2017年08月28日

水道代は高騰の一途

【水道代高騰の理由を検証、今秋35%値上げする自治体も!】
 いつのまにか高くなっている水道料金の請求書を見て、驚いた人も多いのでは。水道料金推移表(総務省統計局家計調査より)を見ると、'09年から上がり始めた水道料金。しかし、水道事業など地方公企業に詳しい作新学院大学名誉教授の太田正さんの話によると、今後ますます値上がりが加速する可能性があるという。
 「最大の原因は、水道管や下水道管の寿命が近いことです。これらの耐用年数は40年といわれています。高度成長期に急ピッチで設置が進んだ水道管の老朽化がピークを迎え、どこも綱渡り状態。それに加えて、工事や施工をする技術者も減ってきています。そのため、水道管が破裂して道路から水柱がバーッと上がったり、そこらじゅうから水が漏れるようなトラブルが急増しているんです。値上げがないのは“先送り”しているだけ。一気に跳ね上がるかもしれません」(太田さん)
日本政策投資銀行が今年4月に発表した「水道事業の将来予測と経営改革」によると、これまで同様に水道を使い続けるには、以降30年間で6割の水道料金の引き上げが避けられないと試算されている。
 水道料金は現在1立方メートルあたり平均172円。遅くとも'21年から毎年1.7〜2.1%ずつ値上げしていく必要があるという。一人暮らしの場合'16年は2145円だったのが、'46年には3432円、4人家族なら現状6044円から9670円まで高騰する計算に。
 ただし、より状況が悪化して、さらなる値上げが必要になることも。未曽有の値上げが予想される今後。知恵を尽くして節水に励まなければ、家計圧迫は免れないようだ。老朽化でコスト負担が増加する状況下で、さらに深刻化しているのが水道料金の地域格差だという。
「明治以降、水道事業は『市町村公営原則』が貫かれ、自治体ごとに運営される“独自採算性”をとっています。そのため、それぞれの地域の事情がダイレクトに影響するんです。過疎化地域は人口が少なく経営が非効率になるため、都会に比べて料金が高くなります。また、地理的に水源が乏しかったり、水源からの距離が遠かったりすると水道建設費がかさみますし、水質が悪ければ高度な浄水処理施設が必要です。さまざまな原因が複合的に重なって格差が生まれています」(太田さん)
 現行の料金を見てみると、月額平均が最も安いのは山梨県富士河口湖町の835円。その理由は、富士山の湧水を利用しているため水質がよく、飲料水にするコストが安くすむから。さらに標高が高い位置に貯水池があるため、配水の設備にも費用がかからないということもある。
一方で、最も高いのは北海道夕張市で6841円。その差は8.2倍! 年間換算での差額はなんと7万2072円にもなる。追い打ちをかけるのが人口減少による負担増。水道を提供するのにかかる総コストは、人口が少なくなればなるほど1人あたりの負担が重くなる。太田さんは「今後は10倍、20倍と差が広がっていくかもしれない」と懸念する。
(8月9日、女性自身)

週刊誌ながらなかなか核心を突いている。
古いデータだが、2003年時点における日本の社会資本ストックは約700兆円(道路234兆円、治水70兆円、海岸6兆円、下水道46兆円、港湾4兆円、空港43兆円、公共賃貸住宅29兆円等)に及び、今日では当時よりも増加、東京五輪の開催に向けてさらに肥大化しつつある。これは維持コストの上昇と、人口減による一人あたりの負担増加を示している。結果、老朽化したインフラの更新が進まず、事故が多くなっている。
今回の博多を始め、1990年の御徒町、2013年の麻布十番の事故のように、大きな陥没は報道されるが、その根底にあるのは深刻なインフラの老朽化。麻布十番の崩落事故では、川沿いの道路が30メートル以上崩落した。例えば、東京都区部の下水道の総延長は16,000qで、約1,500qが法定耐用年数の50年を超えている。また、今後20年間で、高度成長期以降に造られたもの約6,500qが新たに増加し、今まで以上のペースで老朽化が進んでくるという状況にある。東京五輪の影響もあり、下水の更新が遅れていることも、状況を厳しくしている。そして、年間700件以上の陥没事故が起きているが、今後はさらに増加すると見られる。なお、日本全体だと、道路陥没事故は年間4千件あまりで、東京への集中が際立っている。
(陥没事故が示すもの、2016.11.19)

自民党や政府の一部(大阪市など)ではコスト削減を理由に水道の民営化を検討しているが、電力民営化で起きた海外の大停電事故やフランスなどの水道民営化事例を見れば分かるとおり、ユニバーサル・サービスとして支障が無いか大いに疑問である。

例えば、水道事業を民営化した米アトランタ市の場合、過剰なコストカットによって技術者が不足して修繕・補修が追いつかなくなり、配水管の破損や路上への水漏れ、汚水噴出などが相次いだ上、必要な技術者を確保できず、いつまで経っても直らないという事態が生じた。そのため、2003年に水道事業を再市営化するところとなっている。
フランスではパリの場合、民営化して14年で水道料金が2倍になった上、利権汚職が続発、2010年に再公営化している。「民営化すれば万事OK」というのは机上の空論に過ぎない。

また、少子化と人口偏在の加速によって、地方ほど水道民営化のメリットが失われており、むしろ全国均一のユニバーサル・サービスの価値が高まっていると考えるべきで、この点我々社会主義者はさらに強調してゆく必要がある。

人口増や経済成長を前提としたインフラ整備が国民生活を圧迫しているのは間違いなく、五輪のような権力者の遊戯ではなく、庶民の生活に不可欠なインフラの整備に限りある資源を全力投入しなければならない。
posted by ケン at 12:34| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月27日

日本の鵜飼いと中国の鵜飼い

「働き方改革」を象徴するものとして鵜飼い文化が挙げられる。現代日本では、鵜を用いた漁法は完全に伝統芸と化し、いまや観光者向けのショーとなっているが、中国では現役の漁法で、むしろ「効率が良い」と評価されているらしい。こう言うと、「日本と中国では市場環境が全く違う」という脊髄反射が返ってきそうだが、まずは何が違うのか見てみよう。

日本の場合、鵜使いが10羽ほどの鵜をヒモで繋いで漁をさせ、採れるだけ採らせて鵜が厭きてきて効率が落ちると、漁を止めて帰還し、鵜たちに餌を与える。採るのはアユに限られている。

中国の場合、鵜はヒモで繋がれず、自由に漁をし、鵜使いのところに戻ってきて魚をはき出すと、鵜使いはその場でその鵜に餌を与える。しかも、捕ってきた魚の種類や大きさによって餌の種類や大きさが異なる場合もあるという。つまり、市場価値の高い魚を捕ってくると、鵜がもらえる餌も良いものになる。結果、士気の高い鵜は、もっと餌をもらおうと、より良い魚を求めて潜ってゆく。ところが、この方法の場合、サボる鵜や、一匹持ってきただけで満足してしまう鵜がいるため、鵜使いは棒で鵜を小突いたり、水面を叩いて脅したり、餌を見せたりして、何とか鵜を働かせようとする。面白いのは、鵜の中には魚を捕っていないのに鵜使いに餌をもらおうとするものがおり、鵜使いが誤って餌を与えると、真面目に仕事している鵜が怒って鵜使いをクチバシで突いて抗議するのだという。

蛇足かもしれないが、解説しておこう。
日本の鵜使いは、鵜を管理さえしていれば、鵜が勝手に魚を捕ってきてくれるが、「それだけ」の話で、漁の成果は漁場の質と鵜の素質と気分に左右されてしまう。鵜に対する扱いはみな平等で、漁の成果に関係なく餌を与えられる。非常に社会主義的だ。そして、日本の鵜匠は鵜たちから好かれ忠誠を得ることが求められる。「鵜との信頼関係」「家族的雰囲気」が重視される。

これに対して、中国の鵜使いには、高度なマネジメント能力が求められる。獲物の種類を見て、鵜に評価を下し、適切な報酬を与えなければならない。また、働かない鵜に対しては罰を与えたり、報酬をちらつかせて何とか働かせるように仕向ける必要がある。どこまでも自由主義的というか資本主義的だ。そして、中国の鵜匠は高いマネジメント能力を発揮しないと務まらない。「公正な評価」と「信賞必罰」が重視される。

確かに見た目的には、中国の鵜漁は「非人道的」かもしれないが、果たしてどちらの鵜の方が「幸せ」なのだろうか。少なくとも、日本の鵜漁がビジネスモデルとして絶滅した一方、中国のそれはいまだ現役であり続けていることは、正当に評価されてしかるべきだろう。
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2017年08月09日

賭博で五輪はOKか

【五輪の都外分350億円、宝くじで 分担未定の運営費 都が検討】
 2020年東京五輪・パラリンピックの費用分担問題で、開催費用1兆3850億円のうち、具体的な分担が未定だった東京都外にある競技会場の運営費350億円について、都が宝くじの収益を充てることを検討していることが27日、都への取材で分かった。
 都によると、検討しているのは、大規模イベントの財源のため都道府県などが発行する「協賛宝くじ」。既に昨年から発行され、収益約126億円が大会経費に充てられることになっているが、都は追加発行により200億円超の収益を得て、都外会場の運営経費350億円に充てることを検討している。
 追加発行には、都道府県と政令市でつくる「全国自治宝くじ事務協議会」に要請し了承を得る必要があり、都は競技会場のある自治体に連名で要望書を提出することを提案。だが、札幌市が「350億円の内訳などが決まっていない中で同意できない」と主張するなど反発も出ている。
 小池百合子都知事は27日、盛岡市で開かれた全国知事会議で「聖火リレーなどについて、宝くじ財源の活用を検討したい。ご理解、ご協力をお願いしたい」と発言。さらに会議後、報道陣に「オールジャパンでわくわく感を共有できる大会にしたい」と語った。
(7月28日、産経新聞)

江戸時代、非課税な上、大名家に大金を貸し付けてボロもうけしていた寺社が、寺院の建て替えを理由に「富くじ」を庶民に売りつけていた故事が思い出された。だが、知人がツィートしていた戦時期の「勝札」の方が実情に近いのかもしれない。

「富くじ」は、全般的に賭博行為を禁じていた幕府が例外的に認可を出していた寺院特権で、この富くじと高利貸しによって江戸期の大寺院は巨万の富を築いていた。故に、幕末の戊辰戦争期、寺院は、戦費調達ということで幕府からも倒幕派からも巨額の供出を求められた。明治初頭の廃仏毀釈は、借りた戦費の返済を反故にするという意図もあった。その後、明治政府は厳格に賭博を禁止したものの、第二次世界大戦の敗戦で復興費用が不足、自治体に「宝くじ」の発行を許可して今日に至っている。

本来、宝くじは戦後復興の財源確保を目的に例外的かつ臨時的に認められたはずだったが、いつの間にか巨大利権となって、公営賭博を容認するツールになってしまっている。
また「勝札」は、大戦末期に戦時国債や強制貯金も限界に達した日本政府が、新たな戦費捻出手段として導入したものの、抽選する前に終戦を迎えている。こちらも、戦費調達を目的とした例外的かつ臨時的なものだった。

そもそも五輪の運営費を賭博の胴元で調達するとか、五輪憲章的に問題ないのか、突っ込みどころ満載すぎる。オリンピックは都市単位で開催するものであって、本来であれば開催都市外への委託自体、五輪憲章に反している。しかも、運営費が足りないから賭博で調達すると言うのであれば、もはや五輪憲章など全く意味をなさなくなってしまう。
この点、解釈改憲を重ねすぎて、日本国憲法の理念とは全くかけ離れてしまった(先祖返りしてしまった)現代日本と良く似ていると言えよう。
posted by ケン at 12:19| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月03日

自殺しない程度に働かせようという話

【自殺対策、長時間労働や若者に重点 大綱を閣議決定】
 政府は25日、新たな自殺総合対策大綱を閣議決定した。かつて年3万人を超えた自殺者は減る傾向にあるが、2016年は2万1897人など依然として年2万人を超す状況に「非常事態はいまだ続いている」と宣言。長時間労働対策や若者対策に重点的に取り組み、人口10万人あたりの死亡者数を示す「自殺死亡率」を10年間で3割以上減らすことを目指す。大綱は自殺対策基本法に基づいて国や自治体などの役割を定めるもので、5年に1度見直している。長時間労働による自殺対策は、広告大手電通の過労自殺問題などを受けて初めて重点施策に加えた。労使が協定を結んでも時間外労働が年720時間を上回らないよう徹底することを掲げたほか、職場のメンタルヘルス対策の推進やパワハラ防止対策も盛り込んだ。全体の自殺者数が減る傾向にある中、未成年の自殺者数が横ばい状態のため若者対策も重視。特に多い夏休み明けに小中高校などの見守り活動を進める。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で自殺をほのめかす情報がないかも確認する。こうした取り組みで自殺死亡率を15年の18・5から26年までに13・0以下にし、フランスの15・1や米国の13・4など主要先進国の水準にするとした。
(7月25日、朝日新聞)

一方で労基法を改正して裁量労働制の適用拡大と労働時間規制の一部撤廃を導入しつつ、他方で「自殺対策」している。相変わらずアクセルとブレーキを同時に踏んでいる。その基本スタンスは、「労働者は生かさず殺さず」である。

いわゆる過労死ラインが「時間外労働年960時間」なのに、時間外労働を「年720時間」に設定するというのは、「勝手に自殺しないギリギリのライン」を探っているものと見て良い。

日本の自殺における最大の問題点は、30代以下の若年層における死因で自殺がトップに来ている点にある。実数で言うと、2013年で20歳代が3千人弱、30代が約3500人とある。数字自体は8千人以上いた1950年代に比べると少ないが、少子化の影響を考えると非常に深刻だ。特に2011年以降は経済的理由による自殺が急増している。これは、本人の雇用や労働環境も影響していようが、団塊世代前後の親が定年退職したり、要介護となったりして、若年層を圧迫していることも考えられる。
なお、2014年の調査によると、自損行為による救急車の出動は6万件を超えている。

従って、最良の自殺対策は、週35時間労働制や残業月上限20時間などを導入しつつ、若年層の賃上げを実現、さらに若年向けの公共住宅を増やして可処分所得を増やすようにすべきだ。しかし、現実には連合が「月100時間残業」に賛成する有様で、逆方向にしか進んでいない。
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2017年07月19日

労働者の期待を裏切る連合の何故

この間、連合は「残業月100時間上限」「労働時間規制の撤廃(残業代ゼロ)」に賛成(彼らの主観的には容認)してきた。連合は元から労働者よりも権力と資本を向いていたが、ここに来てその度合いがさらに強まり、「あっても無くても同じ」レベルになりつつある。むしろ、「労働組合が賛成した」というお墨付きを資本と政府に与え、収奪を公認のものにしてしまっている点で、むしろ害悪の方が大きくなっている。何故このような事態になったのか、私もある程度の仮説は持っていたが、ちょうど同志の1人が連合幹部から本音を聞き出してきてくれたので、解題しながら自分なりに再構築してみた。

結局のところ、連合が抵抗を諦め、政府・資本に服従姿勢を見せるのは、労使間のパワーバランスが瓦解していることに起因している。例えば、連合の組合員は、約650万人で全労働者のわずか12%に過ぎない。そして、国会を見た場合、資本側(自公維ほか)が350議席を上回るのに対し、労働側(民自社)は100に満たず、NK党を足しても120に満たない。彼我の戦力差は3倍にも達している。
ここまで差が開いてしまうと、議会闘争は効果を持たず、あらゆる法案は政権党の思惑通りに通されてしまう。安保法制や共謀罪を見れば分かるとおり、引き延ばしのための日程闘争すら出来なくなっているのが実情だ。また、組合の組織率が低すぎるため、労働闘争も院外闘争もできず、仮にやっても殆ど理解と支持を受けないだろう。

抵抗手段が無いとなれば、あとは自分たちの首を差し出して命乞いをすることで、わずかでも年貢を減免してくれるように、御領主様に懇願するしかない。どのみち年貢を取られるのに、一揆を起こすことも、不服従運動をすることもできないとなれば、代官様に賄賂を送って懇ろになり、自分の分だけでも融通してもらうのが、富農にとっても領主側にとっても「吉」である、というのが現在の連合幹部の判断基準になっている。

具体的には、「残業無制限」になるくらいなら「月100時間でも無いよりはマシ」(週休二日で朝9時から23時まで労働)、「労働時間無制限」になるくらいなら「せめて週休二日を確保してくれ」という話になり、取引に応じて賛成する代わりに、政府側から資本側に賃上げ圧力を掛けてもらえるだけ「有り難し」という状態になっている。

この場合、連合が支援する民進党が、政権側が重視する法案(例えば安保法制や共謀罪、あるいはTPP)に反対すると、連合と政府間の交渉に悪影響を及ぼす恐れがあり、例えば「民進党が抵抗しているから、政府側としても譲歩は難しい」などという反応が返ってくる。特に公務員にとって人事院勧告などは死活問題で、公務員系の組合などは「人事院勧告に影響するから、反政府的な運動は抑えてくれ」という始末になっている。結果、安保法制でも共謀罪でも、労働組合の動員は共産党系組合が中心になってしまっている。
つまり、連合としては「政府法案に反対する野党は百害あって一利無し」であり、連合の政府交渉をサポートしてくれるような「体制内野党」こそが望ましい。言い換えれば、TPPや共謀罪に反対する民進党は連合による交渉の足を引っ張るものでしかなく、これらに文句を言いつつも、譲歩を引き出しつつ、かつ連合の交渉をも有利にしてくれる「野党」が好ましいという話だ。
同時に、連合が「NK党との野党共闘などトンデモナイ」と言うのも、連合と政府・財界との交渉に悪影響をもたらすためで、「政府に懇願すれば月100時間の残業規制くらいは許してもらえるが、NK党と共闘してもボーナスは1円も上がらない」というのが彼らの主張になっている。

実際のところは、かつての社会党や、それなりに勢力を持っていた頃の民主党であれば、自民党に対抗できるだけの勢力と交渉力を持っていたので、わざわざ労働組合が政府に秘密交渉を持ちかける必要も無かったのだが、ここまでパワーバランスが崩壊してしまうと、政府・資本側に従属することで、ごく狭い範囲の大企業正社員の既得権を保護してもらうのが、組織としては精一杯の課題になってしまっている。
従って、連合としては民進党に替わる、より対政府交渉力(懇願力)を有する保守新党をつくり、議席数を回復させつつ、政府に協力的な形でより大きな妥協を引き出せる衛星政党の創設へと舵を切るのが、合理的選択となっている。

一部の特権を保護してもらうためには、権力側は当然ながら見返り=スケープゴートを求めてくる。結果、非正規雇用者や中小企業の労働者を始め、5千万人近い未組織労働者や、一部被るかもしれないが2千万人以上の貧困層からのさらなる収奪を容認することは、連合としては組織防衛上「やむを得ない」措置となっている。
だが、それはさらなる階級間の断絶と貧困を加速させるだけの話であり、連合の延命には寄与しても、社会そのものを危機へと導き、暴力解決を望む声を増やしてゆくだろう。
連合の中でさえ、例えば個人加盟の全国ユニオンやタクシードライバーの全自交など、「弱い労働者」を切り捨てるという話になってゆくのは避けられなくなっている。
資本に奉仕する労働組合など、自分の足を食うタコと同じであり、いずれは自分たちが断罪され、下手をすればテロルの対象になりかねない。だからこそ、幹部たちは内心では共謀罪にも無制限通信傍受にも賛成しているのだ。

【追記】
この間、民進党や連合の周辺では、「極右の逢見事務局長が安倍政権と懇意になって神津会長を下ろそうとしている」ような陰謀論が語られていたが、実は連合全体の方針として一致しているものであることが判明した。大先輩の言を借りれば、「連合の成立自体が、政府・資本と妥協するためだったのだから、当然の帰結」ということになる。
posted by ケン at 12:09| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月18日

連合がブラック労働推進法に賛成

【連合、批判から一転容認 「残業代ゼロ」修正を条件に】
 国会で2年以上もたなざらしになっていた「高度プロフェッショナル制度」を含む労働基準法改正案が政労使が合意したうえで再提出される運びとなった。「残業代ゼロ法案」と強く批判してきた連合が一転、修正を条件に容認に転じたためだ。制度が実現する可能性が出てきたが、連合執行部の唐突な「方針転換」に身内から異論が相次いでいる。同制度は、専門職で年収の高い働き手を、労働時間の規制から外す新たなしくみだ。対象となる働き手は、残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が全く支払われなくなることから、連合や野党は「長時間労働を助長する」と強く反発。連合が法案の取り下げを求め、改正案は2年以上も審議すらされなかった。こうした中、政府が3月にまとめた「働き方改革実行計画」に、国会に提出済みの労基法改正案の「早期成立を目指す」ことが明記された。昨年9月に始まった「働き方改革実現会議」で、同制度についてはほとんど議論が交わされなかったにもかかわらずだ。
(7月12日、朝日新聞抜粋)

またぞろブラック労働推進法案が復活、今度は連合が賛成するという。この間、何度も連合幹部が官邸との接触を繰り返していたが、いよいよ表面化してきた。

先に法案の問題点についておさらいしておこう。報道では「残業代ゼロ」ばかりがクローズアップされているが、実は「残業規制の撤廃」よりも深刻なのは、「裁量労働制の適用拡大」である。
裁量労働制はすでに導入されているものの、その適用対象は労使協定で合意された専門職種と経営に直接関わる企画・調査部門に限られていた。今回の法改正は、これを大幅に緩和するというもの。
「年収1075万円以上の専門職」にはホワイトカラー・エグゼンプションで労働時間規制を外しつつ、「年収1075万円未満の一般職」については裁量労働を広範に導入するという考え方なのだ。本法案が成立すれば、年収に関係なく数十パーセントの労働者に対して裁量労働が適用可能になると言われる。また、現在は労使合意や様々な手続きが適用を難しくしているという使用者側の主張を受け入れて、手続き面を非常に簡素化するという。
派遣法を見れば想像できる通り、最初は小さく「規制緩和」して、後に全面解禁するのが自民党・霞ヶ関・経団連の手法であり、今回の労働時間規制緩和も遠からず「全面解禁」されて、残業という概念そのものが撤廃されるだろう。
ちなみに、マスゴミは本改正案を「仕事の成果で評価する」などと、政府の言いなりになって報道しているが、法案には成果主義を義務づける項目は一つもなく、「テロ対策法」と同じ情報操作を行っている。

これは現在放置されているブラック企業から「ブラックの汚名」を取り除く絶好の機会でもある。世に言うブラック企業のブラック性は、超長時間労働と残業代の未払いが殆どを占めており、労働時間規制と残業代支払い義務が撤廃されてしまえば、「ブラック」ではなくなってしまうことになるからだ。ブラック企業家がこぞって安倍政権と自民党を支援するのは当然だろう。
そして、法律に則って残業代を支払うことで、かろうじて残業を自粛していた日本企業の大半もまた、残業代支払い義務の撤廃と同時に、社員に対して無制限の残業を課すきっかけにもなるだろう。数年後には「残業」という概念すらなくなるのだから、残るのは限りなく奴隷に近い労働環境でしかない。

このようなブラック労働推進法案に「休業補償が入れられたから」賛成する労働組合とは、一体何なのか。連合が資本の代理人と化して、労働者の権利など全く考慮していないことが、いよいよ明確になった。一日も早く、労働組合の名を返上して「産業報国会」に名称変更すべきだ。むしろ解散して欲しい。労働組合を詐称して、資本家に寄与して、労働収奪を正当化してしまっている分、害悪の方が大きいくらいだ。

連合側としては「どうせ成立するなら多少なりとも妥協した方がマシ」という判断かもしれないが、どのような妥協であれ、明確に労働搾取を目的とした法律に賛成すれば、労働組合としての正統性を失い、連合加盟員を除く5千万人からの労働者から二度と信頼されなくなるだろう。

政治的には「野党共闘反対」「自公と是々是々」「従属議員は支援」、政策的には「原発推進」「自由貿易推進」「戦争万歳」、労働問題は「労働時間規制反対」「休業規制反対」「非正規雇用推進」というナショナルセンターなど、「百害あって一利なし」である。もはや連合こそが労働者の敵なのだ。意外と連合がテロルの対象になる日も遠くないかもしれない。だからこそ、表面的に反対していたが、幹部連中はみな共謀罪に賛成していたのだ。

連合がなぜ産業報国会と化しているのかについては、次回考察したい。

【追記】
政策的にも悪しき選択である。もともと賃金・人件費を抑えるための施策であるが故に、全般的に所得が低下することは間違いなく、同時に労働強化によっても個人消費が低下、デフレを加速させることになるだろう。
posted by ケン at 12:44| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月15日

まずは休日の削減を!

【有休取得3日増、企業に要請へ 休み方改革へ官民会議】
 働く人が年次有給休暇(有休)を取りやすくするため、政府は近く「休み方改革」の官民推進会議を開く。2018年度の有休の取得日数を前年度より3日増やすよう企業に要請し、実際に増えた企業を助成する仕組みも検討する。学校の長期休暇の一部を地域ごとに分散させる「キッズウィーク」と組み合わせ、消費拡大や観光振興につなげる狙いだ。菅義偉官房長官は5日の記者会見で、「大人と子どもが一緒に休むために学校や企業など多方面で共通理解が必要だ」と述べた。
 有休は働く人の疲労回復のための制度。政府は取得率を20年までに70%に引き上げるとの目標を10年に掲げた。しかし、16年調査では48・7%。労働者1人あたり年18・1日が付与されたが、実際に取れたのは8・8日だった。政府は「働き方改革」で掲げる長時間労働の是正には、取得率アップなどの「休み方改革」が必要と判断した。
(6月6日、朝日新聞)

相変わらず現実離れしている。これも何度も説明していることだが、繰り返す。
有給休暇の取得率は、公式統計上、全体平均で50%を切るくらいだが、就労者の7割を占める中小企業に限れば、40%弱でしかない。また、業種別で見た場合、飲食や宿泊などのサービス産業は30%程度でしかないという。さらに言えば、制度上は、パートやアルバイトも有給休暇を取得できるようになっているが、その取得率は20%強と言われ、有名無実化している。

一方、国民の祝日は2000年以降、「みどりの日」から最新の「山の日」に至るまで4日も増えている。祝日が増えた結果、振替休日も増加、公休日が増えて市場の稼働率が大きく低下している。国際的に見て祝日は年間7〜10日程度の国が大半であるところ、日本の17日というのは圧倒的に多い。
日本の年休法は、勤務期間によって10〜20日を最低日数として定めており、平均で18日となっている。これに違反して休暇を与えない使用者は罰せられることになっているが、実際には年休は「労働者の権利」として扱われているため、年休の約50%が行使しないまま放棄されている現状となっている。
これ以外にも、「病気休暇」が設定されているものの、「病休を取ると昇進や昇給に影響が出る」という空気が支配的なことが多く、手続きが面倒な場合もあったりして、実際には年休を取って済ます例が多い。そのため、取得年休のうちの10〜20%(2〜4日)は病気理由によると言われている。そうすると、実質的な年休取得率はわずか30%前後に過ぎない、という話になる。

日本の公休の多さは残業の多さとも関連があると考えられる。個々人が有給休暇を取得する場合は、ある程度は職場の同僚がカバーするだろうが、公休で全職務がストップしてしまうため、平日の作業量が増え、労働効率が悪化、残業が増える構造になっている。特に、海外との取引が急増している今日では、「日本だけ決済が遅れる」というケースが多くなり、外国取引に大きな支障が出ているだけでなく、外国と取引のある企業では休日出勤が常態化する傾向が強い。つまり、公休を増やすことは、グローバル競争力を低下させるだけで、実のところ政府の方針に反する結果しか生まない。
また、観光や各種文化活動が公休日に集中することでも、そのパフォーマンスを低下させている。欧米並みの有休取得率であれば、連休の観光地の超混雑や高価格は避けられ、観光業も飲食業も稼働率を上げることができるはずだ。

この場合、ただ政府が企業に対して有休取得を呼びかけたところで、企業側には何のインセンティブも無いため、「プレミアム・フライデー」同様、惨憺たる結果に終わるだろう。
解決策としては、まず国民の祝日を半分にし、その上で有給休暇そのものを増やしつつ、その取得率が90%以下の企業に対しては懲罰を科す(企業名の公表と罰金と公的調達の禁止)、あるいは余剰休暇の高額での買い上げを強制する仕組みをつくるべきだ。特に被雇用者の4割を占めるに至っているパート・アルバイトの有給休暇については、特段の配慮をなす必要があろう。

ヤクニンどもはマジで「仕事するフリ」を止めて欲しい。

【6月16日、追記】
病休規定は労基法で規定されたものではなく、公共機関、それに準じる機関と労使協議で規定された場合のみ設定されていることを補足しておく。
posted by ケン at 12:32| Comment(3) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする