2017年02月23日

10年で倍になる貯金は夢か幻か

C4_sMwqUYAAp4ab.jpg

若人たちがツイッターで、「信じられない」「あり得ない」「夢のようだ」「どこの銀行?」「さすがドラえもん」などと呆然としていたけど、ありますよ(微笑)

ルーブル建てロシア国債が年利7.94%、複利だから10年で2.14倍になりますよ(ドーン)

(本ブログの読者には少ないと思うが)若者向けに補足しておくと、これはドラえもんの未来の道具の話では無く、本当にあった話。

ちなみにこの頃、つまり『ドラえもん』の連載が始まった1970年代初頭に医療技官となった母の初任給が4万5千円、当直手当は500円だった。その9年後には、給与25万円、当直代1万円になったとのこと。つまり、1970年代というのは給料が10年で5倍になり、貯金すれば10年で2倍になる時代だった。まさに「夢の時代」だったのだ。

具体的に見てみよう。郵便貯金の定額貯金3年以上の金利(利子)は、1973年で8%、1978年で4.75%、1990年で6.33%だった。通常貯金(市銀の普通預金に相当)ですら、1973年で4.32%、1978年で2.4%、1990年で3.48%だった。それが今や、定額貯金で0.01%、通常貯金で0.001%である。
実際に計算すると、金利8%の10年複利で計算すると、1万円が21500円になる。4.75%でも15900円だ。現代の0.01%だと、10年預けても10010円である。物価との兼ね合いは別にしても、団塊世代が一生懸命貯蓄に励んだ一方、現代人が貯金するインセンティブを欠くのは当然だろう。

さらに続けると、ケン先生が学部生だった頃(四半世紀前)に比して、現在の大学の学費は170%、給与水準は90%になっており、金利の急低下と相まって、中産階級の子弟が大学に行くためには、自ら借金するほかない構造になっている。
団塊世代は、「教育保険」などで積み立てれば、学費と金利のミックスで、何とか学費くらいは貯金でまかなえたわけだが、今の世代は子どもの学費を積み立てたところで、全く金利がつかない上に、学費は高騰、給与は下がり、雇用は不安定化するという感じで、学費分を用意するのも厳しくなっている。現実に大学生の約半分が、学生ローンを借りていることがこれを裏付けている。

そう考えると、いまどき子どもをつくっている連中には例外なく「財務計画を提示しろ!」と言いたくなる。
そして、低金利時代というのは、それ自体が「夢の無い時代」なのだと言えよう。

【追記】
金利が下がるのは、自由市場が機能していると仮定した場合、資金需要が低下しているためと考えるべきだろう。資金需要が低下しているのは、市場の需要に対し生産力が過剰になっているからだ。これがデフレの原因であるわけだが、デフレ下では利潤効率が下がるため、企業は労働力を搾取することで利潤を守ろうとする。西欧諸国の場合、労働運動が存在するため、容易に搾取できない構造になっているが、日本では労働運動が貧弱であるため搾取が容易になっている。結果、雇用形態の転換(非正規への移行)と長時間労働(労働単価の切り下げ)が横行し、労働価値が急低下、個人消費が低迷し、企業利潤がさらに低下、さらなる労働搾取へと繋がっている。社会主義者としては心苦しいが、「夢の無い時代」は「マルキシズムが機能しない」ことにも一因があると考えられる。
posted by ケン at 00:00| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月17日

化学総連が自民支持を決定

【化学総連は自民を支援 次期衆院選 連合離脱、民進離れ加速も】
 昨年まで民進党最大の支持団体である連合に加盟していた「全国化学労働組合総連合」(化学総連)が次期衆院選で自民党を支援する方針を決めたことが13日、分かった。化学総連幹部が同日、自民党本部で茂木敏充政調会長らと面会し、意向を伝えた。政府が進める働き方改革への要望やエネルギー政策についても意見交換を行った。
 大手化学各社の労組でつくる化学総連(昨年7月1日現在、組合員4万6348人)は昨年5月、春闘などで連合との窓口になっていた「日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)」との協力関係を解消し、連合を離脱した。
 「独自に政策提言したい」との理由だったが、昨夏の参院選に向け共産党との選挙協力を進めていた民進党への不満があったとみられる。産別労組全体の離脱は平成元年の連合発足以来初めてだった。
 連合では最近、「民進党離れ」が加速。神津里季生会長の出身産別である基幹労連が昨年4〜5月に組合員に支持政党を尋ねたところ、自民党が約23%で、民進党の約18%を上回った。
 今月9日には、連合の有力産別である電力総連の小林正夫参院議員が代表世話人を務める民進党の「連合組織内議員懇談会」が野田佳彦幹事長と面会。次期衆院選公約で執行部が検討している「2030年原発ゼロ」について慎重に判断するよう申し入れた。
 一方、神津氏は昨年12月に安倍晋三首相と会談し、働き方改革などで意見交換。同年11月には自民党と連合の幹部が5年ぶりに意見交換会を開き、政策協議を行う機会が急増している。
 神津氏は民進党と共産党との共闘を批判し、連合の次期衆院選基本方針でも「連合が共産党と連携することはあり得ない」と明記。今後、化学総連のような動きが加速する可能性もありそうだ。
(2月14日、産経新聞)

化学総連が連合を脱退した件は、すでに「遠心力働く連合」で扱ったが、早くも自民支持を決定した。
連合が自民党と合一的である理由について」で説明した通り、すでに正社員互助会と化した連合の利害関係は、民進党よりも自民党に近くなっており、連合が民進党を支持する理由はすでに大方失われている。にもかかわらず、連合が民進支持を保持し続けているのは、「野党第一党の最大支援組織」としてのポジションを保つことが政府、自民党に対する最大の影響力となり得るという判断に起因している。だが、もう一つは、「民進支持を止めて自民支持に転じる」だけの交渉コストを支払うだけの体力が、すでに連合に無いことに依る。

化学総連が連合から脱退したのは、もともと巨大な加盟費に比して得られる利益が少なすぎることと、もはや民進党を支持し続けることに組合員の合意が得られなくなっていることが原因になっていると考えられる。
これは化学総連に限った話ではなく、連合傘下の組合の大半に共通する問題で、基幹労連のような右派組合はおろか、いまや自治労やJPでも組合員の2割以上が自民党に投票していると言われ、旧総評や同盟といった枠組みとは無縁であることが分かる(基幹労連も総評だが)。むしろ旧同盟系の方が組合内の内部統制が強固であるため、民進党への投票が多いという話も聞くくらいだ。

「野党第一党の最大支援組織」であり続けたい連合と、選挙に勝つためにはNK党との連携が不可欠になるまで力を失っている民進党の利害は、今後ますます一致点が少なくなってゆくものと見られる。同時に、連合内で「民進支持」の合意が保持されなくなるのは時間の問題であり、「自民支持」に舵を切るか、分裂するかの選択肢を迫られる日が近づいている。
posted by ケン at 13:06| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月16日

赤い貴族は自民党支持

【<次期衆院選>民進に危機感 基幹労連の組合員支持逆転】
 民進党を支持する産業別労組「基幹労連」が昨年4、5月に組合員を対象に実施したアンケートで、自民党支持率が民進党支持率を初めて上回った。民進党関係者は「こうした傾向は基幹労連に限らない」とみており、次期衆院選で党勢回復を図りたい同党は危機感を強めている。
 アンケートでは「支持政党なし」が約53%で最も多く、自民支持約23%、民進支持約18%。安倍晋三首相が経済界に賃上げを直接要請する「官製春闘」が定着し、政府が働き方改革に着手していることなどが、組合員の自民支持につながったようだ。ある民進党衆院議員は「(経済政策)アベノミクスの恩恵で給料は上がっている。比例代表で組合が抱える候補に投票しても、選挙区では民進党の候補に投票しない組合員がどの組織でも少なくないだろう」と指摘する。基幹労連は鉄鋼、造船重機、非鉄、建設などの産別労組。連合の神津里季生会長は基幹労連出身だ。
(2月9日、毎日新聞)

「何を今さら」ではあるが、こうして数字が表になるのは良いこと。長くなるが、過去ログから再掲しておきたい。
連合は民進党に「安倍政権との違い」を求めるよりも、自民党支持に転じて政策要求した方が、はるかに自分たちの主張を実現させられる可能性が高いのだ。実際のところ、今回の新潟知事選にしても、鹿児島県知事選にしても、連合は与党候補を支援している。新潟知事選の場合、連合はまず民進党に原発推進の独自候補の擁立を要求、できないとなると、自民党の候補を支持した。最初から無理難題をふっかけて、民進党を封じて、与党候補の支持に回るというのが、連合のやり口なのだ。
連合はなぜ自民党を支持しないのか) 

連合は、ナショナルセンターの総評と同盟が合流してできたものだが、この二つのナショナルセンターは、戦後和解体制における最大の受益者でもあった。そして、戦後和解体制下で得た正規雇用労働者の「特権」の数々を維持するために、90年代以降の構造改革に積極的に協力していった。非正規雇用を容認する労働法制改悪を容認したのは、正規雇用者の待遇を守るためだった。最低賃金の引き上げに消極的なのも同じ理由から説明される。
電力総連や電機連合が原発を支持し、自動車総連がTPPを支持するのは、まさに「正社員の待遇を守るために経営側に積極的に協力する」という戦後和解体制の慣習そのものなのだ。だが現実には、原発の下請けや自動車工場の期間工や外国人労働者を見た場合、『蟹工船』同様の惨劇がまかり通っており、正社員の待遇は同じ労働者の搾取の上にしか成り立っていない。
つまり、戦後和解体制の残滓となっているのが連合であると解釈すると、分かりやすい。大企業の正社員互助会である連合としては、組合員の待遇を守るためには、今まで通り資本に協力するのが「合理的」であり、それは非正規雇用労働者を積極的に搾取することでしか成り立たない。そのスタンスは自然、野党では無く、自民党や政府に近いものにしかならない。
にもかかわらず、民進党を支持し続けているのは、hanamaru同志が指摘されているように「野党の最大支援組織」というポジションが、自民党に対しても政府に対しても最も有効な交渉材料(カード)であるためだと推測される。そして、その「ムリ」が表面化しているのが、昨今の惨状なのではなかろうか。
連合が自民党と合一的である理由について
 
連合の主な加盟員である、正規雇用労働者というのは、同じ工場で働く期間工や外国人労働者と同質の労働を担いながら、雇用が保障されると同時に、数倍の給与が支払われているものたちであり、それは言うまでも無く、期間工、外国人労働者、下請けに対する過酷な収奪の上に成り立っている。これは、ソ連型社会主義が、農民に対する過酷な収奪の上に成り立っていたことと相似形にある。大企業において、労働組合の役員を担うことが出世の条件になっていたり、縁故採用の核になっていたりするところは、ソ連における「ノーメンクラツーラ」を思い出させる。

その意味では、連合の中でも最右派と目される基幹労連において、自民支持が23%「しか」なかったことと、民進支持が18%「も」あったことは、むしろ驚くに値する。同時に、「支持政党なし」が過半数である事実こそが彼らの非階級性(社会のどの階層にも属している意識が無い)ことを表しているのかもしれない。つまり、根源的には自民党と利害を一致させていながらも、意識はされていない、ということなのだろう。
そして、連合幹部はこの無自覚を利用して、「野党の最大支援組織」の地位を、あるいは交渉カードとして、あるいは民進党の「行き過ぎ」を抑止するストッパーとしての役割を果たすよう、策謀を重ねていると見て良い。結果、連合は自民党・霞ヶ関から「赤い貴族」の地位を配慮されつつ、野党第一党が野党として最低限以上の機能を果たさないよう監視する地位に収まっている。政府による「働き方改革」や「同一労働同一賃金」が骨抜きにされた無内容のものになり、原発再稼働・再建設に舵が切られている事実がこれを裏付けている。

もっとも、上の状況は右派組合に限った話ではない。聞くところによれば、左派系組合の雄たる地方公務員の組合でも、2012年の総選挙では組合員の25%前後が自民党に投票、同14年の総選挙でも20%前後が自民党に投票しているというのだから、状況としては殆ど変わらないのかもしれない。
posted by ケン at 12:23| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月07日

残業規制で状況悪化か?

【残業上限は月60時間、繁忙期100時間 政府が改革案】
 政府は「働き方改革」で、これまで事実上、青天井になっていた長時間労働に制限を設け、残業時間の上限を繁忙期も含めて年間720時間、月平均60時間とする方向で調整に入った。忙しい時には月最大100時間、2カ月の月平均80時間までの残業は認める。労使との調整を経て、年度内にまとめる働き方改革の実行計画に具体策を盛り込みたい考えだ。
 現在の労働基準法は、労働時間の上限を「1日8時間」「1週間40時間」と定めている。ただ、同法36条に基づいて労使が協定(36〈サブロク〉協定)を結ぶと、法律の上限を超えた残業が認められる。
 その残業時間は「月45時間、年360時間以内にするのがのぞましい」としているが、労使間で「特別条項」を付ければ、年6カ月までは青天井にできる。長時間の残業を設定しても罰則がないため、長時間労働や過労死を生む原因と指摘されていた。いわゆる「過労死ライン」と呼ばれる過労死の労災認定基準は、1カ月100時間、または2〜6カ月の月平均80時間とされている。
 このため政府は、労働基準法を改正し、残業時間の上限を原則として「月45時間」「年間360時間」と規定。そのうえで、企業の繁忙期に対応できるよう6カ月は例外を設け、「月最大100時間」「2カ月の月平均80時間」の残業を認める。その場合でも、「年間720時間」「月平均60時間」に抑えるよう義務づける。違反に対しては、罰則を科す。
(1月29日、朝日新聞)

いかにもやる気の無い、表面上だけ取り繕った「改革案」である。
そもそも政府は「過労死ライン」を「月80時間」に設定しておきながら、「月60時間」を上限としている辺りで、いかにも「8掛けしておけばいいだろう」的な安直さが透けて見える。「繁忙期は月100時間まで」「2カ月で月平均80時間はOK」とか、過労死ラインすら無視されている。
月60時間は、月24日勤務と仮定して一日2.5時間、勤務8時間に休憩1時間を加えると一日11.5時間までの拘束が「合法化」されることを意味する。これに通勤時間往復2時間を加えると13.5時間にも達する。
このことは、逆に「年720時間までならノープロブレム」という大義名分を与えかねない危惧があることを示している。

また、違反企業には罰則を科すとしているが、現行、労働基準監督署は規模過少で機能しているとは言いがたく、電通事件を見ての通り、死人が出てようやく出向くレベルでしかない。労基署をよほど拡張しない限り、実効性はほとんど期待できない。

実効性という点では、「残業のアングラ化」も課題だ。現状でも、残業時間の過少申告やそもそも申告が認められない、あるいは労働者の判断で申告しないといった問題が山積している。これは、特に公務労働において著しく、例えば地方公務員の残業時間は、統計上、大ざっぱな全国平均で1時間に満たないわけだが、私が見聞きする限り「月100時間は当たり前」「月200時間以上の人もいた」レベルにある。特に都市部の社会福祉関係部署は相当にブラックな状況にある。先に私制服を着用して生活保護受給者を威嚇していた問題が明らかにされた小田原市の場合、ケースワーカーの定数29人に対し実働は25人だった。これは「まだマシ」な部類かもしれない。学校教員の場合、夜9時とか10時に退校して、夜半まで仕事するケースが報告されている。
民間企業では、「朝5時出社」という例が報告されており、何のことは無い勤務時間がずれただけになっている。

こうしたことが起こるのは、「管理職の命令」と「正規の手続き」という残業の大前提が現実には殆ど無視されているためだ。例えば、労働組合が機能している工場では、たとえ日本でも、定時になると労働組合の幹部が職場を回って、残業の有無を点検、「管理職の命令」「正規の手続き」を確認している。これは、労働組合が殆ど機能していないホワイトカラー職やサービス職ほど、「残業天国」が横行しやすいことを示唆している。
この「管理職の命令」と「正規の手続き」を徹底させない限り、「穴の空いたバケツ」の水を注ぐ結果にしかならないのだ。同時に、残業を命じる管理職の評価を下げる人事評価基準を導入しつつ、違法残業の内部通報制度を確立することが不可欠だ。

要は残業時間上限の問題では無いのだ。
マジで官僚どもは「Sねばいいのに!」と思えてくる。だが、これは単に官僚の問題では無く、「人を使い潰しても生産力を上げろ」という日本国の国家方針に起因しているのである。
posted by ケン at 12:11| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月06日

日立がウラン濃縮技術開発から撤退

【日立、700億円の営業外損失見通し 米国の原発事業で】
 日立製作所は1日、米国での原発事業で2017年3月期に700億円の営業外損失が出る見通しになったと発表した。世界的に原発の新設が鈍っていることを受け、米ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁会社がウラン燃料の濃縮事業から撤退するため。英国での原発新設については、コスト管理を徹底して予定通りに進めるとした。16年4〜12月期決算を発表する記者会見で、西山光秋専務が明らかにした。
 GEが60%、日立が40%を出資する「GE日立ニュークリア・エナジー」が、グループ会社で手がけていた燃料の新しい濃縮法の開発から撤退し、見込んでいた収益が得られなくなったという。損失の計上後、合弁会社の株式のうち、日立の持ち分の価値は約110億円しか残らないといい、「これ以上の大きな損失リスクはない」(西山氏)と説明している。 英国で20年代に4〜6基の原発を新設する計画について、西山氏は「海外で初めての建設で、もともとリスクはある。英国政府やプラントメーカーと協議し、リスク管理を徹底する」と話した。
(2月1日、朝日新聞)

東芝に引き続き日立もダメらしい。
もはや原発はビジネスとしては国内でしか成立しない模様。日立は英国での事業を続行する決意を示しているが、そのコストは天井知らずの状態にあり、攻勢限界点が見えながらも攻撃を止められない指揮官の様相を呈している。
欧米で成立しない原子力ビジネスが日本国内で成立するのは、低めに設定された安全基準がコスト超過を防いでいることと、国民負担が大きいことによる。

原発事業は自由主義経済下では成立し得ないことは自明であり、部分的統制経済下にある日本でも事業が困難になってきていることを示している。ちなみに「部分的統制」というのは、社会保障や電力、あるいは巨大な補助金や政策減税などを指している。
今後も原子力政策を継続できそうなのは、中国、ロシア、インドなど安全保障と統制経済をからめて戦略的に核保有を進める国に限られそうだ。そして、日本はより統制経済と権威主義体制に傾斜しつつ原子力政策を続けるか、現行の自由主義経済を維持して原子力を諦めるか、という選択肢を迫られることになりそうだ。
posted by ケン at 13:06| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月31日

東芝、原子力部門も大幅見直しへ

【東芝 米原発子会社の出資下げへ 事業見直し、道険しく「引き取り手いない」の声】
 東芝が米国の原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)への出資を現在の87%から引き下げる方向で検討していることが分かった。米原子力事業で最大7000億円の損失が見込まれる事態となり、リスクへの抜本的な対策としてWHとの関係見直しを模索する。ただ、損失発覚後のWHの株式引き受け先を探すのは困難で、原発事業見直しの枠組みが固まるまでは曲折がありそうだ。
 東芝はWHが手がける米国での原発建設で工期の遅れなどにより建設コストが増大し、巨額損失につながった。海外を中心に原発事業を大幅に見直す方針で、来月14日に具体的な中身を公表する予定だ。原発事業は社内カンパニーから独立させ、社長直轄の組織とする。巨額損失の元凶となったWHへの統治強化を図るとともに、関係見直しにも着手する。東芝幹部は「株式売却は当然の選択肢」と語る。すべて手放すことも含め検討すべきだとの声もあるという。
 だが、現実的にはリスクの高さが浮き彫りになった原発企業の「引き取り手はいない」(アナリスト)との見方が大勢だ。原発を推進する中国やロシアの企業が浮上する可能性もあるが、安全保障上の懸念があり困難な見通しだ。
 東芝は原発事業の見直しについて、海外で原発建設工事の新規受注をやめ、設計や原子炉の製造などの分野に専念するほか、海外での原発の受注計画も見直す方向で検討中。経営の自立などを見据え、事業の分社も視野に入れる。
(1月31日、SankeiBiz)

東芝は先の臨時株主総会で、半導体部門の分社化を決めたが、原子力部門も大幅見直しの方向を示している。すでに白物家電は美的集団に、メディカルシステムはキヤノンに売却しており、半導体の分社化や海外原子力事業の切り離しなどによって、残るのは社会インフラ、エネルギー事業(海外原発以外)、パソコン、IoTサービスだけになっているが、これも「時間の問題」のように思われる。そもそも債務超過となる恐れが高く、現状でも「かろうじて戦線を維持しているだけ」で、いかなる展望も無い状態にある。

笑えるのは、東芝は昨年3月に半導体メモリーと原子力を経営の柱に据える方針を発表、当時の室町社長は「新生東芝の第一歩を刻みたい」と語っており、それから1年と保たなかったことを示している。末期戦とはそういうものかもしれない。

東芝の原子力事業の失敗は、そもそもウェスチングハウスを相場の2倍とも言われる高額で買収した上、同社と同じく東芝が買収した米ストーン&ウェブスター社による米国内での原発事業が実は超放漫経営だったことが判明、安全基準強化に伴うコスト超過と納期遅延が悪化の一途を辿っている。さらに円安で赤字分が肥大化してしまっている。
東芝の粉飾決算体質は、自らが買収した企業でも常態化しており、傷口を広げてしまっている。

世界最大級の核事故が起きた日本で原発再稼働が進んでいるのは、政府が安全基準を強化せず、国内の電力、原子力事業者にコスト負担を求める代わりに、国民負担を増すことで対応しているため、欧米のような事態(採算割れによる事業者の撤退)は起きていない。
このことは、原子力発電が権威主義と統制経済によってのみ成立しうるものであることを傍証している。
posted by ケン at 12:11| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月10日

世界で増える原発、日本は?

【世界の原発、新増設続く=450基、「脱」は少数派】
 東京電力福島第1原発事故や高速増殖原型炉もんじゅの廃炉で、強い逆風が吹く日本の原発。ただ世界では450基が運転可能で、エネルギー需要が急増する新興国では新増設が相次いでいる。安全面で反対の声はあるものの、ドイツなど「脱原発」は少数派だ。国際原子力機関(IAEA)によると、世界の原子炉は12月25日現在、31カ国・地域で営業運転中か稼働可能な状態。トップは米国の99基で、フランス58基、日本43基、中国とロシアが36基と続く。発電能力は約3億9200万キロワットに達し、全発電量の約11%を占める。
 特に開発を急いでいるのは中国で、世界で建設中の原子炉60基のうち、中国が20基を占める。日本エネルギー経済研究所は「2035年には、中国は米国を抜いて世界1位の原発大国となる」と予測している。11月に日本と原子力協定を署名したインドも日本の高い技術に期待し、国内市場が縮小する日本は海外輸出へ活路を見いだす。反原発運動はインドのほか、共産党一党支配の中国でさえ報じられているものの、両国とも原発利用を拡大する方針に変わりはない。
 福島事故後に脱原発を決めたのはドイツやスイスなどごく一部。原発は世界では、季節や時間帯にかかわらず電力を安定供給する「ベースロード電源」として一定の役割を担っていくとみられ、厳格な安全対策が求められている。 
(12月27日、時事通信)

日本では、福島原発事故を受けて原発の新増設が難しくなっており、安倍政権が国策として原発輸出に取り組んでいるが、ベトナムにドタキャンされ焦燥を強め、イギリスに対して強引な売り込みを図っている。
イギリスの場合、自国企業が原発事業から手を引いてしまったため、日本企業に「商機」が生まれた格好だが、これは原発の安全コストが高騰してコストと採算のバランスが崩壊してしまったことに起因する。
例えば現在、イギリス、フランス、フィンランド、中国などで計画が進められている欧州の次世代加圧水型原子炉の安全仕様は、日本のそれよりもはるかに厳しく設定されており、具体例を挙げれば、安全システムは日本の2系統に対して4系統、飛行機の衝突や内圧に耐える合計の厚さが2.6メートルの2層のコンクリート壁を持つ。
また、福島原発事故を受けて、「コアキャッチャー」なる、炉心溶融が起きても溶け落ちた核燃料が巨大な受け皿に流れ込む装置が備えられる。その上部にある貯水タンクは高温になると蓋が自動的に溶けて弁が開き、コアキャッチャーを水が満たして溶け落ちた燃料を冷やす機能を持つ。

epr-anzensei.jpg

史上最大級の核事故を起こした日本では、コストが高まらないよう、安全基準を低く設定している。新規制基準制定時のパブリックコメントでは、コアキャッチャーの設置義務化を求める意見があったが、無視された。にもかかわらず、総理曰く「世界一厳しい基準」とのこと。原発事故は相応の確率で再発すると見て良い。
安全基準を低く設定できるのは、事故が起きても誰も責任が問われず、刑事訴訟もされないことも影響していると思われる。
posted by ケン at 13:11| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする