2017年06月16日

共謀罪成立を受けて

【「共謀罪」法が成立 与党が参院本会議で採決強行】
 犯罪を計画段階から処罰できるようにする「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法が15日朝、参院本会議で成立した。自民、公明両党が参院法務委員会での審議を打ち切り、15日未明に始まった参院本会議で直接採決する「中間報告」を強行。与党や日本維新の会の賛成多数で可決した。投票総数235票のうち、賛成が165票、反対が70票だった。
共謀罪法案は、犯罪を実行に移した段階から処罰する日本の刑事法の原則を大きく変える内容で、過去3回廃案になった経緯がある。政府は今回、「テロ対策」を強調し、国際組織犯罪防止条約の締結に不可欠だと説明したが、国連の特別報告者が「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と懸念を表明。民進、共産両党などが廃案を求めていた。
 中間報告は、通常の委員会採決を省く国会法が定める手続き。民進など野党4党は「強行採決以上の強行採決。審議を一方的に打ち切って本会議で採決するのは異常だ」(民進の小川敏夫参院議員会長)と猛反発し、安倍内閣不信任決議案を提出したが、15日未明の衆院本会議で否決。与党はその後の参院本会議で、共謀罪法案を可決した。
 審議時間は衆院の30時間25分に対し、参院では17時間50分。一般人が捜査対象になるかどうかや、捜査機関の判断次第で解釈が拡大される懸念など、多くの疑問や対立点が解消されていなかった。参院本会議での改正組織的犯罪処罰法の採決、成立後、自民党の松山政司参院国会対策委員長は、18日までの通常国会の会期を延長しない考えを記者団に述べた。
(6月15日、朝日新聞)

共謀罪というのはつまるところこういうもの。

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民主党政権なら民主党のための、自公政権なら自公のためのものになるだけ。
国際テロなど組織犯罪を防止するため、政府が5月末までに「共謀罪」を創設する方針を国際機関などに伝達したことが3日、分かった。中国によるサイバー攻撃やアルカーイダなどテロリスト集団の重大犯罪の実行前に、共謀段階で処罰するのが狙い。
(2012年1月4日、産経新聞、野田政権−現民進党幹事長)

野党第一党民進党の野田幹事長は、民主党政権で共謀罪を推進した張本人だった。もともと過去の自民党政権でも検討されていたが、諸々の理由から先送りになり、民主党鳩山政権で一度は凍結されたはずだった。ところが、菅政権で解除され、野田政権で成立させる方針だった。だが、当時の民主党内には少なからず反対派もいて、優先順位的にも後回しにされたため、12年末の消費税自爆解散が先に来た。

今回、安倍政権が共謀罪法案を提出するに至って、民進党は反対する方針を出したものの、党内の半分以上は本音では賛成で、「野党である以上はやむを得ない」という理由による反対だった。それは当然で、自民党議員に「貴方が作ろうとした法案を作ったまでです」と言われれば、ぐうの音も出ないからだ。
これとよく似たことは、盧溝橋事件が起きた際に起きている。積極介入派の武藤章参謀本部作戦課長を説得しに来た石原莞爾は、「閣下が満州事変でやられたことを見習っているまでであります」と言われて沈黙している。

民進党の野田幹事長は、この間、共謀罪について表舞台では殆ど言及することがなく、記者会見などでは、
各種世論調査を見ても、国民は「共謀罪」法案の今国会での成立を求めてはおりません。政府・与党にはあらためて丁寧な審議を求めていきたいと思います。仮に政府・与党が強引に法案の採決を進めるようであれば、あらゆる手段を講じてこれを阻止していきたいと考えています。
(6月12日、民進党本部記者会見)

と微温的なことしか述べていない。事実、「あらゆる手段を講じてこれを阻止」と言いながら、その二日後にはロクな抵抗を見せずに参院通過、成立を許している。
私が耳にしたところでは、衆議院で審議されていた折、森友・加計疑獄で若手中心に組まれた疑惑追及チームが何度も審議拒否を国対に言上したものの、その都度国対から「今はそのタイミングでは無い」と押しとどめられ、どうやら野田幹事長の指示があったものとされている。少なくとも野田氏に抗戦意思が皆無だったことは間違いない。そうでなければ、会期延長にすら持ち込めなかった無策は説明できない。

もっとも、野田氏に限らず、議会外闘争を試みている市民団体(共謀罪の成立により反政府団体に認定される可能性大)が応援演説を要請しても、来るのはNK党の議員ばかりで、民進党からは来ても1人か2人、下手すると主催者や要請を受けた党本部職員が片端から議員事務所に電話して断られまくるという状況にあった。これらは、野田政権時に推進していた共謀罪について、野党になった途端に反対するのが躊躇われたためで、人としては当然の対応だった。むしろある意味では、野田内閣を総括すること無く、堂々と反対できる議員の方が不誠実かもしれない。

つまり、民進党、少なくとも蓮舫執行部はハナから戦う意思などなく、自民党に上手(うわて)を行かれて戦う素振りすら見せられずに「ターン・エンド」にされてしまった格好だった。ゲーム・プレイヤーとしても最低だったと言えよう。むしろ、無数のリベラル系市民に何の根拠も無しに期待させて、利用しようとしながら利用することもできずに終わったのである。

ケン先生は引き続き個人攻撃を避けつつ、共和国と社会主義に邁進します!
posted by ケン at 12:18| Comment(0) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月15日

まずは休日の削減を!

【有休取得3日増、企業に要請へ 休み方改革へ官民会議】
 働く人が年次有給休暇(有休)を取りやすくするため、政府は近く「休み方改革」の官民推進会議を開く。2018年度の有休の取得日数を前年度より3日増やすよう企業に要請し、実際に増えた企業を助成する仕組みも検討する。学校の長期休暇の一部を地域ごとに分散させる「キッズウィーク」と組み合わせ、消費拡大や観光振興につなげる狙いだ。菅義偉官房長官は5日の記者会見で、「大人と子どもが一緒に休むために学校や企業など多方面で共通理解が必要だ」と述べた。
 有休は働く人の疲労回復のための制度。政府は取得率を20年までに70%に引き上げるとの目標を10年に掲げた。しかし、16年調査では48・7%。労働者1人あたり年18・1日が付与されたが、実際に取れたのは8・8日だった。政府は「働き方改革」で掲げる長時間労働の是正には、取得率アップなどの「休み方改革」が必要と判断した。
(6月6日、朝日新聞)

相変わらず現実離れしている。これも何度も説明していることだが、繰り返す。
有給休暇の取得率は、公式統計上、全体平均で50%を切るくらいだが、就労者の7割を占める中小企業に限れば、40%弱でしかない。また、業種別で見た場合、飲食や宿泊などのサービス産業は30%程度でしかないという。さらに言えば、制度上は、パートやアルバイトも有給休暇を取得できるようになっているが、その取得率は20%強と言われ、有名無実化している。

一方、国民の祝日は2000年以降、「みどりの日」から最新の「山の日」に至るまで4日も増えている。祝日が増えた結果、振替休日も増加、公休日が増えて市場の稼働率が大きく低下している。国際的に見て祝日は年間7〜10日程度の国が大半であるところ、日本の17日というのは圧倒的に多い。
日本の年休法は、勤務期間によって10〜20日を最低日数として定めており、平均で18日となっている。これに違反して休暇を与えない使用者は罰せられることになっているが、実際には年休は「労働者の権利」として扱われているため、年休の約50%が行使しないまま放棄されている現状となっている。
これ以外にも、「病気休暇」が設定されているものの、「病休を取ると昇進や昇給に影響が出る」という空気が支配的なことが多く、手続きが面倒な場合もあったりして、実際には年休を取って済ます例が多い。そのため、取得年休のうちの10〜20%(2〜4日)は病気理由によると言われている。そうすると、実質的な年休取得率はわずか30%前後に過ぎない、という話になる。

日本の公休の多さは残業の多さとも関連があると考えられる。個々人が有給休暇を取得する場合は、ある程度は職場の同僚がカバーするだろうが、公休で全職務がストップしてしまうため、平日の作業量が増え、労働効率が悪化、残業が増える構造になっている。特に、海外との取引が急増している今日では、「日本だけ決済が遅れる」というケースが多くなり、外国取引に大きな支障が出ているだけでなく、外国と取引のある企業では休日出勤が常態化する傾向が強い。つまり、公休を増やすことは、グローバル競争力を低下させるだけで、実のところ政府の方針に反する結果しか生まない。
また、観光や各種文化活動が公休日に集中することでも、そのパフォーマンスを低下させている。欧米並みの有休取得率であれば、連休の観光地の超混雑や高価格は避けられ、観光業も飲食業も稼働率を上げることができるはずだ。

この場合、ただ政府が企業に対して有休取得を呼びかけたところで、企業側には何のインセンティブも無いため、「プレミアム・フライデー」同様、惨憺たる結果に終わるだろう。
解決策としては、まず国民の祝日を半分にし、その上で有給休暇そのものを増やしつつ、その取得率が90%以下の企業に対しては懲罰を科す(企業名の公表と罰金と公的調達の禁止)、あるいは余剰休暇の高額での買い上げを強制する仕組みをつくるべきだ。特に被雇用者の4割を占めるに至っているパート・アルバイトの有給休暇については、特段の配慮をなす必要があろう。

ヤクニンどもはマジで「仕事するフリ」を止めて欲しい。

【6月16日、追記】
病休規定は労基法で規定されたものではなく、公共機関、それに準じる機関と労使協議で規定された場合のみ設定されていることを補足しておく。
posted by ケン at 12:32| Comment(3) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月14日

メランション候補が訴えたもの・続

同志たちとの研究会でフランス大統領選の左派候補二人(社会党アモン氏と「不服従のフランス」のメランション氏)の政策について報告したので、その一端を紹介しておきたい。あくまでも中学、高校でフランス語を学んだだけの語学力なので、訳の精度については全く保証しない。まず今回は、メランション候補。

【メランション氏の経歴】
 Jean-Luc Mélenchon、ジャン=リュク=メランション。1951年、モロッコ生まれ。父は郵便局員、母は学校教員。フランシュ=コンテ大学(ブザンソン)で哲学を学ぶ。高校時代から学生運動に傾倒。卒業後は学校教員を始め、複数の職を転々とする。1977年に社会党に入党、83年にマッシー市議会議員(住民約4万)に当選、86年にはエソンヌ県から元老院(上院)に当選。2000年、ジョスパン内閣で職業教育大臣。党内左派を形成していたが、2008年にドレズらと共に社会党を離党、「左翼党」を結成して共同党首に就任、後に「緑の党」からの離党者も加わる。09年には、共産党などと「左翼戦線」を結成、同年の欧州議会議員選挙では6.48%の得票で5議席を獲得、メランションは南仏区から欧州議会に当選。2012年のフランス大統領選に出馬、第一回投票で約400万票を獲得するも4位に終わる。2017年の大統領選では、「左翼戦線」にエコロジストやLGBT運動を加えた「不服従のフランス」を結成、706万票(得票率19.58%)を獲得するも、同じく4位に終わった。第二回投票では、マクロン氏もルペン氏も支持しないと宣言した。
 余談だが、大統領選前のインタビューで「趣味は?」と問われて「全てを政治に捧げている」と答えていたが、2012年の「GALA」誌のインタビューで「日がな一日恋愛小説書いている時が至福」と述べていたことが「暴露」された(3月10日、パリ・マッチ誌)。どこまでもフランスである。

【メランション氏の政治的スタンス】
 社会党入党当初はミッテランを信奉、その死後はロカールらと党内左派を形成する。経済的にはマルクス主義者、政治的には民主主義者、社会的には自由主義者の側面が強い。欧州連合は新自由主義に冒されているとし、自由貿易とグローバル化は貧困と格差を助長して弱肉強食の社会をつくっていると主張している。政治的には、大統領権限を縮小する一方、国民議会の権限を強化、市民の投票義務を強化しつつ、ランダムで選ばれた市民を議員にする仕組みの創設を訴えている。同時に、富の再分配構造を強化し、労働基本権と福祉政策の拡大を主張している。だが、EU内では富や労働力の移動が容易であるため、金融や高所得層に対する課税強化が困難になっていることと同時に、税や社会保険を上げることも難しく、経済自由主義とグローバル化に引きずられて、一国で社会主義政策を行うことを困難にしているとして、国家主権の侵害と理解している。また、NATO軍が世界全体にとっての脅威になると同時に、フランスの平和外交を阻害するものとして、NATOからの離脱を主張している。

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大統領選挙パンフレット「人民の力」より
序文:私たちの集合知は、もし自分たちが公共善に力を注ぎ続ける限り、必ずやあらゆる困難を克服できるはずです。私たちの共和国のモットーである「自由、平等、博愛」は、私たちの進むべき道を示しています。私たちは、自分たちに対してのみならず、全人類に対し責任を負っています。だからこそ、私にはその覚悟があります。そして、皆さんにもその覚悟があると信じます。

[第六共和政]大統領権限の縮小、議会の強化、直接民主制の部分的導入

[労働者の権利強化]人員削減のための労使協議会に猶予拒否権を付与、経営危機時の配当金の支払いの禁止、様々な労働組合の権限強化

[治安対策]科学警察の強化、警察署の改修促進、対テロ戦争からの撤退、人身売買対策の強化

[経済]金融取引課税、経営陣や株主の法外な報酬の規制、脱税や不法投機対策としての資本移動の監視強化

[雇用]時短の実現による350万人の新規雇用、最低賃金の上昇、USやカナダとの自由貿易協定の拒否、輸入品に対する距離と炭素の課税。

[年金]40年間の年金拠出による60歳からの年金支給の確約、最低保障年金の増額

[ジェンダー]男女間の賃金や昇進差別を禁止する包括的社会契約、男女平等を尊重しない企業に対する罰金と刑事罰、公共調達のアクセス禁止

[住宅]代替地の提示なき立ち退き要求の禁止、ホームレス・ゼロ化、グリーン基準による百万戸の公共住宅の新築

[税金]高額所得者に対する課税強化、金融・不動産・相続課税の強化、居住住宅の非課税枠の拡大、脱税・資本逃避の対策強化

[エネルギー]2050年までに再生可能エネルギー100%を実現。化石燃料関連の補助金の停止。新規のシェールオイル、ガス調査の禁止。核融合炉計画の放棄。

[農業]遺伝子組み換え作物の禁止。有害殺虫剤の禁止。若年者の就農支援強化とCAP(欧州共通農業政策)の見直しにより30万人の新規雇用を実現。家畜を虐待する牧場の営業停止措置。

[欧州問題]EUが要求する公共サービスの民営化の停止。EU離脱のための国民投票の実施。財政赤字がGDPの3%を上回ってならないことを規定するEU協定への不服従。

[平和と独立]国連安保理決議無き軍事介入への不同意。NATOの軍事部門からの離脱。国連指導下における多国間交渉によるイラク、シリアの平和実現。パレスチナの国家承認による中東和平の推進。

[移民]難民を出さないための積極的な平和外交に注力。難民キャンプにおける人間の尊厳の尊重。保護者のいない未成年難民に対する支援強化、家庭生活の保証。

[健康]公立病院のサービス向上。予防医療の充実。農村部や地方における医療アクセスの保障。

[教育]3〜18歳までの義務教育化。給食、通学、文具などの無償化。5年間で6万人の教員雇用。幼稚園、保育園における少人数学級の実現。職業専門学校の充実。

[文化]GDPの1%を文化と創造(芸術)に。音楽、映画、文化コンテンツを合法的に提供するプラットフォームを有するオンライン公共図書館の設立。

[宇宙]火星に向けた惑星間ミッションの推進。月面の永久基地の設立を提案。

[自由権]検閲と監視の無い仮想空間の保証。(被疑者の)広範なフィリングの禁止と「誠実な人」のファイル削除(犯罪容疑者以外のプライバシー情報の収集蓄積の禁止)。個人データ保護と商業利用(ビッグ・データ)の規制。

【ケン先生の評価】
 メランション氏の政策は大統領選挙用のパンフレットを参照した。非常に読みやすく、その主張も分かりやすい一方、財源に大きな不安があり、ポピュリズム的要求の羅列になっている。ただ、「不服従のフランス」は大統領選や欧州議会選挙用の政党連合であり、社会党離党者を中心に緑の党、共産党から急進的農業運動、環境運動、LGBT運動など非常に幅広く連帯している。日本の場合、こうした政党連合は必ず「俺が俺が」となって全く機能せず、票も出ないが、メランション候補は700万票以上も獲得している。日本の市民運動や左翼は、むしろ運動論を学ぶべきかもしれない。同時に、多様な政党連合であるが故の強い独自性が政策にも反映されており、非常に独創的な政策も散見され、勉強になる。個人的には「宇宙」や「自由権」にグッとくるものがあった。また、序文の格調高い名文も「フランス」を感じさせるに十分だろう。
posted by ケン at 12:52| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月13日

日本社会の腐敗構造について・補

「日本社会の腐敗構造について」の補足になる。腐敗を無くすことは不可能としても、その影響を最小限にするためにできることはある。
政官業報の「腐敗テトラゴン」構造を理解すれば、その癒着関係を一つずつ絶ってゆくことが近道であると推定することができる。

最大の問題は選挙制度だ。政治家個人がカネと票を集めなければならない選挙区制度では、政治家が有権者に利益誘導(公共調達、公共事業、公的融資、補助金等)する代償としてカネと票をもらうシステムになっており、投票率の低さも相まって有効に機能している。
法律上は、公職選挙法、収賄罪、あっせん利得罪などがあるものの、殆ど機能していないことを鑑みても、これらの罰則を強化したところでまず効果は無いだろう。
政治家と有権者の個人的癒着を断ち切るためには、党員の事前投票によって党名簿の順位を決める単純比例代表制が望ましい。ただし、この場合でも、企業団体による政党への献金も禁止あるいは制限する必要はあろう。これにより政業の癒着を絶つ。

次に政官の癒着。これは、政権党が行政府の出す法律案を丸呑みする代償として、行政が利益誘導(公共調達、公共事業、公的融資、補助金等)することで成り立っている。立法府に行政監督権がある以上、「どこまでが監視でどこからが利益誘導か」という判断は常に残る。だが、英国のように政治家と官僚の接触を厳しく制限し、その交渉内容を必ず記録して公文書に残すようにすれば、政治側からの要求は全て明白となろう。もちろん公文書管理法や情報公開法の改善は不可欠だ。
これによって政治側からの不当要求を減らせば、逆に政治側は行政側の立法提案を丸呑みする必要は無く、少なくとも「貸し借り」の関係を弱めることはできるだろう。

そして官業。財界は政治家を通じて行政から利益誘導(公共調達、公共事業、公的融資、補助金等)を受ける代償として、官僚に天下りポストを用意する。民主党政権時に、天下り規制を強化したものの、自民党に政権が戻ってほぼ有耶無耶にされてしまったが、このこと自体が「癒着テトラゴン」の存在を示している。
これを抑止するためには、まず省庁に降格制度を設け、全員が定年まで勤め上げられるシステムを構築し、比較的早い段階から年金を受給できるようにする必要がある。この場合、「官優遇」の非難は起きようが、官僚の天下りによって生起される癒着構造が社会に与えているダメージを考えれば、やむを得ない措置だろう。

最後にマスゴミ。日本の大手メディアは、「記者クラブ」「クロスオーナーシップ」「再販制」「電波許可制」などによって政府から得た独占的権利をもって市場を占有しており、これが他社の参入を拒んで権力との一体化をなしている。従って、この4つの特権を廃止し、市場競争を促せば大半の問題は解決されるだろう。民主党政権は、これにメスを入れようとしたため、徹底的に攻撃された。それを考えると、現行システムでの漸進的改革は難しいかもしれない。

【追記】
政党は資本家の走狗であり、その腐敢は極度に達し、外交もまた追従妥協、不甲斐なきこと恰も外交者流は国際女郎の観あり
(橋本欣五郎の手記、陸軍、桜会、昭和5年)
posted by ケン at 13:10| Comment(2) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月12日

日本社会の腐敗構造について

森友、加計疑獄をめぐって野党が政権を攻撃し続けているが、成果は殆ど上がっていない。それは当然で、森友疑獄では維新も共犯者、加計疑獄では民進党内に共犯者がいたことが判明しており、何をどう攻撃しても「ブーメラン」にしかならないためだ。

現状、日本の議会政党で腐敗を免れているのは、せいぜいのところNK党とSM党くらいしかない。だが、SM党は目端の利く者から率先して離党して「腐敗することすらできない」者だけが残っているだけの話であり、NK党は全く別の行動原理に基づいているため、単純に「腐敗してないから良い」ということにはならない。
では、この場合の「腐敗」とは何を指すのか、政治に関わりの無い人にはなかなか想像できない世界だと思われるので、分かりやすく解説してみたい。

戦後日本は長いこと中選挙区制(学術的には大選挙区制)を採用してきた。そこでは、1つの党から複数の候補が立候補してしのぎを削るため、より多くの資金と人員を動員できた陣営が勝利した。その結果、「五当四落」という言葉が生まれたが、それは「選挙に5億円投じれば当選するが、4億円では落選」という意味だった。あくまでも象徴的な言葉ではあるが、とにかく巨額の費用が掛かったことは間違いなく、多くの政治家は「井戸塀」と呼ばれるように、政治家を引退する頃には、かつては広大な敷地があった自宅も井戸と塀しか残らないものだった。

選挙用の資金をつくるために、政治家は集票マシーンとしての後援会とは別に、資金収集用の特殊後援会をつくった。通常の後援会は、年会費5千円とか1万円、あるいは無料だが、この特殊後援会は月会費が1万円から3万円という高額に設定され、企業家や地場の名士が加入した。
彼らは、年間12〜36万円の会費を納める代償として、政治家事務所に様々な陳情を行う権利を有した。その「陳情」は様々で、主なものを挙げれば、「税金の減免」「公共事業や公共調達の優先権」「公有地の優先的払い下げ」「公的銀行からの低利融資」「公的補助金の優先確保」などがある。陳情者は、政治家秘書を連れて行政や公共機関に赴いて陳情を行い、後に「しかるべきところ」に政治家本人が電話して、「○○の件、よろしく頼む」と言うのである。
「陳情=利益誘導」によって得られる利益は、当然会費を上回るが、上回った分については政治家側から謝礼金や集票が期待されるので、選挙に際しては社員や名簿を提供して支援することになり、ズブズブの関係に陥ってゆく。また、個別に陳情を処理した秘書は、「出来高払い」や「謝礼金」をもらえるので、必死に陳情処理に励むことになる。自民党の秘書の場合、基礎給ゼロで全て陳情者からの謝礼だけが「給与」というケースも珍しくなかった(最近では聞かないが)。
例えば、年間36万円の会費を納める会員が300人もいれば、年間収入は1億円以上になる。それに陳情受理(成功)による謝礼(献金)を含めれば、1億数千万円になる。

自民党の田中派、あるいは従来の小沢派などは、派閥として数十億円の資金をつくり、政府や地方自治体が必要としそうな土地を予め買い占めて、政策誘導してその土地に事業を誘致させることで、土地の価格を上げるという「土地転がし」による資産運用を行っていたとされる。規模の差はあれど、国家レベルであれ地方レベルであれ、こうした腐敗の手口は蔓延していると見て良い。
社会党系のベテラン議員でも年会費12万円の特別後援会員を100人以上抱えて、集金と集票に勤しんでいることを鑑みれば、自民党議員はその数倍、数十倍の規模で行っていると見て良い。事実、「中選挙区制は金がかかる」との批判から、小選挙区制に移行したとはいえ、現在でも「二当一落」(二億円なら当選、一億では落選)と言われていることから、数千万円規模の集金マシーンをつくらないと、日本の選挙は「風頼み」になってしまうことが分かる。
つまり、政治家個人を選ぶ選挙制度が腐敗を誘発しているのだ。同時に政治家を介する政策減税(企業減税)、公的融資、補助金等が、市場競争力の低いゾンビ企業を延命させ、企業の新規参入や労働市場の流動性を阻害、市場経済を停滞させている。

一方、行政は行政で立法府と癒着関係にある。前提として、立法府は「行政監督権」を持ち、「行政が適切に執行されているか」監督する義務を有している。少なくとも建前上は、上記の陳情行為は「行政の不適切な執行によって損失を被り、不満を有している市民の声を反映させるもの」として行われるため、行政府としては原則的に全面拒否することはできない仕組みになっている。
また、実務面では、日本型システムでは行政が予算や必要な法律案を作成し、内閣が提出する仕組みになっているため、与党・政権党の意向に反すると何もできなくなってしまう。そのため、行政は与党政治家の陳情を優先的に許容し、その対価として自分たちのつくった予算や法案を無修正で通してもらう、という癒着関係が成立している。

また、財界は政治家を通して政策減税(企業減税)、公的融資、補助金等の陳情を行い、官僚が行政の公平性を曲げて優先的に利益を供与、財界はその見返りに「天下りポスト」を提供することで、政官業の「腐敗トライアングル」が形成されている。
例えば、加計学園は1つの失敗例かもしれないが、原理的には、新興大学が政治家に金と票を融通して学部新設を陳情、与党政治家は文科省に圧力をかける。認可権を有する文科省は、学部新設を認める代わりに、与党に法案成立を要請する一方、新設大学に天下りポストを用意させる構図になっている。こうした構図は、日本全国であまねく成立している。

ところが、こうした腐敗構造や具体的な事例は殆ど報道されない。マスコミもまた腐敗構造の一角をなしているためだ。
日本の大型メディアは、「記者クラブ」「クロスオーナーシップ」「再販制」「電波許可制」などによって権力と一体化しており、実質的には旧ソ連の「イズベスチヤ」や中国の「新華社」に近い宣伝機関の機能しか果たしていない。
再販制度と電波許可は、政府から独占禁止法の例外として認められた特権であり、他の新規参入を拒むものとなっている。クロスオーナーシップ制度は、新聞社と放送局の一体化を許すもので、これも「マスコミ集中原則排除」を拒んで報道の独占を許すシステムになっている。また、記者クラブは、公的情報ソースの独占権だけでなく、情報提供だけでなく、記者室の利用料や管理・運営費に至るまで、情報提供者(政府)が負担している。この記者クラブに加入していない、弱小マスコミやフリージャーナリストなどは、記者室に入ることも、情報提供を受けることも許されないため、独自に一からアポを取って取材しなければならない。こうした情報ソースと報道ルートの独占権が、政府によって認められ維持されているため、日本のマスゴミは権力に盲従しなければ、存続もおぼつかない仕組みになっている。

結果、「国境なき記者団」の「報道の自由度ランキング」では、日本は先進国の中で最低水準にあり、今後も下がりそうな気配だ。しかし、これは安倍政権だけの問題ではなく、マスゴミを含めた政官業報の「腐敗テトラゴン」に起因している。
腐敗構造と一体化しているマスゴミが、自らを否定する報道をなすはずもなく、情報公開制度や公文書管理法の未熟も相まって、社会の隅々に至るまで腐敗と汚染が広がっている。

【追記】
上記の腐敗構造は、今に始まった話ではない。ただ、かつては高度成長下で広範な人が発展の恩恵にあずかることができたが、90年代に成長が止まり、「集中と選択」が行われ、繁栄を享受できる人が限られるようになり、そこから脱落した人たちが怨念を募らせ、告発するようになっていると考えられる。

【追記2】
腐敗が温存される原因の一つは、日本型組織における意思決定過程や責任所在の不明確さにある。詳細は「新国立競技場の責任者は誰?」で述べているが、組織における最終意思決定者も意思決定過程も恐ろしく不明確であるため、責任を追及することも失敗の原因を探すこともできず、同じ失敗を何度でも繰り返すことになるシステムなのだ。
posted by ケン at 12:48| Comment(0) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月10日

張作霖 爆殺への軌跡 1875-1928

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『張作霖 爆殺への軌跡 1875-1928』 杉山祐之 白水社(2017)

名著『覇王と革命−中国軍閥史 1915-28』を著した杉山祐之氏の新作。
前著『覇王と革命』は、辛亥革命から蒋介石による北伐開始までの軍閥闘争を描いている。ケン先生も書評を書こうと思っていたのだが、つい書きそびれてしまったので、ここで軽く触れておく。現代中国史は、共産党や国民党あるいは帝国日本などの立場が強く作用するため、なかなか客観的な解説書が無い。だが、本作は可能な限り偏りを排しており、かと言って平板な解説になることもなく、非常にダイナミックな歴史を再現している。しかも、フィクションでは無く、相当に資料が読み込まれており、曖昧な点については複数の視点や理解が提示され、学術性と読み物のバランスが絶妙な作品に仕上がっている。軍閥による群雄割拠期は、共産党政府にとっても国民党政府にとっても鬼門であり、どちらの国でも客観的研究が難しい状況にあるだけに、非常に貴重な一冊だと言える。また、日本人的には、つい日本の視点から満州や上海を見てしまうだけに、中国側の視点から見た日本の侵略意図を再確認する意味でも大事だ。

今回の『張作霖』は、前作では「軍閥の一つ」だった張作霖を主人公とし、その誕生から死までを丹念に追いつつ、彼の視点から見た軍閥闘争と日帝の脅威を描いている。前作の特長である、学術性とエンターテイメント性のバランスや客観性は本作でも守られており、むしろ個人に焦点が当てられているだけ分かりやすくなっているし、相変わらず「読ませる」記述になっている。
著者が「上手い」のかもしれないが、張作霖のどこまでも「中華英雄」を追求する姿勢が心地よく、本人もそれを意識して史記や三国志などの故事を真似ようと努力しているところや、彼をめぐる周囲の人々との関係がどこまでも中国的(情義が優先される)であるところなど、非常に面白いと同時に、「あぁ、中国ってそうだよな」と思わせてくれる(家に飛び込んできた雛は決して殺さないとか)。

小さな雑貨屋に生まれ、各地を転々としながら少しずつ己の才覚でのし上がり、自警団長からいつしか軍閥の長になって、最後は東三省を支配してソ連と日本と関内軍閥群と渡り合うまでに至った。まさに「乱世の梟雄」であり、それだけの実力と魅力がある。そして、普通に日本史を習うだけではまず分からない、「なぜ関東軍に謀殺されたのか」を学ぶことができる。そこに、本土では「売国奴」と言われ、日本では「馬賊の一頭目」と見なされる張作霖の実像を見ることになるだろう。

馴染みの無いテーマではあるが、地図や写真もそれなりに配されて読みやすくなっている。アジアの近現代史に興味のある者なら、二冊とも抑えておくべきだろう。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月09日

官邸・文科闘争の裏にあるもの

「ここに来て加計疑獄を裏付ける資料が出てきているのは何故でしょうか」との質問を受ける。本ブログでは、保身上の理由から、あまり生々しいネタは扱わないことにしているのだが、今回はちょっとだけ触れてみたい。とはいえ、あくまでもケン先生の妄想なので、内容の真偽については全く保証しない。
なお、同志諸兄には心配をおかけしているが、「禁忌の少し手前」で「死の舞踏」を舞うのが本ブログの本懐であり、今のところは何の問題もないので安心して欲しい。

まず、文科省の前川前次官が辞任に追い込まれたのは、文科省の天下り問題がクローズアップされたことに依る。だが、同様の天下りは他の省庁でも行われていることであり、文科官僚が傘下の国立大学等に天下るのは、教育を聖務と見る向きからすれば恥ずべき行為だが、本来は文科省に限った話ではなかった。
そして、この天下り問題をリークしたのは首相官邸で、官邸のプロパガンダ機関である読売新聞が大々的に取り上げ、同じく協力者である他のマスゴミも同調した。その狙いは、最初から前川次官の追放にあり、それは加計学園の獣医学部新設の手続きに難色を示す文科省に対する攻撃だった。「ザ・黒幕−日本支配」で言うところの「Pで攻撃」である。仮に抵抗者が前川氏一人であったなら、次官を更迭すれば済む話だったが、1つには更迭する正当な理由がなかったのと、2つは文科省の相当部分が前川氏に賛同して官邸に抵抗姿勢を示していたため、謀略によって文科省の権威を失墜させ、これを屈服させる戦術に出た。

この陰謀を主導したのは、S田内閣官房副長官だった。氏は、民主党野田政権から官邸に参画、共謀罪や秘密保護法を準備していたことから、自民党安倍政権に交替してからも格別の配慮で官邸に残り、官房副長官に抜擢されている。我々の間では「安倍政権のベリヤ」と呼ばれている。
そして、特定秘密保護法に基づき「特定秘密を扱う可能性のある者」の身辺調査を行い、前川氏の「ガールズ・バー通い」をも暴露した。前川氏は、次官在任中にこのS氏から同件について「警告」を受けたというから間違いない。
ちなみに、「特定秘密を扱う可能性のある者」はかなり広範囲に適用可能な上、国会議員も与党の一員である限りは政府の役職に就く可能性があるため、全員が調査対象になる。結果、官邸は全ての与党議員のセンシティブ情報またはスキャンダル・ネタを握ることができ、それが絶対権力の源泉になっている。まさにベリヤなのだ。

官邸は、前川次官が辞任した時点で勝利を確信していたが、その前川氏が「実名告白」という反撃に転じる。だが、前川氏一人では限界があり、様々な文書が出てくるところを見る限り、文科省内に少なくない支持者がいるものと見られる。
その根底にあるのは、官邸の主導でオリンピック利権を経産省に奪われ、大学開設の権限も官邸に奪われそうになり、挙げ句の果てに一人悪者にされて天下りを封じられた文科省のルサンチマンである。なるほど、前川氏個人は、理想に燃えた立派な官僚だったかもしれないが、平均的には「官邸一極集中」「省の存在意義に関わる」事態に対する不信と不満こそが元凶だろうと見られる。特に秘密保護法が、権力闘争の武器として早々に使用されたことは、良心を保っている官僚たちに「次は自分かもしれない」と思わせるに十分だった。結果、官邸一極集中や暗黒支配に不満を抱く官僚層にも支持を広げている。

とはいえ、全体的にはやはり局所的な反乱の域を出そうにない。議会は与党が絶対多数を占め、官邸は絶対権力を有し、マスゴミはプロパガンダ機関に堕し、野党も半分は共犯関係という有様では、一省庁の抵抗などパルチザン程度のものに終わるだろう。
ただし、ここに来て週刊誌を始め、安倍政権に対する攻撃が強まっているのも事実で、「アベノミクスを終わらせたい宗主国の意思が働いている」と見る向きもある。

いずれにせよ、問題の本質は、政治家が財界から金をもらって行政執行を恣意的に歪める陳情政治と、行政による予算や立法を成立させるために政治側の陳情を容認する霞ヶ関行政、御上から下賜された独占権を守るために政権に従属するマスゴミによる「腐敗テトラゴン」にこそある。要は、腐敗した統治構造内部での権力争いなのであり、その視点を忘れてはならない。
なお、この腐敗構造については、別途解説したい。
posted by ケン at 12:41| Comment(1) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする