2019年09月30日

「税収減るからカジノを」なる錯誤と亡国

【4地域がカジノ誘致へ=検討中も6自治体−時事通信調査】
 カジノを含む統合型リゾート(IR)について、時事通信が47都道府県と20政令市にアンケートしたところ、横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県の4地域が誘致の意向を示した。
 この他にも6自治体が検討していると回答。国が認めるIRは最大3カ所で、激しい誘致合戦となりそうだ。
 アンケートは8月上旬から9月上旬にかけて電子メールで実施し、全自治体から回答を得た。IR整備法によると、誘致を希望する都道府県・政令市は国に認定を申請しなければならない。4地域の他、北海道と東京都、千葉、川崎、浜松、名古屋の4市は「検討中」だ。
 大阪府・市は共同で誘致活動を展開。市内の夢洲地区への整備に向け、施設の配置やギャンブル依存症対策などを盛り込んだコンセプト案を募った結果、三つのIR事業者から提示を受けた。和歌山県は和歌山市の人工島「和歌山マリーナシティ」を想定し、2024年度中の開設を目指す。
 長崎県は佐世保市内のテーマパーク「ハウステンボス」の一部を候補地とし、今秋にもIR事業者からコンセプト案の募集を始める計画だ。横浜市は8月下旬、横浜港の山下埠頭(ふとう)への誘致を表明。関連経費を盛り込んだ補正予算が可決され、本格的に動きだした。
 検討中の6自治体では、北海道が釧路市、苫小牧市、留寿都村の候補の中から、苫小牧市を「優先すべき候補地」と整理している。千葉市は今月、誘致の是非を検討するため、事業コンセプト案の募集を始めた。
 東京都や、川崎、浜松両市は情報収集を行いながら是非の検討を進めている。名古屋市は「河村たかし市長としては、名古屋地域での大規模施設を目指して前向きに検討中」と回答した。
 その他、検討の有無は明示しなかったものの、愛知県は「国の動向を注視したい」、北九州市は「未定」と答えた。 
(9月23日、時事通信)

これは横浜市の職員の話の又聞きになってしまうが、横浜市は2019年、つまり今年をピークに人口減少に転じると考えられており、特に南部、西部での人口減が著しいという。隣の川崎ではいまだに人口が増えている中、横浜は「住みたい街」のトップ3にありながら、一足早く人口減少を加速させている。そのため、税収減は避けられず、税収減の穴埋めと観光等収入増を目指して、「カジノ誘致は必要」との判断に至ったのだという。どうも林市長は、最初からそのつもりではあったらしい。

この発想も非常に官僚的であると同時に日本的でもある。
そもそも1941年の対米開戦も、「このままでは重油の備蓄が尽きてジリ貧になってしまうから、その前に一発かましてやれ!」というところから始まったし、1931年の満州事変も「中国国民党やソ連に取られる前に占領してしまえ」という発想だった。

さらに言えば、西南戦争も武士階層が半数近くを占めた薩摩の特殊な環境の中で、「士族特権が完全に剥奪される前にやれ!」という意識が強く共有されていた。現実には長州、肥前、薩摩などで暴動、蜂起が起きたものの、士族層の大半は隠忍自重を保っていた。
その士族層も、秩禄処分に伴って下された公債を元手に商売などを始めたものの殆どは失敗したとされる。

「このままではジリ貧だ」という認識は正しくても、「だから一発花火を上げよう」という発想に至るには大きな飛躍がある。しかも、この「花火」は殆どの場合、本来必要な知識も十分な資本もないまま打ち上げられてしまうため、失敗に終わってしまう。
実際、バブル崩壊前後に進められた第三セクターや地方創生事業の大半が大赤字を抱えて終わっているが、それは自治体にノウハウがなく、ブローカーに食い物にされたからだ。

シミュレーションゲームでも、「このままではジリ貧だから、一大反撃して突破口を開こう」などと考えるものは、大半が失敗する。

今回の「カジノ狂騒」も、結局は住民に何らの益ももたらさずに、負債ばかり抱えて終わる蓋然性が高い。
戦況が不利な時は、戦線を縮小しつつ、時間稼ぎして、状況が変化するのを待つ方が、一般的にはよりよい結果を生むのである。
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2019年09月11日

日本企業の現金準備が過去最高

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ブルームバーグの記事によれば、
最新の届け出に基づく日本の上場企業の手元現金は506兆4000億円と、ブルームバーグのデータによれば過去最高。安倍晋三首相が企業の現金保有を減らすと公約し第2次政権を発足させた数カ月後の2013年3月に比べ、3倍余りに膨らんでいる。

ジェフリーズ証券の調査責任者、ズヘール・カーン氏は、企業が利益の70%を株主に還元できるところを、実際には40%しか還元していないと言い

ゼロ金利の世界で巨額現金を手元に置くことは、株主資本利益率(ROE)低下につながると指摘するのは、クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部CIOジャパンの松本聡一郎氏だ。
今後は投資家還元が少ない企業を標的とする物言う株主が増える中、日本企業ももっと変わっていくかもしれない。しかし、利益から株主に回る部分は緩やかにしか増えず、企業の手元現金は増え続けると大半が予想している。

資本側が常に主張していた「内部留保は換金可能なものとは限らない」が「ウソではないが、事実でもない」ものだったことが判明している。

安倍政権が法人税を実質的に下げて、企業優遇を進めたのは、企業に(特に国内への)投資を促すためだったが、現実には全くそうならず、利益の一部は株主に還元しているものの、それはステークホルダーが株を買い戻して自分たちの中で利益を回しているに過ぎない。それ自体は、通常の企業活動の範疇ではあるが、問題は投資が進まないことにある。

企業が国内投資に消極的なのは、少子高齢化と過疎化・都市集中によって投資効果が大きく減退している点にある。投資するとすれば、いまだ人口が増加し続けている首都圏であるが、東京都ですら2025年には人口減少が始まるとされており、投資欲がわかないのは当然だろう。
さらに言えば、政府の宣伝とは真逆に一部の大企業を除いて大半の労働者は実質的に収入を減らしつつあり、10月からは消費増税もあって、今後はさらに購買力が低下してゆく蓋然性が高い。

これは少なくとも従来型の投資(生産力増強)は殆ど成算が無いことを意味しており、投資するとすれば、将来性のある未開拓分野に対する新規投資であるわけだが、体力のある大企業ほど「日本型組織=日本型経営」にどっぷりはまっており、リスクを取るような決断ができなくなっている。

企業が自己防衛に走る場合、借入金をできるだけ減らし、人員と固定経費を抑えつつ、現金を貯め込むことになるわけだが、これは現金の価値が高いデフレだからできることであって、同時にデフレを促進してしまう(皆で現金の価値を高めるから)。
日本の場合、最低保障年金が非常に低いため、金融庁が(間違ってらしいが)「老後に最低二千万円必要」と言うほど老後の資金が必要とされる。高齢化率が二割を超え、三割に迫る場合、ますます高齢層の現金需要(貯め込み)が高まって、消費はますます減退するだろう。

ソ連学徒的には、「みんな現金はジャブジャブあるけど、誰も使わない」状態は1980年代のソ連を思わせる。
当時のソ連も、西側の宣伝とは異なり、それなりに豊かだったが(技術レベルやサービスは劣悪だったが)、市民の目からすると、突然大インフレが襲ってきて、一夜にして貯金がパーになり、全員頓死してしまった観がある。
意外と日本もそれに近い形で頓死しそうなイメージだ。
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2019年08月31日

全受労への対応に見るNHKの悪逆非道

【NHK受信契約員の労組が救済申し立て N国の影響も】
 NHKから受信契約の業務などを受託する地域スタッフらでつくる労働組合の一つが21日、不当労働行為の救済を東京都労働委員会に申し立てた。NHKがスタッフの業績評価基準を変える際、団体交渉で差別を受けたなどと主張している。
 この労組は「全日本放送受信料労働組合」。約60人が所属し、うち地域スタッフは約50人という。
 同労組によると、NHKは地域スタッフに対し、受信契約の取次数などの目標を設定している。達成率が低いと、口頭や書面での注意といった「特別指導」を受け、指導実施中も目標に届かないと、受託を打ち切られることもあるという。
 NHKは、この目標の基準を今年10月から変更する案について、組合員が多い別の労組と交渉して合意した。しかし、全日本放送受信料労働組合に対しては、変更内容を3月に通告するだけで済ませ、その後抗議を受けても無視したという。同労組は、NHK側の対応が不当労働行為にあたると主張している。
 NHKによると、地域スタッフは昨年10月時点で全国に約1200人いる。地域スタッフや外部法人への委託を通じて受信料の徴収を強化しており、2018年度の受信料収入は過去最高の7122億円になった。同労組によると、地域スタッフの取次数は全体の2割弱を占めるという。
 同労組は21日に都内で開いた記者会見で、7月の参院選で議席を得た「NHKから国民を守る党」が話題になっていることに触れ、受信料の不払いや契約拒否が増えている、というスタッフの声があることを明らかにした。勝木吐夢(とむ)書記長は「徴収の困難度が増している中で新しい基準が運用されると、地域スタッフの収入が減り、制度の維持が難しくなる」と話した。
 一方、NHK広報局は「申し立ての内容について確認しているところであり、現時点ではお答えできない」としている。
(8月21日、朝日新聞)

全日本放送受信料労働組合(全受労)はNHKの集金、契約に従事する労働者から構成される労働組合で、全労連系。

NHKは委託労働者(通称「地域スタッフ」)を法律上の労働者と認めず、従って全受労もまた正規の労働組合ではないとの主張を繰り返している。結果、NHKは団体交渉を拒否して、司法闘争に発展、東京地裁などで不当労働行為が認められたものの、NHKは控訴を続けている。
こうした労働問題があること自体、大手メディアも民主党系の野党なども一切触れず、(残念ながら)NK党とその機関紙のみが取り上げてきた。

NHKは国民に法律によって契約を強制し(近代司法の原理に反する)、一方的に収奪している「受信料」で経営を成り立たせている「殿様商売」をしているくせに、その契約と料金徴収に携わる労働者を「法律上の労働者ではない」と言い放つ反社会勢力である。
それもこれも、N国のような奇抜な政党が100万票を集めて注目され、話題になることで社会的に露見するという始末。
圧倒的な情報収集力に恐怖する既存政党、その政治家に対する影響力をもって総務省と共依存の関係にあること、民放に対する圧倒的な資本力などNHKの独占的地位のなせる業だった。

そのNHKは、いまや「インターネットに接続するものは全て受信料を払え」とまで言い出している。
NHKは一日も早く廃止、ないし分割(国営と民営に)しなければ、近い将来、大きな災いの原因となるであろう。
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2019年08月16日

安倍政権が支持される理由・続

安倍政権が支持される理由」の補足。
安倍政権は伝統的な自民党の統治手法に則っている側面がある。
それは「野党の政策を先取りする」だ。
55年体制下で社会党が政権奪取できなかったことの一因は、自民党が社会党の政策を先に実行したことがある。
特に岸内閣における国民健康保険と国民年金制度は、与党内に強い反発があったにもかかわらず、岸信介のイニシアチブによって強行された。結果、日米安保改正問題で大騒動が起こったにもかかわらず、岸内閣は総辞職するのみに終わり、続く総選挙では自民党が勝利している。これは「日米安保を除けば、自民党で良い」と国民が判断したためだった。

では、現在の安倍政権はどうか。
アベノミクスをまず見た場合、「大胆な金融緩和」によって倒産寸前にある零細企業や地方企業を救済し、雇用を守っている(だから経済成長しないのだが)。同時に物価も安定している(これも経済成長しない理由だが)。
「機動的な財政政策」で公共事業が復活(日銀が建設国債を購入)、伝統的な自民党支持層は一応潤っている。
「成長戦略」もバラマキに近いが、法人税を引き下げ、外国人労働者を緩和し、企業的には万々歳で内部留保だけは増えている(つまり投資先が無い)。

これらの政策は名称とは逆に競争と成長の可能性を犠牲にして、既存の資本と雇用を維持することに重点を置いていることが分かる。となれば、現状維持を優先したいものにとっては安倍政権を支持しない理由が無い。
さらに言えば、今後日本経済が悪化する以外にほぼほぼ可能性が無い以上は、「現状維持を至上とする」霞が関の方針に反対する方がリスクがあると言える。
ゲーム的に言えば、1D6を振って「1」が出れば成長軌道に乗るが、それ以外の場合はすぐに悪化するという選択肢と、「とりあえず現状維持」であるなら、後者を選ぶのが人情だろう。
その意味で、安倍政権は非常に「保守的」なのだ。

雇用については少なくとも数字上は改善しており、2012年の4.4%から2019年の2.4%まで劇的に改善している。
これは基本的には少子高齢化と非正規職の増加による「統計上の失業者の減少」という側面はあるものの、安倍政権を全否定する理由にはならず、全般的にはむしろ評価されているとみるべきだ。
また、今更ではあるが、就職氷河期世代への配慮や中途採用の拡大なども主張しており、本来野党が主張すべき政策を先取りしている。
野党からはダメ出しされつつも、最低賃金を上げる方向で財界に働きかけており、平均的な自民党総理よりはよほど「労働者にやさしい」側面がある。

社会保障についても、野党はこぞって批判しているが、安倍首相は基本的には祖父君の遺訓を受け継いで社会保障の維持に努めているように見える。
少子高齢化が進行する中で、制度そのものを維持するためには支出の抑制が不可欠であり、NK党や社民党が主張する「充実」を行った場合、税による補填が増えるだけで、すぐにも財政破綻するだろう。
日本の場合、例えば健康保険の適用範囲が非常に広く、薬も出し放題で、かなり放漫財政になっている。制度の持続性を考えた場合、保険適用範囲の限定は避けられないはずだ。この点、安倍政権でも進めておらず、安倍政権が本質的には社会保障制度に親和的であることを示している。同制度の大幅な縮小でも主張しない限り、自民党と野党の対立軸は決定的なモノになりにくいだろう。
幼児教育、保育の無償化も同じで、野党の政策であるべきものを先んじて実行している。

全般的に見た場合、2009年の民主党が「いま大手術すれば、日本は復活できる!」と大見得切って、国民の7割以上の支持を受けて政権交代を実現させたものの、蓋を開けてみれば、「何をどう手術して、日本をどう再生させるのか」について全く絵図面を持っていなかったことが判明した。挙げ句の果てに公約破りの増税を自民党と談合して決め、東日本大震災などの不幸があったとはいえ、失業率を悪化させて、わずか3年で自民党に支持が戻ってしまった。
自民党にはその反省があるため(悪夢の民主党政権)、安倍政権は「手術」路線を封印、現状維持=延命路線へと舵を切った。これは言うなれば、「ペレストロイカをやらないソ連」路線であり、いくばくか余命をつなぐことはできるかもしれないが、「それだけ」なのだ。故に、国内の貧困は見えないところで深刻化し、少子化も止まることが無い。
しかし、「手術するよりはマシ」というのが国民の大多数の判断であり、少数派のリベラル派を中心とした潜在的不満の高まりに対し、権威主義と警察権力をもって対処しようというのが安倍政権の本質なのだろう。言うなれば、岸信介の国家社会主義路線のソフト&劣化版と言えそうだ。

ケン先生的には「ペレストロイカをやらないソ連」の末路がどうなるのか、興味深く見守るつもりだ。
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2019年08月01日

関東軍化するNHK

【NHK、受信契約巡りサイトに警告文「違法行為に対処」】
 NHKは30日、受信設備があるのに受信契約をしないのは違法だと警告する文書を公式サイトに掲載した。今月の参院選では「NHKから国民を守る党」(N国)が、受信料を払った人だけがNHKを視聴できるようにするスクランブル放送の実現を訴え、議席を得ている。NHKは文書とN国との直接の関連を否定し、掲載の理由を「最近、誤った理解を広めるような発言が頻繁に聞かれるため」としている。
 文書は「受信料と公共放送についてご理解いただくために」というタイトルで、「『NHKを見なければ受信契約はしなくていい、受信料は支払わなくてもいい』と発言する人たち」を問題視。「『受信料を支払わなくてもいい』と公然と言うことは、法律違反を勧めること」と主張し、「誤った認識を広めるような行為や発言」にはきちんと対応し、「明らかな違法行為」には厳しく対処するとしている。
(7月30日、朝日新聞)

N国の政党化などを受けて、NHK批判が加速する中、NHKが視聴者に対して法を盾に恫喝を始めている。
これは「戦争に協力しないのは法律違反(国家総動員法)だ」という旧軍の主張と何ら変わらない。

NHKは民法に比して過大な資金と人脈を有し、霞が関との繋がりも深いため(東大卒が多い)、放送法やNHK予算などについて大きな影響力を行使し、自分たちに都合の良い制度をつくってきた。
形式上は国会で審議されるため、一見公平な制度に見えるかもしれないが、国会議員は日本最大級のメディアであるNHKを敵に回すと不利になることが多すぎるため、国民の利益が反映されることは殆ど無く、ほぼほぼNHKの要求通りに実現してきた。事実、NHKの予算案などが否決されたことは一度も無く、これは議会の監督機能が機能していないことの証左である。NHKの受信料と放送法の関係について質問しているのは、ケン先生が質問をつくってやってもらった前ボスくらいなものである。
現在では、NHKは一方的にネット配信してネットに繋がるもの全てから料金を徴収しようと画策しているが、これに反対する勢力は国会に無い。
野党は「消費税減税・廃止」よりも「NHK民営化」(年間2万5千円、地上波のみなら1万5千円)を訴えるべきだろう。

放送法と国家によって守られているNHKは本来視聴者であり、購入者である国民に対して謙虚でなければならない。
NHKは民放と異なり、法律によって実質的に料金を強制徴収でき、経営努力の必要が殆どないためだ。
「契約は双方の意思の合致によってのみ成立する」(契約の自由)という近代私法(日本国憲法)の根幹に反してまで、放送法第64条「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定させたのは、旧軍同様の影響力を有するNHKの権威と、「公正中立な放送をあまねく全国民に提供する」建前だった。
だが、昨今の報道を見れば分かるとおり、「公正中立な放送」は既に死文化、いまや大本営発表を垂れ流す一機関となっている上、コンテンツの多様化から「生活に不可欠な放送」でもなくなっている。
にもかかわらず、いや恐らくは「であるからこそ」、NHKは権威主義と不適切な(時代にそぐわなくなっている)法律を盾に国民を恫喝するほかなくなっているのだろう。

本来であれば、NHKの民営化と放送法の廃止を視野において法改正の議論を進めるべきところだが、NHKと癒着する総務官僚や「NHK討論に出られないと困る」「NHKに弱み(スキャンダル)を握られている」政治家によって、放送法やNHK改革に関する議論は完全に封じられている。
これも議会制民主主義の機能不全(政官業の癒着)の表れであろう。

【参考】
NHK受信料をめぐる決定的課題
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2019年06月05日

従業員に年200万も出せない「先進国」

【最低賃金、時給1千円は「全国から悲鳴」 日商が要望書】
 日本商工会議所が28日、最低賃金の引き上げを推し進める政府方針に反対する要望書を厚生労働省や自民党に提出した。経済財政諮問会議では早期に時給1千円にする意見も出ているが、「大幅な引き上げは中小企業の経営を直撃し、事業の存続を危うくする」と訴えている。
 6月にまとめられる政府の「骨太の方針」や、今夏の中央最低賃金審議会に向けて働きかけていく考え。
 政府は2015年、最低賃金を年3%程度引き上げる目標を掲げ、3年連続で3%を超える引き上げを実施した。日商の調査では「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」と回答する企業が毎年増え、今春は38・4%。しかし、この数年の中小企業の賃上げ率は1%前後にとどまる。
 日商は「支払い余力の乏しい中、実力以上の賃上げを強いられている」「全国から悲鳴にも近い声が寄せられている」と指摘した。
(5月28日、朝日新聞より抜粋)

日本の企業(事業者)の99%以上は中小企業であり、被雇用者に占める割合は約7割。そのうち約4割が「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」とのこと。最低賃金は地域や業種で異なるが、おおむね850円から950円程度。月20日労働で換算した場合、年収200万円に遠く及ばない。ほとんど生活保護水準であり、世帯人数にもよるが、「健康で文化的な最低限度の生活」とはかけ離れた生活を余儀なくされる。
この数字だけ見ても、政府統計の「給料は上がっている」「国民は生活に満足している」が虚飾にまみれた大嘘であることが分かるだろう。

これは常々言っていることだが、本来資本主義社会では、こうした低採算の企業や事業は淘汰されて、淘汰されたことで余剰した資本と労働力が、新たな産業や事業に投入されることで、経済成長を遂げるというモデルが想定されていた。
これに対して、ソ連型社会主義では、失業や倒産そのものをイデオロギー的に「悪」と見なし、雇用と企業を完全保護した結果、国民経済と市場の成長が止まり、企業の採算や生産効率は殆ど改善されることなく、長期停滞が続き、国家そのものが頓死してしまった。
実は、日本は果てしなく後者のソ連型社会主義に近づいている。しかも、労働者に対する保護は殆ど無いのだから、「企業社会主義&労働者自己責任」という、企業家天国と言える。

「健康で文化的な最低限度の生活」という憲法理念を具現化させるためには、少なくとも時給1500円と雇用形態に関係なく社会保障の適用を行うべきだが、これを主張するNK党と社民党は殆ど支持されていない。この点は、曲がりなりにもホームレス以外は投票権が認められているだけに、有権者の自己責任と言える部分だろう。

超低賃金で労働環境が劣悪な中小企業が圧倒的多数を占めている現状では、いつまでも低採算の企業が残り、資本と労働力に余剰が生じない。
いわゆる「労働力不足」が生じているのも、この手の低収益企業がゾンビ化して生き残っているためで、超低賃金で労働集約的に働かせるため、生産が効率化されず、労働力に余剰が生じず、賃金が低迷して消費が増えないという構造になっている。
日本は中小企業の割合が他の先進国に比べて大きいと言われるが、それは自民党の基盤が地方の中小企業家に依拠しているところが大きい。その結果、歴史的に中小企業の優遇が行われてきて、制度として固着している。中小企業に対する優遇税制は非常に充実している上、各種補助金も整備されているが、例えばスウェーデンなどの北欧諸国では、中小企業に特化した優遇税制や補助金制度は無いというし、そもそも企業に対する優遇税制や補助金自体が非常に少ないと言われる。
逆に1980年代のソ連では、国家財政の約2割が国営企業の赤字補填に充てられており、ペレストロイカにおける重点改革項目だったが、ついぞ実現できずに終わった。日本は同じ轍を踏もうとしている。

日本の政治家(国会でも地方でも)にとって、最も重要なのは献金してくれる支持者に対して、優遇税制や補助金の適用を斡旋することであり、それが政官業の癒着と腐敗を生むと同時に、地域と国家の低収益構造を構築している。実はこの構造はNK党も当てはまる。

仮に最低賃金のことは脇に置くとしても、規模を問わず企業に対する税制優遇と補助金制度、そして公的融資制度は90%以上撤廃して、低収益・非効率な企業を全面的に淘汰する必要がある。
ソヴィエト学徒からの警告である。

【追記】
5月29日、日経新聞より。
「日本の競争力は世界30位、97年以降で最低 IMD調べ」
「日本は判断基準となる項目別で、「ビジネスの効率性」が46位と低く、ビッグデータの活用や分析、国際経験、起業家精神は最下位と厳しい。IMDは企業の生産効率の向上に向け、働き方改革や人材開発を一層進める必要があると指摘した。「政府の効率性」も38位で、巨額の政府債務や法人税率の高さなどが重しになっている。」
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2019年05月20日

ダメなのは無能な経営者のせいである!

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東洋経済のアトキンソン氏の記事「日本は、「無能な経営者」から改革するべきだ」。タイトルこそ雑誌っぽく煽情的だが、内容はいつものアトキンソン節である。

要は日本の会社というのは、ゼロ金利によってタダ同然で資金を調達、優遇税制を利用して納税を回避。さらに、韓国よりも低い最低賃金や4割もの非正規労働者(社会保障負担回避)、外国人技能実習制度(労基法や基本的人権の適用除外)などを駆使しつつ、労働時間管理が無く、労働組合の組織率が15%強という中で、労働者を超長時間(通勤時間含めると1日12〜14時間)=「定額働かせ放題」にできる。それに対して日本人は文句一つ言わず、政府の調査によれば「高い幸福度」が示されている。

1980年代まで問題が露呈しなかったのは、政治家や官僚や企業幹部が優秀だったからではなく、単に人口増加のメリット(労働力と消費者の安定供給)を無条件に享受できたためだった。
付言すれば、日本は日米安保のおかげで軍備負担が非常に軽く済んだ上、アメリカの軍事力によって担保された西側経済圏の中で超安価な資源を調達できたことも大きい。

そのため、人口メリットが失われ、資源価格が高騰すると、途端に為す術を失ってしまう。
本来であれば、人口メリットの喪失を補うべく、生産性の向上と経営の効率化を進めなければならなかったが、日本は政官財一体の「ぬるま湯」から抜け出せなかった。
こうした状況は西側世界はみな共有していたが、アメリカは全世界から資金を調達して金融工学によってバブルを繰り返すことで延命、西欧諸国はソ連崩壊によって得た東欧諸国を植民地化(安価な労働力と消費市場の確保)したことによって延命した。
これに対し、日本は国内で収奪を強化することで延命を図る。非正規雇用の割合を3倍にして、企業の社会保障負担を激減させ、税制優遇で企業の延命を図り、歳入難は消費税(大衆増税)によって補った。ゼロ金利政策もその一環だった。それでも無能な企業家はなすすべがなく、ついには公的年金の基金をもって国内株を買い漁り、株価を支えるに至っている。

日本の企業経営層が恐ろしく無能なのは、日本の経営者は経営能力や知識とは無縁の存在であるところが大きい。
日本の人事慣習は、管理職を選別する際に管理能力や経営能力を問うことは稀で、「社に対する忠誠(貢献)」や「幹部の受け」によって評価される。言うなれば、AH社の「クレムリン」みたいなものだ。
欧米の場合は、良くも悪くも、経営層は最初から管理専門職、経営専門職として採用されるケースが多く、その代わり失敗した場合も責任を取らされる。だが、日本の経営者は経営に失敗しても、株主総会などで責任が追及されることはまずない。

その結果、無能な経営者が延々と無能な経営を続け、失敗の責任を追及されることもなく、無能者から無能者へと引き継がれる状態にある。
この点は、日本の政治も同じで、例えば日華事変以降の総理大臣を見た場合、

近衛(世襲議員)
平沼(検事)
阿部(陸軍)
米内(海軍)
近衛(世襲議員)
東条(陸軍)
小磯(陸軍)
鈴木(海軍)

というラインナップだが、経歴的に国家運営の知識がありそうなのは大審院院長だった平沼くらいのもので、その平沼は「欧州情勢は複雑怪奇」と言って総辞職してしまう程度の能力だった。残りはどう見ても「国家運営の才覚あり」と認められて首相位に選ばれた感じはなく、かろうじて米内と鈴木が「軍人としてはマシ」というレベルだった。現に鈴木は何度も「器では無い」と拝辞している。
例えば、陸軍は、内務省が昭和初頭に大都市部の道路舗装を進めようとしたところ、「馬の歩行に障害が出るからダメだ」とクレームを付けて大反対している。この程度の連中が国家運営を行えるはずが無い。
戦時中の8年間に総理大臣が8人もいるという無軌道ぶりも、日本型人事システムがいかに危機や不安定期に弱いかを示している。本質的に「有能な者は予めパージする」ところがあるのだろう。

日本もいい加減「いかにして経営と管理のプロフェッショナルを育成、選別するか」という視点に立たないと、手遅れになるだろう。
あ、いや、もう手遅れか(爆)
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