2019年04月19日

全港湾スト報道に見るNHKの反動

【港湾労働組合 22年ぶり平日にスト コンテナ積み降ろしできず】
 全国の港で働く労働者の組合が最低賃金の引き上げなどを求めて、14日から48時間のストライキを行っています。全国の主要な港でコンテナの積み降ろしなどの作業ができなくなっていて、港湾でのストライキが平日に一日続くのは22年ぶりだということです。ストライキを行っているのは、全国の港で荷揚げや荷降ろしなどをしている1万6000人の労働者で作る全国港湾労働組合連合会です。
 ことしの春闘で、業界団体の「日本港運協会」と最低賃金の引き上げなどをめぐって続けてきた交渉がまとまらず、14日から48時間のストライキに入りました。全国の主要な港でコンテナの積み降ろしなどの作業ができなくなっていて、組合によりますと、港湾でのストライキが平日に一日続くのは22年ぶりだということです。港湾関係者によりますと、荷主がストライキに備えて事前に在庫を調整するなどしていたため大きな影響は出ていないということですが、今回のストライキが終わる16日の朝以降、港の混雑を懸念する声も出ています。組合側は、今月下旬からの10連休中のストライキの通告も示唆して交渉を続けていて、国土交通省は物流への影響が出ないか情報を収集しています。
 青森県八戸市の八戸港でも荷役作業が止まるなどの影響が出ています。このうち、八戸市に本社を置く「八戸港湾運送」は全従業員の8割にあたるおよそ200人が組合員で、14日から続くストライキのために、大型のクレーンなどを使ったコンテナの積み降ろしなどの作業が止まっています。八戸港湾運送は取材に対し、「取引先にストライキの事情を説明するなどして、影響をできるかぎり最小限に抑えたい」としています。
 この影響で、東北地方で唯一の国際拠点港湾である仙台市の仙台塩釜港の高砂コンテナターミナルでは、コンテナ船4隻が入港できない状態が続いています。このため、港は大型のクレーンは動いておらず、車の行き来もほとんどありません。港湾事務所によりますと、ストライキが終わる16日朝以降は一転して、港周辺の混雑が予想されるということです。
(4月15日、NHK)

この報道は色々な意味で象徴的であり、現NHKの階級反動性を示している。
まず、ストライキの理由は「「日本港運協会」と最低賃金の引き上げなどをめぐって続けてきた交渉がまとまらず」とわずか1行のみしか触れていないのに、その後の「ストによる影響」については延々とニュースの半分以上を使っている。
また、ストライキは14日から48時間であるにもかかわらず、報道がなされたのは最終盤の15日夜だった。
そして、運送会社や港湾事務所のコメントは入っているのに、肝心の労働者側のコメントはゼロである。

これらは、「公正中立」と言って全市民、全国民から強制的に視聴料を徴収しているNHKが、実際には100%資本側の立場から報道していることを示している。
戦後日本は、様々な経緯はあったものの、西欧諸国と同様に戦後和解体制を採った。それは、資本と労働が対等的な関係で強調し、政府が再分配を約束し、議会制民主主義が階級調整をなす政治体制だった。ただし、それは現実には第三世界からの収奪の上に成り立っていたのだが、今はそこは問わない。

仮にこの戦後和解体制を前提とするなら、少なくともNHKは再分配と階級調整の弁としての機能が求められ、実際に2000年頃まではそれが一定程度効力を発揮していた。
だが、小泉改革や第一次安倍政権の頃には戦後和解体制はほぼ瓦解し(象徴的には国鉄と日本社会党の解体)、今日に至っている。NHKも例外では無く、今では階級問題や政府に批判的な番組は皆無になっている。
NHKの不誠実は、戦後和解体制を否定しているにもかかわらず、相も変わらず中身の無い「公正中立」を標榜している点だ。だからこそケン先生はNHKの国営化を主張している。

さて、全港湾のことである。もちろんストライキは全面的に支持する。
NHKに限らず、どの報道機関もロクに報道していないこと自体、もはや現行体制にいかなる未練も感じさせない。
上記の報道は、まず「最低賃金をめぐる交渉」と述べているが、その最低賃金を見てみよう。
港湾では労働組合と業界団体が協定を結んでいます。
港湾産別協定(2007年協定)では、港の種類により2つに区分されています。

最低賃金 日額6、310円(7時間労働)、月額157、600円
〔適用港:東京港、横浜港〈川崎港含)、名古屋港、大阪港、神戸港、関門港の場合 〕
〔適用職種:船内荷役作業、沿岸荷役作業、はしけ乗組員、いかだ運送作業員、
  港湾運送関連作業員(港湾倉庫作業は港湾運送関連作業に該当します)〕
全港湾HPより)

驚くべき低さだが、これを約16万4千円に上げよ、というのが、今回の労働側の要求だった。
しかし、資本側はこれを拒否したどころか、産別最低賃金の設定(交渉)すら拒否するという挙に出た。もっとも、これは2016年頃からのことで、今回のストライキは「もう我慢ならん!」という労働側の判断に基づいていた。
産別交渉が否定された場合、労働者は企業別に組合をつくって事業者と交渉に当たるわけだが、交渉力が弱まるのは避けられず、実際には資本の言いなりになる他ない。資本側の狙いは、労働者の団結を破壊し、その賃金交渉力を無力化して、最低賃金(あるいはそれ以下)まで下げるところにある。

本来ニュース報道はここまで書いてようやく労使間のバランスが取れて、「公正中立」を標榜できるはずだ。
この点を省いてしまえば、「無理な賃上げを要求する労働組合が市民に迷惑を掛けるストライキを勝手にやってる」という構図をプロパガンダすることになるし、実際それをやっているのがNHKなのだ。

象徴的なことに全港湾は1972年から2015年まで日本港運協会と団体交渉を行い、産別賃金を設定してきたが、この44年間こそがまさに戦後和解体制そのものだったのだ。そして、資本側が産別統一交渉や生活保護水準の最低賃金の引き上げを拒否するという事態は、戦後和解体制の全面瓦解を象徴している。

マルクスは、自らの待遇を守るために、資本に同調して外国人労働者などの下層労働者の疎外に荷担する労働者を「哀れなプロレタリア」と呼んだが、現行の資本や政府による暴虐に対してなすすべのない西欧社会民主義政党や日本の連合はまさにこれに相当する。
やはり戦後和解体制こそが例外的な体制であり、世界は再び資本と労働が血で血を洗う闘争を演じる時代に突入していくのかもしれない。

【追記】
全く残念ながら私自身は全港湾本部にお邪魔したことは無いのだが、ある同志によれば、委員長室には巨大な赤旗が掲げられ大きなレーニン像が鎮座まし、周恩来の書なども掛かっており、いささか時代錯誤(懐かしさ)を感じさせるところだという。
全港湾労働者の皆さんには、遠くの地より心より連帯の意を表明するものである。

【追記2】
マルクスを持ち出すまでも無く、労働者が団結して、資本の横暴に対抗し、労働者が唯一提供できる「労働力」を結集して提供拒否するストライキは、労働者にとって唯一の武器である。その武器をカードに交渉するのが労働組合の重要な役割となる。とはいえ、伝家の宝刀は抜いてしまえば「それきり」という側面があり、抜かずに済めばそれに越したことは無い。しかし、今回の一連の争議は「ストライキをやらない労働者は一方的に収奪される」というマルクスの指摘が正しかったことを示している。
1970年代以降、ストライキが減少したのは「戦後和解体制」が機能して、労使協調路線が成立したためだが、ソ連崩壊を経て同体制が解体されつつある中、労使の利害が一致しなくなっているわけだが、「平和」の時代が長かったため、労働組合は自らの役割を忘れ、戦力として機能しなくなっている。そして、全港湾がストライキを打てるのは、産業報国会の後進と言える連合の指導下に無いところが大きいと考えられる。
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2019年03月10日

「貯金ゼロ」が意味するもの

【30、40代「貯金ゼロ」が23% SMBCの金銭感覚調査】
 SMBCコンシューマーファイナンスは6日、30〜40代の金銭感覚に関する調査結果を発表した。「現在の貯蓄額がゼロ」と答えた人が前年比6ポイント増の23.1%になり、平均貯蓄額も同52万円減の195万円に低下。同社は「景気回復が働き盛りの賃金上昇につながっていない」と分析している。
 貯蓄額の平均は30代が前年比4万円減の194万円なのに対し、40代は同120万円減の196万円だった。消費について9割近くが「無理せず買える範囲で買う」と回答し、堅実な消費意識が浮かんだ。「年収がいくらだったら結婚、出産しようと思えるか」との問いでは、結婚が500万円以上、出産は600万円以上と答える人が多かった。
 スーパーなどで「現金よりキャッシュレス決済が多い」と答えた割合は、30代が52.8%、40代が53.4%で、昨年調査した20代の44.1%をいずれも上回った。同社は、子育てなどで出費がかさむ中年世代ほどクレジットカードやQRコード決済のポイント還元を重視しているためとみている。一方、「メルカリ」のようなフリマアプリに直近1年間に出品した人は16.5%。年代別では20代が30.4%と高く、年齢を重ねるごとに低かった。
(3月6日、毎日新聞)

政府統計が信用できなくなった今、こうした調査を重視するほか無いが、なかなか良いところを突いていそうだ。
貯蓄ゼロ世帯は金融庁の調査(2017)でも、二人以上世帯で約3割、単身世帯では4割を超える。単身世帯の30代で40%、40代で45%とあるから、実感としてもそんな感じだ。

貯蓄がある人の場合は、今度は住宅ローンを始めとする負債を持つ場合が大半で、これらは貯蓄、負債ともに増加傾向にあるものの、特に若い層を中心に負債の方が増え方が大きくなる傾向がある。
例えば、40歳未満を見た場合、2008年の平均貯蓄額591万円に対し、2017年は601万円。しかし、負債平均額は、2008年が1389万円に対して、2017年は1893万円に達している。
これは、本来住宅を買えないはずの中低所得層が無理して住宅を購入していることに起因している可能性がある。あるいは、養育費や教育費での借り入れが増えている可能性もある。
いずれにせよ、こうした層を中心に、一度大不況が来れば、途端に負債を返せなくなって、アメリカのように破産者が続出する可能性が高い。
また、すでに大学生の半数以上が負債を抱えて通学しており、つまりこれらの大卒者は赤字状態から社会人を始めている。

興味深いのは、「結婚が500万円以上、出産は600万円以上」とあるが、実は年収500万円以上は全体の30%、600万円以上は20%しかおらず、実質的に江戸時代と同様、「出世した者しか結婚できない」社会になっていることを示している。この分では、少子化はさらに悪化するだろう。
これだけ見ても、日本の未来はどこまでも暗いことが分かる。
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2019年02月22日

ポイント還元に見る日本経済の末路

【消費税増税対策のポイント還元、想定以上の“費用膨張”の恐れ】
 今年10月の消費税増税の経済対策の柱となるキャッシュレス決済時のポイント還元制度について、世耕弘成経済産業相は5日の衆院予算委員会で、「予定より早く予算が尽きる見込みになった時は、財政当局とよく相談して対応を検討する」と述べた。利用が想定を上回り予算が不足した場合、追加で予算要求する可能性を示唆した形で、費用が膨張する恐れがある。国民民主党の階猛氏への答弁。
 ポイント還元制度は、中小の小売りや飲食店などで現金を使わない手段で決済した場合、決済額の最大5%を国が消費者にポイントで還元する仕組み。政府は2019年度予算案に必要経費として2798億円を計上し、中小店舗への決済端末の導入費用などを除く約1600億円を消費者への還元に充てる。実施期間は来年10月から9カ月間で、20年度も1000億円強の予算を計上する方針だ。
 麻生太郎財務相は予算計上額について「足りなくなることを想定しているわけでは全くない」との考えを示している。ただ、制度は個人だけでなく法人も利用できるため、「企業が備品を大量購入すれば(必要な予算額が)数兆円規模に膨らむ可能性がある」(エコノミスト)との懸念が出ている。
 制度設計を担当する経産省は「キャッシュレス決済比率が大きく伸びるとは想定していない」として予算不足に陥る可能性は低いとみるが、個人・法人ともどこまで利用が広がるかは読み切れない状況だ。
 ソフトバンク系のQRコード決済会社ペイペイが昨年12月に実施した100億円還元キャンペーンは利用者が殺到し、高額商品の購入も相次いだため、4カ月分と見込んでいた還元費用が10日で尽きた。階氏はこの例を引き合いに「(利用が)上振れしたら、途中でやめるのか」と追及した。
 政府内には「企業のコスト削減に使われる還元費用を予算に追加計上するのは国民の理解を得られない」(財務省幹部)と否定的な見方もあるが、「『お金がなくなったから終了』では済まされない」(経済官庁幹部)との声も出ている。
(2月5日、毎日新聞)

ぶっ壊れ感がハンパなくなってきている。

「増税2%に対してポイント還元5%」
「ポイント還元対策予算は2800億円」
「5兆円の増収見込みに対して3兆円の経済対策」
「KM党対策の商品券で1700億円」
「みずほ総合研究所の試算によると、ポイント還元による経済効果は1300億円」


1945年のドイツとまでは言わないが、1944年の東部戦線くらいには崩壊しつつあるように感じられる。
まぁ最近ではクルスク戦についても、「ソ連側の戦略予備を先に潰して1944年まで攻勢を遅らせることに成功した」という評価があるから、
それくらいの効果はあるのかもしれないが(笑)

要は需要の先食いを常に先制しているだけの話で、先制すればするほど効果が減少する仕組みになっている。
少子高齢化と貧困化で需要そのものが低下の一途を辿っているのに、さらに需要を先食いするのだから、当然の話だ。
ところが、肝心の少子化や貧困化に対しては無為無策で、新規公共事業を増やして、将来負担(維持費)を大きくするだけのインフラ整備に力を入れている。これは自民党が小さくなり続けている支持基盤を繋ぎ止めるための政治的目的しかなく、ペレストロイカ末期に西側からの借款を軍需産業と重工業に投じてしまったゴルバチョフ政権の末路を暗示している。

新規住宅が増える一方で、空き家も急増しているが、これは本来住宅を購入できるだけの資力を持たない貧困層に借金させて買わせているだけの話で、空き家のリスクは自治体が負担し、治安や災害のリスクは住民が背負う形になっている。
この点からもどこかで破断界を迎えるのだろうが、後は「誰がババを引くか」という話で、「今のうちに美味しいところはいただいておこう」というのが、自民党議員と官僚の考えなのだろう。

「分配構造の再構築」「労働環境の改善」「公共住宅の整備」といった社会主義的要求をなす政党の不在が今日の問題の元凶にあると考えられるが、それを指摘するものもごくわずかしかおらず、ほぼほぼ自業自得の形になっている。
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2019年01月10日

公立校の精神疾患休職者が5千人超に

【17年度、休職の教員は5千人超】
 2017年度に公立小中高校などで精神疾患を理由に休職した教員は16年度から186人増の5077人で、4年ぶりに増加したことが25日、文部科学省の人事行政状況調査で分かった。02年度は2687人だったが、その後増え続け、07年度に4995人になって以降、5千人前後の高い水準で推移している。
 公立学校の全教員(約92万人)に占める割合は16年度比0.02ポイント増の0.55%。文科省の担当者は「教員の多忙と長時間労働が背景にあるのではないか」と話している。病気休職者7796人の65.1%が精神疾患で、このうち今年4月1日時点で復職していたのは1994人。
(12月25日、共同通信)

報道では単純に休職者数のみを挙げて「横ばい」としているが、公立校の教員数は10年前の約99万人に対して92万人まで減少しているのだから、母数の減少を考慮する必要がある。また、あくまでも休職者数であり、退職者は含まれないので、どこまで実態を表しているか疑問は残る。

文科省の「担当者」が言う「教員の多忙と長時間労働」は否定しないが、本業以外の業務の煩雑さやクレーム対応に触れていないのは、やはりヤクニンが教職労働の実態を知らないことの現れだろう。そもそも超長時間労働を強いられている教員が、給食費の取り立てから保護者のクレーム対応まで担っているのだから、精神を病まない方がおかしいくらいだ。
容易に認定しない厳格な(当局に都合の良い)基準だからこそ、この人数で済んでいるのであり、欧州基準で診断したら、教職の何分の1かは精神疾患(恐れを含む)の診断がくだされるのではないか。

ケン先生が教職の労働環境に触れたのは、ブログを始めて間もない2007年のことであり、国会に勤務する間もずっと指摘し続けたが、何一つとして改善されていない。それどころか、むしろ悪化していると言える。にもかかわらず、教員組合から「部活動を廃止してくれ」とか「労働時間上限あるいはインターバル規制を導入してくれ」などといった要望を受けたことは一度もなく、労働組合が全く機能していないことも事態を悪化させている。

・教員の質が低下するわけ

先ごろ、私立高校の教員がストライキを行い、「早朝の校長挨拶をボイコットした」旨の報道を見たが、フランスなどでは普通に教員が授業を丸ごとボイコットしたり、学校を封鎖したりしている。
マルクスが強調するように、労働者には労働力しか提供できるものが無いのだから、労働力の提供を止めることでしか資本に打撃を与えることはできない。つまり、教員の場合、本質的には授業をボイコットすることでしか、自らの労働力の価値を訴えることはできないはずなのだ。実際、教員組合本部にはストライキ用に何百億円という資金が溜め込まれているという話を聞いたことがあるが、死蔵になってしまっている。

やはり日本人はマルクスを読み直すところからやり直すべきなのだ。
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2018年12月26日

革命は医療現場から?

【医師の働き方改革 休息義務9時間に委員から「現場回らない」】
 医師の働き方改革を巡り、厚生労働省は17日の有識者検討会で、仕事を終えてから次に働き始めるまで一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」を「9時間」、宿直明けは「18時間」とする案を示した。連続勤務時間は「28時間」とした。委員から「これでは現場が回らない」などと批判が相次いだため、19日の会合で再度議論する。
 医師の残業時間の上限について、厚労省は、一般的な医療機関の医師▽地域医療に従事する医師▽専門性や技能などを高めたい若手医師――の3パターンに分類。地域医療や、技能を高めたい若手医師は過酷な医療現場で長時間労働が想定されることから、インターバルや連続勤務時間の制限を義務付ける。
 医師の休息時間について、厚労省は8時間を軸に検討していたが、医師の健康を維持するには9時間が必要と判断。宿直明けは2日分に当たる18時間、宿直も含めた連続勤務時間は28時間とした。
 だが、この日の検討会で、複数の委員から「かなり厳しい設定だ。地域医療は守られるのか」「義務化したら現場はとても回らない」と批判が相次いだ。厚労省は、残業時間の上限も含めて、年内にはまとめる方針。
(12月17日、毎日新聞)

改革とは言えない改革案。改革そのものが不可能になっている末期症状を象徴している。
別の記事では、「一般労働者の上限「年720時間(休日を除く)」を超える見通しで、地域医療の中心となる病院の医師と、高い技能を身につけようとする若手医師はより高い上限として長時間の残業を容認する」旨も言っており、どう見ても形式的に「医師の労働環境を改善した」ポーズだけとって、実質的な成果を得ることは前提としていないとしか思えない。

この手の残業規制やインターバルを含む労働時間規制は、強力な労働組合が監督することによってのみ実現可能であり、医師の裁量や自由意志に任せていたら、「現場が回らない」の一言ですべて反故にされてしまうことは間違いない。断言してよいだろう。
この点は、旧同盟系の民間労組が優れており、特に工場などでは終業後、必ず組合員が現場を見て回り、残業の適法性や必要書類を検査、違法残業の摘発を行うという。逆に公務員系の労組では、殆どこうした取り組みが行われておらず、自治体や教職では超長時間労働が放置されている。
未組織率が非常に高く、労働者としての意識が低い医師も後者の部類に入るため、仮に制度で一定の労働時間規制を行ったところで、それをチェックする仕組みがないため、まず守られることはない。

そもそも「医療現場が回らない」などというのは経営・資本側の論理であって、個々の労働者にとっては本来「どうでもいい」ことであるはずだが、「人の生命がかかっているんだぞ!」という宗教的倫理や精神論による弾圧・人権抑圧がまかり通っている。これは「他人の生命の前では、お前の生命の価値など無い」と言うに等しく、しかも過労によって死んだり、精神を病んだりするのは病院長ではなく、現場の医師であるという点、「お国のために死ね」という旧軍の論理や腐敗と酷似している。

上記の改革案もまたこの手の資本の論理によって作られている。例えば、厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の委員を見た場合、病院長、大学教授、県知事など資本家あるいは統治者しかおらず、医師や看護師など労働側代表あるいは若手代表は一人もいない。これでは、フランス革命時の三部会よりも酷い。繰り返すが、過労死するのは医師であって、病院長や大学教授ではない。

改革の発想そのものが逆転している。医師などの労働環境が整って、「人間らしい生活」が担保されれば、潜在的な医師(免許を持っていても医療活動から離れた)の現場復帰が期待できるし、個々の医師の生産効率も上がるだろう。それでも足りない場合は、医学部の定員を増やす話になる。
しかるに実態は、「現場の兵力が足りない」「増援はない」「既存の戦力で現場を死守せよ」と言っているばかりで、現場の戦力をすり減らす一方にある。つまり、指揮官が無能である証拠だ。これでは破断界を迎えるのも遠くないだろうし、現に地方では次々と崩壊している。

ジャコバン派のマラー、中華革命の孫文、キューバ革命のゲバラなど、古来革命は医師と法律家によって担われてきた。日本でも医師の中から革命家が誕生する日も遠くないかもしれない。
posted by ケン at 12:00| Comment(8) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月19日

学習塾という労働地獄

【学習塾「80日間、休みゼロ」 元講師「生徒のため」で疲弊、無念の退職】
 入試に向けてラストスパートを迎え、学習塾が熱気を帯びるこの時期。関東の大手塾講師2人が、過酷な労働環境により労災認定されたことが相次いで報じられた。11月27日、神奈川県の大手学習塾「ステップ」で教室長も務めていた塾講師(40代)は、40連勤の末に適応障害を発症し、労災認定されていた。また、12月7日には、進学塾「栄光」で働いていた男性(当時49)が長時間労働が原因で亡くなったとして、労災認定されていたことも明らかになった。
 学習塾業界でなにが起きているのか。都市部を中心に展開する大手学習塾で働いていた元塾講師の小野さん(仮名・32歳)が、弁護士ドットコムの取材に応じた。小野さんも長時間労働でうつ病を発症し、今年7月、横須賀労基署に労災認定された。塾講師のおかれた過酷な労働環境について、話を聞いた。 小野さんは2010年に正社員として採用され、神奈川県内の教室で働いていた。勤務時間は13時から22時となっていたが、実際は10時前後に出社することを推奨され、帰宅は24時をまわることが日常化していたという。小野さんによると、営業や講義の準備などの仕事におわれ、徹夜や1時間睡眠の日がほとんどで、3時間寝られればよい方だった。
 教室の生徒数は多いときで、約150人。この人数を正社員2人、学生アルバイト5、6人、パート事務1人でまわしていた。しかも、正社員はどちらかが休んでも補充はない。たとえ1人が入院しても、異動になったとしても、長いこと補充はこなかった。小野さんは2015年の9月から12月までの80日間、1人で教室を回さざるを得なくなり、休みなく勤務していたという。
(12月15日、弁護士ドットコムより抜粋)

私の周りにも塾業界で働いていた人がいるので、話には聞いていたが、その凄まじさは言語を絶する。
結局のところ、少子化による供給過剰が競争激化を生み、デフレ競争となって値引き合戦や、少人数化・個別化が進み、利潤を上げるためにアルバイト化と正社員の超長時間残業が加速された、ということだろう。
まさに日本社会の縮図と言える。

本来であれば、学校が正常に機能していれば、ごく上位一部の受験者のみが通うだけで良いはずだ。しかし、学校は学校でイベントとクラブ活動の過多、教員の超多忙、教員の水準低下、意味不明な「総合学習」や「英会話」などの要因で機能を低下させる一途にあり、普通の子どもにまで塾需要が高まってしまっている。

超長時間労働が許容され、摘発されない労働法制を含め、これらの複合的な要因がますます日本を蝕んでいる。
人間的に生きたければ、日本には住めない時代を象徴している。
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2018年12月12日

戦争屋が外国人労働者を組織する悩ましさについて

【外国人3千人が加入の労組結成 日高屋、大半が非正社員】
 中華料理店「日高屋」を首都圏で約400店展開する「ハイデイ日高」(本社・さいたま市)で、外国人従業員が約3千人加入する企業内労働組合が結成されたことが分かった。組合員の約3分の1を占めるといい、これだけ多くの外国人が入る労組は極めて異例だ。政府が外国人労働者の受け入れ拡大を進める中、外国人の待遇改善をめざす新たな動きとして注目を集めそうだ。
 同社や労組関係者によると、名称は「ハイデイ日高労働組合」。今年5月に繊維・流通・食品業界などを束ねる産業別労働組合「UAゼンセン」に承認され、労組の中央組織・連合の傘下に入った。店舗網の拡大による従業員数の増加を受け、社内で労組の結成が長く検討されていた。関係者は「今年ようやく話がまとまった」という。
 組合員数は約9千人。パートやアルバイトなどの非正社員が8千人超を占め、このうち約3千人がベトナムや中国、ネパール、ミャンマーなどから来ている従業員だ。週28時間以内なら働くことができる日本語学校や専門学校で学ぶ留学生らが多いという。
(11月21日、朝日新聞より抜粋)

労働組合とはかくべきである。労組は、未組織の労働者を加入させ、同時に未組織の企業や分野に組織を広げていかなければ、あっという間に既得権益団体に堕してしまい、資本との一体化を余儀なくされるところとなるからだ。その意味で、ゼンセンは現代の日本にあって、労働組合として真っ当に機能している数少ない存在ではあるものの、同時にゼンセンならではの問題も抱えている。

ゼンセンは元々「全繊維」という繊維産業を基盤とする産別労組であり、日本の近代化を当初から共に歩んできた、最も歴史のある組合を起源としている。
しかし、それだけに帝国主義の恩恵の享受者であると同時に、日本の軍産複合体の一部をなしてきた。戦前の日本において、繊維産業は最大の輸出部門であったためだ。また、軍服や日用品、テントなどを始め、軍需物資に占める繊維の割合は非常に高く、日清戦争以降、50年間に渡る軍拡時代にあって、日本の繊維産業は軍事と一体化してきた歴史がある。
一度は敗戦によって危機的状況に陥ったものの、復活を果たした原因が朝鮮戦争特需(次いでベトナム戦争)であったことは、ゼンセンにとって戦争が「最も景気の良い公共事業」であるという成功例になっている。

それは現在にまで継承されていて、私が議員秘書時代に話を交わした某幹部も「自衛隊の海外派遣や新安保法制、今後の軍拡で我々はしばらく安泰(中略)我々は本来安倍政権をこそ支持すべきであり、民進党をなどを支援する理由はないはず(だから感謝しろ)」旨のことを言っていた。彼の意見が組織を代表するわけではないが、その意見は彼らの歴史的背景を考えれば、十二分に妥当なものなのだ。

日教組のように平和や反原発運動には積極的なのに肝心の労働者の権利を守る運動はほぼ無力である総評系と、戦争賛成・核推進ながら労働者の権利を守ることに積極的な同盟系、本来的には後者が「正しい姿」であるとは分かっているものの、すんなりとは肯定できないところが苦しいところである。
posted by ケン at 12:00| Comment(5) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする