2018年02月05日

科学技術も衰退を露呈する日本

【科学論文数、日本はインドに抜かれて6位に−中国が米国を抜いて世界トップに】
 科学技術の研究論文数で中国が初めて米国を抜いて世界トップになったとする報告書を、全米科学財団(NSF)がまとめた。中国を始めとする新興勢力が研究開発費を大幅に増やして力をつける一方、日本はインドにも抜かれ、存在感を低下させている。
 報告書は各国の科学技術力を分析するため、科学分野への助成を担当するNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された中国の論文数は約43万本で、約41万本だった米国を抜いた。日本は15年にインドに抜かれ、16年は中米印、ドイツ、英国に続く6位。昨年、文部科学省の研究機関が公表した13〜15年の年平均論文数では、日本は米中独に次ぐ4位だった。
 報告書によると、ここ10年の論文数は中国が124%増、インドは182%増と大幅な伸びを記録。米国は7%増、28か国が加盟する欧州連合(EU)は28%増だったが、日本は逆に13%減だった。論文数では中国がトップになったが、論文の影響力を示す引用数では米国が引き続き上回っているという。
 分野別に見ると、工学分野では中国が米国やEUを上回っているが、医学・生物学分野では米国やEUが優位を保っている。
 民間を含む研究開発費の総額では15年時点で、米国が依然としてトップで中国が2位、日本が3位。この10年で米国が約1.5倍、日本が1.3倍に増額したのに対し、中国は約5倍と急拡大した。インドが約2倍、韓国が約2.5倍とアジア諸国の増額が目立つ。
(1月25日、読売新聞)

「Nature」誌2011年4月21日号によれば、2010年に自然科学系博士号を取得した1350人のうち、卒業時までに常勤職への就職が決まったのは、全体の半数をやや超える程度(746人)にとどまった。その中で大学の科学・技術関連業務に就いたのは162人に過ぎず、残りの250人は産業界、256人が教育分野に就職し、38人が公務員になった、という。いわゆる「ポスドク」問題であるが、就職率の低さが影響して、2007年以降、博士課程進学者も減り続けている。

今や人口が日本の半分以下しかない韓国の方が、論文数でも引用数でも日本を上回っている。
研究開発費の総額を見た場合、2000年から15年にかけて、中国が平均18%の伸びを示したのに対し、米国は4%、日本に至ってはほぼ横ばいの有様で、日本の国力が完全に頭打ちとなっていることが分かる。ちょうど1970年代のソ連を思わせる。

「博士の就職先が無い」と言われる一方で、地方の大学では講座自体が不成立となるケースが急速に増えている。例えば、加計疑獄で話題になった千葉の新設大学や、今治に予定されている獣医大学の場合、教員が十分に確保できず、恐ろしく高齢の元教授を拝み倒して来てもらう始末だと聞く。
地方の国立大学の場合、交通の便の悪さから通勤時間が長い上に、交通費も出ないため、非常勤講師が確保しにくい環境にありながら、文科省天下り官僚の「指導」によって教員の非常勤化を進めた結果、シラバスには掲載されている開講科目一般教養のうち半分以上が「不成立・未開講」に終わるケースもあると言われる。
つまり、研究費以前に生活すらままならない研究者が山ほどいるのだから、研究の質も量も維持されていることがむしろ奇跡的なくらいなのだ。

その対処が、文系・リベラルアーツを廃止して理系に「集中」するという絶望。
檀公三十六策、走是上計。
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2018年01月04日

12、1月の読書(2017、18)

特別国会も終わって余裕ができたので、ようやくじっくり読書に勤しめるが、気づいてみれば戦史ものばかりになっていた。まぁいいんだけど。

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『大日本帝国最後の四か月−終戦内閣“懐刀”の証言』 迫水久常 河出書房新社(2015)
終戦時の鈴木貫太郎内閣で書記官長を務めた著者が、1945年4月から8月を回顧している。1973年に刊行されて以降、歴史研究の最重要な一冊となっている。文庫化されたのは有り難い。『日本のいちばん長い日』でも重要な脇役として出てくるが、元々は薩摩閥で超のつく大蔵エリート。1973年に米国で制作された大ドキュメンタリー『秘録・第二次世界大戦』に出演して日本側の証言をしているが、ペラペラの英語で淀みなく話していたのが印象的だった。戦時期には社会主義的統制経済の推進者でもあった。ただの回顧に終わらず、自らの記憶と当時の資料や他者の証言を緻密に照らし合わせながら事実関係を積み上げており、かつ主観と客観も明確に分けて記述されていて、信頼性の高い回顧録となっている。それにしても40歳で大蔵総務局長、43歳で書記官長(現在の官房長官に近い)とは、当時の出世の早さに改めて驚かされる。

『「終戦」の政治史 1943-1945』 鈴木多聞 東京大学出版会(2011)
若手研究者による博士論文で、終戦時の政軍指導者たちの対立を、従来の「聖戦貫徹か講和か」という視点に疑問を呈し、昭和帝を始め、各派・各人の主張や考えを改めて精査して本当の狙いがどこにあったのか再検証を試みている。今日では「一億総玉砕」の権化だったように思われている陸軍の強硬派も、実は「ソ連の仲介を頼むためには一戦して勝利する必要がある」「国体護持の条件を確実にするためにも一勝する必要がある」といった具合の主張であったことが認識させられ、興味深い検証になっている。博士論文の割には読みやすいが、相応の知識が無いとついて行けないのも確か。

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『東部ニューギニア戦』(進攻篇、全滅篇) 御田重宝 講談社文庫(1988)
ソロモン諸島ガダルカナル攻略戦と併行して進められた、ポートモレスビー攻略戦(スタンレー山脈越え)と連合軍の反撃を受けたブナ・ゴナ戦の記録。スタンレー越えでは1万1千人からの南海支隊のうち7千人が戦病死し、ブナ・ゴナ戦では増援を含めてさらに7千人が戦病死して文字通り全滅している。中国新聞社の記者だった著者が、福山の歩兵第41連隊の生き残りから取材し、丹念に手記をさらい、公的記録と照らし合わせて記述している。取材が多いため、どうしても軍に批判的な記述になっているが、逆に当時の上層部のダメさ加減や、小岩井少佐のような現場指揮官の優秀さ、あるいは従軍した兵卒の率直な気持ちが反映されている。もともと「PM攻略用に偵察を兼ねて前進陣地をつくれ」旨の曖昧な命令だったものが、参謀本部(辻!)などの介入によって、「山さえ越えれゃあモレスビーまで走って下りるだけだろ」くらいの話になって、「攻略命令」になってしまった経緯は、あまりにも現代に通じる。ちなみにスタンレー山脈は4千メートル級である。普通に読んでいるだけで生きた心地がしない。

『自決―森近衛師団長斬殺事件』 飯尾憲士 光人社NF文庫(1999)
昭和20年8月15日未明に起きた宮城占拠クーデター未遂事件の一環となった森近衛師団長惨殺事件。名作『日本のいちばん長い日』は殺害者を「黒田航空大尉」としているが、この人だけ敢えて実名を伏せて名を変えているのは何故か。当時、航空士官候補生として埼玉県豊岡(現入間)の学校に在籍した著者が、上官や先輩を訪ねて全国を回り、小説とは異なる同事件の実相や関係者の実像に迫る異色の作品。特に岡本版映画は、陸軍関係者から「オレ達あんなに狂っていねぇ!」と悪評だったそうだが、旧軍批判がまだ根強かった当時の世相の中でかき消されたようだ。

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『日中戦争全史』(上下) 笠原十九司 高文研(2017)
「ロシア革命100周年」がそれなりに盛り上がったのに対し、「日中開戦80周年」は日本では殆どスルーされた観がある。そんな中で本書は数少ない80周年の成果だろう。日本における南京事件研究の第一人者と言える著者による日華事変・日中戦争の通史。通史とは言え、著者は戦争の根源を「対華21カ条要求」に求めていることから、記述は1915年から始まる。実際、青島攻撃、シベリア戦争、山東出兵、済南事件、張作霖爆殺事件、柳条湖事件等々、本格的な戦争になっていなかっただけで、日本による対中侵略は継続的に進められていた。本書の特徴の一つは、日中間の記述に止まらず、「世界史における日中戦争」という観点から俯瞰している点にあるが、全体としては大部ではないため、詰め込むところと省いているところのバランスがいささか悪いようにも見える。もう一つは、著者の従来からの主張である「陸軍悪玉論」を排し、「むしろ海軍が陸軍を戦争に引きずりこんだ」とする点で、海軍が資源と予算を獲得しつつ、兵器実験場や実戦訓練場を確保する目的から日中戦争を推進したとする説を論じている。大山勇夫大尉事件の陰謀論を強調し過ぎるところがマイナスになっているが、海軍が様々な理由から日中戦争を主導したことは、どうやら間違いないようで、それが故に終戦時に阿南陸軍大臣が自害する際の「米内を斬れ」に繋がったとケン先生は推測している。わが一族では、海軍の大伯父が支那派遣艦隊参謀長として重慶爆撃を指導、陸軍の大伯父は関東軍の情報将校として対ソ諜報を担った。他にも日中戦争に関係した先祖がいると思われるが、話は聞いていない。

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『甦るニコライ二世―中断されたロシア近代化への道』 エレーヌ=カレル=ダンコース 藤原書店(2001)
ずいぶん昔に購入してそのまま図書室に放り込んでしまった一冊。帝政ロシア末期の近代化が、帝政崩壊とソ連の勃興によって中断され、むしろ退化して現代ロシアの課題になっているというダンコース女史の論考。ソ連学徒としてはダンコース本は全て必読と言えるくらい重要なのだが、私的にはあまりにも反ボリシェヴィキ色が強すぎて今もって好きになれない。とはいえ、現代ロシアを占う上で欠かせない視点であるため、再挑戦することに。今年中に間に合うかは不明だが。
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2017年12月26日

2017年の三冊

今年読んだ本の中から三冊をお勧めしておきたい。
本ブログの読者ならどれを読んでも有益だろう。

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『ヒトラーの国民国家−強奪・人種戦争・国民的社会主義』 ゲッツ・アリー 岩波書店(2012)
1943年の日本陸軍二等兵の給与は6円だったが、銃後の家族の生活保障として「留守宅給与」が給付された。だが、それは応召前の給与の3分の1でしかなかった。例えば、当時の小学校教員の平均給与60円で計算した場合、支給額は20円でこれを本人と留守宅でほぼ折半された。実際には他にも手当がつくので、家族が受け取るのは20円程度だったものの、夫が召集された家族は困窮するのが普通だった。ちなみに当時の公定米価は10kgで3円36銭である。これに対し、ドイツの場合、この留守宅給与に相当する所得補償が、応召前職の給与の85%もあり、さらに児童手当などもあったため、銃後の夫人は「亭主元気で留守が良い」状態にあったという。結果、ナチス政権は常に広範な支持を受け、「ゲシュタポによる恐怖支配」はあったものの、国家保安本部の規模は後の東ドイツのシュタージの100分の1程度に過ぎなかった。つまり、国民を広範に監視して強制動員する必要などなかったのだ。この場合、当然ながら、物資不足と貨幣過剰となって大インフレが起こるはずだが、外地の独軍兵士には有利な為替レートで換金された現地通貨が渡されて「爆買い」が行われ、本国に郵送ないしは手持ちで持ち込まれた。そして、貨幣安定の原資となったのは、ユダヤ人などから収奪した資産だった。こうした仕組みを知らずに、ただ倫理的に「ナチズムの悪」を弾劾しても何の役にも立たないというのが、本書を記した著者の信念のようだ。二次大戦史に関心のある者は必読の一冊と言えるが、いかんせん高すぎるのが難である。

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『じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路』 ロバート・スキデルスキー、エドワード・スキデルスキー 筑摩書房(2014)
経済学というよりも、哲学から現代の資本主義と経済学の有り様を問い直す書になっている。ロバート・スキデルスキー師は、ケン先生も尊敬するケインズ学者だが、共著者で息子のエドワードは中世哲学の研究者であることにも起因している。経済成長や技術革新が進めば進むほど、所得格差や資産格差が進み、貧困が内在化してゆく現代資本主義の特徴を見つめ直し、「豊かになることが幸福」という従来唱えられてきた価値観を横に置いて、「貪欲からの脱却」「(精神的幸福ではなく)良い暮らしを実現するための基本的価値」を思索、追究してゆく。例えば、一定以上の所得のあるものは、所得の多寡で幸福や満足が左右されることはなく、家電製品の普及は実は家事労働時間を大きくは減らさなかった。ケインズは1930年代の経済成長率や技術進歩を見て、百年後には資本主義が抱える諸問題は解決され、生活に必要な収入を得るには少々の労働時間で十分となり、人々は余暇を楽しみ、創造的な活動に専念できると予想した。だが、現実には技術革新で中間的な雇用は失われ、貧困層は低賃金が故に超長時間労働を強いられ、富裕層は富裕層でさらなる貪欲を追求するために長時間労働に従事している。現代の先進国や中進国が例外なく抱えている問題であり、「経済成長と再分配がなされれば十分なのか」という視点から、政治に関心のあるものは必読だろう。

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『人質の経済学』 ロレッタ ナポリオーニ 文藝春秋社(2016)
「欧州難民問題の構図」の元ネタ。犯罪、テロと見られがちな人質誘拐を「ビジネス」「経済」の視点から解析する意欲的な一冊。少なくとも「経済学」ではないのだが、ジャーナリズムを重視しつつもセンセーショナルに傾斜することなく、中東・アフリカの貧困が誘拐や海賊をビジネスとして成立させ、欧米の対応がそれを加速させている事実を淡々と指摘してゆく。ジハーディストの資金源がどのように形成されているか、実は米欧も「一蓮托生」であることなど、非常に納得度の高い一冊に仕上がっている。特にGMT「ラビリンス−テロ戦争」のプレイヤーは必読。

【追記】
本では無いが、映画も一つ。『ウィンター・ウォー 厳寒の攻防戦』の完全版のDVDが発売されたので、ゲーマーの皆さんは早めに入手するよう、お勧めしたい。
作品紹介はこちらを参照

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『ウィンター・ウォー 厳寒の攻防戦』 ペッカ・パリッカ監督 フィンランド(1989)
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2017年11月22日

10、11月の読書(2017)

突然の解散、総選挙でロクに本も読めなくなってしまったが、帰京後は涼しくなってきたので、それなりのペースで読書できている。

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『じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路』 ロバート・スキデルスキー、エドワード・スキデルスキー 筑摩書房(2014)
経済学というよりも、哲学から現代の資本主義と経済学の有り様を問い直す書になっている。ロバート・スキデルスキー師は、ケン先生も尊敬するケインズ学者だが、共著者で息子のエドワードは中世哲学の研究者であることにも起因している。経済成長や技術革新が進めば進むほど、所得格差や資産格差が進み、貧困が内在化してゆく現代資本主義の特徴を見つめ直し、「豊かになることが幸福」という従来唱えられてきた価値観を横に置いて、「貪欲からの脱却」「(精神的幸福ではなく)良い暮らしを実現するための基本的価値」を思索、追究してゆく。例えば、一定以上の所得のあるものは、所得の多寡で幸福や満足が左右されることはなく、家電製品の普及は実は家事労働時間を大きくは減らさなかった。ケインズは1930年代の経済成長率や技術進歩を見て、百年後には資本主義が抱える諸問題は解決され、生活に必要な収入を得るには少々の労働時間で十分となり、人々は余暇を楽しみ、創造的な活動に専念できると予想した。だが、現実には技術革新で中間的な雇用は失われ、貧困層は低賃金が故に超長時間労働を強いられ、富裕層は富裕層でさらなる貪欲を追求するために長時間労働に従事している。現代の先進国や中進国が例外なく抱えている問題であり、「経済成長と再分配がなされれば十分なのか」という視点から、政治に関心のあるものは必読だろう。

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『兵農分離はあったのか−中世から近世へ』 平井上総 平凡社(2017)
ごく一部の専門家を除くと、すこぶる便利なキーワードと化している「兵農分離」を再定義する試み。一般的には、「織田・豊臣などの先進的な戦国大名が兵農分離を進め、プロフェッショナルの軍隊を作り上げて、天下を統一した」という説明が定着しているが、果たして兵農分離は本当に政策化されていたのか、織田・豊臣が推進したのか、そもそも兵農分離の概念とは何なのかを一から問い直している。戦国分野の研究は非常に進んでおり、常にアンテナを張って知識を更新しないとすぐに遅れてしまうところが刺激的でもある。

『戦争と農業』 藤原辰史 集英社インターナショナル新書(2017)
シンプルながらセンセーショナルな題名になっているが、戦争と農業の関係に触れているのは前半部のみで、やや難がある。本書のテーマは、技術革新によって農業や食の有り様が大きく変化する中で、飢餓と貧困は解決の目処すら立っておらず、農業の産業基盤が脆弱化し、食糧の寡占が進む現代社会への警鐘である。いくつかの講演をまとめたもので、問題提起は良く理解できる。飽食が進む一方で、農業と食の課題はますます深刻化していることが分かる。

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『習近平政権の新理念−人民を中心とする発展ビジョン』 胡鞍鋼ほか 日本僑報社(2017)
献本いただいた一冊。習近平政権のブレインである胡鞍鋼氏(清華大学教授)が、現代中国が目指す「六大発展理念」を解説している。概念的で網羅的なので、中華学徒ではない私などは「ふむふむなるほど」と言うほかないのだが、同時に「やはりまだまだ近代化が課題なのだな」とも思う。衰退期まっただ中にある日本人としては、眩しいまでのパワーを感じる。

『物語フィンランドの歴史−北欧先進国「バルトの乙女」の800年』 石野裕子 中公新書(2017)
自分はフィンランド好きではあるが、通史は読んだことが無いので、一度読んでみようと。コンパクトに上手くまとめられ、記述も客観的で好感が持てる。
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2017年11月10日

迷走する留学生政策

【「偽装留学生」排除へ 勉強は二の次、実態は“出稼ぎ” 審査厳格化へ】
 勉強よりもお金が大事? 平成27年度に20万人の大台を超え、増加を続ける日本への外国人留学生。しかし、全体の6割超を占める中国やベトナムなど5カ国からの留学生の一部が、実際は“出稼ぎ”を目的とした「偽装留学生」化している実態が問題化している。事態を重く見た法務省は、受け入れ審査の厳格化を求める文書を各地方の入国管理局に発付。不法就労や不法滞在の温床ともなっている現状の適正化に乗り出した。
 「日本に来たのは働いてお金を稼ぐため」
 7月、千葉県内で取材に応じたネパール国籍の男子留学生(23)はこう明かした。
 男子留学生は週6日、大手宅配会社で深夜帯の集荷アルバイトに従事。日本語学校に通っているが、「授業中はほとんど寝ている。でも、私だけじゃなく同級生の大半が同じ」と悪びれる様子はない。“お金が第一、勉強は二の次”との考えが留学生の一部に広がっている実態がうかがえる。
 「留学」の資格で日本に滞在している外国人であっても、資格外活動の許可を取れば週28時間までのアルバイトが可能だ。しかし法務省関係者によると、フルタイムで働いたり、留学先から失踪し不法滞在になったりする留学生が多く、詐欺など犯罪に手を染めた例もあるという。
(11月6日、産経新聞より抜粋)

「何をいまさら」という突っ込みが山ほど入りそうな話。同様の実態は10年以上前から指摘されており、審査の厳格化と緩和が繰り返されてきただけで、根本的な解決策は検討すらされていない。
現在でも「週28時間」の就労(資格外活動)が認められているのに、自民党は「さらなる緩和(長時間化)」を求めている。移民や外国人労働者の受け入れが、国民的理解を得られない中、「留学生による就労拡大」で労働力不足を補おうとしているためだ。

日本学生支援機構が2013年に行った「私費外国人留学生生活実態調査」によれば、私費留学生のうち約75%がアルバイトに従事し、週平均「20時間以上25時間未満」が全体の3割を占め、次は「15時間以上20時間未満」の23%。職種別では49%の「飲食業」が最多。
特に昨今では労働力不足が進み、例えば東京の飲食業やコンビニでは時給1000円は珍しくなく、夜間では1300円を超えるものが目に付くようになっている。

他方、外国人技能実習制度は、超低賃金の超長時間や人権侵害などが指摘されるほか、一定期間が過ぎると帰国を強制されるため、卒業後に就労ビザの取得可能性のある留学生の方が「マシ」という評価が広がっているという。
留学生にしても技能実習生にしても、日本国内の労働力不足や低賃金労働者の需要を補うことを目的に、制度拡充が図られているため、様々な齟齬が生じている。

日本も1983年までは留学生の就労は原則禁じられていたが、留学生の増加と経済成長に伴う労働力不足と円高を背景に「週20時間」の就労を「目的外活動」(資格外では無く)として許可するようになった。だが、1990年代に低賃金労働の需要が急増、外国人の不法就労が社会問題になるなどの背景をへて、まず「1日4時間」、後に「週28時間」へと「規制緩和」がなされた。これらは、経済界からの要望と、留学生側の「1日4時間はアルバイトの実態にそぐわない」という要望に沿ったものだった。
だが、国際的に見た場合、殆どの先進国では「週20時間」までしか認めておらず、日本の例外性が際立っている。

また、経済成長が著しい中国では、例えば北京や上海などの大企業では大卒者の初任給が日本のそれを上回るケースが増えており、就労目的で中国から日本に留学するメリットは失われつつある。ベトナムもその後を追っている。

「留学生ビザという名の就労ビザ」という実態があるにもかかわらず、目先の運用で調整するという政府の施策がいつまで通用するのか、疑問は多い。

【参考】
留学生に労働力を求める日本 
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2017年10月24日

9月の読書(2017)

やっと代表選挙が終わって「臨時国会が始まるまでのつかの間」と思っていたところ、いきなり解散風が吹いて大忙しとなり、結局この夏はロクに本も読めなかった。国会議員の秘書が多忙と疲弊で本も読めないというのは、それだけ政治自体が疲弊し、劣化していることの傍証でもある。まぁそんなところを見るまでも無く、国会議員の不祥事や舌禍の数々を見れば、その質がもはや回復不能なまでに劣化していることなど一目瞭然とは思うが。

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『ブラッドランド−ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』 ティモシー・スタイナー 岩波書店(2015)
世界30カ国以上で翻訳、刊行され、数々の賞も得た国際的名著。これまでの研究でも、ソ連の大粛清やナチスのユダヤ人虐殺については個別に山ほどの書物が出ているが、ソ連の農業集団化に伴うウクライナ飢饉からナチスのホロコーストを経て、戦後のソ連におけるユダヤ人弾圧に至る経過を「大量虐殺史」として、一連の事件を関連づけて記述したものは無かっただけに、非常に貴重な作品となっている。例えば、アウシュヴィッツについてのみ語ると、アウシュヴィッツや他の収容所の外で殺害されたものについては語られなくなってしまう。ユダヤ人に限定すると、障がい者やジプシー(ロマ)はどうなんだという話になる。また、ただ虐殺に至るプロセスを記述するのではなく、その背景にある食糧問題や政治課題、重工業化や戦争経費の捻出など様々な要素も一つ一つ検証しているので、一見散漫にも思えるが、網羅することが目的である以上は欠かせないのだ。非常に辛い内容が続くのは確かだが、記述は淡々としながら、専門的すぎることもなく、普通に読める。

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『ヒトラーの国民国家−強奪・人種戦争・国民的社会主義』 ゲッツ・アリー 岩波書店(2012)
これは非常にヤバい一冊である。先に少し書いたが、1943年の日本陸軍二等兵の給与は6円だったが、銃後の家族の生活保障として「留守宅給与」が給付された。だが、それは応召前の給与の3分の1でしかなかった。例えば、当時の小学校教員の平均給与60円で計算した場合、支給額は20円でこれを本人と留守宅でほぼ折半された。実際には他にも手当がつくので、家族が受け取るのは20円程度だったものの、夫が召集された家族は困窮するのが普通だった。ちなみに当時の公定米価は10kgで3円36銭である。これに対し、ドイツの場合、この留守宅給与に相当する所得補償が、応召前職の給与の85%もあり、さらに児童手当などもあったため、銃後の夫人は「亭主元気で留守が良い」状態にあったという。結果、ナチス政権は常に広範な支持を受け、「ゲシュタポによる恐怖支配」はあったものの、国家保安本部の規模は後の東ドイツのシュタージの100分の1程度に過ぎなかった。つまり、国民を広範に監視して強制動員する必要などなかったのだ。この場合、当然ながら、物資不足と貨幣過剰となって大インフレが起こるはずだが、外地の独軍兵士には有利な為替レートで換金された現地通貨が渡されて「爆買い」が行われ、本国に郵送ないしは手持ちで持ち込まれた。そして、貨幣安定の原資となったのは、ユダヤ人などから収奪した資産だった。こうした仕組みを知らずに、ただ倫理的に「ナチズムの悪」を弾劾しても何の役にも立たないというのが、本書を記した著者の信念のようだ。二次大戦史に関心のある者は必読の一冊と言えるが、いかんせん高すぎるのが難である。
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2017年10月16日

自由と余暇について

二言目には「経済成長ガー」という人が結構いるのだが、人口減時代にGDPを増やす方法は限られている。第一は労働生産性を高めること。第二は技術革新を進めること。だが、超長時間労働が許容され、規制されない中で労働生産性が高まることは無い。また、部活動と学校行事で月曜から日曜の朝から晩まで学校に拘束されるような教育では、技術革新の元となる創造性が育まれない。つまり、現行のままでは不可能なのだが、理解されていないのか、故意に無視されているとしか思えない。

経済成長の根幹となる技術革新に最も必要なのは創造力であり、その創造力は自由な発想の下で生まれる。故に全体主義、権威主義国家では技術革新が起こりにくいとされる。その自由な発想は、人が持つ自由な時間に着想される。ところが、日本の学校や会社は、「兵隊を遊ばせておくと士気が弛緩する」という兵営と同じ考え方なので、「いかにして24時間、生徒と社員を管理するか」という発想の上に成り立っている。それは、言語的にも表れていて、英語の"Leisure"は、日本語では「余暇」と訳されるが、英語のそれが「解放」「自由」を語源とするのに対し、日本語は「作業に従事していない時間」を意味する。こうしたことを理解していない連中が、いくら経済成長や技術革新を言いつのったところで何の意味も無いことは明らかであり、この辺も22日の投票基準にして欲しい。
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