2018年06月06日

高プロ導入に見る資本主義と民主主義の終焉・下

前回の続き
デモクラシーは、同質性の高い有権者の集合体を前提とした合意形成システムであるが、階級分化と身分固定化が進んだ社会では成立しがたい。ロバート・スキデルスキー師は、「二十世紀の経験は、経済的繁栄はリベラルな民主主義に依存しないが、リベラルな民主主義は、経済的繁栄が欠けている場合、危機に陥る、ということを示している」と述べている。

20世紀を前後して、工業先進国においてデモクラシーを採用する国が増えたのは、資本主義との相性が良かったところが大きい。労働者に政治的権利を付与することによって、資本と労働の合意形成がなされ、階級和解が実現することによって、労働争議が抑えられ、資本と労働が効率化していった。また、効率化と労使合意によって労働者の賃金も継続的に向上、消費が増え、市場そのものが拡大していった。
これに対して、ソ連型社会主義が1960年代後半から70年代にかけて失速して、そのまま浮上できなかったのは、計画経済の中で消費文化を否定したことで市場の発展を阻害、成長を止めてしまったことが大きい。さらに、生産力向上に対して賃金を増やしたものの、家計にある貨幣を吸収する消費財を供給できず、市場に大量の貨幣が滞留、超規模のインフレーションを発生させてしまった。

ソ連が崩壊したのは、フランシス・フクヤマらが言ったような「自由民主主義の優越」に起因するものではなく、単に「市場」を理解できなかったソヴィエトの政治家と官僚が、経済運営に失敗したために起きたものだった。現実に2018年時点で、自由民主主義を否定し、一党独裁を堅持する中国が、アメリカやEUを上回る富を獲得しつつあるが、この現象はフクヤマの論理では説明できない。
むしろ、アメリカと西欧の資本主義は、ソ連崩壊によってロシア・東欧・中央アジアをほぼ無償で市場占有できた上、安価な労働力を得ることができたため、延命することができたと考えるべきだろう。ロシアのプーチン路線は、米欧の新帝国主義に対する反動であり、だからこそ米欧が血眼になって敵視しているのだ。この辺の説明は、別途記事にしたいと思う。
例えば、アメリカの政策金利を見た場合、1993年に3%まで下がっていたものが、1997〜98年には5.5%に回復、2000年には6.5%を達成するも、その後ふたたび低下し始め、リーマンショック後の2009年には0.25%となった。これは、資本主義が安価な資源調達先と占有できる市場が必要であることの傍証でもある。

アメリカは2015年末にゼロ金利政策を止め、現在は1.75%となっているが、日本はリーマンショック後に0.1%としたまま、現在まで続いている。これは、日本企業がアメリカ企業以上に低収益構造の改善が進まないことを示している。
日本の場合、1991年に始まったバブル崩壊を経て、公的資金(主に税金)を投入して大手銀行の一部を救済する一方で、解雇や雇用抑制がなされると同時に、派遣労働や業務請負の解禁が進められた。これらは労働コストを下げることで、収益を改善することを目的とした。
この公的資金投入と税収減の穴を埋めるために、1997年には消費増税と特別減税の廃止がなされ、労働報酬の削減と国民負担増が進んだ。

2000年代に入って、小泉政権が成立すると、派遣労働・業務請負の流れが加速、非正規雇用の割合も急上昇していった。1994年に20%だった賃金労働者に占める非正規雇用者の割合は、2002年には30%を超え、今や38%に達している。非正規雇用者の平均賃金は2016年度で年172万円で、正規雇用者の315万円に対して54%でしかない。
労働分配率を見た場合、2004年に70%を割ったものがリーマンショック前に74%にまで改善されたものの、2012年に安倍政権が樹立すると68%以下にまで下がっている。これに対して、企業利益(付加価値から人件費と租税を引いた分)は小泉期に72〜73兆円を超えていたものが、リーマンショックで一時低下、安倍政権の樹立を経て再び70兆円を超えて、今や過去最大の90兆円近くにまでなっている。
また、租税と社会保障負担を示す国民負担率は、1999年に35.5%だったものが、2018年には42.5%にまで上がっている。

これらの数字は、日本政府が低収益の企業を潰して高収益産業にシフトさせるのではなく、賃金を削減して労働者を収奪することによって企業収益を担保する政策を採り続けてきたことを示している。
2000年以降、社会主義政党が国会に1割の議席も得られず、資本に融和的、協力的な民主党と連合が野党第一党あるいは政権与党であったため、全く抑止力にならなかったと考えられる。

こうした傾向は地方に行くと、より露骨な形で現れる。外国人技能実習制度は、現行の労働法制下では採算が成り立たない低収益企業が、生活保護水準の半分以下の超低賃金で、アジア諸国から欺いて連れてきた労働者を軟禁、酷使することで、延命を図るシステムである。これは、労働法制を適用除外にした上、基本的人権を認めないという点で、現地の自治体議会や警察を含む行政が「全員グル」にならないと成り立たない。その意味するところは、地方経済が疲弊しすぎて、外国人奴隷を軟禁して強制労働させることでしか、地場資本が存続できなくなっているということだ。
「都市部のコンビニや介護にも技能研修者を」という声が高まっているのは、もはや都市部でも非正規雇用程度では収奪が間に合わず、最低賃金以下の奴隷労働なしでは都市資本すら成立しなくなりつつあることを示している。
しかし、先に述べたとおり、賃金削減でしか収益が上がらない経済活動は、縮小再生産するばかりであり、現行の資本主義体制の終焉が近づきつつあることを露呈している。

資本家と労働者が一定の合意を得て市場の発展と国民生活の改善を同時に追求するというのが、「戦後和解体制」と呼ばれる自由民主主義の本質だった。ところが、1990年代にこのシステムが瓦解を始め、2000年代に深刻さを増し、2010年代に危機を迎えつつある。
上記のように、資本による労働収奪が強まり、政府が資本側について賃金削減と雇用不安定化に寄与するところとなるが、従来の社会民主主義政党や日本の民主党は、戦後和解体制から脱却できないまま労使合意に拘ったため、資本の横暴に歯止めがかからず、労働者階層の貧困化が加速していった。
特に欧米の場合、リベラリズムの原則によって難民や外国人労働者を多数受け入れ、社会民主主義政党やリベラル政党が強く推進し、肝心の自国有権者の生活水準を下げてしまい、離反を招いていった。
これは、社会民主主義政党が「民主的」「自由的」であるが故に、支持を失うプロセスにあることを示しているが、彼らはその処方箋を持たないまま、苦境に立たされている。

社会民主主義や自由主義の機能不全に対する抗議意思の表明は、欧米ではポピュリズムの形で顕現しているが、日本はロシア型の権威主義を指向する形で現れている。この辺りの機微が分からないと、イタリアで左派寄りの五つ星運動と右寄りの(北部)同盟が連立政権を組む理由が理解できない。
日本の場合、国政選挙の投票率が55%程度で推移、4割以上の有権者が投票しなくなっている中で、小選挙区制の導入によって45〜50%の得票で当選できるため、絶対的票率では25%、つまり四人に一人の有権者の支持だけで国会議員になれる一方、残る有権者の声は国政に反映されない事態になっている。
にもかかわらず、国内には少なく見積もって2千万人以上の貧困層(生活保護水準以下)がおり、その数は上昇し続けている。社会主義政党を含めてこの層を包摂する政党や政治団体がないことは、デモクラシーが機能不全に陥っていることを示している。
高度プロフェッショナル制度は、その背景にある資本側の狙いと歴史的経緯まで理解する必要がある。
posted by ケン at 00:00| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月05日

高プロ導入に見る資本主義と民主主義の終焉・上

【連合、ようやく「高プロ反対」 響く昨夏の「容認」騒動】
 連合は29日、働き方改革関連法案に盛り込まれた高所得の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」に反対する初の全国一斉行動を各地で実施した。昨夏、一時的に「容認」に傾いて反発を招き、これまで活動は抑えめだったが、ここにきて「高プロ反対」を浸透させようと懸命だ。
「高プロという、とんでもない内容をもぐり込ませるから、だめだと言っている」。連合の神津里季生(りきお)会長は29日夕、東京・新橋駅前で200人ほどを前に訴えた。高プロの削除を求める立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎・共同代表も参加。野党との連携もアピールした形だが、この日予定されていた法案の衆院通過に事後的に抗議するため、やっと設定された全国行動だった。
 連合は昨夏、働き過ぎ対策を見直す条件つきで高プロを容認する動きを見せ、組織内外から強い反発を浴びた。結局、高プロ反対に立場を戻したが大きな顔はできず、これまでは国会内などで小規模集会を数回開くにとどまっていた。幹部は「昨夏の騒動で傷を負った。あれがなければもう少し動けていた」と話す。
 法案にセットで盛り込まれた残業時間の罰則付き上限規制などが、連合の望みであることも立場を難しくしている。神津会長は、野党が審議を拒否していた4月の会見で「重要な法案の審議すらできないのは極めて問題」と不満を述べた。ある副会長は「残業規制は連合の悲願。徹底反対で法案がつぶれるのが最悪のシナリオ」と、法案全体への対決姿勢には野党と足並みをそろえられない事情を説く。
 今月17日には神津会長が菅義偉官房長官を訪ね、残業規制などの早期実現を要請。これを菅長官が会見で「国会で議論を深掘りすることが重要と意見が一致した」と法案審議を後押しする要請と紹介する場面もあった。神津会長は29日の演説で、残業規制などは「早くスタートしなきゃいけない」としつつも「高プロなんかだめだと、私たち連合はこだわりを持って訴えたい」と強調した。
(5月30日、朝日新聞)

高度プロフェッショナル制度(裁量労働制の適用拡大、労働時間管理義務の放棄)については、すでに四年前に記事にしているので、改めては取り上げていない。
問題は「残業代がゼロになる」のではなく、「労使間合意なしでも使用者は労働時間を永遠に引き延ばせる」点にあるはずなのだが、そうした議論にはなっていない。このことは、日本のナショナルセンターが結局のところ賃上げ闘争にしか興味を持たず、労働環境の改善を目指すべき労働基本権(労働基準法)そのものに疑問を抱いてこなかったことに起因している。具体的に言えば、残業代欲しさに労働時間規制への対応を怠ってきたツケが回っているのである。
政府・財界は「労働時間規制の緩和」などというが、そもそも日本には労働時間規制の実態が存在しないわけで、それを追及せずに「企業が残業代を払わなくなる」と叫んでいるのが労働界の現状と言える。もちろん日本の労働時間規制の実態は、OECD諸国の中で最も緩い部類に入る。
ナショナルセンターの本来の役割は「残業代を出せ」ではなく、「人間らしい生活ができるように労働時間を規制しろ」と主張することにあると思うのだが、そんなことを考えているのは私だけのようだ。
労働者は生かさず殺さず、2014.5.30

いまケン先生が注視しているのは後段の指摘である。
こうした流れは、水野和夫先生の理論から説明できる。
資本主義を成立させるためには常に新しい市場が必要で、資本の核がマーケットを広げながら利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していく。しかし、グローバル化が進んで地理的な意味での新規市場は地球上から消失、次いでバーチャルな電子・金融空間に市場を広げたものの、あっという間に限界に達して利潤を上げることができなくなった(リーマンショックなど)。その結果、利潤を上げられる外部市場の開拓の余地が完全に失われ、その矛先は内部に向けられることになる。内部市場、つまり自国の国民から利潤を巻き上げる構造へと変化してゆく。
具体的には、正規雇用労働者からの「既得権益」の剥奪、非正規雇用労働者の増加、低所得層への融資増(学資ローンも含む)や住宅購入の促進などとなって現れている。家計貯蓄の多さを誇った日本が、いまや3世帯に1つは金融資産ゼロになっていることも象徴的だ。
この急激な中間層の没落と中低所得層からの容赦ない収奪によって高まるだろう国民的不満を解消すべく用意されているのが、排外主義とミリタリズムで、それが具体化したのがヘイトスピーチと集団的自衛権だと考えられる。
(同上)

資本主義を成立させるためには常に新しい市場が必要で、資本の核がマーケットを広げながら利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していく。しかし、グローバル化が進んで地理的な意味での新規市場は地球上から消失、次いでバーチャルな電子・金融空間に市場を広げたものの、あっという間に限界に達して利潤を上げることができなくなった(リーマンショックなど)。その結果、利潤を上げられる外部市場の開拓の余地が完全に失われ、その矛先は内部に向けられることになる。内部市場、つまり自国の国民から利潤を巻き上げるほか無くなって、今回の裁量労働制の拡大や労働時間規制の撤廃という形になって現れている。しかし、これは資本主義システムの終焉を意味する。賃金の削減は消費減退に直結、市場が縮小、収益の上がらない市場に対する投資も減退、収益悪化は賃金削減でしか対応できず、市場そのものが縮小再生産してゆくことになる。
「資本主義のもとでは利潤率が必ず低下し、やがて崩壊する」というマルクスの指摘は、21世紀後半には実現しそうな勢いにある(利潤率が低下の部分は2000年代には具現化)。若い人は今からでもマルクスを勉強しておいた方が良いだろう。

この資本主義の延命を図ろうという試みこそが、TPPであり、中国の一帯一路政策である。しかし、TPPは市場拡大という点で規模が小さすぎて実際には機能しそうにない。これに対し、一帯一路は、未開発のユーラシア内陸部と巨大な人口を擁している上、「Sea PowerからLand Power」へのシフトという戦略的価値も大きいため、当面は機能しそうだが、それも20〜30年くらいのスパンでしかないと見られる。
そもそも近代資本主義は、列強の植民地やいわゆる後進国から資源を不当に安価に買いたたき、加工製品を高く売りつけ、莫大な利潤を上げることで成立してきた。ところが、労働コストと資源価格が上昇するにつれて、利潤が低下したため、先進工業国は重工業からサービス業、ついで金融業にシフトすることで、高収益を維持してきたものの、その仕組みは完全に行き詰まっている。だからこそ、資本の意を汲んだ先進国政府は、こぞって解雇・賃下げを容易にする労働法制の改悪を行い、階級闘争を再発させている。
以下、続く
posted by ケン at 13:24| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月04日

北朝鮮化する日本

【NATOの「GDP比2%」参考に防衛費確保を−新大綱へ自民】
 自民党は25日、安全保障調査会と国防部会の合同会議を開き、防衛費について北大西洋条約機構(NATO)が「対国内総生産(GDP)比2%」の達成を目標にしていることを参考に「必要かつ十分な予算を確保」すべきだとする提言をまとめた。
 中谷元・安保調査会長は党本部で記者団に対し、防衛費は「現実的には必要なものに予算をつける積み上げ方式だ」としながらも、日本は「あまりにも各国と比べて防衛費の割合が少ない」と強調。欧州の例を参考数値として提言に盛り込むことで、必要な予算の確保につなげたいとの考えを示した。日本の防衛費は18年度で5兆1911億円。17年度の名目GDP548.1兆円の約0.9%。
 提言は巡航ミサイルをはじめ「敵基地反撃能力」の保有検討を促進するよう明記。島しょ防衛や災害時の拠点機能として「多用途運用母艦」を導入し、これに搭載可能な最新鋭ステルス戦闘機「F35B」の取得も盛り込んだ。政府が年末に改定する「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」に向けまとめたもので、来週にも安倍晋三首相に提出する。
(5月25日、Bloomberg)

GDP比2%というのは単純計算で現在の2倍を意味する。2018年度の防衛予算は5兆1900億円で、対GDP比にすると約0.95%。これを倍にするということは、現状で10兆円以上をめざすことになるわけだが、税収は約60兆円であり、歳出の10%、税収の17%を防衛費に相当する。今後もゼロ成長が続く場合、社会保障費や教育費を大幅に削ることになるだろう。

「いきなり2倍」という大転換は、東アジアにおける国家間パワーバランスの変動に起因している。アメリカの国力は、相対的にはまだまだ中国を上回っているものの、米国の覇権は全世界に対して行使されねば意味をなさないため、中国のみを相手にしているわけにはいかない。結果、東アジア方面では、アメリカは従来の勢力が維持できず、冷戦期の封じ込め政策が通じなくなりつつある。

それを象徴するのが、米朝会談に象徴される米朝和解であり、それに続く朝鮮戦争の終結である。これにより、朝鮮半島は中国の勢力圏下となり、在韓米軍は撤退、冷戦の最前線は日本と台湾のラインに移るが、台湾は経済・文化的に大陸に取り込まれつつあり、政治的独立は名目的なものになっている。

冷戦期の日本の国防は、北緯38度線を最前線とし、北朝鮮の南下に対しては韓国軍が対峙して、アメリカ軍が反撃する、ソ連軍による北海道や新潟上陸に対しては、自衛隊が対峙して、米軍が反撃するという想定の上に成り立っていた。だが、巨大な海軍を持たないソ連軍の日本上陸は全く現実性がなく、現実の脅威は朝鮮半島にしか無かった。
そのため、韓国が巨大な軍事負担によって近代化と経済発展が遅れたのに対して、日本は軽武装により、国内のインフラ整備に専念でき、高度成長を実現することができた。

朝鮮戦争の終結は、冷戦の最前線が日本に移ると同時に、韓国軍と在韓米軍が無効になることを意味し、日本は中国と最前線で直に対峙する立場に立たされる。冷戦期の西ドイツはNATOの集団安全保障に国防を依存できたが、日本には日米安保しかない上、条約上の強制力でも日米安保条約はNATO条約よりも弱い。
例えば、NATO条約は締結国への攻撃に際し「必要と認める行動(兵力の使用を含む)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執る」と規定しているが、日米安保条約は「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」となっている。これは、第一に日本の施政権下でしか発動しないことを意味しており、例えば北方四島や竹島に対しては適用されないし、仮に中国が尖閣諸島を占領した場合、米国は「施政権下にあると認められない」と援助を拒否できる仕組みになっている。そして第二に「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」とあるように、日米安保の場合、米連邦議会が参戦に同意しなかった場合、安保条約は発動しない。
ただでさえ日米安保は、二国間条約である上に様々な制約が課されて不安定性が高い。従来であれば、この内容でも問題なかったが、今日のように米中のパワーバランスが拮抗してしまうと、不安定要素が増えることになるため、日本は独自に防衛力を高めるほか無くなってしまう。

購買力平価GDPを見た場合、冷戦期1970年のアメリカが3兆ドルに対して、ソ連は1.35兆ドルだったわけだが、2017年には中国の23.2兆ドルに対して、アメリカは19.4兆ドル、日本は5.4兆ドルでしかない。
本来であれば、遅くとも2000年代から始めるべきであった国防力の強化を先延ばしにしてきた結果、「米朝和解=朝鮮戦争の終結」を目の当たりにして、ようやく「実はオレ、ヤバいんじゃね?」と気づいて宿題に取りかかったのが自民党と霞ヶ関だった。

だが、仮に防衛費を増やしても、超少子化の中では傭兵や外国人でしか兵力を担保できず、実質的には絵に描いた餅にしかならない。現状ですら、自衛隊は兵力定数を満たすことができず、海自に至っては保有する艦艇全てを同時に稼働することが困難になっている。つまり、防衛費を増やしてみたところで、特に下士官・兵の頭数がそろえられなくなっており、今後はさらにその傾向が強まるものと見られる。
日米開戦時の日本海軍の常用航空機定数は3019機で、運用に必要な搭乗員は3445名だったが、海軍所属の搭乗員は全3615名に過ぎなかった故事が思い出される。
それを補うためには、例えば、「5年間自衛官を勤め上げたら、日本国籍を付与する」という制度が考えられるが、国民に受け入れられるのか、それに手を挙げるような(怪しげな)外国人で良いのか、疑問だらけだろう。

歴史を見た場合、高麗王朝の対元降伏から文永の役(第一次元寇)までが15年だっただけに、「朝鮮戦争の次は対日戦に違いない!」と自民党がヒステリーを起こすのは全く根拠の無いものでもない。
今後の日本が採る戦略は、「アメリカの裾を掴んで放さない」「早急に国土をハリネズミ化」「核武装論への傾斜」となるだろう。これは「貧国強兵」の道であり、実のところ「次代の北朝鮮」となる可能性を示している。

自分が中国で講演した通りの筋書きではあるが、ちっとも嬉しくない。
posted by ケン at 12:56| Comment(4) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月03日

サイズ−大鎌戦役 第二戦

アークライト社『サイズ−大鎌戦役 完全日本語版』の二戦目。
戦間期(一次と二次)の東欧を模したSF的な仮想世界を舞台とし、国家間の発展を競うボードゲーム。
国民を動員し、資源を生産し、軍事力を強化し、必要な場合は戦争を行い、勝利得点(コイン)を積み上げてゆく。10通りある国家目標のうち、いずれかのプレイヤーが6個を達成した瞬間にゲーム終了となり、得点計算がなされ、VPの多かったものが勝利する。VPは総合的に計算されるため、むやみに国家目標のみを追求してゴールインしても、得点で負けるということもあり得る。

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5つの国と5種類の生産ボードの組み合わせがあるため、25種類のパターンが存在する。そのため、プレイごとに「前回とは何か違うな」と思いつつ、慣れてくる頃には中盤か終盤という感じになってしまう。

今回も4人プレイとなったが、うち一人は初めてで、その場でルールを説明。残る三人も四ヶ月ぶり二回目なので、初めても同然ではあるが。
6時間で2プレイ、一回だいたい2時間半くらいかかる。必ずしも長考するゲームではないし、他者と交渉するわけでもないのだが、何手番か先まで考えて行動しないと、「あれ、自分何したかったんだっけ?」となってしまう恐れがある。一見、無数の選択肢があるように見えるのだが、効率の良さについては優劣があるのは確かなので、見極める必要がある。

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本作は一人プレイの箱庭的要素が強いものの、誰かが勝利に近づくと、いきなり邪魔してきてゲームが乱れる傾向があり、「終わらせ方」に工夫が求められる。しかも、無理して終わらせると、得点計算で他者に負ける可能性もあるため、ゴールインとVP計算を同時に考えねばならないところが難しい。
実際、一回目はO先輩が戦闘勝利と戦略目標を同時に達成してダントツ一位に輝き、二回目はケン先生が最大戦力と建造物マックスを同時に達成して一位で終了した。
2回プレイして戦闘が発生したのは2回だけ。戦勝は国家目標の一つではあるが、投入した分の戦力を失うこと、戦勝そのものから得られるものは少ないこと、他国を警戒させてしまうことなどから、戦勝逃げ切り型以外は好ましくないため、行動の容易さに比して選択が難しくなっている。この辺はなかなかよくできていると思う。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ゲーム、囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月02日

祝!あそあそアニメ化!

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『あそびあそばせ』 涼川りん 白泉社より既刊5巻

日本生まれ日本育ちでまったく英語ができない
金髪の美少女・オリヴィア、真面目で知的な雰囲気を漂わせながら
英語がまったくできないショートカットの眼鏡っ娘・香純かすみ、
そして明るいけれど、リア充になれないおさげ髪の少女・華子はなこ、
3人の女子中学生が作ったのは「遊び人研究会」!? 
最高に可愛くて最高に楽しい抱腹絶倒の
JCガールズコメディが今、幕を開ける!

涼川りん先生の『あそびあそばせ』がアニメ化され、今夏より放送されると聞き、心よりお祝い申し上げます。

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ケン先生は、昔からギャグ・コメディを嗜む習慣を持たないが、本作は例外と言える。中国赴任に備えて、KINDLEを購入する予定だが、本作は絶対に外せないと考えているくらい。
ネット上では、「表紙詐欺」とか「圧倒的な画力の無駄遣い」と言われているが、どちらもその通りだ。

中学生らしい日常(正気)と妄想(狂気)の暴走っぷりが、涼川先生の「画力の無駄遣い」によって見事に使い分けられているところは、岡本喜八の映画すら思わせるところがある。
しかも、登場人物はみな腹黒い部分を抱えており、一つ一つは些細なことだが、友人を貶めることも、友人を見捨てることも躊躇しない。そのドス黒さも、それが裏目に出るところも、いきなりテンションマックスになったかと思えば、いきなり急降下するところも、抱腹絶倒させられる。

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演出過剰を楽しむギャグ漫画ではあるのだが、何度読んでも笑えるだけの魅力(魔力)を備えている。
アニメになるとどうなのかという不安はあるものの、楽しみにはしている。最後まで見られないのが惜しすぎるが。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月01日

安倍氏三選か

【安倍首相、連続在職3位 総裁選3選で歴代最長も】
 安倍晋三首相の連続在職日数が28日で1980日となり、小泉純一郎元首相と並んで歴代3位、29日に単独で3位となる。9月に行われる自民党総裁選で3選を果たせば、通算在職も含め歴代最長記録の更新が視野に入ってくる。
 安倍首相は平成18年9月からの第1次政権で366日務めて退陣した後、24年12月に再び首相に就いた。同月の衆院選を含め自民党総裁として衆参両院の国政選挙5連勝は初めてで、長期政権を築いている。
 連続在職日数は、9月の総裁選で3選を果たせば来年2月21日に吉田茂氏(連続2248日)を抜いて2位となる。
 さらに32(2020)年8月24日に佐藤栄作氏(連続2798日)を抜いて、歴代1位となる計算だ。33(2021)年9月末までの3期目の党総裁任期を全うすれば連続3201日に達する。
 一方、通算の在職日数はこの28日で2346日となった。これは戦後で3位、戦前も含めた歴代では5位だ。
 順調ならば、来年8月24日に佐藤栄作氏(2798日)を抜いて戦後1位、11月20日には歴代1位の桂太郎氏(2886日)を抜き、憲政史上最長の首相となる。
(5月29日、産経新聞)

財務省から森友・加計関連資料が提出されたことを受けて、これまでの政府答弁の多くに虚偽があったことが発覚、国会は炎上して野党が追及を強めているものの、首相も官僚も「どこ吹く風」で相変わらず「質問と無関係の説明をする」「個別案件には答えられない」などに終始している。
これは、本来近代議会が有する行政監督権が全く機能していないことを意味し、今後さらに腐敗が蔓延してゆく可能性を示唆している。実際、狛江市長や日大幹部の対応を見ても、明らかに閣僚や霞ヶ関官僚の答弁を模したものになっていることが分かる。

一方、野党は野党で、提供された資料から判明したこと以外は新たな証拠を提示するには至っておらず、事実を突きつけて逃げ道を塞ぐまでにはなっていない。
そもそも政府側が今まで隠してきた資料を出してきたのは、「この程度では内閣は倒れない」という判断があるからで、麻生財務大臣も余裕顔を続けている。
「証拠文書を廃棄してしまえば罪に問われない」という社会文化は近代国家にはそぐわず、戦後民主主義の終焉を暗示している。

全国的には支持率を下げつつある安倍氏であるが、自民党内での支持は堅く、内部調査では二位の石破氏を大きく引き離してダントツのトップにあるという。これが僅差であれば、派閥力学が作用して変動も起こりうるが、現状では安倍氏三選の確率が上がっている。
当初は「国会延長はやっても数日間」と言われていたものが、今では「二、三週間」となっていることも、自民党側に余裕があることを示している。要は「野党の攻勢は国民の支持を受けておらず、脅威にならない」という認識である。

現状では、さらなるスキャンダルが出ない限り、安倍氏が三選すると思われるが、大手紙が大スキャンダルを準備しているとの情報もあり、その場合は8月末か9月頭に暴露されることになるだろう。ただ、これも野党側の希望的観測である可能性が高い。
また、「総裁選前に辞任する」という観測もいまだ根強く存在するが、根拠は無く、やはり希望的観測の域を出ない。

仮に「三選危うし」という状況となった場合、安倍氏は衆議院を解散して、総選挙に挑むパターンも考えられたが、現状ではわざわざリスクのある解散に打って出る必然性は非常に低い。

なお、安倍氏が三選した場合、政権や政府の腐敗が容認されることを意味するだけに、統治システムの腐敗と劣化が急速に進むと考えられる。
posted by ケン at 12:19| Comment(4) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月31日

連合、政治介入路線を継続

【連合、立民と5カ月ぶり懇談 新潟知事選・参院選、連携を確認】
 立憲民主党と連合の幹部懇談会が16日、東京都内のホテルで開かれ、与野党対決の公算が大きい新潟県知事選(24日告示、6月10日投開票)や来年の統一地方選、参院選を見据え、連携を深める方針を確認した。政策協定締結に向け調整を進めることでも一致した。
 連合の神津里季生会長は懇談後、国民民主党とも同じ内容の政策協定を結ぶ意向を記者団に示した。21日に同党との懇談会を開く。
 立憲民主党と連合の幹部懇談会は、旧民主党、旧民進党時代に党執行部と連合が定期的に開いてきた会合の方式を踏襲し、昨年12月に初めて行われた。その後は実施が滞り、約5カ月ぶりの開催となった。
 神津氏は、連合が結成を後押しした国民民主党が7日に結党されて間もないことを念頭に「野党の状況を見定めなければ政策協定の議論のスタートを切ることができない」と説明した。
(5月17日、産経新聞)

おいおい、連合なんか加えたら柏崎原発の再稼働に反対できなくなるぞ。
連合は、野党候補を支援することで、どちらの候補が当選しても、原発推進を担保する戦略を採っているだけに、立民はデーモンを倒すためにデビルと手を結ぶような形になっている。

連合は連合で、政治関与に費やしているコストに比して、政策要求の実現は十分とは言えない状況にある。政党に対する支配力という点でも苦しい情況が続いている。かつて社会党時代には総評の組織内議員が5割を超えたこともあったが、民主党では2割前後にまで下がって、立民と国民に分裂したことで、その割合はさらに低下しそうな勢いにある。同時に、産別によっては自民党支持を明確にするところも出てきて、立民・国民の股裂き状態も相まって、その政治的影響力はますます低下しそうだ。

もともと連合は、社会党・総評と民社党・同盟の合流をもって政権交代可能な政党をつくることを目的に結成されたはずだが、新たな社会主義政党の結成に失敗したことを受けて、やむなく、なし崩し的に民主党を支援してきた。
昨今の連合側の要求を見れば分かるが、現在では「自民党でいいんじゃね?」というものが圧倒的に多い。

TPP推進
原発推進
リニア新幹線推進
高速道路推進
電波オークション反対
大企業保護
残業規制反対(高プロも最近まで賛成)


これを見れば分かるとおり、今日における連合の役割は「万が一政権交代が起きても、大きな政策転換がなされないようにする」ことにある。

立憲も国民も、連合の支援がなければ資金も選挙動員も不足する状況にあるが、それは自らの党組織を作ろうとしない怠慢に起因している。結果、両党とも連合への依存を強め、連合の思惑通りになっている。それだけに、両党とも自民党に対する対抗軸を打ち出せるような態勢にはなく、今後も期待できない情況が続きそうだ。

個人的には、赤い貴族どもが野党を骨抜きにして自民党優位体制の存続に手を貸しているこの情況こそが、日本政治の堕落であると考えている。
もし連合に一片の良心が残っているならば、今すぐ解散するか、政治から一切手を引くか、産業報国会に改名して自民党支持に転換すべきである。
posted by ケン at 12:36| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする