2021年02月20日

ティム・ワイナー『CIA秘録 その誕生から今日まで』

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ティム・ワイナー『CIA秘録 その誕生から今日まで』(上下) 文春文庫(2011)

諜報によって第二の真珠湾攻撃を防ぐべく創設されたアメリカ中央情報局=CIA。だが、その60年に及ぶ歴史は、失敗と欺瞞の連続だった。トルーマンからクリントン、ブッシュJr.の時代まで、超大国の諜報機関がいかに転落の道を歩んだか、5万点を越す機密解除文書、300人以上の証言など、すべて実名の情報で明らかにする驚愕の書。


半生を諜報分野の取材に費やしたジャーナリストによるノンフィクション。
誕生から2003年のイラク戦争あたりまでを描いているが、まだ現役の人間もいたりするのに全て実名というところが、アメリカのアメリカたる所以だろう。
CIAはほぼほぼ全否定の勢いだが、その内容は真に迫っており、機密解除文書やインタビューなどで裏付けられているだけに、全てを否定するのは無理がある。

諜報分野でも、特に現場諜報とも言える現地にスパイを送り込んだり、現地に協力者をつくって収集する手法は困難を極める上に正確さを欠き、逆にカウンターインテリジェンスで虚偽情報を掴まされることも多かった。
政府転覆やクーデターなどの陰謀、工作は、現代人が信じているような成功率はなく、むしろ失敗が大半で、失敗が隠蔽され、成功例のみが喧伝されてきたことによる神話だった。
また、政治の要請によって情報を捻じ曲げたり、権力者に都合の良い報告書が上げられることで、政治判断のミスを誘発、それが諜報部の責任に転嫁され、諜報部門の信用低下から政治家が情報そのものを信じずに失敗するという連鎖。

「CIAがいかにダメだったか」と読むことも可能だが、私などは「国家が諜報機関を持ち、権力者が有効に効率的に使う」ことの難しさを実感した次第。そして、必要な人材を育成し、組織として維持していくことの困難さ。
諜報はカネをかけないと期待される効果は上がらないが、カネをかけたところで成功率がそれほど上がるわけではなく、ましてや全世界の情報を収集し、工作することなど不可能なのだ。
個人的には、情報収集と陰謀工作を同じ組織が担うことに無理が感じられた。

日本でも長年諜報機関の創設が謳われてきたが、様々な制約から実現していない。
しかし、米中露に挟まれた日本こそが諜報組織を必要としているはずであり、その一参考として本書は非常に有用であると考える。
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2021年02月16日

日本はすでに先進国ではない

【科学技術先進国「幻想」思い知らされた日本】
 自民党国防部会長の大塚拓衆院議員は毎日新聞政治プレミアに寄稿した。コロナ禍で日本のデジタル化の遅れがあらわになったとして「日本は科学技術先進国というのは幻想であることを思い知らされた」と語った。
 大塚氏は昨年9月まで副内閣相として、デジタル化の推進のための規制改革などを担当した。「テレワークの環境が整っておらず、必要以上に求められるはんこなどデジタル化を阻む制度・慣習も多い。オンライン診療もなかなか進まない」と言う。「デジタル化が当然のように世界中で受け入れられているのに対し、日本は私の感覚では20年遅れている」と指摘する。
 「中国をはじめ米国、ヨーロッパ諸国も科学技術関連の予算を大きく伸ばしてきた。しかし、日本はほぼ横ばい。このままでは、ますます科学技術大国を名乗れなくなってしまう可能性がある」と語った。
(2月4日、毎日新聞)

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科学技術・学術政策研究所HPより

日本の研究開発費は1990年代以降、微増にとどまっている。2000年の研究開発費(実質)を1とした場合、2017年のそれは1.3に過ぎず、中国の10.8、韓国の4.0に大きく劣る。アメリカは1.5を保っているが、いまや中国に追いつかれ、追い抜かれようとしている。

2016年の対GDP比を見た場合、日本は3.4%で韓国の4.3%には劣るものの、中国の2.1%を大きく上回っている。これは、中国のGDPがそれだけ大きくなったことを意味しているのだが、日本はGDPの母体そのものを大きくしない限り、研究開発費の増額は難しいことをも示している。

特に日本の場合、今後急激な少子化による国内市場の縮小が見込まれているだけに、開発投資するインセンティブに欠けてしまうのは避けられないだろう。
実際問題として、記事にもある通り、デジタル化やオンライン化では中国や韓国に大きく差をつけられており、日本が優位に立てているのは内燃自動車のような旧世代の技術においてばかりとなっている。
旧式技術の優位性があるために、新世代技術に移行できない問題は、第二次世界大戦期のイギリスやフランスを彷彿させる。

日本はすでに新技術や体系を学ぶために中国や韓国に留学する時代を迎えているはずだが、大衆がそこに気づくにはあと30年以上かかりそうな気配である。
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2021年01月23日

全てはドケチゆえに

中国発の“闇流通”も横行、欧米は日本の投資額の100倍 新型コロナワクチンの開発を巡る課題を識者に聞く
(ITmediaビジネス、1月9日)

長いので全ては引用できないが、
米国政府は1兆円を投じ、ファイザーも自腹で2100億円の資金を調達しました。欧州は日本を含む各国から約1兆円をかき集めて投資。中国は国を挙げておそらくそれ以上を投資して開発を急ぎました。一方、日本は20年の2、3月に国としてワクチン開発に使った予算は約100億円程度、しかもこれを基礎研究者、医師主体の評価委員会にかけて、いくつかの産学のチームに振り分けました。投資額だけでも日本と比べて100倍大きい。特に初期投資においての投資規模の格差が明らかにあります。

結局のところ、昭和帝政のドケチ構造=誤った資源配分が全てにおいて失敗と衰退の根源をなしている。

ちなみに日本の科研費における研究計画書の一段審査員の報酬は審査1件あたり500円で、10件見ても5千円。ある先生は「2週間丸々潰して200件見て10万円だった」とこぼしている。なお、香港政府の科研費審査は1件一万円だったという。まぁそういうことだろう。
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2021年01月19日

日本の博物館は遠からず半減以下に?!

みずほリサーチ「持続的な博物館経営に関する調査」(2019)

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・年間で資料購入に充てられる予算が100万円未満の博物館が8割
・博物館の半分は資料を全く買えない
・事業収入が100万円未満の博物館が4割以上
・6割以上の博物館が調査・研究費ゼロ

ソ連の「インフラ墓場」を笑えなくなっている。。。
確かにバブル期前後や、自治体の合併期に博物館が粗製乱造された嫌いはあるのだが、結局維持費が払えなくなっている。
地方空港などと同様に、非現実的な需要予測をでっち上げて、「建てることありき」で議論が始まり、業者と政治家の癒着、さらには公務員の天下りもあいまって、必ずしも必要ではない公共施設が乱造され、維持費ばかりが肥大化していく日本の地方。

どう見ても半分は維持できそうにないが、どこで歯止めをかけられるかも難しい。
そして、文化行政のあり方も問われている。
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2021年01月15日

部活がウイルス・クラスター化

【都立高校で45人集団感染 運動部でクラスターか】
 東京都立の高校で運動部の生徒らあわせて45人が新型コロナウイルスに集団感染していたことが分かりました。東京都によりますと、集団感染があったのは23区内にある都立高校で、16歳から18歳の生徒ら41人と男性職員4人のあわせて45人が感染しました。
 別々の運動部に所属する生徒2人の感染が確認され、このうち、1つの運動部は先月26日から大会に出場するため都外に遠征に行っていて、遠征先で複数人の感染が判明したということです。これを受け都は、今月8日までこの高校を臨時休校としています。検査結果が出ていない濃厚接触者が29人いるということで、今後も感染者が増える可能性があります。
(1月4日、TBS系)

部活動が続々とクラスター化している。
日本の部活動はたとえ運動系であっても、グラウンドで練習して終わりになるわけではなく、部室に戻って延々と「反省会」を行ったり、ロッカールームで「新人いじめ」を行ったりしているのだから、クラスター化する蓋然性は居酒屋以上に高いかもしれない。

さらに言えば、欧州風の民間クラブであれば、「自分はコロナが怖いので、しばらく休む」と言えるが、学校の部活動の場合、それはまず言えない。下手すれば、内申書に影響するため、怖くても続けるほかないのだ。
つまり、日本の部活動の全体主義的性格がクラスター化を助長している。

にもかかわらず、今回の緊急事態宣言では部活動はごく部分的な規制にとどまり、「活動内容の見直し」だけに終わった。
文科省は「筋トレなど接触を避ける練習を中心に」などと言っているが、全く部活動の悍ましい現場を知らないヤクニンどもの戯言である。

この機会に「新しい生活様式」に従って、部活動は全面廃止して、地域の民間クラブに再編するべきだ。
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2021年01月12日

昭和帝政はただのケチ

【中国「千人計画」に日本人、政府が規制強化へ…研究者44人を確認】
 海外から優秀な研究者を集める中国の人材招致プロジェクト「千人計画」に、少なくとも44人の日本人研究者が関与していたことが、読売新聞の取材でわかった。日本政府から多額の研究費助成を受け取った後、中国軍に近い大学で教えていたケースもあった。政府は、経済や安全保障の重要技術が流出するのを防ぐため、政府資金を受けた研究者の海外関連活動について原則として開示を義務づける方針を固めた。
  読売新聞の取材によると、千人計画への参加や表彰を受けるなどの関与を認めた研究者は24人。このほか、大学のホームページや本人のブログなどで参加・関与を明かしている研究者も20人確認できた。

 千人計画に参加した理由については、多額の研究費などが保証され、研究環境が日本より魅力的だとする研究者が少なくなかった。

 44人のうち13人は、日本の「科学研究費助成事業」(科研費)の過去10年間のそれぞれの受領額が、共同研究を含めて1億円を超えていた。文部科学省などが公開している科研費データベースによると、受領額が最も多かったのは、中国沿岸部にある大学に所属していた元教授の7億6790万円で、13人に渡った科研費の総額は約45億円に上る。

 米国は千人計画について「機微な情報を盗み、輸出管理に違反することに報酬を与えてきた」(司法省)などとして、監視や規制、技術流出防止策を強化している。海外から一定額以上の資金を受けた研究者に情報の開示を義務づけているほか、エネルギー省は同省の予算を使う企業、大学などの関係者が外国の人材招致計画に参加することを禁止した。重要・新興技術の輸出規制の強化も検討中だ。
 日本では現在、千人計画への参加などに関する政府の規制はなく、実態も把握できていない。政府は米国の制度などを参考に今年中に指針を設け、政府資金が投入された研究を対象に、海外の人材招致プロジェクトへの参加や外国資金受け入れの際には開示を義務づけることを検討している。
 今回確認された44人の中には、中国軍に近い「国防7校」に所属していた研究者が8人いた。うち5人は、日本学術会議の元会員や元連携会員だ。
 中国は民間の最先端技術を軍の強化につなげる「軍民融合」を国家戦略として推進し、最新鋭兵器を開発・導入するとともに、日本周辺でも覇権主義的な行動を強めている。日本政府は軍事転用可能な技術が中国に流出すれば、日本の安全保障環境の悪化につながると強く懸念している。
 国防7校のうち、「兵器科学の最高研究機関」とも呼ばれる北京理工大には4人が所属。「ロボット研究センター」で、人工知能(AI)やロボット工学、ロボット製造に活用できる神経科学などを研究・指導していた。同センターは、弾道ミサイルの誘導や軍民両用ロボットなどを研究してきたとホームページで説明している。
 同センターに所属していた研究者は、読売新聞の取材に、「私の研究も、大学で進むロボットの研究も、軍事転用は可能だ」と語った。民間技術と軍事技術の線引きは困難だと指摘する研究者もいた。
 北京航空航天大にも4人の日本人が所属していた。同大は、大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載されている。
 同大に所属する宇宙核物理学の研究者は、「軍事転用される危険性はどんなものでもある」としつつ、「教えているのは基礎科学の分野で、軍事転用とは最も距離がある。経産省の許可も得ている」と強調した。
(読売新聞、1月1日)

私のように日本で食い詰めて(?)大陸に渡った新大陸浪人からすると、研究者に研究費を出すのではなく、法令で研究を禁止しようとする日本政府のやり方は、どこまでも愚かしいとしか思えない。
いや、面白すぎるの間違いか。

医療関係者や教職員に対する待遇の低さと非正規を中心とした給与水準の圧倒的な低さに象徴される通り、すでにあらゆる分野で「日本でなければならない」理由を喪失させている。
posted by ケン at 12:00| Comment(3) | 学問、文学、教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月03日

2020年の三冊が滅亡大好きすぎる件

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「今年の三冊」を選んだ結果、「滅亡が大好きすぎる」結果に。。。

平山優『武田氏滅亡』
スタインバーグ/フルスタリョフ『ロマーノフ王朝滅亡』
ビーヴァー『ベルリン陥落 1945』

やはり成功体験をモデル化するのは難しいということなのか、単に自分が「滅びの美学」好きなだけなのか。。。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 学問、文学、教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする