広中 一成『後期日中戦争 華北戦線 太平洋戦争下の中国戦線2』 角川新書(2024)
華中における1941年以降の日中戦争を主題にした前作に対し、本作は華北を中心に41年以降の日中戦争を描く。
最も異なるのは、中国共産党とそのゲリラの存在である。
華北地域は単純に地図だけ見ると、日本軍の制圧下にあるように見えるが、実際には1941年の段階ですら、主要都市部を除くと、日本軍の支配下にあったのは2割以下で、残りの半分が混在地区、もう半分がゲリラ支配下という具合にあった。
帝国政府や陸軍の資料だけ見ていると、その実態は全く把握できない。
実際、大陸帰りの陸軍軍人たちは平気で「俺たちは負けてない(海軍が勝手に負けただけ)」みたいなことを述べているので、ますますネトウヨどもをイキらせる話になっている。
だが、44年後半には、日本軍支配地1、混在地3、ゲリラ支配下6とかになっている。
"A Distant Plain"や"Fire in the Lake"をプレイしている我々はこうした状況がよくイメージできる。
どちらのゲームでも、カーブルとサイゴンだけは米軍支配下にあるものの、その他は傀儡政権軍任せで全く頼りにならない。
その一方で、ゲリラは雲霞の如く湧いてきて、米プレイヤーは「俺になにしろと?」という状況に置かれる。
私としては、アメリカが勝つ図が全くイメージできない。
これと同じような状況にあったはずだが、「俺は負けてない!」と言える日本軍人は頭おかしい。
話を戻すと、本書のメインは中共八路軍によるゲリラ戦と日本軍による「治安戦」(現代に言うCOIN)である。
治安戦は多くの日本側兵士が回想を拒否するほど凄惨で、村を丸ごと焼き払い、虐殺し、奪いつくす。
ゲリラ戦は敵が見えにくいので、普通に毒ガスや細菌を使うので、さらに被害が増大する。
中国で公開された731部隊の映画は酷い代物だったようだが、日本人は先祖がBC兵器を中国で多用していた事実をよく知っておくべきだろう。
前作同様、日中戦争後半の知識は非常に少なく、特に体系的に書いたものは少ないだけに貴重な一冊である。
【目次】
はじめに
序章 「後期日中戦争」前の華北戦線
第一章 八路軍との容赦なき戦い――河北省
第二章 戦争犯罪の戦場――山東省
第三章 災害との戦い――河南省
第四章 「鬼」と「鬼」との化かしあい――山西省
第五章 終わらない「後期日中戦争」
おわりに
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