2019年08月16日

安倍政権が支持される理由・続

安倍政権が支持される理由」の補足。
安倍政権は伝統的な自民党の統治手法に則っている側面がある。
それは「野党の政策を先取りする」だ。
55年体制下で社会党が政権奪取できなかったことの一因は、自民党が社会党の政策を先に実行したことがある。
特に岸内閣における国民健康保険と国民年金制度は、与党内に強い反発があったにもかかわらず、岸信介のイニシアチブによって強行された。結果、日米安保改正問題で大騒動が起こったにもかかわらず、岸内閣は総辞職するのみに終わり、続く総選挙では自民党が勝利している。これは「日米安保を除けば、自民党で良い」と国民が判断したためだった。

では、現在の安倍政権はどうか。
アベノミクスをまず見た場合、「大胆な金融緩和」によって倒産寸前にある零細企業や地方企業を救済し、雇用を守っている(だから経済成長しないのだが)。同時に物価も安定している(これも経済成長しない理由だが)。
「機動的な財政政策」で公共事業が復活(日銀が建設国債を購入)、伝統的な自民党支持層は一応潤っている。
「成長戦略」もバラマキに近いが、法人税を引き下げ、外国人労働者を緩和し、企業的には万々歳で内部留保だけは増えている(つまり投資先が無い)。

これらの政策は名称とは逆に競争と成長の可能性を犠牲にして、既存の資本と雇用を維持することに重点を置いていることが分かる。となれば、現状維持を優先したいものにとっては安倍政権を支持しない理由が無い。
さらに言えば、今後日本経済が悪化する以外にほぼほぼ可能性が無い以上は、「現状維持を至上とする」霞が関の方針に反対する方がリスクがあると言える。
ゲーム的に言えば、1D6を振って「1」が出れば成長軌道に乗るが、それ以外の場合はすぐに悪化するという選択肢と、「とりあえず現状維持」であるなら、後者を選ぶのが人情だろう。
その意味で、安倍政権は非常に「保守的」なのだ。

雇用については少なくとも数字上は改善しており、2012年の4.4%から2019年の2.4%まで劇的に改善している。
これは基本的には少子高齢化と非正規職の増加による「統計上の失業者の減少」という側面はあるものの、安倍政権を全否定する理由にはならず、全般的にはむしろ評価されているとみるべきだ。
また、今更ではあるが、就職氷河期世代への配慮や中途採用の拡大なども主張しており、本来野党が主張すべき政策を先取りしている。
野党からはダメ出しされつつも、最低賃金を上げる方向で財界に働きかけており、平均的な自民党総理よりはよほど「労働者にやさしい」側面がある。

社会保障についても、野党はこぞって批判しているが、安倍首相は基本的には祖父君の遺訓を受け継いで社会保障の維持に努めているように見える。
少子高齢化が進行する中で、制度そのものを維持するためには支出の抑制が不可欠であり、NK党や社民党が主張する「充実」を行った場合、税による補填が増えるだけで、すぐにも財政破綻するだろう。
日本の場合、例えば健康保険の適用範囲が非常に広く、薬も出し放題で、かなり放漫財政になっている。制度の持続性を考えた場合、保険適用範囲の限定は避けられないはずだ。この点、安倍政権でも進めておらず、安倍政権が本質的には社会保障制度に親和的であることを示している。同制度の大幅な縮小でも主張しない限り、自民党と野党の対立軸は決定的なモノになりにくいだろう。
幼児教育、保育の無償化も同じで、野党の政策であるべきものを先んじて実行している。

全般的に見た場合、2009年の民主党が「いま大手術すれば、日本は復活できる!」と大見得切って、国民の7割以上の支持を受けて政権交代を実現させたものの、蓋を開けてみれば、「何をどう手術して、日本をどう再生させるのか」について全く絵図面を持っていなかったことが判明した。挙げ句の果てに公約破りの増税を自民党と談合して決め、東日本大震災などの不幸があったとはいえ、失業率を悪化させて、わずか3年で自民党に支持が戻ってしまった。
自民党にはその反省があるため(悪夢の民主党政権)、安倍政権は「手術」路線を封印、現状維持=延命路線へと舵を切った。これは言うなれば、「ペレストロイカをやらないソ連」路線であり、いくばくか余命をつなぐことはできるかもしれないが、「それだけ」なのだ。故に、国内の貧困は見えないところで深刻化し、少子化も止まることが無い。
しかし、「手術するよりはマシ」というのが国民の大多数の判断であり、少数派のリベラル派を中心とした潜在的不満の高まりに対し、権威主義と警察権力をもって対処しようというのが安倍政権の本質なのだろう。言うなれば、岸信介の国家社会主義路線のソフト&劣化版と言えそうだ。

ケン先生的には「ペレストロイカをやらないソ連」の末路がどうなるのか、興味深く見守るつもりだ。
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2019年08月01日

関東軍化するNHK

【NHK、受信契約巡りサイトに警告文「違法行為に対処」】
 NHKは30日、受信設備があるのに受信契約をしないのは違法だと警告する文書を公式サイトに掲載した。今月の参院選では「NHKから国民を守る党」(N国)が、受信料を払った人だけがNHKを視聴できるようにするスクランブル放送の実現を訴え、議席を得ている。NHKは文書とN国との直接の関連を否定し、掲載の理由を「最近、誤った理解を広めるような発言が頻繁に聞かれるため」としている。
 文書は「受信料と公共放送についてご理解いただくために」というタイトルで、「『NHKを見なければ受信契約はしなくていい、受信料は支払わなくてもいい』と発言する人たち」を問題視。「『受信料を支払わなくてもいい』と公然と言うことは、法律違反を勧めること」と主張し、「誤った認識を広めるような行為や発言」にはきちんと対応し、「明らかな違法行為」には厳しく対処するとしている。
(7月30日、朝日新聞)

N国の政党化などを受けて、NHK批判が加速する中、NHKが視聴者に対して法を盾に恫喝を始めている。
これは「戦争に協力しないのは法律違反(国家総動員法)だ」という旧軍の主張と何ら変わらない。

NHKは民法に比して過大な資金と人脈を有し、霞が関との繋がりも深いため(東大卒が多い)、放送法やNHK予算などについて大きな影響力を行使し、自分たちに都合の良い制度をつくってきた。
形式上は国会で審議されるため、一見公平な制度に見えるかもしれないが、国会議員は日本最大級のメディアであるNHKを敵に回すと不利になることが多すぎるため、国民の利益が反映されることは殆ど無く、ほぼほぼNHKの要求通りに実現してきた。事実、NHKの予算案などが否決されたことは一度も無く、これは議会の監督機能が機能していないことの証左である。NHKの受信料と放送法の関係について質問しているのは、ケン先生が質問をつくってやってもらった前ボスくらいなものである。
現在では、NHKは一方的にネット配信してネットに繋がるもの全てから料金を徴収しようと画策しているが、これに反対する勢力は国会に無い。
野党は「消費税減税・廃止」よりも「NHK民営化」(年間2万5千円、地上波のみなら1万5千円)を訴えるべきだろう。

放送法と国家によって守られているNHKは本来視聴者であり、購入者である国民に対して謙虚でなければならない。
NHKは民放と異なり、法律によって実質的に料金を強制徴収でき、経営努力の必要が殆どないためだ。
「契約は双方の意思の合致によってのみ成立する」(契約の自由)という近代私法(日本国憲法)の根幹に反してまで、放送法第64条「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定させたのは、旧軍同様の影響力を有するNHKの権威と、「公正中立な放送をあまねく全国民に提供する」建前だった。
だが、昨今の報道を見れば分かるとおり、「公正中立な放送」は既に死文化、いまや大本営発表を垂れ流す一機関となっている上、コンテンツの多様化から「生活に不可欠な放送」でもなくなっている。
にもかかわらず、いや恐らくは「であるからこそ」、NHKは権威主義と不適切な(時代にそぐわなくなっている)法律を盾に国民を恫喝するほかなくなっているのだろう。

本来であれば、NHKの民営化と放送法の廃止を視野において法改正の議論を進めるべきところだが、NHKと癒着する総務官僚や「NHK討論に出られないと困る」「NHKに弱み(スキャンダル)を握られている」政治家によって、放送法やNHK改革に関する議論は完全に封じられている。
これも議会制民主主義の機能不全(政官業の癒着)の表れであろう。

【参考】
NHK受信料をめぐる決定的課題
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2019年06月05日

従業員に年200万も出せない「先進国」

【最低賃金、時給1千円は「全国から悲鳴」 日商が要望書】
 日本商工会議所が28日、最低賃金の引き上げを推し進める政府方針に反対する要望書を厚生労働省や自民党に提出した。経済財政諮問会議では早期に時給1千円にする意見も出ているが、「大幅な引き上げは中小企業の経営を直撃し、事業の存続を危うくする」と訴えている。
 6月にまとめられる政府の「骨太の方針」や、今夏の中央最低賃金審議会に向けて働きかけていく考え。
 政府は2015年、最低賃金を年3%程度引き上げる目標を掲げ、3年連続で3%を超える引き上げを実施した。日商の調査では「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」と回答する企業が毎年増え、今春は38・4%。しかし、この数年の中小企業の賃上げ率は1%前後にとどまる。
 日商は「支払い余力の乏しい中、実力以上の賃上げを強いられている」「全国から悲鳴にも近い声が寄せられている」と指摘した。
(5月28日、朝日新聞より抜粋)

日本の企業(事業者)の99%以上は中小企業であり、被雇用者に占める割合は約7割。そのうち約4割が「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」とのこと。最低賃金は地域や業種で異なるが、おおむね850円から950円程度。月20日労働で換算した場合、年収200万円に遠く及ばない。ほとんど生活保護水準であり、世帯人数にもよるが、「健康で文化的な最低限度の生活」とはかけ離れた生活を余儀なくされる。
この数字だけ見ても、政府統計の「給料は上がっている」「国民は生活に満足している」が虚飾にまみれた大嘘であることが分かるだろう。

これは常々言っていることだが、本来資本主義社会では、こうした低採算の企業や事業は淘汰されて、淘汰されたことで余剰した資本と労働力が、新たな産業や事業に投入されることで、経済成長を遂げるというモデルが想定されていた。
これに対して、ソ連型社会主義では、失業や倒産そのものをイデオロギー的に「悪」と見なし、雇用と企業を完全保護した結果、国民経済と市場の成長が止まり、企業の採算や生産効率は殆ど改善されることなく、長期停滞が続き、国家そのものが頓死してしまった。
実は、日本は果てしなく後者のソ連型社会主義に近づいている。しかも、労働者に対する保護は殆ど無いのだから、「企業社会主義&労働者自己責任」という、企業家天国と言える。

「健康で文化的な最低限度の生活」という憲法理念を具現化させるためには、少なくとも時給1500円と雇用形態に関係なく社会保障の適用を行うべきだが、これを主張するNK党と社民党は殆ど支持されていない。この点は、曲がりなりにもホームレス以外は投票権が認められているだけに、有権者の自己責任と言える部分だろう。

超低賃金で労働環境が劣悪な中小企業が圧倒的多数を占めている現状では、いつまでも低採算の企業が残り、資本と労働力に余剰が生じない。
いわゆる「労働力不足」が生じているのも、この手の低収益企業がゾンビ化して生き残っているためで、超低賃金で労働集約的に働かせるため、生産が効率化されず、労働力に余剰が生じず、賃金が低迷して消費が増えないという構造になっている。
日本は中小企業の割合が他の先進国に比べて大きいと言われるが、それは自民党の基盤が地方の中小企業家に依拠しているところが大きい。その結果、歴史的に中小企業の優遇が行われてきて、制度として固着している。中小企業に対する優遇税制は非常に充実している上、各種補助金も整備されているが、例えばスウェーデンなどの北欧諸国では、中小企業に特化した優遇税制や補助金制度は無いというし、そもそも企業に対する優遇税制や補助金自体が非常に少ないと言われる。
逆に1980年代のソ連では、国家財政の約2割が国営企業の赤字補填に充てられており、ペレストロイカにおける重点改革項目だったが、ついぞ実現できずに終わった。日本は同じ轍を踏もうとしている。

日本の政治家(国会でも地方でも)にとって、最も重要なのは献金してくれる支持者に対して、優遇税制や補助金の適用を斡旋することであり、それが政官業の癒着と腐敗を生むと同時に、地域と国家の低収益構造を構築している。実はこの構造はNK党も当てはまる。

仮に最低賃金のことは脇に置くとしても、規模を問わず企業に対する税制優遇と補助金制度、そして公的融資制度は90%以上撤廃して、低収益・非効率な企業を全面的に淘汰する必要がある。
ソヴィエト学徒からの警告である。

【追記】
5月29日、日経新聞より。
「日本の競争力は世界30位、97年以降で最低 IMD調べ」
「日本は判断基準となる項目別で、「ビジネスの効率性」が46位と低く、ビッグデータの活用や分析、国際経験、起業家精神は最下位と厳しい。IMDは企業の生産効率の向上に向け、働き方改革や人材開発を一層進める必要があると指摘した。「政府の効率性」も38位で、巨額の政府債務や法人税率の高さなどが重しになっている。」
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2019年05月20日

ダメなのは無能な経営者のせいである!

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東洋経済のアトキンソン氏の記事「日本は、「無能な経営者」から改革するべきだ」。タイトルこそ雑誌っぽく煽情的だが、内容はいつものアトキンソン節である。

要は日本の会社というのは、ゼロ金利によってタダ同然で資金を調達、優遇税制を利用して納税を回避。さらに、韓国よりも低い最低賃金や4割もの非正規労働者(社会保障負担回避)、外国人技能実習制度(労基法や基本的人権の適用除外)などを駆使しつつ、労働時間管理が無く、労働組合の組織率が15%強という中で、労働者を超長時間(通勤時間含めると1日12〜14時間)=「定額働かせ放題」にできる。それに対して日本人は文句一つ言わず、政府の調査によれば「高い幸福度」が示されている。

1980年代まで問題が露呈しなかったのは、政治家や官僚や企業幹部が優秀だったからではなく、単に人口増加のメリット(労働力と消費者の安定供給)を無条件に享受できたためだった。
付言すれば、日本は日米安保のおかげで軍備負担が非常に軽く済んだ上、アメリカの軍事力によって担保された西側経済圏の中で超安価な資源を調達できたことも大きい。

そのため、人口メリットが失われ、資源価格が高騰すると、途端に為す術を失ってしまう。
本来であれば、人口メリットの喪失を補うべく、生産性の向上と経営の効率化を進めなければならなかったが、日本は政官財一体の「ぬるま湯」から抜け出せなかった。
こうした状況は西側世界はみな共有していたが、アメリカは全世界から資金を調達して金融工学によってバブルを繰り返すことで延命、西欧諸国はソ連崩壊によって得た東欧諸国を植民地化(安価な労働力と消費市場の確保)したことによって延命した。
これに対し、日本は国内で収奪を強化することで延命を図る。非正規雇用の割合を3倍にして、企業の社会保障負担を激減させ、税制優遇で企業の延命を図り、歳入難は消費税(大衆増税)によって補った。ゼロ金利政策もその一環だった。それでも無能な企業家はなすすべがなく、ついには公的年金の基金をもって国内株を買い漁り、株価を支えるに至っている。

日本の企業経営層が恐ろしく無能なのは、日本の経営者は経営能力や知識とは無縁の存在であるところが大きい。
日本の人事慣習は、管理職を選別する際に管理能力や経営能力を問うことは稀で、「社に対する忠誠(貢献)」や「幹部の受け」によって評価される。言うなれば、AH社の「クレムリン」みたいなものだ。
欧米の場合は、良くも悪くも、経営層は最初から管理専門職、経営専門職として採用されるケースが多く、その代わり失敗した場合も責任を取らされる。だが、日本の経営者は経営に失敗しても、株主総会などで責任が追及されることはまずない。

その結果、無能な経営者が延々と無能な経営を続け、失敗の責任を追及されることもなく、無能者から無能者へと引き継がれる状態にある。
この点は、日本の政治も同じで、例えば日華事変以降の総理大臣を見た場合、

近衛(世襲議員)
平沼(検事)
阿部(陸軍)
米内(海軍)
近衛(世襲議員)
東条(陸軍)
小磯(陸軍)
鈴木(海軍)

というラインナップだが、経歴的に国家運営の知識がありそうなのは大審院院長だった平沼くらいのもので、その平沼は「欧州情勢は複雑怪奇」と言って総辞職してしまう程度の能力だった。残りはどう見ても「国家運営の才覚あり」と認められて首相位に選ばれた感じはなく、かろうじて米内と鈴木が「軍人としてはマシ」というレベルだった。現に鈴木は何度も「器では無い」と拝辞している。
例えば、陸軍は、内務省が昭和初頭に大都市部の道路舗装を進めようとしたところ、「馬の歩行に障害が出るからダメだ」とクレームを付けて大反対している。この程度の連中が国家運営を行えるはずが無い。
戦時中の8年間に総理大臣が8人もいるという無軌道ぶりも、日本型人事システムがいかに危機や不安定期に弱いかを示している。本質的に「有能な者は予めパージする」ところがあるのだろう。

日本もいい加減「いかにして経営と管理のプロフェッショナルを育成、選別するか」という視点に立たないと、手遅れになるだろう。
あ、いや、もう手遅れか(爆)
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2019年05月02日

99周年、メーデー万歳!

メーデー万歳!

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日本の第一回メーデーは1920年に東京上野で開催、八時間労働、失業防止、最低賃金制度が掲げられた。八時間労働制は未だに実現していない。
正確を期すなら、失業が最小限に抑えられているのは無権利状態の非正規雇用が就業者の四割を占めているからであり、また最低賃金は最低生活を保証する金額以下に留まっている。

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1931年第12回メーデーのポスター

また今年はILO(国際労働機関)結成から100年でもある。
しかし、日本政府は現在に至ってもなお、ILOの国際労働条約第1号「8時間(週48時間)労働制の導入」(1919年)を批准していない。

1917年5月にロシア・ロスラヴリ市でストライキを決行した女性帽子職人組合が要求したのは、「一日八時間労働」「賃金50%アップ」「週休2日」「有給休暇」等だった。

2019年の日本を見た場合、「一日平均十時間労働」「一日平均一時間二十分の無給残業」「有休取得率50%(うち約20%は有休労働か、会社のイベント動員)」「通勤二時間以上」という具合。
労働組合の組織率は17%と5分の1を割り、労働力価値は資本によって一方的に買いたたかれる状態に置かれている。
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2019年04月19日

全港湾スト報道に見るNHKの反動

【港湾労働組合 22年ぶり平日にスト コンテナ積み降ろしできず】
 全国の港で働く労働者の組合が最低賃金の引き上げなどを求めて、14日から48時間のストライキを行っています。全国の主要な港でコンテナの積み降ろしなどの作業ができなくなっていて、港湾でのストライキが平日に一日続くのは22年ぶりだということです。ストライキを行っているのは、全国の港で荷揚げや荷降ろしなどをしている1万6000人の労働者で作る全国港湾労働組合連合会です。
 ことしの春闘で、業界団体の「日本港運協会」と最低賃金の引き上げなどをめぐって続けてきた交渉がまとまらず、14日から48時間のストライキに入りました。全国の主要な港でコンテナの積み降ろしなどの作業ができなくなっていて、組合によりますと、港湾でのストライキが平日に一日続くのは22年ぶりだということです。港湾関係者によりますと、荷主がストライキに備えて事前に在庫を調整するなどしていたため大きな影響は出ていないということですが、今回のストライキが終わる16日の朝以降、港の混雑を懸念する声も出ています。組合側は、今月下旬からの10連休中のストライキの通告も示唆して交渉を続けていて、国土交通省は物流への影響が出ないか情報を収集しています。
 青森県八戸市の八戸港でも荷役作業が止まるなどの影響が出ています。このうち、八戸市に本社を置く「八戸港湾運送」は全従業員の8割にあたるおよそ200人が組合員で、14日から続くストライキのために、大型のクレーンなどを使ったコンテナの積み降ろしなどの作業が止まっています。八戸港湾運送は取材に対し、「取引先にストライキの事情を説明するなどして、影響をできるかぎり最小限に抑えたい」としています。
 この影響で、東北地方で唯一の国際拠点港湾である仙台市の仙台塩釜港の高砂コンテナターミナルでは、コンテナ船4隻が入港できない状態が続いています。このため、港は大型のクレーンは動いておらず、車の行き来もほとんどありません。港湾事務所によりますと、ストライキが終わる16日朝以降は一転して、港周辺の混雑が予想されるということです。
(4月15日、NHK)

この報道は色々な意味で象徴的であり、現NHKの階級反動性を示している。
まず、ストライキの理由は「「日本港運協会」と最低賃金の引き上げなどをめぐって続けてきた交渉がまとまらず」とわずか1行のみしか触れていないのに、その後の「ストによる影響」については延々とニュースの半分以上を使っている。
また、ストライキは14日から48時間であるにもかかわらず、報道がなされたのは最終盤の15日夜だった。
そして、運送会社や港湾事務所のコメントは入っているのに、肝心の労働者側のコメントはゼロである。

これらは、「公正中立」と言って全市民、全国民から強制的に視聴料を徴収しているNHKが、実際には100%資本側の立場から報道していることを示している。
戦後日本は、様々な経緯はあったものの、西欧諸国と同様に戦後和解体制を採った。それは、資本と労働が対等的な関係で強調し、政府が再分配を約束し、議会制民主主義が階級調整をなす政治体制だった。ただし、それは現実には第三世界からの収奪の上に成り立っていたのだが、今はそこは問わない。

仮にこの戦後和解体制を前提とするなら、少なくともNHKは再分配と階級調整の弁としての機能が求められ、実際に2000年頃まではそれが一定程度効力を発揮していた。
だが、小泉改革や第一次安倍政権の頃には戦後和解体制はほぼ瓦解し(象徴的には国鉄と日本社会党の解体)、今日に至っている。NHKも例外では無く、今では階級問題や政府に批判的な番組は皆無になっている。
NHKの不誠実は、戦後和解体制を否定しているにもかかわらず、相も変わらず中身の無い「公正中立」を標榜している点だ。だからこそケン先生はNHKの国営化を主張している。

さて、全港湾のことである。もちろんストライキは全面的に支持する。
NHKに限らず、どの報道機関もロクに報道していないこと自体、もはや現行体制にいかなる未練も感じさせない。
上記の報道は、まず「最低賃金をめぐる交渉」と述べているが、その最低賃金を見てみよう。
港湾では労働組合と業界団体が協定を結んでいます。
港湾産別協定(2007年協定)では、港の種類により2つに区分されています。

最低賃金 日額6、310円(7時間労働)、月額157、600円
〔適用港:東京港、横浜港〈川崎港含)、名古屋港、大阪港、神戸港、関門港の場合 〕
〔適用職種:船内荷役作業、沿岸荷役作業、はしけ乗組員、いかだ運送作業員、
  港湾運送関連作業員(港湾倉庫作業は港湾運送関連作業に該当します)〕
全港湾HPより)

驚くべき低さだが、これを約16万4千円に上げよ、というのが、今回の労働側の要求だった。
しかし、資本側はこれを拒否したどころか、産別最低賃金の設定(交渉)すら拒否するという挙に出た。もっとも、これは2016年頃からのことで、今回のストライキは「もう我慢ならん!」という労働側の判断に基づいていた。
産別交渉が否定された場合、労働者は企業別に組合をつくって事業者と交渉に当たるわけだが、交渉力が弱まるのは避けられず、実際には資本の言いなりになる他ない。資本側の狙いは、労働者の団結を破壊し、その賃金交渉力を無力化して、最低賃金(あるいはそれ以下)まで下げるところにある。

本来ニュース報道はここまで書いてようやく労使間のバランスが取れて、「公正中立」を標榜できるはずだ。
この点を省いてしまえば、「無理な賃上げを要求する労働組合が市民に迷惑を掛けるストライキを勝手にやってる」という構図をプロパガンダすることになるし、実際それをやっているのがNHKなのだ。

象徴的なことに全港湾は1972年から2015年まで日本港運協会と団体交渉を行い、産別賃金を設定してきたが、この44年間こそがまさに戦後和解体制そのものだったのだ。そして、資本側が産別統一交渉や生活保護水準の最低賃金の引き上げを拒否するという事態は、戦後和解体制の全面瓦解を象徴している。

マルクスは、自らの待遇を守るために、資本に同調して外国人労働者などの下層労働者の疎外に荷担する労働者を「哀れなプロレタリア」と呼んだが、現行の資本や政府による暴虐に対してなすすべのない西欧社会民主義政党や日本の連合はまさにこれに相当する。
やはり戦後和解体制こそが例外的な体制であり、世界は再び資本と労働が血で血を洗う闘争を演じる時代に突入していくのかもしれない。

【追記】
全く残念ながら私自身は全港湾本部にお邪魔したことは無いのだが、ある同志によれば、委員長室には巨大な赤旗が掲げられ大きなレーニン像が鎮座まし、周恩来の書なども掛かっており、いささか時代錯誤(懐かしさ)を感じさせるところだという。
全港湾労働者の皆さんには、遠くの地より心より連帯の意を表明するものである。

【追記2】
マルクスを持ち出すまでも無く、労働者が団結して、資本の横暴に対抗し、労働者が唯一提供できる「労働力」を結集して提供拒否するストライキは、労働者にとって唯一の武器である。その武器をカードに交渉するのが労働組合の重要な役割となる。とはいえ、伝家の宝刀は抜いてしまえば「それきり」という側面があり、抜かずに済めばそれに越したことは無い。しかし、今回の一連の争議は「ストライキをやらない労働者は一方的に収奪される」というマルクスの指摘が正しかったことを示している。
1970年代以降、ストライキが減少したのは「戦後和解体制」が機能して、労使協調路線が成立したためだが、ソ連崩壊を経て同体制が解体されつつある中、労使の利害が一致しなくなっているわけだが、「平和」の時代が長かったため、労働組合は自らの役割を忘れ、戦力として機能しなくなっている。そして、全港湾がストライキを打てるのは、産業報国会の後進と言える連合の指導下に無いところが大きいと考えられる。
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2019年03月10日

「貯金ゼロ」が意味するもの

【30、40代「貯金ゼロ」が23% SMBCの金銭感覚調査】
 SMBCコンシューマーファイナンスは6日、30〜40代の金銭感覚に関する調査結果を発表した。「現在の貯蓄額がゼロ」と答えた人が前年比6ポイント増の23.1%になり、平均貯蓄額も同52万円減の195万円に低下。同社は「景気回復が働き盛りの賃金上昇につながっていない」と分析している。
 貯蓄額の平均は30代が前年比4万円減の194万円なのに対し、40代は同120万円減の196万円だった。消費について9割近くが「無理せず買える範囲で買う」と回答し、堅実な消費意識が浮かんだ。「年収がいくらだったら結婚、出産しようと思えるか」との問いでは、結婚が500万円以上、出産は600万円以上と答える人が多かった。
 スーパーなどで「現金よりキャッシュレス決済が多い」と答えた割合は、30代が52.8%、40代が53.4%で、昨年調査した20代の44.1%をいずれも上回った。同社は、子育てなどで出費がかさむ中年世代ほどクレジットカードやQRコード決済のポイント還元を重視しているためとみている。一方、「メルカリ」のようなフリマアプリに直近1年間に出品した人は16.5%。年代別では20代が30.4%と高く、年齢を重ねるごとに低かった。
(3月6日、毎日新聞)

政府統計が信用できなくなった今、こうした調査を重視するほか無いが、なかなか良いところを突いていそうだ。
貯蓄ゼロ世帯は金融庁の調査(2017)でも、二人以上世帯で約3割、単身世帯では4割を超える。単身世帯の30代で40%、40代で45%とあるから、実感としてもそんな感じだ。

貯蓄がある人の場合は、今度は住宅ローンを始めとする負債を持つ場合が大半で、これらは貯蓄、負債ともに増加傾向にあるものの、特に若い層を中心に負債の方が増え方が大きくなる傾向がある。
例えば、40歳未満を見た場合、2008年の平均貯蓄額591万円に対し、2017年は601万円。しかし、負債平均額は、2008年が1389万円に対して、2017年は1893万円に達している。
これは、本来住宅を買えないはずの中低所得層が無理して住宅を購入していることに起因している可能性がある。あるいは、養育費や教育費での借り入れが増えている可能性もある。
いずれにせよ、こうした層を中心に、一度大不況が来れば、途端に負債を返せなくなって、アメリカのように破産者が続出する可能性が高い。
また、すでに大学生の半数以上が負債を抱えて通学しており、つまりこれらの大卒者は赤字状態から社会人を始めている。

興味深いのは、「結婚が500万円以上、出産は600万円以上」とあるが、実は年収500万円以上は全体の30%、600万円以上は20%しかおらず、実質的に江戸時代と同様、「出世した者しか結婚できない」社会になっていることを示している。この分では、少子化はさらに悪化するだろう。
これだけ見ても、日本の未来はどこまでも暗いことが分かる。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする