2017年04月17日

資本の論理と血統主義の呪縛

【経団連会長、人手不足への対応「日系人に日本で働いてもらう」】
 経団連の榊原定征会長は10日午後の記者会見で、人手不足について「今後さらに深刻になる。いまの外国人労働者の規模では足りなくなる」と認識を示した。そのうえで「海外の労働力の活用を長期的に検討していく必要がある」と述べた。外国人労働者の活用の一例として「日系人に日本で働いてもらう」ことを挙げた。榊原会長は東京電力ホールディングス(9501)の川村隆次期会長(日立製作所名誉会長)に関し「日立が苦境に陥った際に経営改革を実行して立て直した」と評価した。「東電には福島第1原発の廃炉や被災者への賠償など大きな課題があるが、力を発揮してもらえると期待している。経済界としても可能な限り応援していきたい」と述べた。
(4月10日、日本経済新聞)

あまりにも剥き出しの資本の論理と御都合主義的な血統主義に圧倒される。リーマンショック後、日系人労働者が大量に解雇され、経団連の圧力によって「強制帰国事業」が政策化されたのは、ほんの7年前のことだった。文字通り「舌の根も乾かぬうちに」またぞろ「日系人」を徴用したいという。

この話は詰まるところ、「安価な労働力」としての外国人と、「忠実で上に楯突かないだろう」「見た目的に外国人度が低い」日本人の血統を有するという条件が合致したことに起因する話で、要は「いつでも解雇可能で、待遇に文句を言わず、ただ同然で働かせられ、人権を侵害してもあまり文句を言われない」労働力を望んでいるだけなのだ。これは、戦前期において朝鮮人や台湾人を「帝国臣民」と規定しながらも、実際には「二級市民」として扱い、「権利の弱い安価な労働力」として過酷な超低賃金労働につかっていたことと根を同じくしている。
その意味では、巷間指摘される安倍政権による「戦前回帰」は、財界からの要請もあると言えるのかもしれない。

(こういう表現が適切かは別にして)日本人、日本国籍保有者ですら、現状では雇用が守られているのは大企業だけで、労働時間は実質無制限、残業代は支払われればマシな程度、有給休暇制度はあっても好きには利用できない、低賃金、パワハラ・セクハラは放置状態という、欧州人からは想像も付かない地獄的環境にあるが、日本の資本家どもは「日本人労働者は恵まれすぎて利益を出せない」と考えている。クロネコのような大企業ですら、不払いだった残業代のうち払うのはたった2年分だけであるのは非常に象徴的だ。

こうした資本家どもの横暴が放置されているのは、日本の労働運動や社会主義勢力(社会民主主義者とマルキストを含む)がいかなる影響力も無いことに起因している。
労働運動の最大勢力である連合は、全労働者の12%程度を組織しているのみで、それもエリート労働者ばかりで構成されている。連合幹部の家を見てみれば分かるが、そこら辺の中小企業の社長などよりも余程贅沢している。つまり、「官製ではない」というだけで実質的には「赤い貴族」なのだ。その結果、労働時間規制を議論する時でも、「規制が無いよりはマシ」程度の理由で、ストライキを打つこともなく、「残業月100時間」で合意してしまった。これでは、旧東側の官製労組や戦中期の産業報国会と何ら変わらない。

国会(衆議院)を見てみれば、社会主義を奉じている政党(NK党と社民党)の議席は5%にも満たない。これは、日本の労働者が恐ろしく収奪されているにもかかわらず、自らの労働者性を全く認識していないため、自分がいかに虐げられている環境に置かれているかすら気づいていないことが大きく影響していると考えられる。これでは、レーニンの前衛党理論が再評価されても致し方あるまい。逆に考えると、社会党が消失したにもかかわらず、NK党が伸び悩んでいるのは、2000年に前衛党ドクトリンを放棄して「(物わかりの)良い子」になってしまったからかもしれない。

一方、日本の資本家は資本家で相当に頭が悪い。デフレからの脱却が進まず、出生率が上昇しないのは、過酷な労働環境と低賃金・低所得に起因している。同時にいつまでたっても労働生産性が改善されないのは、低賃金の労働者を長時間にわたって酷使できる環境が放置されているため、業務の効率化や機械化を進める必要が無いことに起因している。生産性が上がらないため、賃金も上げられず、消費が増えずに景気が低迷する悪循環だ。
この状況下で、さらに無権利、低賃金の外国人労働者を動員してみたところで、労働生産性をさらに悪化させ、競争力の無い企業を温存させるだけであり、その行き着く先は「資本主義の緩慢死」でしかない。連中の言は、まさに無能な指揮官が上級司令部にひたすら増援要請を行い、「勝てないのは司令部が増援をよこさないからだ」と言うのに等しい。

マジで「バカばっか」

「私が魔法の壺を持っていて、そこから艦隊が湧き出てくるとでも奴は思っているのか?」(ラインハルト・フォン・ローエングラム)
posted by ケン at 12:09| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月16日

フンタ:カードゲーム

往年の名作「フンタ」がカードゲームとなった。オリジナルは1978年の制作なので、もう40年もの歴史を有する。確かに自分が高校生の頃にはプレイしていた。
このゲームでは、プレイヤーは「バナナ共和国」の名を冠した暫定政権の一員です。政府は毎ラウンド、海外援助という名の多額の小切手を一切口を挟まずに送ってくれる、全世界的超権力の支援を受けています。最も多くの金を自分のポケット、すなわち自分のスイス銀行口座に効率的に詰め込んだプレイヤーが、ゲームに勝利します。その一方で、あなたは他人に策略を仕掛け、票を買い、暗殺者を雇い、建物を吹き飛ばし――そして時に応じて、現在の大統領にクーデターを起こし、願わくば新たな大統領を目指しましょう。
(ホビージャパンHPより)

私が初めてプレイしたのは、ちょうどフィリピンのマルコス政権が倒された「エドゥサ革命」が起きた頃で、「バナナ共和国」ということもあって、「フィリピン・ゲーム」と呼んでいた。
上の紹介文の通り、プレイヤーは国を牛耳る大ファミリーの頭首で、仲間内で大統領や閣僚の座を回し、海外からの援助金を奪い合いながら、最終的に貯め込んだ金額が一番多いものが勝利するという、「ブラックにも程がある」作品。

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オリジナルはプレイヤー7人が標準で、人数が欠けると大きくバランスが崩れるため、コンベンションのような大会場でないとまともにプレイできなかった。また、クーデターがゲームの中で非常に大きな位置を占めているが、先の暗殺フェイズで殺されてしまうとまともに参加できなかったり、ずっと不遇のままだと精神的にキツかったり、クーデターが長引いて延々と続いたりと、面白いが不満もあるゲームだった。

今回カード化されるに際し、暗殺フェイズが廃止、クーデターも非常に簡素化され、非常にアッサリした仕上がりになっている。クーデターのウォーゲームっぽさが好きだった人からすると、完全に魅力を失っていることになる。
だが、コンパクトにまとめられたことで、最大の難点であるプレイ・アビリティが解決され、恐らく4〜5人が適正で、プレイ時間も1時間以内に終わる感じだ。「予算」の賛否を示す投票も、暗殺や泥棒も、クーデター時の戦力も全て手札カードに集約されている。
逆にクーデターを除く骨格部分は残されており、大統領が受け取る海外援助金をめぐってファミリーが骨肉の争いを演じる「フィリピン・ゲーム」の雰囲気は良く残っている。

個人的には、コンパクト化されたことで失われた面白さよりも、コンパクト化したことで得られたプレイ・アビリティの方が大きいように思える。ゲーマー年齢の上昇や減少という時代の要請もあるのだろう。
ちなみにこの日は4人で2回プレイして、1勝した。昔から勝率の高いゲームだが、ひょっとしたら自分の政治適性を表しているのかもしれない(爆)
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2017年04月15日

塩山紀生先生逝く

【埼玉・三郷団地火災で亡くなった無職男性 人気アニメ「装甲騎兵ボトムズ」のキャラクターデザイナー、塩山紀生さんだった】
 埼玉県三郷市彦成で13日未明に起きた団地火災で、亡くなった無職男性が、アニメ「装甲騎兵ボトムズ」などのキャラクターデザインを手がけた塩山紀生さん(77)だったことが14日、県警吉川署への取材で分かった。同署は家族から確認を取ったとしている。火事は13日深夜、「UR都市機構みさと団地」8階の一室が全焼し、焼け跡から塩山さんと妻の時子さん(85)の遺体が発見された。同署によると、台所の焼け方が激しいといい、出火原因を調べている。塩山さんはアニメ「無敵鋼人ダイターン3」「太陽の牙ダグラム」「装甲騎兵ボトムズ」などのキャラクターデザインや作画監督を担当し、「ボトムズ」の主人公、キリコ・キュービィーなどには現在も根強いファンがいる。平成27年に東京・上野で開催された「メカニックデザイナー大河原邦男展」では、キャラクターデザイナーとしてギャラリートークに出席していた。
(4月14日、産経新聞)


あ〜塩山先生がまさかの焼死!心よりお悔やみ申し上げます。
先生の作画監督デビューは「人造人間キャシャーン」と「勇者ライディーン」。その後も「ザンボット3」「ダイターン3」「ダグラム」「ボトムズ」と、まさに私の青少年期のヲタク生活に不可欠の作品ばかりだったことが思い出されます。いや、実に名作ばかりで、どれもリメイクされる価値があります。
安らかにお眠りください。
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2017年04月14日

センス無い裏切り

【民進、長島氏を除名へ=「都議選控え敵前逃亡」】
 民進党は10日夕の執行役員会で、長島昭久元防衛副大臣の離党届を受理せず、除籍(除名)処分とする方針を決めた。11日の常任幹事会を経て正式決定する。執行部は長島氏が党東京都連幹事長だったことを重視し、「7月の都議選を控えた敵前逃亡であり責任は重大」(幹部)と判断した。昨年3月の民進党結党後、除籍処分となる国会議員は初めて。執行部は長島氏が務めている衆院東京21区の支部長の後任を速やかに選定する方針だ。
(4月10日、時事通信)

どうでもいい話だが、一応コメントしておこう。
政治を担う以上は、離合集散は避けられないし、反逆・裏切りも日常茶飯事、褒められたものではないが、評価は価値観次第なので(政治的良心に従った反逆は許されるか)、否定はしない。だが、この間、民主党・民進党からは櫛の歯が欠けるように1人ずつ離党しているが、これはいただけない。ハッキリ言って、政治的センスの無さを示している。

議会政治におけるパワーポリティクスが「数の勝負」である以上、離党するならある程度まとまって離党しない限り、その価値は最低限度まで下がってしまう。売り込み先が、自民党であれ「ファースト」であれ、議員単独では足下を見られて安く買いたたかれるのがオチだろう。せめて10人くらいはまとまって売り込まなければ、評価されない。評価されないというのは、裏切り先で影響力を保てないことを意味する。松永弾正ほどの才能があれば、誰からも歓迎されるかもしれないが、それは優れた調略能力や外交能力を有していたからだ。

長島氏で言えば、先の代表選に立候補しようとして、13人までは推薦人を集めたというのだから、その13人を引き連れて「ファースト」にでも行けば、いきなり政党要件を満たせるのだから歓迎された可能性が高い。反逆は、やる時には容赦なく徹底的にやるのでなければ、いっそやらない方が良い。マキャベリを読んでいないのだろうか。
同時に裏切りは決定的瞬間に実行してこそ、より大きな効果が得られる。安保法制や共謀罪の採決時に寝返ってこそ意味があるのであって、この時期の離反は単に「嫌になったから」としか見られない。

氏が中途半端に離党した結果、長島氏本人は「一匹狼」となってしまい、民進党内には離党予備軍が残ったまま、野田執行部の求心力は低下、マスゴミにネガティブなイメージを流布され、離党した方もされた方も不幸になっている。思想や政策の違いは明らかなのだから、きちんと協議離婚する方が皆にとって「まだマシ」だったはずだが、それすらも出来ないところに民進党の「先の無さ」があるのかもしれない。
自民党はかなり強力に個別に離党工作を進めているそうなので、関ヶ原戦役よろしく、民進党側が一方的に「調略されまくり」にあるのは確かなのだが。

まぁ個人的に同情するなら、長島氏的には「蓮舫・野田の保守系執行部なのに、どうしてこうなった!?」という思いがあったのだろう。それならばそれで堂々と非を鳴らして党内闘争を仕掛け、敗れて離党した方が格好がついた(説得力があった)であろうに、惜しいところだ。

【追記】
記事とは無関係だが、「民進党はなぜ森友疑獄を追及しきれないのか?」という質問があったので、取りあえずこの場で私の見解を述べておきたい。もともと野田幹事長は、財務省の支援を受けて総理の座を射止めた経緯があり、ゲーム的に言えば、野田氏は「調略済み」なので、攻撃許可を出さない、あるいはサボタージュしているものと見られる。
posted by ケン at 12:28| Comment(0) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月13日

行き当たりばったりのトランプ政権

【シリア攻撃、米国民の57%が支持…CBS調査】
 米CBSテレビが10日発表した世論調査で、トランプ政権が6日に行ったシリアへの攻撃について、米国民の57%が支持していることがわかった。反対は36%だった。党派別では、共和党支持者の84%が支持。無党派層でも過半数の52%の支持を得た。ただ、民主党支持者の支持は40%にとどまった。また、シリアにおけるさらなる軍事行動について議会の事前承認が必要かどうか尋ねたところ、69%が必要と答えた。共和党支持者でも過半数の53%に上った。トランプ氏の支持率は43%(不支持率49%)で、3月29日発表時の40%(同52%)からやや改善した。34%だった無党派層の支持が42%に上昇したことが主な要因だとしている。今回の攻撃によって支持率上昇の大きな効果は期待できないとの見方が出ている。
(4月11日、読売新聞)

どうにも行き当たりばったり観の強いトランプ政権。今回のミサイル攻撃も、どう見ても脊髄反射であり、それ以上には見えない。いかにも「国内政治が上手くいかないから、ちょっとした火遊びで威信を上げて人気も取ろう」的な思考が見え見えだ。まぁゲーム的と言えばゲーム的だが、およそ戦略的では無い。
もともとトランプ氏は、無人機や誘導ミサイルによる攻撃を推進したオバマ政権と、直接介入を指向したクリントン候補を否定して大統領に当選しており、本来は「ISを打倒した後、中東の覇権から手を引く」という方針だったはずだ。そのISに対して最大の脅威となっているのがアサド政権であり、ロシアとイランはアサド政権を支援してイスラム国を打倒するというスタンスを貫いている。米国防省にとっても、最大の脅威はイスラム国とロシアであり、アサド政権の脅威度などは中国や北朝鮮を下回ってかなり下の方にあった。ISに対して最大の戦力を有するアサド政権を叩いてしまっては、本来「元も子もない」はずだった。また、米ロ関係の悪化により、「ロシアの影響力を使って中東を安定化する」という戦略にも障害が生じている。

「アサド政権による化学兵器の使用」についても、報道写真と衛星写真を見ただけでアサド政権のせいにしてしまっているが、内戦の勝利がほぼ確定している段階にあるアサド側がリスク込みで禁止兵器を使う合理的理由はどこにもない。そもそもシリア政府が持つ化学兵器は、少なくとも公式的には国際監視団の下で廃棄されているはずであり、仮にいまだに保有していることが判明した場合、それこそ国連安保理で非難と武力行使を決議することも可能だったはずで、米国がきちんと証明できるなら、いくらロシアや中国といえども拒否権を行使するのは難しい状況にあった。つまり、アメリカは証明する術を持っていないが故に「やった者勝ち」と判断した可能性が高い。
また、「独裁政権だから何でもやるのは当然」という意見には首肯しかねる。何せ世界で唯一核兵器を実戦使用した上、戦線後方の都市に投下したのは民主国家であるアメリカであり、その米国はベトナム戦争で化学兵器を使用、現在も劣化ウラン弾を使い続けている。逆に中国は朝鮮戦争、ソ連はアフガニスタンでともに化学兵器等の使用を避けている。

そして、アフガニスタンやイラク侵攻に続いて、今回も国連決議を経ずに武力行使してしまったことで、国際秩序そのものがさらに揺らいでいる。今回は単純に「アメリカだから」黙認されただけの話で、仮に「禁止兵器を持っているかもしれない」程度の疑惑で隣国に先制攻撃を仕掛ける国が出てきたとしても、少なくとも公正な反論はできなくなっている。
組織や社会の規模にかかわらず、秩序とは「何となく皆が守っているから、自分からは破りづらい」空気感によって維持されるところが大きい。1930年代には、日本による満州国建設、イタリアによるエチオピア侵攻、ドイツによるヴェルサイユ条約破棄などが積み重なった結果、ヴェルサイユ体制は瓦解したのだ。ユーゴスラヴィア内戦も同じだろう。
米国は自らが「国連が認めない武力行使は認められない」というルールをつくっておきながら、次々と安保理決議を経ない武力行使を行って、自ら秩序の破壊者になってしまっている。「中露が反対すると国連決議は成立しないから、独自攻撃は致し方ない」という意見は、全く歴史を顧みないものだ。

シリア攻撃に戻れば、化学兵器の使用者の話を脇に置くとしても、今回のミサイル攻撃によってアサド政権が「ごめんなさい。僕が悪かったです。もう禁止兵器は使いません」と言うだろうか、いや言わないだろう。少なくともロシアやイランの後ろ盾がある限り、今回の攻撃を奇貨としてアラブの反米勢力からの支持を広め、国内秩序の強化に利用するのが、プレイヤーとして合理的な選択となる。
一方、アメリカ側は、アサド側が「ごめんなさい」すれば良いが、居直る、あるいは無視した場合、さらに大規模の攻撃を行うか、本格的な軍事介入をするかの選択肢しか無くなってしまい、どちらも米露関係を決定的に悪化させることになる。特に後者は、先にロシア軍を退去させない限り、全面戦争に至る恐れがあり、そもそも選択肢として成り立たない。つまり、ミサイルを撃ってはみたものの、「次の手」が無い。GMT「ラビリンス」でも、USプレイヤーが「とりあえず軍事侵攻(体制転換)」したものの、「次に打つ手が無い」という状況に陥ることが散見されるが、まさにこれだろう。

アメリカの攻撃によって、シリア内戦が再び激化し、イスラム国が勢力を取り戻した場合、どう見ても「誰得」な状況に陥るが、少なくとも米国の軍産複合体だけは得をするので、つい陰謀論を考えてしまう。
いずれにせよ、トランプ氏は自らの選択でゲームの難易度を上げつつあることは間違いない。
posted by ケン at 12:24| Comment(6) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月12日

保育所の需要が満たせないワケ

【保育所落選5万3000人…1次選考の28%】
 今年4月からの認可保育施設への入所を決める1次選考で、東京23区と全国20の政令市で少なくとも5万3000人が「落選通知」を受け取り、「落選率」は28・1%に上ることが、読売新聞社の調査でわかった。
 特に保育所の利用希望が多い東京23区のうち9区で、40%を超えた。2次選考を行う自治体も多く、全員が待機児童になるわけではないが、職場復帰できるかどうかわからないまま、保護者が保育所探し(保活)に苦労している実態が浮かび上がった。調査は3月末にアンケート形式で実施し、全自治体から回答を得た。
 未集計の3自治体を除く40自治体で、約19万人の申し込みに対し5万3346人に落選を通知した。落選率が最も高かったのは東京都台東区の51・9%。
(4月5日、読売新聞)

保育所は基本的に社会主義思想に基づいて設計されている。そのため、全て政府(自治体)が価格を決め、官主導で設置される。昨今では運営は民間に委託される傾向が強いものの、官が需給と価格を決定する仕組みに変わりは無い。結果、保育サービスは実際の市場価格よりもはるかに安い公定価格で提供される一方、サービスを受ける市民は子どもを廉価で預けて働けるため、「預け得」になっている。
こうした傾向は、医療や介護などの福祉サービスも同じで、ただでさえ安価に設定された公定価格である上に、窓口で自分が支払うのは公定価格の数分の1で済んでしまうため、「受診し得」になり、病院や診療所に大行列ができる有様になっている。薬局で受領する薬の3分の1以上が服用されずに廃棄されていることも、「前日のパンを捨てて毎日買い換えていた」という東側の実態に通じるものがある。子ども医療の無償化など、自分の首に縄を巻いているような話だが、小児科医以外、誰も気づいていない。
大行列は、別に1980年代末のソ連、東欧だけに見られる現象ではなく、原理的には平素日本の病院などで起きていることも全く同じなのだが、それを指摘する者はケン先生以外にいないという特異な状況にある。やはり日本人はすべからくソ連に留学すべきだったのだろう(爆)だからこそ「ソ連・東欧学を学ぼう」と呼びかけているのだが、残念ながら低調だ。

話を戻そう。上記の28%という数字には、当然ながら「どうせ通らないから」と申請していない層は含まれていないので、潜在需要を含めれば相当な数字になると思われる。保育所をつくればつくるほど財政赤字が増えるのに、増設すると需要も一緒に増えてしまうのだから、本質的に需要を満たせない構造になっている。
自治体からすれば、保育所を増設すればするほど財政赤字が増えるのだから、二の足を踏むのは当然だろう。安価に設置しようとすると、例えば交通の便の悪い場所につくることになるが、この場合、希望者がいなくなってしまうので意味が無い。
また、保育士からすると、子どもが増えれば増えるほど労働環境が悪化する。70万人からの有資格者が保育士に就いていない事実もまた、「公定価格=計画経済の無理」を物語っている。結果、建物だけ建てても保育士が確保できず、開業できないことになる。だが、保育士の給与を上げると、さらに赤字が増えてしまう。ゴルバチョフの苦悩が察せられる。


これを解決するためには、社会主義を止めて自由化するか、「社会保障であること」を止めるかの二択しかない。
前者の場合、保育サービスは市場原理に基づいた市場価格で提供されるため、サービスを希望するのは子どもを預けて働きに出ることで得られる賃金が、保育サービス料を上回るケースに限られる。そのため、中低所得層はそもそも希望しなくなり、需要そのものが低下、需給バランスが取られる。この場合、多数が自宅保育に切り替えると考えられ、労働力は失われる。同時に、「安かろう悪かろう」のサービスも増えると考えられるだけに、やはり完全な自由化は難しいだろう。

後者の場合、具体的には4〜5歳児の義務教育化(就学年齢の前倒し)が考えられる。この場合、保育所は基本的には2〜3歳児のみを引き受けることになり、大きく負担を減らせるだろう。しかし、自民党では幼稚園経営層が、民進党では日教組が大反対するので、どちらも政策化できないし、霞ヶ関は厚労省が抵抗するので実現できない。ちなみに自分の場合、4歳時点でまともに言葉を話せなかったので、入学は無理だろうと思われる。
就学年齢の前倒しは欧州では基本だが、残業無し、時短勤務ありというライフワークバランスも十分確保されているので、やはり日本とは前提が異なる。日本でそれを行う場合、放課後の居場所も確保する必要があり、ラーゲリ(本来の意味の)を新設して児童を保護する施策が不可欠になるので、どうしても課題が残る。
posted by ケン at 12:24| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月11日

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

最近めっきりサブカルのレビューから遠ざかってしまっているので、久しぶりに書いてみたくなった。2015年秋と2016年冬の分割4クール(全50話)で放送された『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』である。
ネット上では、否が多めの賛否両論のようで、1クール目は相対的に高かった評価も2クール目で台無しになってしまった観がある。気持ちは分かるので、不肖ながら私も分析、評価してみたい。先に言っておくと、ケン先生の評価は「総論万歳、各論ブーブー」である。

以下ネタバレあり、注意!

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まず本作が最も斬新だったのは、「ガンダムで仁義なき戦い」を試みた点にあり、「ガンダムでヤクザ抗争?」に評価が集約される傾向がある。つまり、国家や崇高な理想に依らない点、どこまでも生臭い(死人が多い)点が、どのように描かれ、どのように受け取られたか、というところが大きかったと考えられる。
つまりかいつまんで言ってしまえば、その日暮らしのチンピラ少年たちが集まってMSを乗り回し、日銭を稼ぐために(結果的とはいえ)殺戮を行い、最終的にはヤクザの内部抗争と当局の介入によって死人の山を築きながらボコボコにされる、という身も蓋も無いストーリーなので、「ヤクザもの」という視点が無いと非常に感情移入しにくい作りになっている。そして同時に「じゃあ、ヤクザ映画のオマージュとしてはどうなの?」というと、そこも微妙に中途半端になってしまっている。それでも、第1部は「革命の乙女(ヒロイン)を地球に送り届ける」という大義名分があったから良かったが、第二部ではその大義も無くなり、ただの行き当たりばったりの抗争に終始してしまった。第二部におけるヒロインの扱いに大失敗したことも不評の原因かもしれない。

基本的な設定は現代に共通している。超大国アメリカが衰退する中で、周辺部の治安が乱れ、奴隷や少年兵が横行し、軍閥が跋扈する中東やアフリカがイメージされている。本作も、横暴な大人を追放して、奴隷と少年だけによる傭兵団を結成して、「火星一の軍閥を目指す」という構成になっているのだが、この時点で中東やアフリカの現状、あるいは清帝国崩壊以降の中国大陸についての知識が無いと、どうにも想像しづらいように見える。問題意識は分かるし、個人的には好意的に評価しているのだが、敷居が高いのは否めない。

同様に言えるのは、今どきの10代から30代の若者が『仁義なき戦い』を見て、登場人物にどこまで共感できるのか、という点だ。1973年に『仁義なき戦い』と第二作『広島死闘篇』が公開された時は、文字通り日本中の若者が熱狂して、映画館は連日超満員になったと言われるが、それは世代の中で共有されている精神や社会的背景に合致していたからだろう。その子ども世代(団塊ジュニア)である私などは、今見ても「凄い」と感じ、理解できる感性は持ち合わせているものの、そのさらに下の世代になり、ヤクザも暴走族も完全に下火という時代の感性にはそぐわないのかもしれない。この点が、若頭としてのオルガや鉄砲玉としての三日月に共感できるかどうかに関わってくる。まして、「ガンダムでやる必要あるのきゃ?」と言われれば、返す言葉も無い。
個人的には、アニキ的なオルガが好きだし、キリコ・キュービー的な三日月も歴代ガンダム主人公の中で最も相応しいと思うのだが、いかんせんアニメという形でやや客観的(二次元)に見てしまうと、「暴走するバカと追随するだけのバカ」になってしまうのかもしれず、惜しいところだ。『仁義なき戦い』の登場人物をバカにできないのは、ドキュメンタリー風のリアルな映像と迫真の演技が、観客をドラマの中に取り込んで、決して他人事とは思わせないからなのだろう。

では、ヤクザ・ガンダム、軍閥ガンダムとしては何がマズかったのか。主に二つの問題から説明される。一つは、裏主人公であるマクギリスが顔と口調の割に恐ろしく無能であった(にしてしまった)ことにある。ぶっちゃけ、「錦旗を掲げれば皆自分に従う(はず)」というのが唯一無二の「計画」で、本当にそれ以外何も無かったため、その話に乗ってしまった主人公たちも「タダの騙されたバカ」になってしまっている。「上手の陰謀にまんまとハメられた」というならまだしも、「錦旗を掲げたけど、誰も従いませんでした、終了」では、あまりに惨すぎる。まぁ織田信長を弑逆して朝廷のお墨付きは得たけど、誰も支持してくれなかった明智光秀をイメージしているのかもしれない。だとしても、光秀に味方する主人公ってどうよ。

もう一つは、テイワズのマクマード代表(大親分)が立派そうに見えて、これまた全く部下を統制できない無能だったことだ。それっぽい風貌にそれっぽいことを言いながら、実際には配下はみな勝手放題で、ナンバー2とされるジャスレイの暴走を止めようとすらしなかった。結果、「あの杯は何の意味があったのか?」という話になる。あれなら、「仁義なき」の山守組長(金子信雄)のように、配下同士を競わせる一癖も二癖もある「悪いヤツ」という設定にした方が説得力があった。これに関係して、タービンズが突然当局の手入れを食らっていきなり壊滅してしまったのも、いかにも「制作の都合」で杜撰だった。

この2つの意味するところは、「気前の良い親分と人の良いアニキに付いたはいいものの、美形なだけの無能な詐欺師に騙されて全て失いました」になってしまっているということだ。ヤクザ映画で若者が突っ走るのは「お約束」だが、人間関係に深みが無く、バカっぽさが前面に出てしまい、共感を呼びにくくなっている。人物造形や設定に失敗があったことは間違いないだろう。その結果、主人公たちが「それっぽいカッコイイ台詞」を言ってみても、「仁義なき」の登場人物たちが吐くような記憶に残る「名台詞」(ex. わしらどこで道間違えたんかのぅ、弾はまだ残っとるがよう)にはならなくなっている。説得力が無いからだろう。

私が見るところ、CGSの大人の一人で鉄華団に従うも後に裏切る「トド」は、「仁義なき」の槇原をモチーフにしていると思われるが、全く田中邦衛らしさ(偉大なる小物感)が再現されておらず、出すだけムダだったのではないかと思われるほどだった。これも惜しいところだが、若い脚本家に笠原和夫先生のコピーはできなかったということなのかもしれない。まぁ無理だよなぁ。ちなみに、誰がなんと言おうと、田中邦衛の最高傑作は『仁義なき戦い』である。
ちなみに「ラフタ」が玩具屋で殺されるのは、「仁義なき」の坂井(松方弘樹)へのオマージュだと思われるが、「とってつけた」感が否めない。

上記2点以外で問題点を挙げるなら、「カタルシスの欠如と否定」だろう。ラスボスが条約で禁止された兵器を大量駆使して主人公側をボコボコにした挙げ句、ラスボス側の登場人物は殆ど死なずに終わり、しかも、そのラスボスが主人公らが夢見た変革を実現してしまう。ラスボスは第二次世界大戦のアメリカをイメージしているのだろうが、爽快感の正反対にあるのは間違いない。

生き残った主人公周辺もいかにも微温的な生活を送るラストになっており、変に現実味を出して、「失ったものと得たもののバランスを取らない」(死体の山を築いて得たものこれだけ?)形にしたことが、これまた評価を分け、多数を悪い評価に傾けてしまっている。制作者側の意図は理解できるし、「仁義なき」もそうなのだが、ガンダムでそれをやるのは無理があったのではなかろうか。冲方丁作品なら「いつものこと」だが、それでも一般的な評価は厳しいものが多い。最終的に主人公側が敗北するにしても、「最後の一発」が無いと見る方としては非常に虚しいものに終わってしまいがちだ。敢えて「せめて一発」を外させたところに制作者側の強い意志を感じ、個人的には前向きに評価したいが、一般受けという点では厳しいだろう。
玄人向けの設定を、素人にも分かりやすい脚本にした結果、どちらからも厳しい評価にさらされる感じになっている。

細かいところで言えば、マーケットの要請なのか、脚本家の問題なのか、BLとショタ要素が濃厚に出ている点も気になる。あれは本当に必要だったのだろうか。そんなに前面に出さなくてもと思うが。

私的に高く評価したいのは、MSの設定について、銃砲ではMSの装甲は貫けないので、白兵戦で決着つけるしかない、とした点である。結果、重厚なMSが無骨にガンガン殴り合い、叩き合う形になっているが、デジタル化で描写水準が高まっているだけに重厚感が良く表れていて、発想の転換に成功したと言えるだろう。もっともその弊害として、パイロットの死に様が陰惨になっている気もする。

どうも否定的意見の羅列になってしまったが、全体的にはコペルニクスとまでは行かなくとも、大きな発想の転換を行い、作品化を試みた点について非常に高く評価しており、だからこそ最後まで見てこんな長いレビューも書いている。ただ、コンセプトが興味深いだけに、細部の演出や表現の失敗が必要以上に厳しい評価になってしまっている。スタッフの皆さんには、厳しい評価を受け止めて今後も前向きにガンダムに取り組んで欲しい。

【追記】
ネット上には「マリーにガンダムの脚本なんてムリだったんだ」旨のコメントが散見されたが、厳しいとは思うものの「むべなるかな」であろう。やはり虚淵氏や東出氏あたりが妥当だったのではないか。冲方氏は世界が違うだろう。
posted by ケン at 00:00| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする