大統領に対して懇切丁寧に自由貿易の重要性を説いてご理解いただく」とのことだったが、アメリカはますます保護貿易に突き進んでいる。そもそもトランプ大統領は、オバマ・クリントンのグローバリズム・覇権派に対するアンチテーゼを掲げて当選した経緯があるだけに、自由貿易支持に転じた場合、自らの正統性を失うことになる。国内の反グローバリズム勢力から支持を得ているからこそ、トランプ氏は大統領の権威を保持できるのであって、彼らからの支持を失えば、レームダックと化すだろう。事実、トランプ氏の保護貿易政策は国内から一定の支持を得ているが、ウォールストリートの支配下にあるアメリカの報道陣は批判的な視点からの記事しか書かないため、なかなか実像が伝わらない。

これまでリベラル・デモクラシーによる国際秩序が保たれていたのは、そのイデオロギーが優越していたからでは無く、西側陣営の軍事力が世界を圧倒していたからであり、その中心にいたのがアメリカだった。自由貿易体制を護持するためには、アメリカ(米帝)による覇権が不可欠なのだが、アメリカはその覇権が維持できなくなりつつある。覇権を維持するためには、他を圧倒する経済力と軍事力が必要だが、米中の経済力は拮抗しつつある一方、アメリカはその軍事力が維持できなくなっている。

同時に、自由貿易は、その交渉力の差から経済力の大きい国あるいは人が一方的に有利になるシステムであるため、貧困と経済格差を拡大させる効果があり、その矛盾は大国ほど深刻になる。
例えば、日本でも農業や漁業が産業として成立しがたいのは、価格の交渉単位が農漁業者が個人あるいは組合であるのに対して、食糧メジャーは国内に数社しかない大企業であり、自由交渉では圧倒的な不平等が生じているためだ。これは、世界レベルでも言えることで、西側自由貿易体制は、圧倒的な資金力を持ち、アメリカの軍事力を担保にしている資源メジャーが、旧植民地・第三世界から資源や労働力を不当に安く買い叩き、高い付加価値を付けて売りつけることで膨大な利潤を得ることによって成立していた。だが、中間国が工業化を遂げ、経済発展したことで、労働賃金や資源価格が相対的に上昇していった。同時に資金供給が常に過剰となり、利息が低下を続け、いまやマイナス金利すら当たり前となっている。そのため、先進国では利潤を上げ続けるためには、国内で労働力や資本を収奪するほかなくなっている。

アメリカの場合、資源価格の高騰を受けて、労働コストを削減するために工場を海外に移転させたことによって国内の疲弊が始まり、利潤低下を受けて国民を借金漬けにする政策が採られ、金融バブルと低所得層に対する住宅販売を組み合わせたサブプライム・ローン問題を引き起こした。結果、アメリカのある経済サイトの調査では市民8人のうち3人が破産寸前まで借金しているという。
資本主義と自由貿易は、必ず内部矛盾を抱え、その矛盾は解決する術が無く肥大化、崩壊して行くというマルクスの予言は150年以上の時を経て的中しつつある。

2017年の米中貿易におけるアメリカ側の赤字額は7962億ドル(約86兆8千億円)に上り、過去最高を更新している。「もはや自由貿易はアメリカにとって不利なシステムである」というのが、トランプ氏と支持者の認識であり、アメリカの多数派を占めている。だが、日中貿易もまた、2012年から16年まで5年連続で赤字が続いており、2017年には均衡を取り戻したものの、先行きは暗いだろう。少なくとも、日本にとって「日中間の自由貿易は絶対的に日本に有利である」とは言えなくなりつつある。
技術的優位を失いつつあると同時に、資源調達でも割高になっている日本は、輸出上の優位を失いつつある。その日本がこの期に及んで自由貿易を主張し続ければ、いざ不利になった時に看板を下ろしづらくなるだろう。
同時に、自由貿易と自由市場が国内の貧困や経済格差を助長している。政府呼称「働き方改革」は、労働規制の大幅緩和=自由化を意味するが、これも貧困と格差を助長するものでしかない。これが放置された場合、マルクスの予言が、日本でも実現する日は遠くなさそうだ。

自由が人を幸福にする時代は終わったのである。
posted by ケン at 14:35| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月19日

人手不足で外国人は必要か

【「骨太」素案 外国人労働者拡大へ新資格 最長10年、在留可能に】
 政府は経済財政運営の指針「骨太方針」の素案に、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格の創設を盛り込んだ。新資格で平成37(2025)年ごろまでに50万人超が必要と想定する。人手不足の深刻化を受け、実質的に単純労働分野での就労を認める方針転換となるが、現行制度でも受け入れ後の生活保護受給者増や悪質な紹介業者の存在など解決すべき課題は山積しており、一筋縄ではいきそうにない。
 政府が検討する受け入れ策によると、農業、建設、宿泊、介護、造船の5分野を対象に、業界ごとに実施する技能と日本語の試験に合格すれば最長5年の新たな在留資格を取得できる。外国人技能実習制度(最長5年)の修了者は試験を免除。技能実習制度から移行した場合は計10年間の滞在が可能となる。
 骨太方針では、新制度を「移民政策とは異なる」と強調。「家族の帯同は基本的に認めない」とも明記したが、新資格で在留中に高度人材と認められれば専門的・技術的分野の資格へ移行でき、本人が希望する限り日本で働き続けられ、家族帯同も可能となる。ただ、日本語能力の不足などから生活保護を受けている外国人は28年度に過去最多を記録。高額な仲介料を徴収する紹介業者も横行している。
 骨太方針では「的確な在留管理・雇用管理を実施する」と掲げたが、なし崩し的な外国人労働者の受け入れ増とならないよう厳格な対応が求められる。
(6月6日、産経新聞)

コンビニと飲食店を見れば一目瞭然だが、需要減退が明白な状態で、安価な労働力を外部から入れて、過剰な供給力を維持しようという試みが、いかなる末路を迎えるかなど、ちょっと想像力を働かせば分かると思うのだが。

確かに現状、どの分野でも人手不足が深刻になってきているが、一方でデフレ傾向が改善されないということは、供給力が需要を上回っている状態が解消されていないことを示している。本来であれば、人手不足が賃金や流通コストなどを上げ、それに伴って物価も上昇、供給を低下させることで需要と供給の均衡が図られるはずだ。実際、パート・アルバイトの賃金は上昇傾向にあるし、物価も上昇傾向にあるものの、コンビニや飲食店などの店舗数については減少傾向にあるものの、大きな変化は認められない。正確には、飲食店数は、2005年の150万軒に対し、2014年で142万軒とやや減。コンビニは2005年の4万軒に対し、2015年で5万3千軒と大幅増。

日本の場合、労働基準法が形骸化しており、超長時間労働や残業代不払いなどのブラック労働が放置されているため、供給を抑制する仕組みが働きにくい。
仮に欧州標準の労働規制がある場合、コンビニや飲食店あるいは様々な分野のブラック企業は成立し得ず、低収益となって廃業あるいは倒産し、余剰労働力が生まれる構造になっているが、日本の場合、不採算の企業でも超長時間労働や残業代の不払いで延命できるため、生産性の低い企業が市場から淘汰されない仕組みになっている。
結果、低収益の企業が労働力も資本も握り続け、成長可能性のある新興企業が労働力の確保に難儀し、成長が抑制される構造に陥っている。これは、まさに1970年代以降のソ連や東欧で見られた現象である。

こうした状況を放置したまま超低賃金の外国人労働者(実質奴隷)だけ導入したのが、外国人技能実習制度だった。その結果、地方の低収益の既存企業が延命したという点では成功したかもしれないが、地場の雇用には何のプラスにも働かず、超低賃金であるために消費にも全く貢献せず、言うなればアナログのオートメーション工場が地方にできただけの話に過ぎなかった。それでも高収益であるならば、自治体に納税することで一定のプラス効果もあったかもしれないが、そもそも外国人奴隷の導入を必要とする企業は、超低賃金の労働力無しでは成立し得ない超低収益構造にあり、納税に期待などできないのが常だった。

今回の政府の新方針は、外国人技能実習制度を全国規模で大々的に拡充しようというものだが、外国人技能実習制度の総括をせぬまま、規模だけ拡大しようというものに過ぎない。これは、誤った認識に基づいて誤った戦略を展開する典型例であり、全国規模で低収益企業の延命を図る上、より大々的に国家規模で人権侵害を行うことになるだろう。
この政府に労働、経済政策を担わせ続けるのは、いかにも不安である。
posted by ケン at 12:19| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月09日

働き過ぎたから賃金カットという地獄、そして資本主義の終焉・続

【福井市5.8%給与削減、労組と合意 5億円捻出】
 今年2月の大雪の影響により福井県福井市の本年度一般会計が約12億円の財源不足に陥る問題で、市は6月6日、職員給与の削減率について市職員労組と合意し、管理職を含む職員約2300人の給与を7月から来年3月まで9カ月間、平均5・8%、総額約5億円削減する方針を明らかにした。
 玉村公男市総務部長が同日、記者団の取材に応じた。組合員の平均削減率は4・5%。市は給与削減に関する条例改正案を、開会中の6月市議会に13日に提出する意向。市議会の各会派は給与削減について「労使合意が前提」としており、条例改正案は成立する見通し。
 財源不足の12億円の内訳は、昨年度の赤字約2億円と、扶助費や人件費など本年度補正見込みの10億円。市は、151事業の見直しで約5億円を捻出。職員給与の削減による約5億円を加えても不足する約2億円については、市税の収納率向上や歳出抑制など、財政運営のやりくりで賄い、解消したい考え。
 市や職員労組によると、給与は職員の等級に応じ2・5〜8%、管理職(副課長級以上)は10%削減。加えて管理職手当10%、特別職報酬20%も9カ月間削減する。
 5月8日に市側の「職員給与一律10%削減」提案で始まった職員労組との交渉は、約1カ月を経て終結。野田哲生委員長は6日会見を開き、4・5%で妥結した理由について「交渉が長引けば財政再建のスタートが遅れることも危惧しており、ある程度納得できる内容で早期に決着を図った」と述べた。
 玉村部長は市税収納率の向上策について「本年度の市税収入を上げ、昨年度までの滞納分の整理が必要になる」と説明。歳出についても厳格な予算執行で抑制したいとした。
 2016年度の市税収納率は、その年の課税分が98・7%、前年度までの滞納分を含めると93・9%で、11年度から毎年向上している。本年度一般会計予算の市税収入は446億2700万円を見込んでいる。収納率を0・5%上げると、約2億円市税収入が増える計算になる。玉村部長は「現年課税分(その年の課税分)を納めてもらうことが大事。やれることはしっかりとやっていきたい」とした。
 市議会も議員報酬削減案の6月市議会上程を検討しており、さらに財源を確保できる可能性がある。
(6月7日、福井新聞)

「働き過ぎたから賃金カットという地獄、そして資本主義の終焉」の続き。

「除雪費用が膨らんだので職員給与を減らす」という暴挙に出た福井市。予算編成をした首長含む市幹部や、予算審議をした市議会の責任は問わないまま、右翼を動員して市職労に圧力をかけるという、戦前や1950年代の日本を彷彿とさせる事態に陥っていた。
が、組合側がSNSやマスコミに呼びかけたことで、全国的に知られるところとなり、右翼は退去、市当局が組合との交渉に応じたという。
交渉の結果、当初要求の一律10%削減は撤回され、管理職は10%、職員平均で5.8%、組合員平均では4.5%の削減で合意が成立。組合側は勝てないまでも、負けない戦いを演じたと言える。原理主義的な組合だと、「一かゼロか」みたいな話になって、交渉そのものを破綻させてしまうケースが多い。また、下手に目標を高く掲げて交渉を伸ばしてしまった場合、「組合が抵抗して市予算が通らない(行政サービスが低下する)」などという宣伝が当局・資本側からなされ、組合が支持を失ってしまう恐れもある。
「組合員のダメージを最小限度に抑える」というダメージ・コントロールもまた、組織にとって非常に重要な要素であり、福井市職労・自治労県本部の優れた判断力が垣間見える。

ただ一方で、現地からの報告では、「組織内議員は殆ど役に立たなかった」ともいう。
狛江市で市長によるセクハラ事件が発覚した際には、NK党の議員が連日駅頭に立ってビラを配り、声を上げていたのに対し、民進・生活者ネット・社民などの議員(全員女性)は市長が辞任表明する直前まで見かけなかった。
「人間の進化は危機に際してこそ発揮される」と言う。戦後和解体制が機能していた頃は、組織内議員などは「一丁上がり」の名誉職みたいなもので、「数を満たしていれば十分」という側面があったが、労使協調が破綻して、資本の横暴が顕在化してきた今日にあっては、組織内議員は一種の命綱の役割を担うだけに、「出てくれるなら誰でも良い」ではなく、代議員としての実質が問われるところとなる。

以下は繰り返しになるが、福井市の事例は、資本と国家の暴虐がセンセーショナルな形で顕現しているだけであり、遠からぬ将来、日本全国で起こりうるものであることを覚悟しておくべきだろう。

「他の自治体に波及する恐れがある」として総動員を呼びかけた自治労福井県本部の見識は慧眼であり、短期間でギリギリのところで妥結した市職の決断も高く評価したい。率直に敬意を表し、エールを送るものである。
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2018年06月06日

高プロ導入に見る資本主義と民主主義の終焉・下

前回の続き
デモクラシーは、同質性の高い有権者の集合体を前提とした合意形成システムであるが、階級分化と身分固定化が進んだ社会では成立しがたい。ロバート・スキデルスキー師は、「二十世紀の経験は、経済的繁栄はリベラルな民主主義に依存しないが、リベラルな民主主義は、経済的繁栄が欠けている場合、危機に陥る、ということを示している」と述べている。

20世紀を前後して、工業先進国においてデモクラシーを採用する国が増えたのは、資本主義との相性が良かったところが大きい。労働者に政治的権利を付与することによって、資本と労働の合意形成がなされ、階級和解が実現することによって、労働争議が抑えられ、資本と労働が効率化していった。また、効率化と労使合意によって労働者の賃金も継続的に向上、消費が増え、市場そのものが拡大していった。
これに対して、ソ連型社会主義が1960年代後半から70年代にかけて失速して、そのまま浮上できなかったのは、計画経済の中で消費文化を否定したことで市場の発展を阻害、成長を止めてしまったことが大きい。さらに、生産力向上に対して賃金を増やしたものの、家計にある貨幣を吸収する消費財を供給できず、市場に大量の貨幣が滞留、超規模のインフレーションを発生させてしまった。

ソ連が崩壊したのは、フランシス・フクヤマらが言ったような「自由民主主義の優越」に起因するものではなく、単に「市場」を理解できなかったソヴィエトの政治家と官僚が、経済運営に失敗したために起きたものだった。現実に2018年時点で、自由民主主義を否定し、一党独裁を堅持する中国が、アメリカやEUを上回る富を獲得しつつあるが、この現象はフクヤマの論理では説明できない。
むしろ、アメリカと西欧の資本主義は、ソ連崩壊によってロシア・東欧・中央アジアをほぼ無償で市場占有できた上、安価な労働力を得ることができたため、延命することができたと考えるべきだろう。ロシアのプーチン路線は、米欧の新帝国主義に対する反動であり、だからこそ米欧が血眼になって敵視しているのだ。この辺の説明は、別途記事にしたいと思う。
例えば、アメリカの政策金利を見た場合、1993年に3%まで下がっていたものが、1997〜98年には5.5%に回復、2000年には6.5%を達成するも、その後ふたたび低下し始め、リーマンショック後の2009年には0.25%となった。これは、資本主義が安価な資源調達先と占有できる市場が必要であることの傍証でもある。

アメリカは2015年末にゼロ金利政策を止め、現在は1.75%となっているが、日本はリーマンショック後に0.1%としたまま、現在まで続いている。これは、日本企業がアメリカ企業以上に低収益構造の改善が進まないことを示している。
日本の場合、1991年に始まったバブル崩壊を経て、公的資金(主に税金)を投入して大手銀行の一部を救済する一方で、解雇や雇用抑制がなされると同時に、派遣労働や業務請負の解禁が進められた。これらは労働コストを下げることで、収益を改善することを目的とした。
この公的資金投入と税収減の穴を埋めるために、1997年には消費増税と特別減税の廃止がなされ、労働報酬の削減と国民負担増が進んだ。

2000年代に入って、小泉政権が成立すると、派遣労働・業務請負の流れが加速、非正規雇用の割合も急上昇していった。1994年に20%だった賃金労働者に占める非正規雇用者の割合は、2002年には30%を超え、今や38%に達している。非正規雇用者の平均賃金は2016年度で年172万円で、正規雇用者の315万円に対して54%でしかない。
労働分配率を見た場合、2004年に70%を割ったものがリーマンショック前に74%にまで改善されたものの、2012年に安倍政権が樹立すると68%以下にまで下がっている。これに対して、企業利益(付加価値から人件費と租税を引いた分)は小泉期に72〜73兆円を超えていたものが、リーマンショックで一時低下、安倍政権の樹立を経て再び70兆円を超えて、今や過去最大の90兆円近くにまでなっている。
また、租税と社会保障負担を示す国民負担率は、1999年に35.5%だったものが、2018年には42.5%にまで上がっている。

これらの数字は、日本政府が低収益の企業を潰して高収益産業にシフトさせるのではなく、賃金を削減して労働者を収奪することによって企業収益を担保する政策を採り続けてきたことを示している。
2000年以降、社会主義政党が国会に1割の議席も得られず、資本に融和的、協力的な民主党と連合が野党第一党あるいは政権与党であったため、全く抑止力にならなかったと考えられる。

こうした傾向は地方に行くと、より露骨な形で現れる。外国人技能実習制度は、現行の労働法制下では採算が成り立たない低収益企業が、生活保護水準の半分以下の超低賃金で、アジア諸国から欺いて連れてきた労働者を軟禁、酷使することで、延命を図るシステムである。これは、労働法制を適用除外にした上、基本的人権を認めないという点で、現地の自治体議会や警察を含む行政が「全員グル」にならないと成り立たない。その意味するところは、地方経済が疲弊しすぎて、外国人奴隷を軟禁して強制労働させることでしか、地場資本が存続できなくなっているということだ。
「都市部のコンビニや介護にも技能研修者を」という声が高まっているのは、もはや都市部でも非正規雇用程度では収奪が間に合わず、最低賃金以下の奴隷労働なしでは都市資本すら成立しなくなりつつあることを示している。
しかし、先に述べたとおり、賃金削減でしか収益が上がらない経済活動は、縮小再生産するばかりであり、現行の資本主義体制の終焉が近づきつつあることを露呈している。

資本家と労働者が一定の合意を得て市場の発展と国民生活の改善を同時に追求するというのが、「戦後和解体制」と呼ばれる自由民主主義の本質だった。ところが、1990年代にこのシステムが瓦解を始め、2000年代に深刻さを増し、2010年代に危機を迎えつつある。
上記のように、資本による労働収奪が強まり、政府が資本側について賃金削減と雇用不安定化に寄与するところとなるが、従来の社会民主主義政党や日本の民主党は、戦後和解体制から脱却できないまま労使合意に拘ったため、資本の横暴に歯止めがかからず、労働者階層の貧困化が加速していった。
特に欧米の場合、リベラリズムの原則によって難民や外国人労働者を多数受け入れ、社会民主主義政党やリベラル政党が強く推進し、肝心の自国有権者の生活水準を下げてしまい、離反を招いていった。
これは、社会民主主義政党が「民主的」「自由的」であるが故に、支持を失うプロセスにあることを示しているが、彼らはその処方箋を持たないまま、苦境に立たされている。

社会民主主義や自由主義の機能不全に対する抗議意思の表明は、欧米ではポピュリズムの形で顕現しているが、日本はロシア型の権威主義を指向する形で現れている。この辺りの機微が分からないと、イタリアで左派寄りの五つ星運動と右寄りの(北部)同盟が連立政権を組む理由が理解できない。
日本の場合、国政選挙の投票率が55%程度で推移、4割以上の有権者が投票しなくなっている中で、小選挙区制の導入によって45〜50%の得票で当選できるため、絶対的票率では25%、つまり四人に一人の有権者の支持だけで国会議員になれる一方、残る有権者の声は国政に反映されない事態になっている。
にもかかわらず、国内には少なく見積もって2千万人以上の貧困層(生活保護水準以下)がおり、その数は上昇し続けている。社会主義政党を含めてこの層を包摂する政党や政治団体がないことは、デモクラシーが機能不全に陥っていることを示している。
高度プロフェッショナル制度は、その背景にある資本側の狙いと歴史的経緯まで理解する必要がある。
posted by ケン at 00:00| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする