2017年01月05日

新年の挨拶2017年:補

【連合会長「頑張れば賃金上がるという常識取り戻す」】
 ことしの春闘について連合の神津会長はNHKのインタビューに「頑張れば賃金が上がるという常識を取り戻すことが極めて大事だ」と話し、基本給を引き上げる「ベースアップ」などを維持することが重要だという考えを示しました。この中で連合の神津会長はことしの春闘で「ベースアップ」に相当する賃上げを4年連続で要求する方針を掲げていることについて、「デフレの深い闇の中で20年近く物価上昇があまりなかった時代が続き、賃上げができないということが繰り返されてきた。ベースアップできるところは4年目も継続させ、定期昇給などの制度も維持し、頑張れば賃金が上がるという常識を取り戻すことが極めて大事だ」と話しました。
 そのうえで、中小企業や非正規雇用で働く人の賃金の底上げや格差是正に継続して力を入れていくとして「去年、大手企業と中小企業の賃上げ率の差を圧縮することができたが、ことしはどうやって持続するかが極めて大きい。賃上げ率はむしろ中小のほうが上になるぐらいの結果を導き出したい」と述べました。春闘の労使交渉は今月下旬に事実上スタートし、4年連続でのベースアップが実現するかや格差の是正が焦点となります。
(1月2日、NHK)

挨拶に補足というのも何ですが、ここは敢えて。

「そんなことより、まず働いた分の賃金がもらえるという常識を取り戻してくれ(赤い貴族に好き勝手なこと言わせるな)」という陳情を頂きました。労働力を収奪することでしか利潤を上げられなくなっているのは、資本主義の後退あるいは末路を意味するものです。
資本主義が成立するためには、生産側の新陳代謝と需要側の拡大が必要なのですが、日本の場合、長期に及ぶ自民党一党優位体制、強力な中央官庁、巨大な補助金制度と公共事業、厳しい解雇規制などがスクラップ&ビルドを阻害、低収益構造を温存し、低収益が故に労働力を収奪するほかなく、それを規制する行政は政官業の癒着構造によりこれを放置しているという状態にあります。
安倍内閣が「働き方改革」などとブチ上げてはおりますが、その推進者は政官業と「赤い貴族」の代表者で占められており、問題構造の利益代表者が行う「改革」は必ず失敗します。本来であれば、1990年代により多くの企業や銀行が倒産するところでしたが、これを最小限に止めた結果、工場を海外に移転させただけで、巨額の公費がつぎ込まれて基本的な低収益構造は温存され、資本や労働力が新規ビジネスに移転することなく、今日の衰退を招いています。社会主義ポーランドが1981年に「国営企業更正・破産法」を導入したものの、手遅れになった故事が思い出されます。

余談になりますが、ポーランド統一労働者党は1970年代に西側から巨額の借款を得て、旧式の重工業に投資してことごとくパーにしてしまいました。ところが、現代日本も例えば本四連絡線を3本も架けてしまい、その負債は4兆円を超えて現在も増え続けているわけです。人のことは笑えません。

本来の労働運動は「働いた分の賃金をきっちりもらう」「人間らしい生活が保障される」ことを目的としています。1920年、日本初のメーデーが要求したのは「8時間労働制の実施」「失業の防止」「最低賃金の導入」でしたが、実現できているのは「失業者の4人に1人しか受給できない失業手当」と「人間らしい生活に必要な額の半分程度、しかも5人に1人しか受給できない生活保護」でしかありません。

私などが言うまでもありませんが、今日「働いた分の賃金がもらえる」(きちんと残業代が支払われる)、「長時間労働が強要されない」(定時に帰れる)などという職場は、国内に工場が残っている、海外移転を免れた超少数の製造工場くらいなものであり、それすらも期間工、派遣工や外国人労働者に対する過酷な収奪の上に成り立っています。
数字にして言えば、6千万人いる労働者のうちの6百万人しかいない連合が「労働者の代表」と主張している点で、自称「ボリシェビキ」(多数派)なのです。これでは、旧ソ連の官製労組と同じで、労働組合として全く機能しないのは当然でしょう。
社会主義ポーランドで自主管理労組「連帯」が誕生したのは、官製労組が全く機能しなかったからですが、日本の場合、連合組合員の利益はほぼ経営側と一致してしまっているため、「連帯」は「連合の外」につくる必要があります。

つまり、日本の労働運動は1920年に立ち戻り、「賃金と残業代を全額払え」「定時に帰らせろ」「失業手当を100%出せ」から始めるべきなのです。
今年もここから始めますので、よろしくお願いします。

【参考】
・ポーランド危機をめぐる経済情勢 

【追記、1月6日】
共産党系の国公一般労組のデータですが、ご参考までに。
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posted by ケン at 11:47| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月08日

十三時間勤務是正もとめてストライキ

【臨港バス36年ぶりにストライキ 4日始発から運休】
 川崎鶴見臨港バス(神奈川県川崎市)の労働組合は4日朝から、最長で24時間のストライキに入った。同組合のストは1980年4月以来、36年ぶり。川崎や横浜市内を走る全系統のうち1系統を除く40路線が始発から運休となった。同社によると、労働条件を巡る労使交渉が解決しなかったという。同組合は「朝と夜の通勤ラッシュ時間帯を同じ乗務員が担当し、長時間拘束される勤務が多い。週当たりの拘束時間を減らすダイヤや勤務体系を求めたが、理解を得られなかった」としている。
 終日続けば4148本が運休し、影響人員は約10万人。労使交渉は解決せず、ストは日没後も続いた。多くのバス路線の発着点が集中するJR川崎駅では早朝から、それぞれの乗り場の案内板に「当社組合がストライキを行っております」とのビラが張り出された。駅東西のロータリーには非組合員の管理職3人が乗客に頭を下げながら事情を説明して回った。
 川崎駅と水江町を結ぶ系統沿いに住む30代の男性は「夜勤明けで帰宅するところ。弱りましたね」。60代の会社員は「これから工場に出勤しなければいけないのに。タクシーに切り替えて行きます」と足早に去って行った。5日は始発から平常通り運行する予定。
(12月5日、神奈川新聞)

「公益」を重視するなら、マスコミは労働組合側の要求を正確に報じるべきである。
川崎鶴見臨港バスのストライキに際し、組合が要求したのは「13時間勤務の是正」「週3に及ぶ中休勤務の是正」だった。

中休勤務とは、一般的には「中抜け」などと呼ばれる勤務体系で、本数の多い早番と遅番のみを担当する。この場合、朝5時半に出勤し、11時まで乗車した後、休憩挟んで17時から22時まで勤務、23時頃に退社するというもので、実働は11時間半だが、身体拘束は17時間半に及ぶ。
この他に、朝6時から22時まで連続16時間の「通し勤務」や、午後12時から深夜1時まで連続13時間の「遅番」などがある。

中休勤務を週3として、上記の「通し」と「遅番」を一回ずつ入れ、休日を2日とした場合、実働時間は63.5時間となり、国交省の「1週間当たりの拘束時間は原則として65時間を限度とする」規定に適うが、「中抜け」を拘束時間に含めると81.5時間に達する。しかも、この場合、勤務日はまず子どもの顔を拝むこともできない。
「週3に及ぶ中休勤務の是正」とはこういうことを意味するのであり、それを報道しなければ、ストライキの意味は伝わらないだろう。

ストをやるということは、経営側が要求を拒否したことを意味する。1886年に米国で行われた第一回メーデーの要求が「14時間勤務の是正」であったことを思えば、凄まじい先祖返りを起こしていることが分かるだろう。
この意味でも戦後和解体制は瓦解しているのである。
posted by ケン at 12:34| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月05日

奴隷の次は下放?

【若者を地方に「地域おこし協力隊」が交流イベント】
 都市部の若者らが地方に移り住んで地域の活性化に取り組む「地域おこし協力隊」の隊員らが参加して交流を深めるイベントが、東京都内で開かれ、全国の隊員たちが日頃の活動の様子を披露しました。
「地域おこし協力隊」は、都市部の若者らが自治体の募集に応じて地方に移り住み、最長で3年間、国の支援を受けながら、住民の生活支援など地域の活性化に取り組むものです。
27日は、全国の協力隊の隊員や自治体の関係者ら1100人余りが参加して、交流を深めるイベントが、東京・日本橋で開かれました。この中で、高市総務大臣は「地方から若者が流出し、豊かな自然や独自の文化といった地域資源を生かして地方を盛り上げる担い手が不足している。協力隊の皆さんの取り組みを精いっぱい応援していきたい」と述べました。
会場には、隊員らが作った特産品や、日頃の活動内容などを披露するコーナーが設けられ、このうち鹿児島県西之表市のコーナーでは、隊員らが地元特産のさつまいもで作ったスイーツを販売していました。
総務省は、4年後には協力隊の隊員を4000人に増やす目標を掲げていて、地方への人の流れを一層加速させたい考えです。
(11月27日、NHKニュース)

エリートが考えることはどこでも似たようなものになるらしい。「外国人技能実習」という名の奴隷制を拡充する一方で、若年者を徴集して過疎化した地方に入植させる計画が進められている。
この制度は、自民党麻生政権時に導入され、民主党政権を経て今日に至っている。現在では毎年2千人以上が従事している。基本的には、自治体ごとに募集され、採用されると「地域おこし」に協力する名目で、地場産品の販売、農漁業支援、住民交流などに従事することになっている。任期は最大三年で、そのまま地域に定住することも視野に入っている。
だが、その実態は、年間200万円ほどの手当が渡され、仕事と言えば過疎化した地域の公民館で唯一人で管理人をやらされたり、過疎化した村で老人たちの奴隷にされてこき使われたり、あるいは単に自治体の小間使いにされたりという惨状が報告されている。また、自治体側が提供することになっている住宅も、ロクに手入れされていない廃屋同然の家やアパートというケースが後を絶たない。
主旨としては、協力隊員が自主的に地域おこしのアイデアを出して行動することになっており、活動費も出ることになっているが、殆どの場合、提案は無視され、ロクに活動費も出されずにただ奴隷のように使われるのだという。地方や自治体からすれば、地元の人間や正規職員がやりたくないような仕事を、外部の若者に押しつけて、しかも経費は国が出してくれるのだから、「使い勝手のいい奴隷」と考えるのは自然の流れだろう。
例のごとく政府は成功例しか提示しておらず、実態を把握し、追及してゆく必要がある。
posted by ケン at 12:37| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月28日

カジノ解禁でも第二自民党

【民進有志がカジノ推進議連=「一日も早く審議を」】
 民進党の有志議員が24日、カジノを含む統合型リゾート(IR)を推進する法案の早期成立を目指し、議員連盟を発足させた。保守系議員を中心に約40人が参加。会長に就いた長島昭久元防衛副大臣は衆院議員会館で開いた設立総会で、「カジノ法案は成長戦略の目玉だ。一日も早く国会で審議入りすべきだ」と訴えた。自民党などが審議入りを求める同法案について、民進党執行部は「国民の理解が醸成されていない」(蓮舫代表)と慎重姿勢だ。議連の幹事長に松野頼久元官房副長官、顧問に前原誠司元外相がそれぞれ就任するなど、中心メンバーには執行部と距離を置く議員が顔をそろえており、党内対立の火種となる可能性がある。 
(11月24日、時事通信)

賭博法でバクチを禁止しておきながら、競馬や競輪は「公営」として例外的に認めている時点で「解釈改法」の疑いがあるのに、さらに「公設民営」(民間委託)まで拡大解釈するという、倫理も道徳もない法案なのだが、またぞろ電通が背後で糸を引いているらしく、ほとんど報道ベースに乗らないし、まして批判的な意見など表にならない。
カジノ解禁については、すでに何度も述べているが、一部再掲しておきたい。
日本におけるギャンブル依存症の割合は飛び抜けて高いことが挙げられる。2012年に厚生労働省が行った調査によれば、米欧諸国におけるギャンブル依存症の割合が1%前後であるのに対して、日本では5.6%にも達しており、実数で言えば550万人以上に上るという。そして、その8割がパチンコによるものと考えられている。心療内科医に依存症として認定された人がそれだけいるということは、その倍以上の人が「依存症予備軍」にあると見て良い。また、同依存症患者の中で、賭博資金を得るために窃盗や横領などの違法行為に走った経験のあるものの割合は、男性で63%、女性で31%に上り、ギャンブル中毒と犯罪の密接な関係を証明している(厚労省調べ)。
競馬であろうがパチンコであろうが、一度依存症になってしまえば、それは「ゲーム」ではなく、「半永久的に続く中毒患者からの収奪」になってしまう。最近では競馬場などに銀行のATMなどが存在するのだから、むしろ中毒と収奪を促進している観すらある。
一般論で言えば、正業に就いている者はパチンコや競馬・競輪等に通うヒマなどあるはずもなく、現実には就業が不安定な低所得層や主婦、高齢者ほどギャンブルにはまりやすい構造になっている。
他方、例えばカジノを合法としている欧米諸国ではデポジット制を採用しているところが少なくなく、その場合、一定額を先に納めることが入場の条件となっており、貧困者の入場規制や中毒対策への配慮がなされているが、日本では一切採用されていない。
カジノ法という焦土政策

「賭博依存症対策を充実させるから大丈夫」という連中の主張は、長時間労働を放置して「過労死対策するから大丈夫」という政府のスタンスと同じで、国民を絶望と死に追いやってでも収奪しようとする意志の表れだろう。

深刻なのは、これが自民党だけでなく、衛星政党の維新はもちろんのこと、民進党内にも少なからぬ支持者がいることである。この連中の認識は、

「エリートの生活水準を維持するためには、貧困層から収奪するほか無い」

というところにある。もともと金持ちには、宝くじやパチンコなどやるものなど殆どおらず、99%以上は中低所得層で、特に低所得層ほど依存度を高める傾向がある。これは、「貧すれば鈍する」で、行動経済学でも「行き詰まるほど、分の悪い賭け(倍率の高いレート)に誘惑さやすくなる」と説明されている。

国家官僚を筆頭に、一国の政治家がこぞってギャンブルを推奨するなど、すでに国家の倫理が破綻(モラルハザード)していることを意味する。同時に、賭博を解禁して中低所得層から収奪することでしか市場を活性化できない時点で、経済政策も破綻しているのだ。

「水は低きに流れる」だけに、いかなる国家体制であれ、政治家と官僚は高い倫理観を持つように心がけるべきであり、それは特に政策面で発揮されるべきだ。日本人は、舛添前都知事のような個人的腐敗には時として恐ろしく厳しくなるのに対し、東電や東京五輪のような組織の腐敗やモラルハザードには恐ろしく無関心である傾向がある。これでは、国も滅ぶであろう。
そして、民進党はマジで要らない。少なくとも連中は自民党に行くべきだ。

【参考】
・カジノ法という焦土政策 

【追記】
どうしてもやるなら、賭博禁止法を廃止するのが先だろうに。立憲主義が聞いて呆れる。法律家は、「戦争法」も結構だが、こっちも問題視すべきでしょ。
posted by ケン at 13:15| Comment(5) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月10日

問題は奴隷制度そのものに

【技能実習制度から失踪外国人が最多 消えた中国人、5年間で1万人超】
 働きながら技術を学ぶ「技能実習制度」で来日した外国人の失踪が昨年5800人を超え、過去最多に上ったことが30日、法務省への取材で分かった。全体の約半分が中国人で、現行制度成立後の統計によると、平成23年からの5年間で計1万人超が失踪している。多くが不法滞在となっているとみられ、国内の治安にも影響を与えかねないことから、捜査当局は警戒を強めている。
 法務省によると、昨年失踪した技能実習生は5803人で、これまで最も多かった一昨年の4847人を約千人上回った。失踪者数は23年に1534人だったが年々増加しており、5年間で4倍弱となった。昨年の失踪者を国別にみると、中国が3116人で最も多く、ベトナム(1705人)、ミャンマー(336人)と続いた。中国人実習生の失踪は26年には3065人で、2年連続で3千人を突破。23年から5年間の累計は1万580人となった。
 技能実習生の摘発も絶えず、26年の摘発者数は全国で961人に上り、25年の約3倍に急増。期間を越えて国内に居続ける「不法残留」や、実習以外の仕事をする「資格外活動」などの入管難民法違反罪が約4割を占める。空き巣などの窃盗罪で摘発されるケースも多い。一方で、実習生は人件費が日本人と比べて安いことから、労働条件の悪い人手不足の現場に投入されるケースが続発している。こうした状況の中で政府は、受け入れ企業・団体の監視態勢強化▽対象職種の介護分野への拡大▽滞在期間の延長−などを盛り込んだ外国人技能実習制度の適正化法案と入管難民法改正案を国会に提出。今月25日の衆院本会議で可決されており、今国会中に成立する見通しだ。
(10月31日、産経新聞)

突っ込みどころが満載すぎ。本制度における奴隷的扱いが問題になっているのに、奴隷の逃亡防止と管理強化を行うばかりで、奴隷制度そのものはむしろ拡充しようというのが今回の改正案である。

技能実習制度は、本来「技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもの」だが、実態はただの奴隷労働。事務所にも「外国人をタダ同然で5年間働かせられるんでしょ」「労基法は適用されないんでしょ、うちにも入れたいんだけど」みたいな話が来る。労働や人権に対する日本人の感性は、戦前から殆ど進歩していないような気がする。

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厚労省、経産省、法務省、地方公共団体などにまたがっているため、所管や責任の所在が不明確になっていることがますます事態を悪化させている。さらに、上のような陳情を受け、嬉々としてあっせんする国会議員が選挙に強くなって再選され、人権や人道問題を訴える候補は落選するため、ますます腐敗と癒着の根が広がる構図になっている。これが民主主義だとすれば、やはり行き着くところはナチス・ドイツかユーゴスラヴィア内戦でしかないのかもしれない。

【参考】
奴隷制度は廃止あるのみ! 
奴隷制度は廃止あるのみ!・続 
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月07日

8時間労働制も達成できない先進国

「連合が自民党と合一的である理由について」で触れたが、日本政府は2016年現在に至ってもなお、ILOの国際労働条約第1号「8時間(週48時間)労働制の導入」(1919年)を批准していない。
約100年前の1920年、日本で初めて開催された本格的メーデー(労働組合が主催)で掲げられたアピールは、

・8時間労働制の実施
・失業の防止
・最低賃金の導入


であり、少なくとも8時間労働制はいまだ実現できていないことを、政府自身が認めている。そもそも労働基本権そのものが、GHQ改革によって「仕方なく」導入されたものなだけに、どこまでも労働者の権利に対して消極的なのだろう。その意味で、明治体制を否定・解体することなく、形式的あるいは外形的にデモクラシーを導入してしまった戦後改革が、その限界を露呈して先祖返りを始めてしまっているとも言える。
この点について政府がどう説明しているかと言えば、「変形労働時間制があるため」である。では、変形労働時間制とは何か。

労働基準法第32条は、日8時間、週40時間の上限規定があるが、実はこれには例外規定がある。例えば、一カ月の平均で1日8時間や週40時間を超えないのであれば、1日10時間であれ、1週50時間であれ、労基法違反には問われない。同時に時間外労働の割増分も支払わなくて良い。これは、一カ月単位の制度なら就業者の権限によって就業規則に加えることが可能だし、一年単位のものであれば労働組合と協定を結べば導入可能になっている。もっとも、この場合も施行規則で、日10時間、週52時間の上限が設定されているが、あくまでも施行規則でしか無い。
この制度は、本来繁忙期と閑散期のある工場などを想定して導入されたものだったが、現実にはこれがあるために労基法違反の立証が難しくなってしまい、労基署も「見て見ぬフリ」を決め込む理由にしてしまっている。

また、今日では変形労働時間制の別バージョンとして、裁量労働制やフレックスタイム制が認められており、今回政府が準備している労基法改正案では、裁量労働制の大幅な適用拡大がなされるという。言うまでも無いことだが、裁量労働制とは労働時間の概念そのものを撤廃するものであり、圧倒的多数の労働者にとっては無間地獄を招来するものでしかない。

つまり、従来は変形労働時間を理由に「8時間労働」を否定し、今後は裁量労働制を理由に否定しようとしているのが日本政府なのだ。要は、「いかに労働者をより安く、より長く使えるようにするか」を追求するためには、労働者の権利など一顧だにする必要が無いというスタンスなのである。

【追記】
そもそも霞ヶ関の中で最もブラックな労働環境にある厚労省のヤクニンに、労働法改正をやらせること自体が無理な話なのだ。
posted by ケン at 12:37| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月28日

連合が自民党と合一的である理由について

連合はなぜ自民党を支持しないのか」(何故か凄い読まれている)の補足の意味を込めて。

日本で初めて開催された本格的メーデー(労働組合が主催)は1920年のことだったが、その際掲げられたアピールは、

・8時間労働制の実施
・失業の防止
・最低賃金の導入


だった。その100年後を見てみると、

・12時間労働
・4割が非正規(不安定)雇用
・生活保護以下の最賃


である。さすがに大正時代に比べれば、法律や制度は整備されたものの、その実施は担保されておらず、特に非正規労働者の実態は大正期からどれほど進歩したと言えるのか全く自信が無い。その労働法制にしても、全てGHQ改革によってもたらされたものであり、労働運動の成果では無かった。ナショナルセンターの一つである総評からして、「民主化には、民主的なナショナルセンターが必要」との理由からGHQの肝いりで創設されたものであり、労働者が自らの階級性を自覚したことによって発現したものではなかった。
なお日本で初めて就業規則で8時間労働を定めたのは、川崎造船(現重工)で1919年のことだった。当時の川崎神戸造船所の労働争議は凄まじいものがあったらしく、あくまで労働組合が戦って獲得した成果だった。

国家として見た場合、戦前期かたくなに労働基本権を認めてこなかった政府だが、敗戦を経てGHQの指導下に入り、その強い指導を受けてようやく労働基本権の法制化を始めた。ところが、日本政府は現在に至ってもなお、ILOの国際労働条約第1号「8時間労働制の導入」(1919年)を批准していない。これが未批准なのは「古い条約だから」ではない。例えばグアテマラは1988年、チェコとスロヴァキアは1993年に批准しており、あくまでも日本政府の意志で批准していないことが分かる。恐らくは、「GHQに言われて仕方なくやったことだ!」という意思表示なのだろう。

とはいえ、戦後まがりなりにも労働基本権が認められ、ナショナルセンターが成立し、労働運動は60年代までには鎮静していった。これは、いわゆる戦後和解体制の成立が大きく寄与している。戦後和解体制は、資本が労働者の権利と待遇を保障する代わりに、労働者が資本に協力することで成立していたが、戦後復興と冷戦構造(社会主義陣営の存在)の中で資本側が妥協した側面が大きい。
日本では、企業福祉の充実が図られる一方で、労働組合の経営協力が進んでいった。これにより企業の安定経営が保証される一方で、個々の労働者の権利を保護するという労働組合の存在意義は急速に失われていった。
そして1990年代以降、社会主義陣営の瓦解を受け、戦後和解体制も急速に解体されていった。ソ連という敵が失われた以上、資本からすれば「飼い犬」に余計なエサをやる必要がなくなった。また、グローバル化の進展によって第三世界からの搾取が難しくなり、労働賃金の国際的フラット化が進んだことで、自国の労働者を搾取することでのみ利潤を上げることができなくなったという環境も大きく影響している。
90年代以降の構造改革により不安定雇用の割合は5%から40%に増え、労働組合の弱体化と「資本化」により違法労働や過剰な残業が放置されるところとなっていった。業務請負などの形態が増え、最低賃金すら適用されないケースも急増している。

そこで連合である。連合は、ナショナルセンターの総評と同盟が合流してできたものだが、この二つのナショナルセンターは、戦後和解体制における最大の受益者でもあった。そして、戦後和解体制下で得た正規雇用労働者の「特権」の数々を維持するために、90年代以降の構造改革に積極的に協力していった。非正規雇用を容認する労働法制改悪を容認したのは、正規雇用者の待遇を守るためだった。最低賃金の引き上げに消極的なのも同じ理由から説明される。
電力総連や電機連合が原発を支持し、自動車総連がTPPを支持するのは、まさに「正社員の待遇を守るために経営側に積極的に協力する」という戦後和解体制の慣習そのものなのだ。だが現実には、原発の下請けや自動車工場の期間工や外国人労働者を見た場合、『蟹工船』同様の惨劇がまかり通っており、正社員の待遇は同じ労働者の搾取の上にしか成り立っていない。

つまり、戦後和解体制の残滓となっているのが連合であると解釈すると、分かりやすい。大企業の正社員互助会である連合としては、組合員の待遇を守るためには、今まで通り資本に協力するのが「合理的」であり、それは非正規雇用労働者を積極的に搾取することでしか成り立たない。そのスタンスは自然、野党では無く、自民党や政府に近いものにしかならない。
にもかかわらず、民進党を支持し続けているのは、hanamaru同志が指摘されているように「野党の最大支援組織」というポジションが、自民党に対しても政府に対しても最も有効な交渉材料(カード)であるためだと推測される。そして、その「ムリ」が表面化しているのが、昨今の惨状なのではなかろうか。
posted by ケン at 13:15| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする